第48話「海賊ブーバ愛の嵐」(1986年1月8日)
のっけから、

剣竜の背中のようにギザギサした岩がちの細い尾根の上で、二人の戦士が対峙している。

一方はスーパーギルーク(住所不定無職)、

片方は、元部下のブーバであった。
特に結構高い場所に立って見得を切っているブーバのビジュアルは絶品で、今更ながら出渕デザインの素晴らしさに感嘆を禁じえない管理人であった。

しかもそれを、澄み切った青空に浮かぶ「有明の月」が、あたかも星王バズーの目のように冷たく見下ろしているというのが、鳥肌が立つほどに鮮烈なショットとなっている。

で、彼らの周りに聳える連峰の山肌に、早くも積もった雪が白い筋となっていて、これがまた実に良い「景色」となっているのである。
しばし睨み合っていた両雄、

それぞれの武器から同時にビームを放ち、

相手の足元で爆発させる。
ま、肝心の爆発がしょっぱいのは、場所が場所だけに仕方あるまい。
だが、客観的に見て、副官だったブーバが、以前よりパワーアップしたギルークに勝てる筈もなく、たちまち劣勢に追い込まれる。
ギルーク「ブーバ、貴様をお稚児さんにしてやる」
ブーバ「なにぃっ!!」
じゃなくて、
ギルーク「ブーバ、貴様を宇宙獣士にしてやる」
ブーバ「なにぃっ!!」
さらにギルーク、ブーバを宇宙獣士に改造すると言う、とんでもないことを口走る。

アハメス「バズー様、スーパーギルークのあのような所業をお許しになるのですか?」
部下思いのアハメス様は身を捩じらせてバズーに訴えるが、

バズー「チェンジマンさえ倒せれば、ブーバだろうと、お前たちだろうと、宇宙獣士にされても一向に構わぬわ!!」
冷酷非情なバズーはそう言ってアハメス様を突き放す。
連戦連敗のバズー、チェンジマン憎さのあまり、もはや地球侵略と言う当初の目的すら見失っているようであった。
しかし、いくら悪人でもこんな上司の下で働きたくはないだろうなぁ。
何度も繰り返し言ってきたが、誇り高きアハメス様ともあろうお方が、こんな腐れ外道の頤使に甘んじているのが不思議でしょうがなく、是非早い段階でバズーに叛旗を翻して自らゴズマの頂点に立って欲しかったところである。
それはそれとして、アハメスだってギルークと同じくらいのパワーを持っているのだから、バズーに縋らずに自分でブーバを助けに行けばいいのに……
で、ちょっと笑えるのが、ここで、
ナレ「ブーバが強力な宇宙獣士になる……その情報をキャッチしたドラゴンは現場へ急いだ」 と言う、なんとなく、川口浩探検隊を髣髴とさせるナレーションで、ドラゴンが単身バイクを走らせているシーンとなることだ。
いや、どうやってそんな情報をキャッチしたんだよ!!
予告編でもチェックしたのか?
この場合は、普通に、「ブーバとギルークが山上で戦っているという情報をキャッチしたドラゴンは……」で、良かったと思う。

ギルーク「ブーバ、お前はいまだにチェンジマンを倒せん。だからワシの力でチェンジマンを倒せるような宇宙獣士にしてやろうというのだ」
ブーバ「黙れ!! 俺はチェンジマンに負けん、宇宙獣士
なんぞにされてたまるかーっ!!」
おっと、ブーバさん、その発言は、ゴズマのために毎週頑張って戦っておられる宇宙獣士の皆さんに失礼ですよ~!!
つーか、宇宙獣士って、別にゴズマによって改造された怪人じゃなく、各惑星に住む宇宙人がそのままの姿・能力で戦う戦士の総称だと思っていたのだが……そうじゃないの?
今初めて知ったが、Wikiによると(バズーによって?)宇宙人と宇宙生物が合成されたものらしい。
ま、中にはどう見ても宇宙人そのままの姿をした奴もいるので、一概には言えないのではないか。
たとえば、シーマの乳母ウーバは、外見はどう見ても宇宙獣士だが、彼女はゴズマの侵略を受ける前からシーマに仕えていたのだから、ゴズマ謹製の合成生物である筈がない。

ブーバ「うわあああああーっ!!」
それはともかく、ギルークのビームを受けたブーバの手足が、たちまち醜く膨れ上がって怪物のようになる。

ギルーク「うぇーっへっへっ!! あーっはっはっはっ」
見ろよ、この嬉しそうな顔……
まさに悪役を演じるために生まれて来たような役者である。
ドラゴン「宇宙獣士など作られてたまるか!!」
と、そこへ駆けつけたのがドラゴンで、ブーバを助けるためでなく、強敵を作らせないと言う名目で、ギルークの邪魔をする。
ドラゴンとギルークは真っ向からぶつかって相討ちとなり、山には再び静けさが舞い戻る。
ズタボロになりながら立ち上がった剣の前で、同じくズタボロになったブーバが倒れるが、

そこへ飛び込んで来たのが、甲冑をまとい矛を構えた爬虫類タイプの宇宙獣士ブブカであった。
ついで、上空に見慣れぬ宇宙船が飛んでくると、転送ビームでブーバとブブカを回収する。
宇宙船はそのまま山裾の向こうへ消える。
夢と現の境を彷徨っていたブーバだが、

ブーバ「あの旗は?」
闇の中に翻る、赤地に白で髑髏のような文様を染め抜いた旗をぼんやり見ている自分に気付き、漸く意識を取り戻す。

ブーバ「夢だったのか……おっ、宇宙海賊ブーバの旗!!」
だが、ブーバのいる部屋の壁には、夢ではなく、本物の旗が飾られていた。
ブーバ「何故こんなところに?」
おぼつかない足取りで旗に近付こうとすると、目の前の床に、フェンシングで使うエペのような形の剣が突き刺さる。
ガルト(鍔)が真っ赤に塗られていて、いかにも女持ちの武器であることを思わせ、

剣につかつかと歩み寄った女性剣士の面貌に、管理人の期待は弥が上にも高まるが、

剣を引き抜いたその顔は……
えーっとぉ、なんて言うか……
ま、所詮、人生なんてこんなもんである。
しかし、仮にも宇宙海賊なんだから、もうちょっと目力のある女優さんを選んで欲しかった。

ブーバ「ジール、女海賊ジール!!」
ジール「ブーバ、逢えて嬉しいわ、ずっとあなたを探していたの」
当然と言うべきか、彼女はブーバとは旧知の間柄であった。
ブーバ「この旗は?」
ジール「この旗はね、あなたが星王バズーに敗れた時、打ち捨てられていたのを私が拾ったの……いつかあなたに渡そうと思ってね」
ジールの言葉を聞いて、ブーバの瞳にはありありと、かつて独立不羈の宇宙海賊としてジールやブブカたちと一緒に自由気ままに大宇宙を駆け巡り、殺戮や略奪を働いていた頃の自分の姿が描かれる。
ちなみに、彼らの乗る宇宙船に、29話に出て来た宇宙海賊ギガラもちゃんといるのが芸が細かい。
なお、ギガラにしてもブブカにしても、昔と今とで姿が変わらず、なおかつブーバがバズーに屈服する前からの仲間だったのだから、彼らもゴズマに改造された宇宙獣士と言うのとは違うだろう。
しかし、ギガラがジールのことも知っていたとすれば、29話で再会した時、ブーバがジールの消息を聞かなかったのはおかしいよね。

ジール「ブーマ、また二人で暴れましょうよ、私はその日が来るのを信じてあなたを探し続けていたの……またあの旗を」
相棒でもあり、また恋人同士でもあったのだろう、ジールはブーバの肩に手を置いて、ブーバを誘うが、ブーバはその手を身震いするように振り払うと、

ブーバ「今の俺は大星団ゴズマの副官ブーバ」
ジール「でも心まではゴズマではない、心は宇宙海賊ブーバ」
ブーバ「言うな、お前には分からんのだ、バズー様の恐ろしさが!! チェンジマンを倒さねば自由にはなれん!!」
ジール「……」
ブーバ、長年の宮仕えのせいで、自由や誇りより自分の命を大切にするフニャチン野郎に成り下がっていた。
ちなみに「ジール」とは、英語で「熱意」の意味であり、彼女にはぴったりのネーミングと言えるだろう。
それでもブーバ、チェンジマンを自らの手で倒して自由を勝ち取ろうと、宇宙船から電撃隊本部に通信し、剣に挑戦状を叩きつける。
もっとも、ブーバがチェンジマンを倒したからって、バズーがブーバを自由の身にしてくれるとは限らないんだけどね。むしろ、ゴズマ最強の戦士として、今まで以上にバズーに扱き使われることになるのではないかと思う。
それはともかく、ブーバと同じく熱血バカの剣は、怪我をおしてひとりでその挑戦に応じる。
それを黙って行かせてしまう伊吹っちも伊吹っちだが、本気で止めようとしない疾風たちも疾風たちである。
だが、戦場で剣を待っていたのはブーバではなく、ジールであった。
剣「一体お前は?」
ジール「えいっ、えいっ!!」
問答無用で斬りかかるジールの攻撃をひたすらかわす剣。

ジール、仲間のブブカとも連携して剣を攻め立てるが、誤ってブブカの投げた矛が胸に当たってしまい、崖から転落する。
あるいは、ブブカ、この時点で既にギルークの手先になっていたのかもしれない。
と、そこへ剣の仲間も変身済みの姿で加勢に駆けつける。
剣はブブカの相手を4人に任せると、自分も崖を飛び降りてジールのそばへ行く。

剣「何者なんだ、お前は?」
ジール「女海賊ジール、残念だわ、ブーバに代わってお前を倒せなくて」
剣「なんだとぉ? ブーバ、ブーバは何処だ?」
そのブーバさん、何処で何をしているのかと思ったら、

女に戦わせて、自分は宇宙船の床に大の字に寝っ転がっておられましたぁあああ!!
ダミだこりゃ。
いくらギルークの攻撃でダメージを負ったとは言え、今回のブーバさん、あまりに男気が足りません。
なお、ジールが4人と戦っているブブカに「もうおやめ」と言うと、素直に矛を収めているので、一応、まだジールの仲間ではあるらしい。

ジール「私はゴズマなんかに支配されないでブーバと一緒に宇宙の果てまで暴れ回りたかった。でも、何もかも今は儚い夢……」
かなりの重傷なのか、そう言うと、ジールは力なく斜面を転がり落ちていく。

剣「ジール!!」
ジール「私をブーバのところまで運んで……もう戦いのない世界でブーバと二人で暮らしたい……ゴズマから逃げ切れるかどうか分からないけど、ブーバと一緒になれるなら命を懸けても惜しくない」
苦しい息の下から、ブーバ顔負けの勇気と根性を覗かせるジールを、剣やいつの間にか変身を説いた疾風たちが厳粛な面持ちで見詰めている。
CM後、5人はジールを連れて彼女の宇宙船へ向かっていたが、なんとか宇宙船から這い出て来たブーバが、それを見ててっきりジールが剣たちにやられたものと思い込み、いきなり斬りかかってくる。

剣「バカヤローッ!!」
剣、素手でブーバの大剣を受け止めると、怒りを込めてブーバの顔をぶん殴る。
どうでもいいが、今回の剣、強過ぎないか?
スーパーギルークと互角の戦いを見せるわ、生身の体でブーバを圧倒するわ、これではますます他の4人の存在感が薄れてしまうではないか。

剣「ジールは、動けないお前の代わりに戦おうとしたんだ!!」
ブーバ「なにっ、出過ぎた真似を~!!」
ジール「ブーバぁ……」
いや、さっきまでお腹出して寝てた奴に「出過ぎた真似」とか言われてもねえ。
つと、さやかがジールのそばへ行き、

さやか「ジールはあなたのことが好きなんです!! 好きなあなたと宇宙へ戻って静かに暮らしたいと願っているのよ!!」
ジールの気持ちを代弁して、久しぶりの長台詞を放つ。
その綺麗なお顔もだけど、敵に対してさえ敬語を使う、その育ち&性格の良さがうかがえて、もう堪らんのです!!
あと、さやかの台詞を切り取って、「あなたのことが好きなんです!!」と、自分に告白させるのも、「通」の間では流行ってるそうですよね。
ブーバ、ジールの真心を知ってほろりとするが、そこへいぢわるくあらわれたのがスーパーギルーク(住所不定無職)であった。

ギルーク「誰が逃がすものか、ブーバ、やはりお前は宇宙獣士にしなければ駄目だ」
ブーバ「黙れえ、スーパーギルーク!! たとえぶざまな姿を晒そうと心は宇宙海賊、貴様さえも俺の海賊魂は奪えなかったことを見せてやる!!」
勢いだけで、あんまり中身のないタンカを切って遮二無二突っ込むブーバであったが、「海賊」って要するに移動式の強盗殺人犯だかんな。
そんな魂を堂々と自慢されても困っちゃうのである。

ジール「ブーバ、行かないで!!」
……
そうじゃ、ジールにかこつけて、さやかタンの画像が貼りたかったんじゃ。
だが、ブーバ一世一代の突進も、空気を読まず追いすがるジールに邪魔されてあえなく頓挫。
ギルークに飛び掛かろうとした5人を、ギルークの後方からブブカが攻撃する。

ブーバ「ブブカ、貴様ぁああっ!!」
ギルーク「ブブカはもうお前ごときの言うことは聞かんのだ」
いつの間にか、ギルークに寝返ってしまっていたブブカ。
しかし、今までずーっとブーバやジールと行動を共にして来たというのに、ここへきて裏切るというのは、それこそ宇宙海賊らしからぬ振る舞いではないか。
ま、ブーバの体たらくを見れば、見限りたくなったとしても不思議はないが、それにしては今までジールに忠誠(?)を尽くして来たことと矛盾するような気がする。
よって、ブブカは自ら寝返ったのではなく、ギルークの能力で操られているのだと考えたいところである。
この後、ごちゃごちゃ色々とあるが、今回もさやかたちはアクションしてくれず、当然、チラもなし。
ちくしょう。
パンチラのない「チェンジマン」なんて、カレーの入っていない「カレーうどん」と同じである。
混戦の中、ブーバとジールは宇宙船に乗ってトンズラを図るが、ギルークは中年特有のしつこさで宇宙船の中まで追いかけてきて、是が非でもブーバを宇宙獣士にしようとする。
半身半獣の怪物のような姿になるブーバであったが、トドメの一撃をジールがその体で受け止め、ぎりぎりのところでブーバを人間の世界に繋ぎ止める。
が、ギルークとジールの放ったエネルギー波の衝撃で宇宙船が故障して墜落し、ジールは瀕死の重傷を負ってしまう。
ここからブブカを相手にしたラス殺陣となるが、その途中、宇宙船の残骸が飛んできてブブカを押し潰す。
宇宙船を持ち上げたのは、あの旗を体にまとい、不屈の闘志で立ち上がったブーバであった。

ブーバ「俺はジールに誓った、この旗をまたいつか宇宙に翻してやるとな!! 俺はやっぱり骨の髄まで宇宙海賊よーっ!!」
ブーバ、右手に大剣を生成させると、チェンジマンそっちのけで平たい岩山の上に飛び上がり、遺恨重なるギルークと雌雄を決しようとする。
ジールへの思いを胸に秘め、いつになく気合の入ったブーバであったが、不粋なバズーの一喝で邪魔され、あえなく不発に終わる。
この後、チェンジマンがブブカを倒し、事件は一応落着する。

戦いのあと、ブーバはジールの遺体にあの旗をかけてやり、お姫様抱っこして歩き出す。
夕陽の向こうに消えていくその後ろ姿を、どうにもやりきれない気持ちで見送る5人。

さやか「ジールの夢を叶えてあげたかったのに……」
剣「ゴズマの掟にはブーバほどの男でも逆らえなかった。悲しい男だな、宇宙海賊ブーバ」
今回も出番は少ないが、前回に比べれば多少台詞があるさやかタン。
麻衣(台詞欲しい……) そして、二週連続でほぼ台詞も出番もなかった麻衣さんでしたー。
「チェンジマン」の終盤、全体的に湿っぽい話が多くなることもだが、敵キャラのドラマにスポットが当てられ過ぎて、肝心の主人公たちの影がすっかり薄くなってしまうのが非常に残念なのである。
この誰得の終盤のせいで、作品全体の評価も落ちているような気がするほどである。
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