第12話「10年目の疑惑」(1982年8月29日)
の続きです。
翌日、幸子は、友愛養護院と言う孤児院を訪ねる。
そこは、安井の子供が引き取られた施設であったが、幸子がどうやってその場所を探り当てることが出来たのか、謎である。
捨て子の件が記事になった時点では、どの施設に引き取られたかなんてことが書いてある筈がなく、新聞にも載ってないと思うのだが……

幸子「先生はほんとのことを知ってる筈です、私、何を聞いても驚きません、だから話して下さい」
幸子は院長先生に会い、自分が安井の捨て子なのかどうかストレートに尋ねるが、

院長「幸子さん、私、あなたのことは何も知らないのよ」
幸子「嘘です」
院長「嘘じゃないわ、あなたが前にここにいたなんてことはありませんよ」
幸子「……」
浜に口止めされているのか、あるいは、誰に対してもそう答えるようにしているのか、はっきりと否定する。
幸子にしても、ここに来てすぐ浜に引き取られたのだろうから、ここにいた記憶など全くないのだ。
何の得るところもなく、幸子が悄然と院を後にするのと入れ違いに、ガゼールをぶいぶい言わせて小暮っちがやってくる。
小暮っちと院長先生の面談のシーンは省略されて、次のシーンで早くも結果が明らかにされる。

小暮「やはりゲンさんが安井の娘を養女として引き取っていた。幸子ちゃんだ」
大門「ゲンさんの養女?」
小暮「これで全てがはっきりしたな」
大門「恐らく安井は復讐とは別にユキちゃんの行方を探してるんじゃないでしょうか? そのことをゲンさんが知った」
小暮「だが今更、犯罪者の男を実の父親だと幸子ちゃんには絶対知らせたくない」
二宮「……」
小暮「知らぬは親ばかりってこともある……実は妙なことに、私と入れ違いに養護園から幸子ちゃんが出てった」
小暮は、幸子がその事実を知るのは時間の問題だと言い、せめて、浜の口から幸子に教えてやるべきだと自分の考えを述べる。
そこへ幸子から大門に電話があり、話があるから会いたいと言ってくる。

公園のベンチに座り、大門の来るのを待っている幸子。
いやぁ、やっぱり女子中学生の細い足には、白のソックスが一番ですなぁ。
管理人は、ルーズソックスなどと言うものを発明した奴を死刑にしてやりたいと思ってる人と飲んだことがあります。
ほどなく大門があらわれ、サングラスを外し、部下には一度も見せたことのないような穏やかな笑みを浮かべる。

大門「どうしたんだい、座ろっ!!」
幸子「はい、お呼び出ししてすいません」

幸子「昔の新聞で、母の事件のこと初めて知りました。私は本当は安井って人の子供なんですか?」
ベンチに座り直すと、いかにも子供らしい性急さで、いきなり本題に入る幸子。

大門「……」
この手の話が苦手な大門は、再びグラサンを掛けてお地蔵さんのように黙りこくる。
その沈黙を「イエス」と受け取ったのか、
幸子「やっぱりそうなんですね」
大門「……」

幸子「……」
大門「……」
嬉しくって飛び跳ねたくなるほど可愛い幸子タンのアップ!!
こんな娘っ子が、これだけ何度もアップになるのはこのドラマにおいては異例のことだが、ユージロウの姪っ子というだけじゃなく、その圧倒的な美しさにスタッフも魅せられたのではあるまいか。
顔立ちといい、いかにもお嬢さんっぽい気品といい、岡本舞さんに似ている。
ついでに耳の形も似ている。
それはともかく、幸子は大門の横顔をじっと見詰めながら、
幸子「なんか喋れよ、大門」 大門「はい……」
と言うのは嘘だが、いくら話しにくい話題だからって、大門がずーっと口を噤んでいるのは、大人としていささか情けない態度に見える。
まあ、犯罪捜査と角刈りとグラサンとショットガンとタバコとマグロ以外に能のない大門、意外と世間知らずで、こういう時にはからっきし役に立たないのだ。
だからいまだに独身なんである。
幸子「父は昨夜帰って来ませんでした」
大門「……」
幸子「失礼します」
大門にいくら聞いても無駄だと悟ったのか、幸子は一礼してその場を立ち去る。
女子には弱いが男子には滅法強気の大門は署の屋上に浜を呼び出し、

大門「奥さんやユキちゃんのこと、調べさせてもらいました」
浜「そうですか、申し訳ない」
浜、今更否定しても無駄だと悟ったのか、サバサバした様子で応じる。
浜「ワシも安井も乗った戦闘機が敵艦に体当たりしていたら、二人ともこんな生き恥を晒すことはなかったんですよねえ」
大門「……」
浜「私は娘の幸子のためと言う私情に駆られて(安井を)逃がそうとしました、刑事失格ですわ」
浜、自嘲気味につぶやくと、あらかじめ用意していた白い封筒を差し出す。

浜「大さん、黙って受け取って下さい」
大門「ゲンさん、デカをやめてどうなるんスか」
言うまでもなく、刑事ドラマの七つ道具のひとつ、辞表であった。
大門、反射的にそれを受け取りながら、
大門「自分のドジは自分で刈り取れ、そう教えてくれたのは、ゲンさんですよ!!」
浜「……」
大門「実はさっきユキちゃんが本当のことを教えてくれと言ってきました」
浜「……」
大門「でも、上がって何も言えませんでした」
浜「童貞かっ!!」 じゃなくて、
大門「でも、自分の口からは言えませんでした。ですがゲンさん……」
浜「それ以上言わんで下さい、この事件が解決したら幸子に本当のことを話します。いつまでも子供と思っていたら……私、現場へ」
浜がそそくさと立ち去るや否や、

受け取ったばかりの辞職願を破る大門。
いや、さすがに早過ぎるのでは?
普通は事件が終わった後に、相手に返すか、目の前で破るもんだけどね。
幸子はその後、思い余って区役所に行き、戸籍謄本を請求し、自らの目で、自分が安井とその妻の間の娘で、浜の養女だったことを確かめる。
覚悟していたこととは言え、やはり13歳の処女、いや、少女がひとりで受け止めるには重過ぎる事実だった。
その直後、帰宅中の幸子は朝倉の部下たちに拉致されてしまう。
だが、その様子をたまたま近くを通りがかった明子が目撃しており、すぐに兄に電話する。
朝倉は直ちにホテルにいる安井に電話する。

朝倉「10年ぶりだな、てめえの娘を預かってる」
安井「なんだとぉ」
朝倉「今から声を聞かせてやるぜ」
言い忘れていたが、朝倉役は、毎度お馴染み石橋雅史さん(クレジットは雅男)。

丸山「ほらぁ、立て」
朝倉「ほら、聞かせてやれよ、お前の父親によ」
幸子「私の父は一人しかいません!! 浜源太郎です」
ヤクザに抱きすくめられながらも、臆せず答える幸子が健気なのである!!
朝倉「親子の対面をさせてやろうってんだ、娘を殺されたくなかったら大井の操車場に来るんだ」
ちなみに朝倉たちが幸子が安井の実の娘だと知っているのは、あの西脇と言う男を痛めつけて無理やり吐かせたのである。
西脇は、ズタボロになって倒れているのを浜に発見されるが、その生死は不明である。
その後、色々あって、浜は彼らが操車場で会うのを知り、本部に連絡を入れてから急行する。

丸山「よく見ろ、あれがお前の本当の親父だ」
車両と車両の隙間越しに、幸子に銃を突きつけた朝倉たちと、同じく銃を手にした安井が向かい合う。
しかし、安井、多分、海外で危ない橋を渡ってこの10年間生きてきたのだろうが、いまだに10年前の銃を使っていると言うのは、変だよなぁ。
そもそも、銃なんか持って出国したり、入国したり出来るものだろうか?

幸子「嘘です、私の父はひとりしかいません!!」

朝倉「てめえのおやじは人殺しなんだよ」
幸子「そんなこと絶対嘘です!!」

朝倉「安井、娘を助けたきゃあ、ハジキ捨てて大人しく出て来い」
悲しみと恐怖に顔を引き攣らせながら、必死に朝倉の言葉を否定する幸子タン。
いやぁ、表情豊かな女の子って可愛いよね!!
しかも、この年にしては、かなりの演技力である。

朝倉「ハジキ、捨てろ!!」
この怯え顔、なんか、ウィノナ・ライダーに似てるなぁ。
さすがに安井が逡巡していると、背後の車両の上にいたヒットマンに腹を撃たれる。

朝倉「よく見とけ、てめえのオヤジの死に様!!」
幸子「やめてぇっ」
と、ここで、すぐ近くまで来ていた浜が威嚇射撃をする。
そして、銃を構えながら身を隠そうともせず朝倉たちに向かって行くのだが、

幸子「お父さん!!」
朝倉「来るな、これ以上来ると娘を殺すぞ!!」
何故か朝倉たちは撃ち頃の浜を撃とうとせず、幸子を使って脅しをかける。
いくらヤクザでも、やはり刑事を殺すのには抵抗があったのだろうか。
でも、こんな現場見られたからには、即座に殺す以外の選択肢はなかったように思うが……
で、朝倉がグズグズしているうちに、

幸子のそばにいた男が安井に撃たれ、かなり面白い顔になる。
その隙に、幸子はさっさと逃げ出し、浜たちのもとへ。
もう、朝倉さん、なにやってんの!! ま、バリバリのヤクザだったのは10年前の話で、今は一応建設会社の社長をやってるとのことで、荒事に対する感覚が鈍っていたのだろう。

浜「安井ーっ!!」
安井「は、浜……」
浜「お前の……」
安井「行け!!」
何か言いかけた浜の口を手で塞ぐと、安井はその体を突き飛ばす。
無論、「お前の娘はこの子だ」と言おうとしたのだろう。
だが、安井は死の間際に善性を取り戻したのか、娘のことを慮って、あえて親子としての対面も求めず、

銃をぶっ放しながら敵の只中に突っ込んで、蜂の巣にされる。
浜の時と比べると、えらいアグレッシブな朝倉さん。
安井、かなりタフな人生であったが、その死に顔は安らかであった。
最期に命懸けで娘を守った、満足感からであろう。
浜、とにかく幸子の手を引いてその場から走り出すが、朝倉たちは容赦なく銃撃してくる。
うーん、じゃあ、さっきはなんで浜を撃たなかったのだろう?
あのシーンはどう考えても変である。
ともあれ、やがて無敵の大門軍団が到着する。
ふと思ったが、アベンジャーズと大門軍団が戦ったら、多分、大門軍団が勝つんだろうなぁ。
大門は、貨物車両の上に上がり、無線で浜に指示を出し、朝倉たちを自分の眼下に誘導する。
三人が浜を追いかけて車両の陰から出てきたところで、

大門「朝倉っ!!」
大声を出して朝倉たちの注意を引きつけ、

目にも留まらぬショットガンの三連射で三人にヒットさせる。
しかも、全員急所を外しているのだから、いくら至近距離とは言え、その射撃スキルは、神業レベルと言うより、ほとんどギャグマンガの領域に突入していると言った方が近い。
勿論、仕上げは沖田たちによる掟破りのヤクザキック釣瓶打ち。

浜「幸子」
幸子「父さん」
浜「すまなかったな、幸子、今日まで、お前にずっと隠していたことがあるんだ、実はお前の本当のお父さんはな……」
互いに荒い息を整えながら、浜が改めて真実を告白しようとするが、
幸子「浜源太郎よ、お父さん!!」 みなまで言わせず、幸子が魂の奥底から叫ぶ。

浜「幸子!!」
浜、思わずその体を抱き寄せ、感動に打ち震えるのだった。
今回はあまり出番のない角刈り沖田が大門のそばに立ち、
沖田「団長、これで10年前の宝石強盗と殺人事件も解決ですね」
大門「……」
沖田「なんか言えよ」 と言うのは嘘だが、刑事ドラマの主人公で、これだけ台詞の少ないキャラも珍しいよね。
あと、沖田は簡単に言ってるけど、朝倉たちの奪った宝石は結局出て来ないままなので、事件解決と言うには早過ぎるだろう。
ついでに、仮にも実の父親が目の前で撃ち殺されたと言うのに、幸子が大してショックを受けたように見えないのが、ドラマとしては物足りない。
以上、色々とつっこみどころはあるが、「西部警察」とは思えないほど人間ドラマに重点の置かれた佳作であった。
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