第39話「ボクは怪獣だ〜い」(1981年1月7日)
久しぶりの「80」のお時間です。
このエピソード、レビューしていた頃は、特に悩むことなくスルーして、こんな話があったことすら忘れていたのだが、少し前、ある読者の方からこの話に関するコメントをいただいて、念のためにチェックして見たら、これが結構面白かったので、今更ながらレビューすることしたものである。
ま、最近、ネタ不足が深刻になってきたので、それを補う意味もある。
冒頭、学校のグラウンドで、少年野球チームが試合をしている。
今回の主人公・テツ男少年は守備が下手で、しょっちゅうエラーをしては、チームメイトから怒られていた。

男子「お前のお陰でまた一点取られたじゃないかー」
女子「そうよ」
女子「女の私たちだってそれくらいのボールは取れるわよ」
今回、たくさん子役が出ているのだが、ほとんどの子供ははっきり名前がわからないので、上記のように書かせていただく。

テツ男「なんだ、ありゃ」
ちなみに、テツ男役の子役だけ、のちに怪獣になるためか、最初から高橋和枝さんが吹き替えをしている。
そう、「サザエさん」の初代(正確には二代目)カツオの中の人である。
「レオ」の23話でもコロ星人役の増田康好さんの吹き替えをしているが、そこでは三代目カツオの富永みーなさんと共演してるんだよね。
試合中、外野上空をわかりやすい小さな銀色のUFOが飛んでいるのを見つけたテツ男、ぼけっとして見上げていると、相手チームのバッターの打った球がその物体に命中し、足元に落ちてくる。
テツ男「大変だ、円盤だーっ!!」
テツ男の叫び声に、子供たちがぞろぞろ集まってくる。

男子「あ、円盤じゃん」
オサム「第一種接近遭遇ですよ、これは」
男子「もしかすると、俺たち、有名になれるんじゃないか」
オサム「円盤の発見者ですからね」
だが、円盤は見る見るうちに砂のようにグズグズに崩れて消滅し、あとにはテニスボールのような小さな球が残される。
その所有権を巡って醜い争いをする子供たちであったが、偶然、その球がテツ男の口に入り、食い意地の張ったテツ男はそのまま食べて飲み込んでしまう。
子供たち「飲んじゃった、飲んじゃった、知らないぞ、知らないぞ」
テツ男「案外、旨かったよ」
一方、UGMでも、レーダーがその円盤の存在をキャッチしていた。

エミ「キャップ、やっぱりガンマー反応です」
イケダ「やはり地球以外の物質ですか」
オオヤマ「ガンマー反応があるってことは、そうとしか考えられんな。場所は?」
エミ「それが、反応が弱過ぎて……でも都心部と言うことは確かです」
あれ、嬉しや、再びエミ隊員の画像を貼れるとは……
と、フジモリがふと思い出したように、

フジモリ「そう言えば昼間、小学生から妙な電話があったなぁ……いたずら電話だと思って放っておいたんですけど、UFOを見たって言うんです」
イケダ(エ、エミ隊員の巨乳がすぐ目の前にぃいいいっ!!) OP後、試合のあと、急に眠気を覚えたテツ男は、河原の草むらの陰に寝転んで昼寝する。
他の子供たち数人が公園の中を突っ切って帰っていると、

目の前に、座布団と間違えられて押し潰されたような顔をした等身大の80があらわれる。
子供たち「あ、80!!」
80「シュワッチ、シュワッチ」
無論、それはただの着ぐるみで、すぐに頭部の被り物を外すと、高校生くらいの若い男の顔があらわれる。
青年「俺だよ」
女子「なんだ、兄ちゃんか」
それは、ユニフォームを着た女の子の兄であった。

オサム「どうしたんですか、その恰好は?」
青年「なんだ、お前たち、知らないの、これだよ、これ」
青年が近くにあった町内掲示板を示すと、そこに新春仮装大会のポスターが貼ってあった。

賞品の写真も貼ってあるが、印刷じゃなく、切り貼りなのが悲しい……
しかし、町内会の催しの賞品にしては、いささか選択がマニアックだが、多分これは、プロダクションか、テレビ局の備品をそのまま使って安く上げようという魂胆だろう。
青年「優勝したらビデオセットがもらえるんだぜ」
男子「本当だ、俺、前から欲しかったんだ、こういうの」
青年は、優勝は俺に間違いないと自信たっぷりに断言して走り去るが、子供と言うのはシビアなもので、

男子「えっらそうに」
オサム「どっちにしても、あんなカッコ悪いんじゃ、優勝は無理なんじゃないんですかー」
男子「決まってるよなー」
女子「何よ、ちょっと言い過ぎよ!!」
オサム「いてっ」
気の強い女の子は、兄をバカにされて反発し、オサムの肩を叩く。

テツオン「ああ、よく寝た」
さて、たっぷり睡眠をとったテツ男は茂みから立ち上がるが、なんと、眠っている間に、黄色い、大人ほどの背丈の怪獣になっていた。
無論、さっき食べた球のせいである。
だが、自分が怪獣になっているとは露知らないテツ男、帰りがけ、路上でボール投げをしていたタクちゃんと言う友達を見付けて話し掛け、友達をびっくりさせる。
しかし、普段我々の視界には、常に自分の手や胸、足が映っているのだから、テツ男がそれに気付かないというのは明らかに不合理である。
タクちゃんは、びっくりした拍子にカミナリ親父のいる家にボールを放り込んで窓ガラスを壊してしまい、二人とも慌てて逃げ出す。
怪獣になったテツ男は、超能力も使えるようになり、瞬間移動して友達の前に先回りする。

タク「わあっ、お前、まだいたのか」
テツオン「何驚いてんのー」
タク「お前、誰だよ」
テツオン「テツ男だよ」
タク「テツ男だってぇ? 怪獣の癖に冗談言うなよ」
テツオン「怪獣? 誰が」
タク「お前だよ、お前、自覚してないの?」
テツオン「何言ってんの、僕はテツ男」
タク「しょうがないなぁ」
タクちゃんは、近くにあった水溜りを見ろとすすめ、テツオンは水面に映った己の姿を見て、やっと自分の身に起きたことを理解する。

テツオン「わあ、怪獣だぁ!!」
タク「変な怪獣」
テツオン「タクちゃん、信じてよ、僕は本当にテツ男なんだから」
で、この怪獣が、スーツアクターの動きと高橋さんの声が相俟って、なかなか可愛らしいキャラになっているのである。
タク「お前、ほんとにテツ男なら、さっきいくつ三振したか覚えてるだろ」
テツオン「三つだよ」
タク「うん、合ってる」
テツオン「ねえ、どうして僕、怪獣になっちゃったの?」
タク「知るかよ、それよりお前のお陰でボールなくしちゃったぞ」
友達が怪獣になったことより、ボールのことが大事なタクちゃん。
この辺は、いかにも子供らしいドライさである。
テツオン「ボール? 任しといて、ボール、戻って来いの来い」
テツオンが念じると、カミナリ親父のところにあったボールがひとりでに空を飛んでテツオンの手の中に収まる。

続いて、どっかで見たことのある川岸の松林に、子供たちが集まってくる。

オサム「みんな集まってもらったのは、他でもありません」
タク「テツ男、出て来い」
テツオン「はーい」
子供たち「怪獣だぁ」
さすが順応性の高い子供たち、本物の怪獣を見ても怖がらず、その体を物珍しそうにベタベタ触る。
オサム「テツ男くんは、みんなも知ってる通り、へんてこりんな円盤の卵を飲んじゃって怪獣テツオンになったのです」
優等生でみんなのまとめ役であるオサムが演説をぶち、テツオンを大人たちの迫害から守ろうと訴えると、子供たちは一もニもなく賛同する。
この辺のノリは、ウルトラシリーズと言うより、東映不思議コメディシリーズに近いものがあるなぁ。
男子「あ、忘れてた、UGMが来るんだ」
オサム「そう言やぁ、UGMは怪獣退治が仕事でしたね」
などと話していると、テツオン、友達が持っていたポッキーの箱を取り上げ、ボリボリ食べてしまう。
テツオン「ああ、旨かったぁ、あれ、どうしたの?」

女子「テツ男、あんた、食いしん坊になったわねぇ」
気の強い女の子が呆れたようにつぶやく。
ま、そんなのはどうでも良くて、右から二番目にいる女の子がちょっと可愛いと思いました。
やがて猛たちが調査にやってくるが、通報した子供はイタズラだったと言って謝る。

男子「UFOを見たと言うのは嘘なんです。ごめんなさい」
イケダ「フジモリ隊員、くたびれもうけでしたね」
三人は深くも追及せず、さっさと引き揚げる。
しかし、猛なら、すぐ近くに怪獣がいれば気配で分かりそうなものだが……
ちなみにテツオンの頭に生えている二本の角、ずーっと回転しているのが芸が細かい。
ホッとする子供たちだったが、猛たちと入れ違いにラーメン屋の出前持ちが通り掛かり、テツオンの姿を見てひっくり返る。
オサム「これ、ぬいぐるみなんです」
出前持ち「ぬいぐるみ? あはは、商店街の仮装大会に出るのか」
オサム「そ、そうです、僕たち仮装大会に出るんです」
出前持ち「なんだ、そうならそうと早く言えば良いのに」
嘘から出た誠、オサムたちはほんとに仮装大会にテツオンを出場させようと言い出す。

男子「絶対に優勝できるよ」
タク「賞品はビデオセットだぜ」
テツオン「恥ずかしいよ~」
オサム「優勝したら、君を主役にしたテレビドラマを作るよ」
テツオン「ええーっ、僕が主役、ほんとに? おおーおーっ、がんばっちゃおうかなぁ」
乗りやすいテツ男、そう言われるとあっさり引き受ける。
で、肝心の仮装大会の模様であるが、

一瞬一秒たりとも映されず、次のシーンでは、既に優勝したオサムたちが賞品のビデオセットを持って意気揚々と歩いている図となる。

手抜きも良いところだが、実際にテレビ局で使っている中古品のように、ビデオカメラや三脚を剥き出しで持っていると言うのもねえ……
それはそれとして、女の子の靴下は白のハイソックスに限りますなぁ。

行動力のある彼らは、早くもテレビドラマの撮影を開始するが、この精巧なセットを一体どうやって作ったのか、その説明が全くないのは片手落ちであろう。
無論、これは、実際に撮影で使われているセットを流用しているのだ。
さっきのボロボロの80のスーツをタクちゃんが着て、テツオンと戦うが、手加減を知らないテツオンに張り倒される。
タク「いててて、本気出すなよ、お前」

オサム「カット、カット、駄目じゃないか、ウルトラマンに勝っちゃあ」
テツオン「だってえ、僕、主役だろ、主役は正義の味方に決まってるじゃないかー」
タク「ウルトラマンが正義の味方だぜ」

女子「そうよ、常識よー」
女子「テツオンが正義の味方なんてカッコ悪~い」
子供だけとは言え、そこは、監督に助監、装置にスクリプターまでいる本格的な現場であった。
テツオン「やだ、悪役なんていやだ、正義の味方じゃなきゃやだやだやだーっ!!」
オサム「仕方ないなぁ、シナリオを書き直すか」
泣く子と怪獣には勝てず、監督もとうとう折れる。
オサムがシナリオを書き直している間、子供たちは野球をするが、テツオンは超能力を使って投打に大活躍し、日頃の鬱憤を晴らす。

テツオン「オサム君、シナリオできた?」
オサム「ごめん、まだなんだぁ、この問題、解いてからやろうと思ったんだけど、どうしても解けないんですよ」
テツオン、オサムの手にした問題集を一瞥すると、
テツオン「なんだ、簡単じゃない、答えは5だよ」
オサム「ええっ、どうして」
タク「これ、中学の問題だろう?」
オサム「ほんとだ、答えは5だ」
怪獣になると同時に知能まで高くなったらしいテツオン、得意にそうに鼻をこする。

抜け目のない子供たちは、今度はテツオンの頭脳を利用して、宿題屋を始めるのだった。
青年「えへへへへ、俺とこいつの宿題なんだけどやってくれる?」
テツオン「OK、OK、そのかわりケーキ30個ね」
青年「15個に負けてよ」
テツオン「30個じゃなきゃ駄目だよ」
などとやってると、猛たちがあらわれるのだが、
猛「テツ男くん、そんなケーキを食べたらお腹を壊すよ」
イケダ「ちょっとUGMまで来てくれないかな」
その時点で、何故かUGMが、テツ男がテツオンになったことを知っているのは、物凄く不自然に感じられる。
また、さっきは大人からテツオンを守ろうとか言ってた癖に、

テツオン「困ったなぁ、今、勉強中なの」
猛「勿論、みんな終わってからで良いんだ」
テツオン「何しに行くの」
猛「ただの検査さ、心配ないよ」
テツオン「ほんじゃ行くよ」
オサムたちが、テツオンが猛に連れて行かれるのを黙って見ているだけと言うのも、かなりの違和感がある。
また、このやりとりがあまりに自然なので、管理人、てっきり、猛はそれがぬいぐるみを着たテツ男だと思っているのかと勘違いしたくらいだ。

それはともかく、通路の向こうからテツオンが歩いてくるのを見て、

ユリ子「あっ、怪獣!!」
思わず叫ぶユリ子タン。
あれ、嬉しや、再びユリ子の画像を貼ることができるとは……

イケダ「だいじょうぶだ、ユリちゃん、怪獣じゃないんだから」
ユリ子「だって……」
で、それに対し、イケダ隊員がごく自然に否定したので、ますます猛たちが、それが本物の怪獣だと知らないのかと錯覚してしまった。

テツオン「僕、怪獣だよ」
ユリ子「本人もそう言ってるわよ」
猛「こら、テツ男くん、ふざけてる場合じゃないぞ。ユリちゃん、この子は人間なんだよ」
猛、テツオンの頭を叩くと、にこりともせずに言って歩き去る。
テツオン「そう、僕は怪獣人間なの」
つまり、猛たちはあくまでテツオンを、何らかの理由で怪獣のようになってしまった人間として扱っているわけだ。
しかし、まあ、冷静に考えたら、見た目はどう見ても怪獣なのに、子供たちからの情報だけで、よくテツ男が変身したものだと信じたなぁと言う疑問が残る。
普通は、とりあえず本物の怪獣に対するように銃を向けてテツオンを捕獲し、それから本人や子供たちから事情を聞いて半信半疑ながらUGMに連れてくる……と言うのが筋ではないか。

ユリ子「人間?」
それはそれとして、最後にもう一枚ユリ子タンの綺麗なお顔を貼っておこう。
次のシーン、司令室で、テツオンのレントゲン写真を見ながら、
猛「検査の結果です、これを見てください」
エミ「なんですか、これ」
イケダ「宇宙植物ですよ」
オオヤマ「植物?」
猛「ええ、テツ男くんの飲み込んだものは卵なんかじゃなくて宇宙植物の種だったんです」
と、隊員たちが話しているのを見て、やっと、猛たちが最初からテツオンがぬいぐるみではなく、テツ男が変化した本物(?)の怪獣だと承知していたことを理解した管理人であった。
ちなみにレントゲンで見ると、頭蓋骨まで変形していることが分かり、さすがにそこまで行っちゃったら、もとに戻るのは不可能なんじゃないかなぁ?
イトウ「なるほど、その種が胃の中に根を降ろして体に悪影響を与えたって訳か」
イトウはこともなげに言うが、これって「悪影響」どころの話じゃないよね。
司令室には、テツ男の両親も呼ばれていた。
母親「お前、ほんとにテツ男なの」
テツオン「ああ、そうだよ、ママ」
親の気も知らず、テツオンは持ち込んだ大量のケーキを幸せそうに食べている。
母親「隊長さん、テツ男は元に戻れるんでしょうか」
オオヤマ「ああ、お母さん、心配ありませんよ、我々が元の体に戻して見せます」
母親の質問に、根拠のない自信たっぷりに請け負うオオヤマであったが、この段階でそんなことを約束するのは、単なる無責任と言うものだろう。
だが、当のテツ男は、
テツオン「僕、このままがいいようっ」
母親「テツ男!!」
テツオン「だって、このままのほうがなんでも出来ちゃうんだもん」

父親「お前のせいだ、お前が間違った教育をするから、テツ男はこんな怪獣になったんだ」
母親「あなたこそ、毎日毎日酔っ払って帰ってきて、ちっともうちのなかのこと構ってくれない……」
情けないことを言う息子を前に、責任のなすりあいを始める両親であった。
猛は慌ててなだめると、
猛「君を元に戻す方法が分かるまで、少なくとも三日はかかる、それまで、そのままで良いか、元の体が良いが、良く考えてみたまえ」
いや、これからその方法を検討するのに、なんで「三日はかかる」なんてことが言えるの?
テツオンは猛のアドバイスや両親の嘆きを右から左へ聞き流し、テレビドラマの撮影があると言ってUGMから出て行ってしまうのだが、ストーリーの都合とは言え、猛たちが溜息をつくだけでテツオンを引き止めようとしないのが、めちゃくちゃ納得行かない。
本人がいないのに、どうやって元に戻す方法を見つけられると言うんだ?
それに、テツオンが巨大化して暴れ回る可能性だってあるわけで、UGMの態度はどう考えてもおかしい。
せめて、止めようとしたら、テレポーテーションで勝手に出て行ってしまったとか、それくらいの演出はつけて欲しいものだ。
ともあれ、町に戻ったテツオンはオサムをつかまえてドラマの続きを撮ろうと言うが、
オサム「それがねえ、君が本物の怪獣だとばれたから、優勝は取り消しになったんだよ」
テツオン「ええっ」
オサム「つまり、ビデオセットは没収されちゃったんだ」
テツオン「そうなの」
しかし、町内会はどうやってテツオンが本物の怪獣だと知ったのだろう?
子供たちがわざわざバラす筈もないし、UGMが、ペラペラ外部に話すとも思えない。
テツオン「じゃ、一緒に勉強しようよ」
オサム「悪いけど、君とやると僕の実力が付かないような気がするんだ。勉強はやっぱり自分の力でやらなきゃ駄目なんだよ。僕、これから塾があるから」
テツオン「あ、オサムくん……」
と、入れ替わりにユニフォームを着た子供たちが来たので、自分も混ぜてもらおうとするが、
男子「お前、入れてやんないよ」
テツオン「どうして」
男子「打てば必ずホームランじゃないか」
男子「やってられないよ」
冷たく拒絶し、テツオンを置いてさっさと行ってしまう。
今度はあの出前持ちが来て、
出前持ち「おい、さっきは良くもびっくりさせたな、ひっくり返したラーメンの代金、払え」
テツオン「あ、ごめんなさい」
スタコラサッサと逃げ出すテツオンであったが、出前持ち、ひっくり返った時は別にそんなこと言ってなかったのに、今更怒り出すと言うのも変である。
テツオン、瞬間移動して自宅の庭に飛ぶが、いくら呼びかけても両親は出て来ない。

テツオン「どうして誰もいないの?」
途方に暮れて、しょんぼりと玄関先に座り込むテツオンの姿は、いかにも哀れであった。
……いや、それこそ瞬間移動して家の中に入れば良いのではあるまいか。
ま、屋内のシーンがないのは、撮影の都合だろうなぁ。
テツオン「つまんないなぁ、誰も相手にしてくれないんだもん」
あの松林に立ち、寂しそうに沈む夕陽を眺めるテツオンであったが、それでも腹は減るので、商店街に行き、たまたま見掛けたパン屋に入り、そこにあったパンを全部食べてしまう。
次のシーンでは、土手の石段に腰掛けて満足げに腹をさすっているテツオンの姿となるが、その横にりんごがひとつ置いてあるのはいささか混乱を招く。
実は予告編には果物屋から果物を盗むシーンがあって、本編ではカットされているのだ。
と、そこへ猛があらわれ、セクシーポーズを取りながら、

猛「どうだい、怪獣は、楽しいかい」
テツオン「う、うう……」
猛「ずっとそのままでいたいんだろ? もうそろそろ元に戻りたくなかったかな」
テツオン「そんなことないよ、前の僕は野球も下手だったし、勉強もあんまり出来なかったし……」
猛「そうか、友達は努力して野球が上手くなるように練習したり、勉強したりしてんのに、君はなんでもできるようになったんだもんなぁ」
テツオン「うん」
猛「だけどそれが本当にいいことだったんだろうか」
テツオン「……」
猛「なんでもできるようになった代わりに友達を失っちゃ、つまんないだろ」
テツオン「う、うん」
猛、中学教師の頃に戻ったような口調で、優しくテツオンに教え諭す。
ちなみにこのシーンを見て、「ドラえもん」の傑作「どくさいスイッチ」のラストを連想してしまった管理人であった。
どっちが先だか知らないけどね。
テツ男が十分反省したのを見届けると、
猛「さあ、お父さんやお母さんも心配してるよ」
テツオン「嘘だよ、うちに誰もいなかったもん」
猛「そうか、じゃあ、僕と一緒にうちに来てご覧」
猛がテツオンの手を引いてすぐ近くの交番の前に連れて行くと、その両親が、変わり果てた息子の代わりにパン屋や出前持ちたちに謝っているところだった。
猛「君がそんな姿になっても、君のお父さんやお母さんもやっぱり自分の子供だと思ってるんだよ」
テツオン「うん、パパ、ママーっ!!」
テツオン、たまらなくなったように駆け出し、両親の前に膝を突き、

母親「ずっと探してたのよ」
テツオン「僕、元の姿に戻りたいよーっ!! 今すぐに戻りたいよーっ!!」
身も世もなく泣き叫ぶ。
ちなみに、その場にはカミナリ親父もいるのだが、カミナリ親父はテツオンのことは知らない筈なので、ここにいるのはちょっと変である。
猛「ようし」
猛、人目につかない場所に移動すると、等身大の80に変身し、さらに体をミクロ化させ、テツオンの口の中から体内に入り、胃の中にいた宇宙植物と戦い、これを倒す。
で、80が抜け出すと同時に、テツオンはテツ男の姿に戻るのだが、やっぱりいくらなんでも安直過ぎるよね。
骨格まで変わっていたのが、一瞬で元に戻れる筈がない。
なので、宇宙植物を倒したあと、80がリライブ光線のようなものを出して、テツ男の体を元通りにしてやった方が説得力があったかも。
どっちにしても、80の活躍がなければ、テツ男を救うことは出来なかっただろう。
ラスト、以前のように友達と一緒に野球をしているテツ男。
私服姿の猛とエミが見物に訪れ、

エミ「あの円盤と宇宙植物の種は一体なんだったのかしら」
猛「そうだなぁ、あれはもしかしたら、他の星から地球に送られてきた、プレゼントだったかもしれないな」
エミ「プレゼント?」
猛「うん、花のプレゼントだ」
エミ「花の種だったわけね、でも怖いわね、花の種が人間を怪獣にしちゃったんですもの」
と、猛は牧歌的な憶測を口にしているが、客観的に見れば、そんな生易しいものではなく、人間の体内に寄生して怪獣にしてしまう、一種の生物兵器であり、侵略者の尖兵だった可能性が高い。
以上、子供たちの生態をリアルに描いた、平均点の低い「少年ドラマ編」(31話~42話)の中では、屈指の力作であった。
不思議なのは、管理人が、なんでこの話をスルーしちゃったのか、と言うことである。
たぶん、可愛いゲストヒロインがいなかったからだろうなぁ。
我ながら、大変分かりやすい動機である。
と言う訳で、久しぶりの「80」レビューでした。
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