第11話「カメレオーン!悪魔のフイルム!?」(1975年6月14日)
冒頭、羽田に、世界最大の産油国アラプト国のカザール国王と王女マリアが到着する。
厳重な警戒の中、ホテルに向けて出発しようとしている国王の様子を、近くの高層ビルの一室から見ているものがいた。

今日も前線で元気に働くタイタン様であった。
タイタン「カザールよ、地獄へ行け、ブラックサタンの手でな」
そう、ブラックサタンはカザール国王の暗殺を企てているのだ。
……
そう言えば、浜田さん、ゲスト出演した「仮面ライダーX」でも、似たようなことやってるんだよね。
ご本人も、「我ながら進歩ねえなぁ」とか思ってたりして……
色々あって、国王を乗せた車は、警備のパトカーや白バイと引き離された上、人気のない貯木場まで誘導される。

カメレオーン「石油大国のカザール国王」
カザール「誰だ、一体何の真似?」
カメレオーン「ブラックサタンの命令に従え、命が惜しければ、日本に石油を売るのをやめろ」
昔の特撮ではありがちな作戦だが、なにしろ当時はオイルショックの直後なので、石油の輸入を止めると言うのは、視聴者の目に、今よりもずっと切実な問題として映ったに違いない。

カザール「それできなーい!! 私、日本大好き!!」
ブラックサタンの人たちって、たまにどーしようもなくおバカさんに見えることがあるのだが、このシーンがまさにそうで、彼らには人を自由に操るサタン虫と言うものがありながら、それを使おうとはせず、王女を攫ってそれで国王に言うことを聞かせようというまどろっこしい手段に出る。
……
つーか、さっきタイタン、「地獄へ行け」って言ってなかった?
早くも目的が変わっちゃってるよーっ!!
しかも、前述した「X」の第3話のレビューでも、似たようなツッコミを入れた記憶があるぞ。
どっちも伊上さんだから、バレない程度にシナリオを使いまわした可能性は排除できない。
ま、導入部以降は全然違うんだけどね。
それはともかく、そこへあらわれたのが茂で、ひとまず国王を逃がしてからストロンガーに変身する。
ところが、それを見たカメレオーンは、
カメレオーン「何者だ?」 ええ~っ、今、それ聞いちゃいますぅ?
そろそろ第1クールも終わろうかと言う段になって、怪人がヒーローのことを知らないってのは不味いんじゃないかなぁ?
ストロンガー、カメレオーンを追い払うが、混乱に紛れてマリア王女が行方不明となってしまう。
その後、アジトには、

タイタン「馬鹿め、あれだけ準備した襲撃作戦をストロンガーに邪魔されるとは!!」
カメレオーン「ははーっ、申し訳、ありません、今度の作戦は失敗です」
普通のサラリーマンのように、上司から叱られてペコペコ平身低頭しているカメレオーンの姿があった。
なんか、これを見ているちびっ子たちの将来を暗示したような、悲哀に満ちた「絵」である。
タイタン「このタイタン様に失敗はない。今一度国王に近付いて、殺せ!!」
カメレオーン「しかし、厳重な警戒を国王にどうやって近付けます?」
タイタン(それ、俺に聞いちゃう~?) カメレオーン、戦闘能力はともかく、何をするにもいちいち上司の指示を仰がないと動けない、ある意味、イマドキ風の奇械人なのだった。
それでも、歴代大幹部の中では太っ腹なタイタン様は怒らず、
タイタン「ふっふっふっふっ、その手は既に打ってある」

タイタンの自信たっぷり台詞に続いて、銀行強盗に押し入っている、これだけでも誰か分かる団巌さんたちの映像に切り替わる。
金を奪い、銀行の前に停まっていた車に乗り込む強盗たちであったが、

立花「逃がさんぞ!! この銀行ギャングめ」
たまたまそこに通り掛かり、ジープで進路をふさいで無謀にも銀行強盗に立ち向かったのが、我らがおやっさんであった。
しかし、銃を持っている可能性の高い連中に、いくらおやっさんが熱血漢だからって、素手で立ち向かうなんてことをするだろうか?
これで撃ち殺されたからって、誰も褒めてはくれないよ。
もっとも、この場合、おやっさんが落命する可能性はゼロであった。
何故なら、

監督「カット、カット、なんだよっ!!」
そう、それは昔のドラマの定番中の定番、
「事件だと思ったら映画orテレビドラマの撮影だった」と言うギャグなのだった。

スタッフ「ダメじゃないか、撮影の邪魔しちゃ」
立花「撮影?」
ちなみに監督を天草四郎さん、スタッフを東隆明さんと言うように、今回、なかなか豪華な顔ぶれなのだった。
そうそう、言い忘れていたが、カザール国王は大月ウルフさん。
ま、それは良いのだが、

強盗たちの車を運転していたのが、実は茂だったと分かるのだが、現在、ブラックサタンの陰謀が進行中なのに、暢気にこんなバイトをしていて良いのだろうかと言う疑問が湧く。
しかも、撮影の野次馬たちの中にめちゃくちゃ目立つ格好をしたマリア女王が立っているのに、全然気付かないのである!!
あと、どうでもいいけど、スタッフたちが飲み物を飲む際の「いただきまーす」と言う女性の声、ユリ子の岡田さんが代わりに喋ってるようにも聞こえる。
その後、監督は、既にブラックサタンの一味になっている東っちに騙されて、ひとりで廃墟の中に踏み込んだところを待ち受けていたカメレオーンに襲われる。
それを偶然見ていたのがマリア王女であったが、

立花「おお、びっくりさせんなよ、お嬢ちゃん」
マリア「助けて、おじさん」
慌てて逃げようとしたところ、何故か廃墟の中にいたおやっさんに出くわす。
うーん、直前のシーンで、決まり悪そうにジープを発進させていたおやっさんが、まだこんなところにいるというのは、めっちゃ不自然である。
あと、このカメラ位置、もうちょっとどうにかなりませんかね?
柱の影に隠れて俳優の姿がほとんど見えないなんて、悪意があってやってるとしか思えんぞ。
それはともかく、さっきのことがあるので、おやっさんはそれも映画の撮影だと思い込み、マリアの訴えを真剣に聞いてくれない。

マリア「怪人が来る」
立花「怪人?」
マリア「来た」
マリアの言葉通り、彼らの背後にカメレオーンが立つが、
立花「はっはっはっ、なんだあれか、あれはね、撮影用の怪人なんだよ。ニセモノ」
マリア「怖い」
おやっさん、それも着ぐるみだと思い込んで……って、まあ、着ぐるみなのは間違いないんだけど、作りものだと頭から決め付け、恐れる色もなく近付くと、

立花「おい、んないたずらやめて、それを脱いで(顔を)見せてやんなよ」
と、気さくに話しかけてその肩を叩く。
でも、そう言う怪物が出てくるドラマならともかく、おやっさんが見たのは銀行強盗の出てくるアクションドラマだったのに、どう見てもブラックサタンの怪人にしか見えない相手まで着ぐるみだと思い込むというのは、なんか変じゃないか?
それはともかく、おやっさんも手の感触でやっと本物だと気付く。
ここで再び茂が邪魔に入り、カメレオーンと取っ組み合いとなるが、
茂「ここで一体何をやらかそうって言うんだい」
カメレオーン「貴様の知ったことか、城茂、貴様のために目的の途中で死んでいった仲間のカタキを討ってやるわ」
頼りない奴だと思われていたカメレオーンが、ブラックサタン随一の人情家であることを知って、思わず目頭が熱くなる管理人であった。
茂「冗談言うない、そうそうカタキを取られたんじゃ、こっちの命がいくつあっても足りねえやい」
茂も負けじと言い返すが、ここでカメレオーンに殺されれば、過去の奇械人すべてのカタキを取られたことになるので、その反論はあまり論理的ではない。
あと、過去の奇械人はあくまでストロンガーに倒されたのに、敵討ちに燃えるカメレオーンがストロンガーのことを知らず、茂のことだけ知っていたというのも、アベコベではあるまいか?
茂、ストロンガーに変身して戦うが、またしても逃げられてしまう。
気絶していた監督の体を安全なところまで運んでいると、ユリ子とおやっさんが集まってくる。
ユリ子はタックルに変身して、マリア王女を拉致しようとする戦闘員と戦っていたのだ。

ユリ子「ねえ、このお嬢ちゃん、マリア王女なんだって?」
茂「そうだ、ブラックサタンに国王と一緒に狙われたんだ」

マリア「パパが危ない」
茂(この人、ひょっとして、おっさんなのでは?) 薄っすらヒゲまで生えているように見えるマリア王女の顔を見て、ふとそんな疑惑を抱く茂であったが、嘘である。
嘘であるが、管理人がもうちょっと可愛らしい子役、それこそ前回の茂木みゆきちゃんみたいな子役を起用して欲しいと思ったのは事実である。
茂「今はまだ国王と一緒じゃ危険なんだよ、しばらくはこのおじさんと一緒に、いいね?」
立花「おお、いいとも」
茂、念のため、マリア王女はそのままおやっさんに預けることにする。
ユリ子は監督の行動をマークしていたが、ロケの一団はそのまま撮影スタジオに入ってしまい、それ以上尾行出来なくなる。
細かいことだが、その前に東っちが「場所移動です」とか言ってるのに、別の場所に行かず、スタジオに戻っちゃうと言うのも、なんか変である。

それはともかく、撮影所の現像室(?)に戻った監督は、見覚えのないフィルム缶があるのに気付き、中にあったフィルムをその場でフィルムリーダーにかけてみる。

だが、それはタイタンの仕掛けた罠で、フィルムの中からタイタンの巨大な一つ目が監督を睨んで催眠状態に陥れ、

棚にあった別のフィルム缶を手に取り、開けさせる。
中にはカメレオーンが変身したと思われる、小さなカメレオンが入っていた。

続いてフィルムの中からタイタンが実体化し、監督の唇を奪おうとする……じゃなくて、その体に抱きついてサタン虫(カメレオーン?)を耳の中に入れる。

監督がぐったりしたところでドアが開いてストロンガーが現れるのだが、このシーン、はっきり言って訳が分かりませんっ!!
いや、訳がわからないことはないのだが、タイタンのすることが回りくど過ぎて、頭が混乱してしまうのである。
あらかじめカメレオーンがフィルム缶の中に忍び込んでいたのなら、何もタイタン様自らそんな七面倒臭いことをせずとも、カメレオーンが自分でフィルム缶から出て監督に乗り移れば良いだけのことではないか。
それに、もし監督がそのフィルム缶に気付いてくれなかったら、一体どうするつもりだったのか?
また、ヒーローサイドも、監督を見張っていたのはユリ子なのに、一足飛びにストロンガーが駆けつけるという分かりにくいことをしているので、混乱に拍車が掛かっているのである。

スロトンガー、廊下に出たタイタンを追いかけ、
ライダー「待て、タイタン、あの監督を狙う目的はなんだ?」
タイタン「さあ、なにかな」
ライダー「タイタン、どうしてもお前の口から聞きだすぞ」
ストロンガー、果敢にタイタンに飛び掛かるが、タイタン、悠々ストロンガーの攻撃をいなすと、得意の火炎攻撃で相手を怯ませ、その隙に姿を消す。
ライダー「恐るべき相手だ、さすがブラックサタンの大幹部……」
次のシーンでは、監督は既に撮影所を出て、他のスタッフたちと屋外での撮影を行っている。
(註・レビューとは全く関係ないが、これを書いている1月7日現在、窓の外は大雪である)
これも、ストロンガーが監督の体を調べずに好き勝手に行動させているように見えて、若干の違和感がある。
ユリ子、大胆にも彼らに近付き、

ユリ子「監督さん、俳優さんはどうしたの?」
監督「そんなものは要らんさ」
ユリ子「だってそれじゃ撮影にならないじゃないの」
監督「俳優は君さ」
ユリ子「あたし? あたし、そんな柄じゃないモン」
監督「いやいや君のアクションはまんざらでもない。特に電波人間タックルはな」
ユリ子「どうしてそんなことを知ってるの?」
監督「ふふふ、奇械人ならな」
監督、自らその正体を明かし、カメレオーンの姿に変わる。
ま、それは良いのだが、カメレオーンおよびピカチュウ戦闘員たちを前にして、
ユリ子「そうか、あんたたちもブラックサタンね?」 と言うユリ子の台詞が、物凄く間が抜けて聞こえる。
せめてスタッフたちが変身する前に言わせて欲しかった。
ユリ子がピカチュウたちと遊んでる間に、東っちがロケバスのトランクからフィルム缶を取り出してカメレオーンに渡す。カメレオーンは再び監督の姿になると、東っちの運転する車で何処かへ向かう。
そこへバイクを飛ばして茂がやってくるのだが、これも、ストロンガーと(カメレオーンに憑依された)監督は、同じ撮影スタジオにいたのに、ストロンガーより全然早く監督がこの場所まで移動しているのが、なんか変な感じがする。

それはともかく、橋の上で戦闘員と戦っているタックルの赤い見せパンをとりあえず貼っておく管理人であった。
何故なら管理人は、
女性のお尻が大好きだからである!! 監督が向かったのは、カザール国王の泊まっているホテルであった。
無論、警戒は恐ろしく厳重で、ホテルの中に入ることさえ難しそうであった。

監督「実はこのフィルムに行方不明のマリア王女らしい少女が……」
警官「そうですか、早速国王に!!」
監督はあえて中に入ろうとはせず、そう言ってフィルム缶だけ渡して引き揚げる。
それもすべてタイタンの読みどおりであった。
んで、ホテル内の映写室で、国王立会いの下にそのフィルムを見ることになるのだが、

案の定、フィルムに映っていたのはマリア王女などではなく、アジトの中に立つカメレオーンであった。
カザール「おう、これはっ」
カメレオーン「カザール国王、命は貰うぞ」
しかもフィルムの中のカメレオーンはそう言いながらこちらに向かって歩き出し、

実体化して、フィルムの中から飛び出してしまう。
……
そう、何気に「リング」の貞子の元ネタはこれだったのである!!
まぁ、元ネタかどうかは知らないが、当時としてはかなり斬新な演出であることは間違いない。
ただ、ひとつ、大きな問題がある。
カメレオーンは監督の体内にいて、ホテルから締め出された筈なのに、どうやってフィルムの中に入り込むことが出来たのか、と言う点である。
仮にそんな瞬間移動のような能力があれば、そんな面倒なことをせずに直接ホテル内に忍び込めば良いではないか。
あと、おやっさんも、仮にも王女を預かってるんだから、大使館に電話の一本も入れとけよ。王女と一緒にいるところを警察に見付かったら、誘拐犯どころか、下手すりゃテロリストに間違われるぞ。
しかも、現在のおやっさんって、正真正銘の「住所不定無職」だからね。
この後、例によってストロンガーが駆けつけ、別のビルの屋上でラス殺陣となるが、正攻法では勝てないと見たカメレオーン、口から液体を放ってストロンガーの目を潰す。

カメレオーン「どうした、ストロンガー、こっちだーっ!! あーらよっと……おいで、ストロンガーこっちだよ、おいでおいで、こっちよ、こっち」
ライダー「とおっ」
ここでカメレオーンが急に優しい猫撫で声になって、「鬼さんこちら、手の鳴るほうへ」的なことを言ってストロンガーを屋上の縁に誘導するのが、「仮面ライダー」ではちょっと珍しいシーンとなっている。

で、当時の特撮の凄いところは、実際にスーツアクターにその縁を歩かせ、あまつさえ、足を踏み外させたりすることである。
ま、その腕をスタッフがしっかり掴んでるんだろうけどね。
だが、そんなセコイ方法でライダーに勝てる筈がなく、カメレオーン、視力を取り戻したスロトンガーに電キックを食らい、あえなく爆死する。
一言で言ってカメレオーン、取りとめのない能力の持ち主であった。
つまり、擬態やフィルムからの実体化、目潰し攻撃や電ノコ攻撃など、それなりに多彩ではあるんだが、どれもこれも決め手に欠けるんだよね。
剛性も、電キックを食らってピンピンしていた前回のハゲタカンより明らかに劣ってるし。
こうして事件は解決するが、早くも、奇械人ではストロンガーに歯が立ちましぇんと弱音を吐くタイタンに対し、

首領「心配するな、タイタン、仮面ライダーストロンガーに必ず勝てるブラックサタン最強の奇械人を作りつつある、その完成の日は間近いのだ」
タイタン「ブラックサタン、最強の奇械人?」
首領「そうだ、タイタン、その時を待て、ブラックサタン勝利の時を」
自信たっぷりに切り札があることを告げる首領であった。
以上、映画の撮影隊をストーリーに絡ませるアイディアは面白いが、それが十分に物語に生かされているとは言いがたい、惜しい作品であった。
とにかく、出てくるのがむさいおっさん俳優たちと、おっさんみたいな女の子だけなので、見ていてちっとも楽しくないのである。
特撮で映画の撮影と言ったら、ミニスカの美人女優に決まってるでしょおおおっ?
ところで、今回は女っ気がなく、ユリ子の出番も少ないので、よほどスルーしようかと思ったのだが、いやぁ、やってみるもんですな、

本編にはなかったけど、予告編のアクションシーンにあったんですよ、タックルのパンチラが!!
しかも、普通は赤い見せパンなのに、ここでは何故か白い本気パンツっぽいのも嬉しい。
また、映像を見る限り、スタントではなく岡田さん本人である可能性が高く、その点でも極めて価値の高いチラだと言えるだろう。
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