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「妖しい傷あとの美女」~江戸川乱歩の「陰獣」(画像増補版) その3


 続きです。

 ここで舞台は、美女シリーズのメッカといわれている伊東に移る。

 静子が、最近小山田が買ったばかりだという伊東の別荘へ静養へ行き、明智も、そのボディーガードとして同行することになったのである。

 
 タイアップの法則にのっとり、道々、伊東市のことをこれでもかとばかりに褒めつつ、瀟洒な別荘の前に明智の愛車ルーチェで到着。

 静子はお酒の用意をしながら、思い出したように、

 
 静子「そう言えば、平田は学生時代からいかがわしいポルノ小説を書いてると言う噂でした。雑誌に投稿したりして……」
 明智「学生の頃の平田を知っているんですか?」
 静子「高校時代、うちの近くに下宿していたんです。そして、ある日……」
 明智「ある日?」

 明智の追及に、静子は切なそうに目を反らす。

 ここで回想シーンとなり、

 
 花も恥じらうセーラー服コスプレをした佳那晃子さんが、線路沿いの道を自転車で走っていると、目の前にいきなり若き日の平田が現れる。

 静子「いやっ、いやっ!」
 
 平田は嫌がる静子を無理矢理を茂みに引きずり込む。

 
 静子「いやっ……あああーっ!!」

 平田にのしかかられた静子のスカートがまくりあげられ、白い脚と下着が剥き出しになる。

 
 静子「人が通り掛かり、警官が呼ばれ、平田は捕まりました。でも、じきに釈放されて出てくると、今度はあからさまに私に付きまとうようになりました。自分がレイプした女だと、かえって自慢げに言い触らして……私は学校を辞めるしかなくなりました。気持ちも捨て鉢になってしまって、平田から逃げたい一心で、請われるままに小山田の後妻として嫁いだんです」
 明智「本当の愛情からではなかったんですね」

 静子の衝撃的な告白を、神妙な顔で拝聴している明智さん。

 しかし、レイプした方じゃなく、レイプされたほうが肩身の狭い思いをするって、ほんと、理不尽な話である。

 静子「もう御存知ですわね。小山田がどんな性癖の持ち主だったか……」

 
 静子は、生前の小山田にSM愛好者達の集まりに連れて行かれたときの様子も告白する。

 で、この愛好家のプレイシーンだが、これがまた、今では絶対ゴールデンタイムに流せないような過激なもので、

 
 たとえば、ナチス風の制服を着た女が、三角木馬にまたがっているおっぱい丸出しの女をムチ打ったり、

 
 全裸の後藤由美子が、おっぱいを捻られながらロウを垂らされたり……

 
 静子「小山田が秘書として雇った由美子さんに初めて会ったのもそのパーティーでした。そして……」

 最悪なことに、そこには、鞭打たれて恍惚の表情を浮かべている平田までいたのだ。

 静子「何年ぶりかの、思い出すのも忌まわしいような再会でした。平田は再び私につきまとうようになり、体の関係を迫り、拒絶すれば高校時代のレイプ事件を主人に告げ、世の中に言い触らすと言うんです」

 静子は、怒りのあまり、喫茶店で平田にコーヒーをぶちまけてしまい、それ以来、平田は姿を見せなくなったと言う。

 
 静子「私は結局あれで良かったんだと、ホッとしていたんです」
 明智「ところが平田は諦めてはいなかった。いや、むしろ、あなたへの憎しみを滾らせていた……と言うことでしょうか」
 静子「恐ろしいわ、全ては私への復讐なんです……」

 平田が数々の殺人を行っている様子が静子の脳裏にフラッシュバックする。

 明智は平田の幻影に怯える静子を、誰も知らないこの場所へ平田が来る訳がないと安心させる。

 その頃、東京の明智事務所を、編集者の本田が訪れていた。

 大江から、また新たな原稿が送り届けられてきたと言うので、わざわざ持って来てくれたのだが、文代も小林も、明智の行き先を知らされていなかった。

 本田「犯人が小山田静子を殺害するというクライマックスシーンなんです」
 小林「今度はどんな方法で殺しを?」
 本田「高い崖から突き落とすんです」

 
 肝心のその場所については明記されておらず、添えられていた挿絵だけが唯一の手掛かりだった。

 文代「海、別荘のような建物……でも、手掛かりがこれだけじゃ……」

 文代は知る由もなかったが、その外観は、正に明智たちがいま滞在している伊東の別荘そっくりなのだった。

 そればかりか、闇のとばりが降りつつある別荘の周囲を、大江こと平田一郎が徘徊していた。

 なお、このドラマの欠点は、肝心の殺害方法が、どれも「殺人の美学」とは程遠い、トリックとも呼べないような即物的で荒っぽいものが多いことである。

 原作では、別に小説の筋書き通りに殺人が起きるわけではなく、犯行の手口や犯人の行動が、大江の発表した小説に類似していると言うだけなんだけどね。

 平田が屋敷の庭に潜んでいるとは知らない二人、カウンターに腰掛け、酒とタバコを楽しみながら、アダルトな雰囲気に浸っていた。

 
 静子「先生を好きになってはダメ? 展覧会で初めてお会いした時のこと、覚えてらっしゃる?」
 明智「ええ、覚えていますとも。あなたは私に声をかけようとしながら、それを躊躇って」
 静子「主人に叱られるからって言ったのは嘘……先生に声をお掛けしたら、その瞬間から、私の運命の糸がもつれ始めるような予感がして、それで……でも、その予感が本当になりそうだわ。もうどうなっても構わない、こうして先生のお側にさえいられたら……」

 吐息が耳元に感じられるような熱っぽい口調で、あけすけに明智への愛を語ると、お酒をがぶ飲みする静子タン。

 静子「今までの私の人生に何があったかしら? 暗くつらいことばかりで……もぉいやっ! あたし、そんな人生はもういやっ!」

 酒の勢いもあろうが、不意に、抑えていた感情を爆発させる。

 そして明智の顔を食い入るように見詰めながら、

 
 静子「人生でいっぺんぐらい、好きな人を好きだって言ったって良いでしょ?」

 涙ながらに、美女シリーズ中でもひときわ印象に残る名台詞を放つ。

 
 平田「……」

 だが、そんな二人の様子は、音もなく屋敷に入り込んだ平田によってばっちり見られていた。

 
 明智「静子さん……」
 静子「私みたいな女が先生なんかに……おかしいでしょ、お笑いだわ! 心の中だけにしまっておこうと思ってたのに、うっふふ、ダメねえ」

 明智の側を離れ、自らを嘲るようにつぶやく静子。

 いつもなら、危険を察してとっとと逃げ出すところだが、遂に童貞を捨てる決心がついたのか、明智は自分も立ち上がると、静子を追いかける。

 
 明智「静子さん」
 静子「あたし、先生が! お願いです、あたしを抱いて下さい! これっきりでいいから……先生」

 そして、赤裸々に自分への思いを打ち明け、むしゃぶりついてくる静子を拒むことなくしっかり抱き寄せると、

 
 ぶっちゅう~っと音が聞こえてきそうなほど熱烈な、それでいてねちっこい大人の接吻を交わす!!

 明智さんの極めて珍しいキスシーンだが、正直、明智がそこまで静子のことを思っている素振りは見えなかったので、ここでの明智の態度がいささか不自然にも感じられるし、夫を亡くしたばかりの女性と情事に落ちるなど明智さんのモラルに反するような気もするのだが、元々、原作では、主人公(語り手である推理作家)が静子と深い仲になると言う設定なので、それがドラマの演出にも反映されているのだろう。

 が、偶然か故意にか、この時、覗き見していた平田が物音を立ててしまったので、明智はラブシーンを中断してそちらに注意を向けるが、

 
 静子「いやよ、いや、気のせいだわ、先生!!」

 静子は子供のように明智の体にしがみつき、「続き」を所望するが、明智は、なんとか理性の手綱を取り戻して……と言うより、憑き物が落ちたように、

 明智「静子さん、今夜はあなたもお疲れになっているようだ。もうお休みになってください」

 と、いかにも童貞らしい逃げ口上を並べる。

 静子「せんせえ……」
 明智「そうなさってください。私はそのソファにでも横になりますから」

 静子は女としてのプライドを傷付けられたような顔になり、「死ぬまで童貞やってろ!!」と、捨て台詞を吐いて部屋を飛び出すのだったが、嘘である。

 明智(ふーっ、危なかったぜぃ)

 ぎりぎりで純潔を守り通した明智さんだが、その顔はなんとなく残念そうでもあった。

 それにしても、誰も知らない別荘で二人きりと言う美味しい状況下、大金持ちの未亡人に「抱いて」と迫られながら、それを断固突っ撥ねるとは、まさに鋼の童貞と呼ぶにふさわしい超人的な自制心であった。

 明智は自分で言ったようにソファで夜を明かす。

 翌朝、小鳥のさえずりで目を覚ますと、空は爽やかに澄み渡っていた。

 二階に上がり、静子の寝室をノックするが、返事がない。入ってみると、ベッドはもぬけの殻だった。

 その頃、文代と小林少年は、本田と一緒に車で別荘へ向かっていた。明智がテレフォン喫茶で本田に見せていた小型発信機の電波を頼りにやって来たのだ。

 
 一方、明智、静子を探して別荘の周囲を歩いていると、猛スピードで向かってくる車があり、明智の横を通り過ぎた後、ドアが開いて静子が助手席から飛び降りるのが見えた。

 明智、急いで駆け寄って静子の体を抱き起こすが、話をする間もなく、Uターンした車が再び突っ込んでくる。

 
 手をつないで逃げる二人。

 崖の上の台地までやってくるが、車は執拗に二人を追い掛け回す。

 運転席には、紛れもない平田の姿があった。

 明智、果敢に運転席側の窓に取り付き、なんとかドアを開けて運転席に乗り移るが、

 
 次の瞬間、車は二人を乗せたまま、崖から真っ逆さまに転落する。

 
 車はお腹を仰向けた状態で岩礁に激突し、派手な爆発を起こす。

 崖の上まで濛々と黒煙が上がる中、文代たちの車が到着する。

 
 文代「静子さん!!」
 小林「先生は?」
 静子「……」
 文代「先生ーっ!!」
 小林「先生ーっ!!」

 二人の悲痛な叫びが空しく海に響く。

 静子はただ涙に暮れていた。

 続いて、輪転機の映像に、

 
 「明智小五郎氏、また死亡!!」 

 「何回死ねば気が済むのか?」

 「たいがいにしろ」

 などのセンセーショナルな見出しが重なる定番の演出となるが、嘘である。

 ま、記者たちが内心似たようなことを思っていたのは、多分ほんとである。

 
 今回は、お寺で盛大な葬式が営まれる。

 忙しい中、偽の葬式に借り出される参列者たちもいい迷惑だ。

 無論、明智はほんとは生きているのだが、この葬儀の費用、一体誰が負担するんだろう?

 空読経させられている坊さんの横に、遺族然とした顔で波越警部たちが座っている。

 
 波越「僕はね、こんな葬式みたいことやるのは反対なんだ。明智小五郎ともある男が死ぬ訳はないんだ。いまだに死体だって上がっちゃいないんだから。今にも笑いながら、よう警部、と出てくる気がしてならないんだ」
 小林「そりゃ僕たちだって気持ちは同じです。でももうあれから半月になるじゃないですか」
 文代「本当に亡くなっていらっしゃるなら、ちゃんとお葬式を挙げて上げなければ……」
 波越「悔しいんだよ、俺は、薄汚いエロ作家の道連れで死んじまうなんて理不尽だよ!!」

 なんだ、その言い草は?

 全国のエロ作家の皆さんに失礼じゃないか!!

 しかし、この数ヵ月後に、ほんとに天知茂先生の葬式が執り行われることになると、この場の誰が想像し得ただろうか?

 参列者の中には、当然、静子の姿もあった。

 焼香の後、心の中で遺影に語り掛ける。

 
 静子(先生、私です。私、先生のことは決して忘れません……いつまでだって)

 ……

 かつて、これほど図々しい、[真犯人]から被害者に送る言葉があっただろうか? いや、ない!!

 その4へ続く。
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コメント

またかよ?

明智先生が死ぬわけないのに、このフラグはワザとらしいですね😖静子の白々しい台詞も空虚そのものですね😅

DVDで後から観たので

>この数ヵ月後に、ほんとに天知茂先生の葬式が執り行われることになる
カウントダウン(波越警部の頭髪共々に)を感じましたよ。

Re: またかよ?

天知先生が亡くなった時も、そうだと良かったんですけどね。

Re: DVDで後から観たので

24・25と出来が良かっただけに、急逝が残念です。

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Author:zura1980
70~80年代の特撮、80年代のドラマを中心に紹介しています。

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