第14話「謎の大幹部シャドウの出現!」(1975年7月5日)
冒頭、山深い森の中を通る道を一台のパトカーがサイレン鳴らしながらやってくるが、

手ぐすね引いて待ち構えていたピカチュウたちに襲撃される
戦闘員「無駄なことはやめろ、そいつは4人も人を殴り殺した男、我々の探している男にうってつけなのだ。腕尽くでも貰っていくぞ」
戦闘員たちは抵抗を諦めろと言っているのだが、なんとなく、「そんな極悪人のために体を張るのは無駄ですよ」と諭しているようにも聞こえる。
実際、凶悪殺人犯を守るために命を落とすなんて、これほど馬鹿馬鹿しい話はない。
ともあれ、後部座席からその凶悪犯が出てくるが、さすが凶悪犯だけあって、助けてくれた戦闘員たちを乱暴に突き飛ばす。

演じるのは悪役俳優の丹古母鬼馬二さん。
さすがに若い!!
凶悪犯、バカだったのか、手錠を外されて自由になったというのに、

男「うーん、だぁああああっ、おう、おう、おう」
どう考えてもまともじゃない連中から逃げようともせず、両手を広げ、獣のような唸り声を上げながら拳で自分の胸板を叩くという、ゴリラ的な動きをしてみせる。
が、

男「はははははは」
戦闘員「……」

男「ははははは……」
戦闘員「……」
戦闘員が何のリアクションもしてくれなかったので、笑って誤魔化しながら用意されたバンに乗り込むのだった。
ここ、以前のレビューでもネタにしていたが、戦闘員がひたすら無言なのが、変な空気を作り出し、昔の特撮に特有の「狙ってない笑い」を生んでいる。
走り出したバンのケツを見ながら、
戦闘員(あれ、俺たち、どうやって帰んの?) 割と重大なことに気付くピカチュウたちであったが、嘘である。
でも、別にこの場に残ってなきゃいけない理由もないと思うのだが……
この後、早くもストロンガーが駆けつけるが、ピカチュウたちは次から次へと湧いてきて、今までとは明らかに違う、俊敏且つ統制の取れた動きで流れるような連携攻撃を仕掛けてくる。
ライダー「今日の敵は今までとは違う。何かあるぞ」
指揮官が代わると共に、戦闘員もアップグレードされるという、昔の特撮のお約束である。
無論、初回だけで、次回からはまた元の役立たずの戦闘員に戻るのもお約束である。
苦戦するストロンガーだったが、数枚のトランプが飛んできたかと思うと、戦闘員たちはパッと姿を消す。

ついで、コンクリート壁の上にスペードのキングが張り付き、

それが段階を経て人間サイズの巨大なカードに変わり、

その中から、顔の皮膚が剥がれて血管が剝き出しになったような不気味な顔を透明なヘルメットですっぽり覆った、全身白ずくめの異様な人物があらわれる。
タイタンに代わる新たな大幹部ゼネラルシャドウである。
大好き。
ライダー「何者だ」
シャドウ「仮面ライダーストロンガーとはお前のことか」
ライダー「名を名乗れ」
シャドウ「俺か、俺の名を知らぬとはお前もよほど迂闊な男」
シャドウ、挨拶代わりにトランプを投げつけて爆発させ、フェンシングで使う剣のようなシャドウ剣を振り回して戦う。
その際、

シャドウ剣で真っ二つにされた木の幹が、

姿勢を低くして構えるストロンガーの頭に、
ゴーン!! とばかりにクリティカルヒット!!
ライダー「……」
シャドウ「……」
なんとなく気まずくなったので(嘘)、シャドウは結局名乗らないまま退却する。
……と思いきや、姿を消した状態で、
シャドウ「ストロンガーよ、これはほんの小手調べだ」
ライダー「お前の正体は?」
シャドウ「ブラックサタンのジェネラルシャドウ……お前はタイタンの葬式の日に死ぬ。本日午後3時、伊香保付近の恐谷だっ」
自己紹介して、なおかつ待ち合わせ場所を指定するのだった。
その後、アジトに戻って薄暗い廊下を進むシャドウであったが、

シャドウ「……」
迎えの戦闘員がたった二人だったので、ちょっぴり悲しくなったという。
ゾル大佐のときはもっと多かったよね(どうだっけ?)
あと、シャドウ、背中に恐竜の背びれみたいなオブジェがついてるけど、これが実にいい味出してるんだよね。
なおかつ、視覚的な重心の役目を果たし、その立ち姿に安定感が増している。

戦闘員「……」
もっともなことだが、そのうちのひとりが目だけ動かして新任の司令官に興味深げな視線を向けるが、一旦通り過ぎたシャドウ、ふと立ち止まり、ベルトからトランプを出して、いきなりその戦闘員に投げつける。
シャドウ「トランプカッター!!」
カードは空中で大きくなり、戦闘員の首筋に突き刺さる。
シャドウ「態度が悪い!!」 戦闘員(そんな殺生な……) めちゃくちゃ理由をつけて、戦闘員をバラバラ死体にしてしまったシャドウ。
ま、新任の司令官が必要以上に厳しいというのも、昔の特撮のお約束のひとつである。

男「ははははははは……」
さて、アジトの手術室では、あの凶悪犯が手術台に寝かされ、ブラックサタン名物「麻酔なし手術」が行われていた。
シャドウ「ようし、さすがはこの俺が狙った男だ。仕上げにかかれ」
そんな状況でも平然と笑っている男の肝の太さに満足げにつぶやくシャドウであったが、何の抵抗もせずに改造手術を受けている男のバカさ加減には全然気付かないのだった。
ほんと、なんで唯々諾々と手術を受けているのか、謎である.

シャドウの命令で、その顔にビニールのようなものが被され、

男「おわわわーっ!!」
ついで、お腹に墨汁のようなものがぶちまけられ、さしもの凶悪犯も苦悶の呻き声を上げる。
しかし、これ、ただのイジメorバラエティー番組の洗礼を受けてる若手芸人にしか見えないよね。

シャドウ「ようし、お前を世界一強い奇械人にしてやる」
それにしても、つくづく素晴らしいデザインセンスである。
イメージの基になっているのは、フェンシングのコスチュームなんだろうけど、マスクの下を、人体模型のような血管と神経が露出した顔にするなんて、並大抵の頭では到底思いつけないアイディアである。
ともあれ、非道の限りを尽くした凶悪犯は、晴れて奇械人メカゴリラとして生まれ変わり、力強く第二の人生を歩き出すことになったのである。
一方、伊香保の天坊と言う、今もやってるホテルに4人の親子連れが宿泊していた。

マサオ「今日はロープウェーの方へ行こうよ」
ミチコ「私、白鳥丸に乗りたいわ」
母親「まあまあ、二人とも張り切ってること」
これから出掛けるところなのだろう、リュックサックに水筒と言う、ハイキング支度をした子供たちが、フロントの前で、タイアップの臭いがプンプンしやがるぜぇえええっ!! 的な台詞を口にする。
母親役は、声を聞いただけですぐ分かる、八百原寿子さん。
と、彼らと入れ違いにテントローに乗ったユリ子がやってくるが、ホテルの屋上には既に見張りの戦闘員が立っていた。
その後、茂のカブトローもホテルに到着する。

茂「何か怪しい気配は?」
ユリ子「……」
茂「ようし、二手に分かれて捜査開始だ」
ユリ子「オーケイ」
その背後に宿泊施設の名前が見えるように会話を交わす、タイアップモードの二人。
彼らはこのホテルを拠点にブラックサタンの動きを探っているのだろう。
どうでもいいが、彼らの生活資金ってどっから出てるんだろう?
親の遺産とかあるのかな。
さて、あの4人がタイアップの鉄則どおり、白鳥丸と言う遊覧船で榛名湖の上を進んでいると、他の乗客たちがすべてトンガリ頭巾を被った戦闘員に変わる。
ミチコ「怖いーっ」
父親「なんだ君たちは?」
トンガリ「イケニエだ、今日の葬式のイケニエだ」
父親「え、君たちがイケニエ?」 トンガリ「違う!!」
父親「じゃあ、殉葬されるの?」
トンガリ「違う!!」
……と言うのは嘘だが、トンガリ頭巾の言い方が紛らわしいのは事実である。
トンガリ「子供たちは貰う、子供たちは貰う」
父親「なんだと」
母親「ぃやめてください、子供だけはやめてください」
当然、両親は必死で子供たちを守ろうとするが、多勢に無勢、

マサオ「離せーっ」
ミチコ「やめてーっ!!」
子供、特に女児が大好物の戦闘員に二人を攫われそうになる。
と、例によって例のごとく、茂がモーターボートを飛ばして駆けつけ、

茂「弱いものイジメはいい加減にしろ」
戦闘員「ぎゅうっ!!」
なんか、この画像、戦闘員たちが大好きな女児と一緒に記念撮影してるみたいだ。
ミチコちゃん、笑ってるし。
で、このミチコ役の女の子がなかなか可愛いのだ。
行事美佐と言う、珍しい苗字の人である。

二人をその体で庇い、戦闘員と戦う茂。
ここでもミチコが笑っているが、まあ、仕方ない。
茂「モーターボートで逃げるんだ」
父親「はい」
茂、戦闘員を防ぎつつ、4人を自分の乗ってきたモータボートに乗せて逃がす。

4人は、あんなことがあった直後とは思えない、めちゃくちゃフツーの感じで桟橋に降りるが、今度はメカゴリラがあらわれ、その行く手に立ちはだかる。
ミチコ「パパ、怖いーっ!!」
タックル「電波投げーっ!!」
と、背後からタックルが電波投げを使い、その体をひっくり返す。
なんだ、電波投げ、奇械人にも通用することがあるんだな。

なお、自ら一回転した際、赤い見せパンが全開となっているが、残念ながらスタントなので、追い風参考記録とさせて頂く。
タックル、とにかく家族を逃がそうとするが、メカゴリラ、ハンマー状の右手を激しく地面に打ちつけ、その一帯に小地震を起こして彼らをその場に釘付けにする。
と、そこへストロンガーが駆けつけ、メカゴリラの後頭部に蹴りを入れる。

メカゴリラ「おのれストロンガー」
ライダー「タックル」
タックル「ストロンガー」
ストロンガー、タックルに4人を守らせようとするが、メカゴリラのハンマーの威力は凄まじく、遂には十字形の地割れを起こし、

マサオ&ミチコ「助けてーっ!!」
子供たちをその中に引き摺り込み、遂に拉致することに成功する。
このシーンを見た管理人の知り合いが、「これがミニスカだったらなぁ」って、遠い目をしながらつぶやいてました。
CM後、カブトローでその周辺を走り回り、二人の行方を探すストロンガーであったが、何の手掛かりも得られない。

ライダー「いたか、マサオ君たちは?」
タックル「……」
吊り橋の上にいたタックルに尋ねるが、タックルは首を横に振ってストロンガーの前に飛び降りる。
ライダー「カブトキャッチャーにも反応がない」
タックル「電波妨害よ、私のアンテナにも雑音だけ……あ、おじさん」
立花「静かにして」
タックル「ね、子供を二人連れた変な奴(註1)を見なかった?」
タックル、そこで釣りをしていたチューリップハットに引き回し合羽の、ヒッピー風の男性にも聞いてみるが、
註1……お前が言うな。

立花「いいや、ワシもその変な奴ってのを探しとるんだがねえ」
そう言いながら振り向き、付け髭を取ったのは、他ならぬおやっさんであった。
タックル「なんだ、藤兵衛さん」
軽く驚くタックルだったが、普段でもおやっさんのこと「おじさん」と呼んでるので、一瞬、タックルは最初から相手がおやっさんだと知っていたようにも聞こえて、少し紛らわしい。
立花「いやな、この辺が臭いと思って見張ってたんだ」
と、上流から、木切れが流れてくるが、それにはブラックサタンの紋章が描かれていた。

タックル「ブラックサタンのマーク」
ライダー「あっちだ」
しかし、そんなものが都合よく流れてくるのは不自然なので、これはジェネラルシャドウが茂をおびき出すためにわざと流した可能性が高い。
茂がひとりでその方角へ行くと、だだっ広い空き地があり、トンガリ頭巾たちがタイタンの遺体を納めた棺の前に集まっていた。
要するに、「午後3時、恐谷」と言う待ち合わせを、茂が
完全に忘れているみたいなので、強引にこの場所まで引っ張り出したのである。
考えたら、敵の幹部の葬式になんで出にゃならんのだって話なので、茂が無視しても不思議はなかったのだが。
茂「タイタン!!」
シャドウ「はっはっはっ、驚いたかね」
見上げれば、いつの間にかシャドウがすぐそばに立っていた。

茂「子供たちはどうした」
シャドウ「ふふふふっははははははっ」
見れば、棺の横に、マサオとミチコが引っ立てられていた。
すぐ飛び込もうとする茂を「やめろ」と制すと、

茂「あんな幼い子を」

シャドウ「俺も嫌いだ。しかしブラックサタンの儀式だ」
茂「なんだと、ブラックサタンの大幹部(の癖に)!!」
シャドウ「俺は大幹部を引き受けたが、しかし根っからのブラックサタンではない。お前を倒したいばっかりに引き受けた。世界一は俺だ。世界一はひとりで良いのだ。引いてみたまえ」
シャドウ、悠々、茂との会話を楽しみつつ、裏側にしたカードをマジシャンのように茂の前に差し出す。
茂が何の迷いもなくその中の一枚を引くと、ジョーカーのカードであった。
シャドウ「ジョーカーは万能のカードだ。今日は勘弁してやる。子供たちを帰してやれ」
タイタン同様、話せば分かるタイプの大幹部のシャドウ、池乃めだかみたいなことを言って、あっさり子供たちの解放を命じる。
まあ、子供たちをどうしようが戦略的には何の影響もないので、シャドウが譲歩して見せたのもその辺のところを考慮した上でのことだろうが、たとえどんな小さなことでも悪の大幹部がヒーローの願いを無条件で聞き入れるなど、前代未聞のことと言わねばならず、シャドウがただの悪役とは一線を画したキャラクターであることを的確に表現したシーンとなっている。
だが、シャドウの命令をメカゴリラは無視して、

ミチコ「お兄ちゃん」
マサオ「助けてーっ!!」
子供を両脇に抱えると、のしのし坂道を上がって行く。
このシーンを見た管理人の知り合いが、「これがミニスカだったらなぁ」って、遠い目をしながらつぶやいてました。

ミチコ「助けてー、お兄ちゃん」
メカゴリラ、高崎市観光協会の要請もだしがたく、そのまま榛名山ロープウェーの榛名高原駅まで一気に突っ走る。
そして、待ってましたとばかりに扉を開いて停止していた「こまどり」と書かれたゴンドラに乗り込む。
ほどなく茂も追いつくが、

茂「待て!!」
ミチコ「お兄ちゃん」
メカゴリラ「うるさいっ!!」
茂「待たんか!!」
メカゴリラ、横から顔を出したミチコを押しのけると、ゴンドラを発進させる。
茂、思いっきりジャンプしてゴンドラの下部の手摺に取り付き、

あれよあれよと言う間に、茂の体を目も眩むような高空に引っ張り上げていく。
そう、昭和ライダーでは一種の洗礼となっている、ロープウェー吊るしである。
もっとも、さすがにこれはスタントかと思ったが、

ゴンドラからの映像ではしっかり荒木さん本人がぶら下がっているのが見える。
ただ、これを見る限り、それほど高くない位置で撮影しているようなので、全部本人なのかどうかは分からない。
下から見上げたアングルで、茂がゴンドラの中に這い上がるカットもあるのだが、やっぱりスタントなんだろうなぁ。
それでも、

一旦ゴンドラに這い上がったものの、メカゴリラに突き落とされそうになって、上半身をゴンドラの外に出した状態で必死に耐えているシーンなどは、しっかり荒木さんが演じておられる。
ここはかなりの高さがあるようで、命綱があるとは言っても、相当怖い撮影であったろう。
あと、

役者だけじゃなく、子役たちを乗せ、さらに扉を全開にした状態でゴンドラを動かし、その中でアクションを撮影しているのが、今ではちょっと考えられないハードさ(無神経さ)である。
やっぱ、70年代の特撮は(色んな意味で)凄いです。
メカゴリラ、茂の体にのしかかっているうちに、勢い余って自分が落下してしまう。

マサオ「お兄ちゃん」
ミチコ「ありがとう」
茂「ああっ」
礼を言う二人に笑顔で応える茂であったが、この笑顔、しんどい撮影を無事終えた後の、俳優さんの実感がそのまま出たような素敵な笑顔となっている。
三人が榛名富士山頂駅に着くと、既に両親とユリ子が山頂で待っていたが、メカゴリラはしぶとくも生きていて、巨大なハサミ状の左腕をジオングのように有線で伸ばして、ミチコの左足首を掴む。

ミチコ「あ、お兄ちゃん」
マサオ「ミチコ!!」
ミチコ「お兄ちゃん、痛いよ、痛いよ」
茂がワイヤーの先を睨むと、メカゴリラがあらわれて一気に距離をつめてくる。
茂、ハサミを外すと、ちょうどそこに来たユリ子に子供たちを任せ、ストロンガーに変身してメカゴリラと戦い、これを撃破する。
その後、アジトで反省会を開いている首領とシャドウ。

首領「タイタンの葬式は不首尾であったな」
シャドウ「あのメカゴリラの馬鹿めが」
首領「この償いをせよ」
葬式ひとつ満足に出せない大幹部に早くも責任を問う首領であったが、そもそも、今回の作戦の目的は、葬儀を執行することではなく、葬式の場に茂を誘い出してこれを抹殺することだったのだろう。

シャドウ「お言葉ですが、私は葬式のことなどお引き受けはしてはいない」
首領「シャドウ!!」
シャドウ「いいえ、私が引き受けたのは、ライダーストロンガーを倒すことだけ、それだけではいけませんか?」
だが、シャドウは首領に対しても堂々と反論し、軽々に謝罪したりはしない。
生え抜きではなく外部から招聘された雇われ大幹部……と言う、一味変わった背景を持つシャドウならではの不遜な態度であったが、そんな大きな口を叩けるだけの実力も兼ね備えていることが、首領が結局引き下がらずを得なかったことからも窺えるのだった。
以上、新たな大幹部ゼネラルシャドウのキャラクターを存分に描きつつ、ストロンガーとメカゴリラの死闘を迫力たっぷりに描いた力作であった。
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