第9話「涙の河を振り返れ」(1977年3月30日)
冒頭、鉄橋の近くの川原にある貸しボート小屋。
そこでバイトをしているオサム少年がボートを磨いていると、初老のサラリーマン風の男性があらわれ、オサムに話し掛けようとするが、力尽きたようにその場に倒れ込んでしまう。
オサムが水を持って来ようとするが、男はそれどころじゃないとばかりにオサムの服を掴み、小さな女の子の映った写真を取り出して見せる。
中根「君はこういう子を知らんかね」
オサム「ああ、この子なら……」
男は、言いかけたオサムの襟首を掴むと、何かに憑かれたような目で揺さぶり、
中根「わしゃこの子を丸三日も探してるんだ、君、教えてくれ」
オサム「苦しいよ、おじさん、なんなの?」
中根「家出したわしの娘なんだ、君、お願いだ、教えてくれ、ね、早く教えとくれ、YO!!」
オサム(ラッパーか?) じゃなくて、
オサム「その子なら、ほら、あのボートの上に……」
オサムが苦しそうな顔で川面を指差すと、

川の真ん中で、その女の子がひとりでボートを漕いでいた。
この後のショックシーンに隠れて見過ごしがちだが、冷静に考えたら、これって変だよね。
こんな小さな子供がひとりでボートに乗る筈がないし、ボート小屋だって貸したりはしないだろう。

中根「あの子だ……おーい」
ともあれ、男は大声で呼びかけながら、ボートに向かって走り出すが、

その呼びかけが終わらないうちに、ボートが大爆発を起こす!!
これ、オサム少年が爆発の威力に演技抜きで驚いているのが、その竦み方から伝わってきて、見てるほうもドキッとするような迫真性を生み出している。
しかし、子供が視聴者の目の前で爆死するなんて、今の特撮は勿論、普通のドラマでも無理な描写だろうなぁ。
サブタイトル表示後、目撃者と言うことで、オサム少年が警察で東条から事情を聞かれている。
オサム「知らないったら、知らないよ」
東条「嘘じゃなさそうだな」
オサム「一体あのおじさんが何をしたの」
東条「それが分からん。ただ、あの男はこれで三度の殺人事件に関係している。まず、先月、女の子が屋上から突き落とされた。次に先週五つの男の子が……」
東条の台詞にあわせ、ダミー人形が落下するショットに、

血まみれて地面に横たわる女の子の死体がこれでもかとばかりに映し出される。
これだけでもかなりキツいが、

予告編では、より大きく映し出されている。
東条「そして三度目がさっきのボートの爆破だ。三度が三度とも、あの男が事件の直前に殺される子供の写真を持って探しに来てるんだ」

中根「わしゃ一体、どうすればいいんだ……」
続いて、線路脇の歩道を、あの男が、何か途方もない苦悩を抱きながら、ふらふらした足取りで歩いている。
と、サングラスを掛けた三人の男があらわれ、男を人気のないところへ連れて行き、何かを渡そうとするが、そこへ例によって例のごとく、ギターを掻き鳴らしながら早川があらわれ、男たちをぶちのめし、川の中に放り込む。
早川「さ、競走、競走、ただし、風邪引くな、はっはっはっはっ」
水の中でもがいている三人を橋の上から眺めていた早川の前に、編み笠にラメ入りの着物姿の、変な釣り人がやってくる。

早川「ふっ、出てきたな、釣師十兵衛、TTTのボス・鉄の爪の用心棒はまだ辞めてないようだな」

十兵衛「名前を知ってるからには、わしが釣り師日本一と言うことも知っていようの」
早川「ちょっと違うぜ、十兵衛さんよ、お前さんは確かに殺し屋釣り師だが……
ところで、殺し屋釣り師って何?」
十兵衛「それが分からんのよ……」
じゃなくて、
早川「お前さんは確かに殺し屋釣り師だが、ただし、腕前は日本じゃ二番目だ」
十兵衛「なにぃ、わしより他に日本一がおると言うのか」
……と言う訳で、いつもの珍芸コーナーの時間になるのだが、そもそも、「殺し屋釣り師」なんてニッチの中のニッチ的職業の人は、日本中探してもこの人しかいないと思うんですが。

さて、先攻の十兵衛は、ルアーで魚を釣って、川原に落ちていた透明な瓶を同じくルアーで立てて、その中に魚を入れると言う、あまりに早過ぎて何やってんだかわかんねーよ的なパフォーマンスを披露する。

それに対し、早川は、ルアーで空き缶を引っ掛け、それに川の水を汲み、さらにそれを傾けて瓶の中に水を入れ、魚を助けると言う、技術の高さと優しさとを同時にアピールする。
もっとも、今回の対決、技術的には甲乙つけがたい。
ちなみに、早川、水を掬った時に一緒に魚も取っていて、最終的に、瓶の中には二匹の魚がいるのだが、正直、分かりにくいので、水を汲むだけで良かったような気もする。
ともあれ、負けを認めた十兵衛は大人しく引き下がるが、
早川(そもそも、何しに来たんだ、お前は?) と言う根本点な疑問を、その寂しそうな後ろ姿にぶつける早川だった。
実際、終盤で手榴弾を釣竿に引っ掛けて飛ばしていたように、釣り道具だけではほとんど戦闘力がないのが、十兵衛の弱点であろう。
まあ、釣り針を唇に引っ掛ける、みたいなイヤガラセは可能かも知れないが、用心棒にするなら、もうちょっとマシなのがいくらでもいるだろうとは思う。
それはともかく、男は渡された写真を手に早川に近付き、
中根「これは私の家出した娘なんです。私はこの子を探し出さなければならない」
早川「シッ、そんなところに隠れてないで出てくるんだオサム君」
早川、相手の言葉を遮ると、ギターで足元を叩く。
と、橋桁の下に隠れて盗み聞きしていたオサムが出てきて、
オサム「早川さん、足の裏にも目があるの」
オサム、そのまま二人のところに上がってくると、

オサム「こいつは怪しいんだよ、家出した娘を探してるって言ってるけど、みんな嘘っぱちだ」
早川「うんー?」
男は慌てて逃げ出すが、向こうからやってきた東条に捕まり、投げ飛ばされる。

早川「おい東条、手荒なことするな」
東条「バカ、こいつはな……あっ、博士、あなた、中根博士じゃありませんか」
だが、東条は相手の顔をマジマジと見て、驚きの声を上げる。
男は、東条も知っているほどの著名な科学者だったのだ。
じゃあ、なんで今まで誰も気付かなかったのだろう?
東条は中根を署に連れて行き、やっと詳しい事情を聞くことが出来た。

東条「それじゃTTTは、博士の発明した薬を狙って?」
中根「癌の特効薬を研究中、偶然出来てしまった恐ろしい毒薬なんです」
なお、シナリオによれば、その毒薬は10グラムで東京中の人間を皆殺しに出来るらしい。
そんなもん偶然作るなよ……
なんで特撮ドラマに出てくる科学者って、こんな物騒なのばっかりなんだろう。
中根「鉄の爪がその作り方を教えろと言ってきて、私がウンと言うまで何の関係もない子供をひとりずつ殺して行くと言うんです」
早川「なんですって」
中根「奴らはあらかじめ写真を私に届けに来て、その翌日、その子たちを殺すんです。私のせいで何の関係もない子供たちが殺される、私は何とかしてその子たちを救おうとしました、でも、その写真だけで、それが何処の誰だか何も分からないんです。警察に届けたら、殺すと脅かされました。私はもう耐えられません」
つらそうに顔を歪めて、切々と苦しい胸の内を語る博士。
「悪の組織」の長い歴史においても、人を脅すためだけに関係のない子供をアトランダムに殺すなどという凶悪な犯罪は、前代未聞であろう。
ただ、ひとつ引っ掛かるのは、博士には写真以外、何の手掛かりも与えられていないのに、すべての殺害現場に居合わせていると言うのは、ちょっと変ではあるまいか?
現場にいたと言うことは、写真を渡された翌日中に、すべての子供たちを捜し当てたことを意味しており、私立探偵でもない博士にそんな真似が可能だろうか?

それはともかく、4人目のターゲットの写真を見た早川は愕然とする。
他ならぬ、みどりさんだったからである!!
……
いや、みどりさんって子供なの?
まあ、中根から見れば子供かもしれないが、以前、保母さんしてた人を、子供と呼ぶのはさすがに抵抗がある。
そのみどりさん、とある花屋であるバイトをしていたが、

店主「あんた、早川健ってひと知ってるかね」
みどり「え、早川さんが? 何か?」
思いがけず早川の名を聞いて、それこそ、子供のように無邪気な笑みを浮かべる。
ああ、かわええ……
店主「今電話があってね、多摩川の橋の下で待ってると言うんだ。行っておいで」
みどり「はい!!」
いかにも善人そうな店主は、快くみどりさんを送り出す。
店の近くだったのか、みどりさんはタクシーも使わず、走って待ち合わせ場所に向かう。

みどり「早川さーん」
誰もいない川原に立ち、周囲をキョロキョロと見回すみどりさん。
とても全国を旅してるとは思えない、非常識なまでに長い黒髪が、その美しさをより一層際立たせている。
しかし、そのルックスと言い、ドラマの中の扱いと言い、ぶっちゃけ、この辺りがみどりさんのピークだったろうなぁ。
11話では、一応まだストーリーに絡んでいるが、12話以降は完全な脇役に成り下がってしまうからね。

みどり「早川さん!!」
コンクリートの橋脚の陰から人が出てきたので、てっきり早川だと思ってとろけるような笑顔になるみどりさんだったが、

みどり「……」
それが早川ではなく、いつもの戦闘員たちだったので、途端に険しい顔になるみどりさん。
みどり「それじゃ、今の電話は……」
戦闘員「ニセ電話に上手く引っ掛かったようだな」
そこへ中根博士が駆けつけ、土下座してまでみどりさんを助けてもらおうとするが、無論、聞き入れられず、みどりさんは連れ去られ、博士も負傷する。
……
今気付いたんだけど、TTT、そんなまだるっこしいことをせずに、この場で博士を拉致して、拷問でもして聞き出したほうが手っ取り早くないか?
同じ方法で脅すにしても、博士をアジトに拘束した上で、目の前で子供をいたぶって見せた方が、遥かに効果的だったろう。
ともあれ、ここでCMになるのだが、あとはもう早川がみどりさんを助けるだけなので、ドラマとしての盛り上がりに期待できないのが悲しい。
8話もそうだったが、アクションシーンが無駄に長くて、せっかくの魅力的なプロットを活かして切れていない感じがする。

みどり「あっ!!」
それはそれとして、ムチムチボディーを縄で縛られ、猿轡をかまされて床に放り投げられるみどりさんがエロいのです!!

鉄の爪「はっはっはっはっはっ、ご覧下さい、首領L、この小娘を求めて必ず早川はやってきます。奴には処刑場所と時間は知らせてあります」
その前にはTTTのボス・鉄の爪がいて、Lに報告していた。
鉄の爪、ダッカー組織のボスにしては珍しい武闘派タイプのキャラで、風貌はまるで蝶野正洋みたいである。
組織名のTTTと言うのも、なんか、プロレスの技にありそうだ。
ちなみに、十兵衛の三島新太郎さんも、鉄の爪の原田君事さんも、宮内さんと同じく、丹波哲郎の付き人をやっていたそうな。

L「鉄の爪、貴様も悪の大師組織ダッカーの一員なら、早川ごときに遅れは取るまいぞ」
鉄の爪「わかっております、首領L」
で、Lは鉄の爪の背後に回って、いつものように中身のない訓示をするのだが、位置的には、みどりさんにその顔をがっつり見られている筈である。
なのに、事件のあと、みどりさんが首領Lやダッカーについての情報を早川に教えることは一切ないのだった。
ダッカー一味以外で、唯一首領Lの執務室に入ったみどりさんの記憶を手繰れば、この時点で首領Lのアジトを突き止められていたかもしれないのに……

さて、みどりさんの受難は続き、今度は、廃墟の二階部分に簡単な櫓を組み、そこから、枯れ井戸(煙突?)の上に吊るされることとなる。
穴の底には無数の剣が生えており、恐怖に目を見開くみどりさんであった。
やがて、早川が悠然と姿を見せる。

鉄の爪「来たな、早川」
早川「約束どおりやってきたぜ、みどりさんを返してもらおうか」
鉄の爪「毒薬は?」
早川、懐から小さな瓶を取り出すが、
鉄の爪「ニセモノだな、本物が白いことは分かってるんだ」
早川「ふふふふ、本物さぁ、本物の黒色火薬だ!!」
早川、やにわに瓶を鉄の爪の足元に投げつけると、ささやかな爆発が起きる。
鉄の爪は素早く飛び退くと、周囲に潜んでいる部下にマシンガンを乱射させる。
しかし、これでは、全然作戦になってないよなぁ。
怒った鉄の爪が即座にみどりさんを殺してたらどうするつもりだったのか?
鉄の爪にしても、目的が、毒薬の奪取なのか、早川を殺すことなのか、方針が定まってないように見える。
なんとか銃弾をくぐりぬけ、みどりさんのところへ近付こうとする早川だったが、
鉄の爪「見ろ、早川」

みどり「うっ、うう……」

鉄の爪の声に頭上を見て、初めて、みどりさんが落ちたら命はないトラップの上に吊り下げられていることを知る。

ちなみにこのシーン、全部ご本人が吊るされているようで、昔の特撮の女優さんは大変だなぁとしみじみ思ったことである。
それにしても、みどりさんの、服の上からでも肉付きの良さが分かるムチムチボディー、実に美味しそうである。
管理人、若い女の子はある程度ぽちゃっしたほうが可愛いと思う口なので、その点でも、みどりさんは完璧超人に近い。
その体型を気にしてか、まったくと言っていいほどミニスカを履いてくれないのが玉に瑕だ。
何とか二階部分に上がる早川だったが、そこを鉄の爪に捕まる。

鉄の爪「動くな、早川、ふっふっふっふっ、はっはっはっはっ」
早川「てっ、くっ……」
みどりさんを支えているロープの根本には、蝋燭の火が置かれ、放っておくとロープが焼き切れると言う、宮内さん的にはめちゃくちゃ既視感のある仕掛けが施されていた。
やがてロープがちぎれ、みどりさんは絶叫しながら穴に落ちていくが、早川、咄嗟に飛び出してロープを掴んで自らの体重で支え、

早川「ぐわああああ、うおぐお……」
マシンガンで蜂の巣にされながら立ち上がり、

引き続き、マシンガンで蜂の巣にされながら、ロープを引っ張って柱にしっかり縛り付ける早川だった。
それを見ていた鉄の爪さんは、
鉄の爪「なんで死なないのよっ!?」 早川「えっ?」
生まれてこの方味わったことのないような戦慄を覚えるのだった。
しかし、実際のところ、「至近距離からマシンガンで撃たれても平気で動き続ける男」って、完全なホラーorコントだよね。
この後、2階部分から地面に突き落とされた早川だったが、次の瞬間、ズバットになってズバッカーで飛んでくる。
ズバットは何より先にみどりさんを助けると、名乗り&ポーズを決め、ラス殺陣に突入する。
ちなみに早川が死ななかったのは、防弾チョッキでも着ていたとしか考えられないが、台詞だけでもいいから合理的な説明が欲しかった。

また、みどりさんが井戸の中から引っ張り上げられるシーンがあるが、これも大城さん自身が演じていて、その女優魂に敬服させられた管理人だった。
いくら演技とは言え、あんなところに宙吊りにされたら、めちゃくちゃ怖かっただろう。
ズバット、戦闘員を蹴散らしてから、十兵衛とのバトルとなる。
が、前記したように、元々戦いに向いてない特技の持ち主なので、

箱に詰めた手榴弾をルアーで引っ掛け、

ズバット目掛けて投げつけると言う、見た人が必ず、
「手で投げろっ!!」 と、全力で叫ばずにはいられない方法で戦うのだった。
が、マシンガンで撃たれてもピンピンしている人が手榴弾ごときで死ぬわけがなく、

十兵衛「ぐわーっ!!」
ズバットのムチで首を巻かれ、今まで数え切れないほど釣って来た魚のように宙に舞い、手榴弾の箱の上に覆い被さり、豪快に爆死する。
ズバット、鉄の爪をボコボコにすると、

ズバット「貴様ぁ、飛鳥五郎と言う男を殺したのは貴様か?」
鉄の爪(近い近い近い近い!!) 恐怖の圧迫面接で、いつもの尋問を行う。
無論、鉄の爪は飛鳥五郎殺しの犯人ではなかった。
事件解決後、東条たちが駆けつける。

みどり「東条さん、早川さんは?」
東条「……」

早川(飛鳥、妹さんは助けたぜ、お前を殺した犯人も俺が必ず!!)
ラスト、川べりに立っている早川が、心の中で飛鳥に呼びかけて幕となる。
細かいことだが、この早川の台詞で、早川はあくまでみどりさんのことを「親友の妹」としてしか見てないことが分かり、現状では、みどりさんの想いが報われることはないだろうと、いささか淋しい気持ちにさせられる。
以上、8話と同様、序盤はかなり期待できるのに、トータルではさほどでもなかった惜しい作品であった。
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