翌朝、千代子に正体を見破られたとは夢にも知らない人見は、予定通り、モーターボートで大野、運転手の本橋を連れて鬼島へ向かう。
しかし、300億も費やしたというのに、移動手段がちっちゃなモータボートって、セコくないですか?
それこそ、さっき出て来たヘリコプターで渡れば多少高級感が出たのに。

大野「寒くありませんか?」
千代子「いいえ、でも、なんだか怖いわ」
人見「パノラマ島の連中は女王様の到着を待ち侘びてるんだ」
大野「奥さんがびっくりして目を剥くことだけは確かですよ」
4人は無事に鬼島に上陸するが、実際にその島の上にパノラマ世界を再現するなんてことはプロデューサーの財布が許さないので、すべては島の地下に作ってあることにして、

千代子「何処へ行くんですか」
人見「海底だ」
大野「海の底を切り開いて作ったんですよ」
4人は洞窟の中に作られたエレベーターで、ぐんぐん地底に潜っていく。
やがてエレベーターが止まり、4人が外へ出ると、

あら不思議、そこは水族館になっているではありませんか!!
しかし、わざわざ海底に水族館作るって、めちゃくちゃ無意味のような……
千代子「水族館ね」
人見「いや、ただの水族館じゃない、ここは水面下100メートルの海底に私が作り上げた空想の世界だ。ご覧、イシダイ、ハマチ、フカ、エイ、ウミガメ、あらゆる魚がいっぱいいるんだ」
千代子「いや、だから、水族館でしょ?」 人見「ま、そうなんだけどね……」
なにしろ、油壺マリンパークですからねえ……
どんなにカメラを回したところで、映るのはフツーのお魚さんたちばっかりなのである。
原作でも、導入部はこの海底世界なのだが、そこは、実際はそんなに広くない生簀のようなものを、レンズの力や目の錯覚を利用して多種多様な海洋生物が蠢いている広大な神秘の世界に仕立てているのがウリになっていたように思う。

人見「どうだ?」
大野「こんなものはほんの序の口、まだまだ驚くの早いですよ~」
千代子「……」
千代子が、なんか、看板だけ派手な、ド田舎の潰れかけたテーマパークにうっかり足を踏み入れてしまったような、いたたれまない顔をしているように見えるのは、絶対気のせいです!!
で、別の部屋にいざなわれた千代子の前に繰り広げられたのが、

毎度お馴染み、近藤玲子水中バレエ団の皆様による、エロくもなんともない水中ダンスであった。
そんなこったろうと思ったよ!! せめてヌードで泳いで欲しかったなぁ……
このドラマ、途中の愛欲にまみれた人間模様は大変面白いのだが、肝心のパノラマ島のシーンになると、途端にトホホな気分にさせられてしまうのが非常に残念なのである。
乱歩が描きたかったのは、ほんとはパノラマ島のディティールなんだけど、ドラマでは予算や技術の都合上、かなりテキトーな描き方をされている。
個人的には別にそんなシーンに興味はないのだが、人見が左目や自分の人生さえ投げ打って築き上げたものが、こんなチンケなテーマパークでは、見てるほうも納得できないのである。
もっとも、劇中の千代子は、夫の顔を立てて、それなりに驚いたふりをしてくれる。
人見「舞台はな、本物の海底なんだ」
千代子「この人たちは?」
大野「パノラマ島の夢に共鳴してくれた人達だ」
人見「ほら、みんな歓迎してくれてるだろ」
やがて、赤に黄色、青など、ほとんど戦隊ヒーローみたいなカラーリングの衣装を着た踊り子たちが勢揃いし、千代子に見せるようにポーズを決める。

千代子「……」
千代子も、「気の毒に……」とでも言いたげな目をしながら手を振り、彼女たちのパフォーマンスに応えるのだった。
しかし、酸素ボンベもつけずに海底でそんな真似ができるだろうか?
また、大野はボランティアみたいなことを言っていたが、実際は、かなりの給料を払って演じて貰っているのだろう。
人見たちは次の場所に移動しようとするが、運転手の本橋は茫然とその場に立ち尽くしていた。
大野「本橋、何をしてる?」
人見「ああ、本橋も私を島に送っては来ているが、この海底は初めてだからな、はっはっはっ」
が、人見は怪しむどころか、本橋の反応を見て、むしろ得意げに笑って見せるのだった。

本橋「凄いですね、まるで夢を見ているようです!!」
本橋、まるで初めてストリップを見た中学生のように目をキラキラさせて叫ぶ。
しかし、原作が書かれた1920年代ならともかく、82年のドラマでは、さすがにちょっとわざとらしいよね。
4人は次のパノラマに続く洞窟のような通路を進む。
千代子「何処へ行くんですか」
人見「これからが本当のパノラマ島なんだよ」
大野「なにしろ300億の道楽ですからなぁ」
本橋「300億? もったいないなぁ……」
人見「余計なこと言うな」
本橋「は」
300億と聞いて、思わず庶民的な感想を漏らす本橋を、人見が一睨みして黙らせる。
もっとも、ほんとにこれで300億掛かってるの? と言いたくなる安っぽさなのは間違いない。
たぶん、大野がだいぶ中抜きしてるんだろうなぁ。
○○とか、○○○みたいに。
それはともかく、4人がやってきたのは、人見のイラストにもあった古代ローマを思わせるような広大な世界であった。

千代子「あら、さっきエレベーターで海底に降りたのに、いつの間に陸に出たのかしら?」
人見「いや、ここはまだ海底だよ」
千代子「だって、こんなに広いのに……」
人見「いいかね、ここ全体で野球場ぐらいの広さなんだ」
千代子「信じられないわ、だって空が……」
人見、千代子の新鮮な反応に目を細めて頷くと、
人見「うん、太陽も雲も私の創作だ、人工光線だよ」
そう言ってラジコンのリモコン装置のようなものを取り出し、ボタンひとつで空の色を自由自在に操って見せる。
千代子「素晴らしいわ」
大野「いや、まだまだですよ」
人見「さあ案内しよう、夢の楽園パノラマ島へ」
三人がその場を離れたあと、
本橋「いや、あれって、書割じゃねえの?」 言ってはならないことをぼそっとつぶやく本橋であったが、嘘である。
ま、実際、原作においても書割が使われていて、それを色んなアイディアを駆使して本物っぽく見せるのが、パノラマ島のパノラマ島たる所以なのだが、ドラマでは、何の工夫もなくただ書割が使われているのが、いかにも興醒めなのである。
でも、これはまだマシなほうで、

千代子「広いのね。とても海底とは思えないわ」
次のサバンナっぽい原野のパノラマは、見え見えのスクリーンプロセスで撮られている。
人見「あの林も、あの丘陵も遠くへ行けば行くほど小さくなっている。人工の空と人工の光線の魔力で広く見えるだけさ。つまり私の才能が自然を征服したんだよ」
大野「社長は天才ですなぁ」
人見の台詞、原作を読んでない人にはピンと来ないだろうが、木の大きさを徐々に小さくしながら並べて植えることで、人間の目の錯覚を利用した奥行きを作り出す、いわばジオラマの技法で実際以上に広く見せているということが言いたいのである。
その後も海辺や滝など、色んな部屋を巡る4人であったが、滝のシーンで、滝の映像がもろに主演者の背中に映っているのがNGです。
続いて、遊覧船に乗ってジャングルの中の川下りを楽しむ一行。

千代子「あっ、ワニが」
驚く千代子に対し、
ワニ「せやで、ワイはワニや、姉ちゃん、ワニがそんなに珍しいんか?」 などと言ってるような感じで悠然と泳ぐワニさん。
人見「ああ、あれは生きている。ちゃんとした本物だ」
大野「しかもたくさんおりますよ~」

人見「どうだ?」
大野「凄い芸術でしょ」
本橋「いや、ここ、熱川バナナワ……」 人見&大野「おだまり!!!!」 途中から嘘だが、千代子も「どうだ?」って言われて困っただろうなぁ。
ワニがたくさんいてもねえ……
その生きたワニで「ワニワニパニック」が遊べるとかならまだしも。
その後、バナナの林や、温室の中のサボテンなどを見て回る。

千代子「この光は?」
人見「ああ、勿論、人工光線だ。太陽と同じエネルギーを持ってるんだ」
大野「さ、次は鳥のパラダイスに参りましょう」
三人がその先に進んだあと、
本橋(ここ、伊豆シャボテン公園なのでは?) またしても、気付いてはいけない真実に気付いてしまう本橋さんであった。
運転所にしておくのが勿体無い鋭さであったが、それもその筈……
つらく苦しいタイアップ兼用のパノラマ島めぐりはまだまだ続き、フラミンゴやエミュー、オウムやダチョウなど、色んな種類の鳥が暮らしているエリアに踏み込む。
本橋「いやぁ、楽しいですねえ」
これには気難しい本橋さんも大喜びであったが、
人見「おい、お前は鳥が嫌いだったんじゃないのか? カラスの世話だけは勘弁してくれと言ってたじゃないか」
本橋「あ、いや、カアカアって鳴き声を聞くとゾッとするんですがね、でも、鳥がこんなに楽しいものとは知りませんでした」
人見に鋭く指摘されて、一瞬ドギマギしてしまう明智、いや、本橋さんでした。
しかし、
「鳥がこんなに楽しいものとは知りませんでした」って、たぶん、古今東西のドラマの中でも、このシーンにしか出て来ない珍台詞だろうなぁ。
つーか、現実世界でも、人類創生以来、こんな台詞言ったやつ一人もいないと思う。
で、漸くここでつらく苦しい時間が終わり、

皆様が、キリンに進化するくらい首を長くしてお待ちの、お楽しみのお時間となるのです。
いやぁ、惚れ惚れするようなお椀型おっぱいですなぁ。

続いて、何かに驚いたような顔のおっぱい丸出し人魚さん。

ただ、三人目の女性のポーズが、なんか本職のストリッパーみたいで、若干萎える。
まあ、裸婦の中には、実際のストリッパーの方も混じっていたのではないかと思うが。
と、向こう側から、アラビアンナイト風の薄絹をまとったダンサーたちがやってきて、人見たちの前で舞い踊る。
割りと邪魔だった。 嘘はさておき、4人はそのダンサーたちに先導されて、いよいよパノラマ島の中心部にして、全国のお父さんが待ちに待っていた「エロスの園」に向かうのだが、

本橋「ほお、可愛いねえ」
その途中、白いローブをまとった文代さんが生きた彫像のように立っていて、その頬を本橋が撫でたりする。
これも、後の伏線になっているのだ。
しかし、今更言っても仕方のないことだが、ここは是非、ファイト一発五十嵐さんにも、ガバッと脱いで貰いたかった。
そうすれば、まさにこのドラマは「伝説」となっていたであろうに……
それにしても、セクシー女優さんではない普通の女優さんが、地上波のドラマでおっぱいを出すなんてことは、今では到底考えられないことで、良くも悪くも、昭和の時代は遠く去りにけり、と言う感慨を抱くのである。
もっとも、平成以降でも90年代までは結構おっぱい見れてたんだけどね。
いずれにしても、五十嵐さんが、こんなにたくさんのおっぱいと共演したのは、これが最初で最後の経験だったろうなぁ。
さて、4人がたくさんの池がある大広間にやってくると、

待ってましたとばかり、白人のねーちゃんと、

黒人のねーちゃんがすっぽんぽんで4人を歓迎してくれる。

他の裸婦たちも、急いで4人の周りに集まり、おっぱいもお尻も丸出しで、彫像のようなポーズを取る。
人見「ここがパノラマ島の楽園『エロスの園』だよ」
人見の言葉に合わせて、池の周りに立つ筒から、何発もの打ち上げ花火が発射され、人工の夜空に大輪の花を咲かせて散る。
……にしても、これだけ大量のおっぱいとお尻が出て来たドラマ、少なくとも日本にはないだろうなぁ。
もっとも、同じ人が違う場面で何度も脱いでいる、ヌード界の福本清三さんみたいな女性もいるので、実際におっぱいを掘り出している女優さんの数は、実はそれほど多くないんじゃないかと思うんだけどね。
ところで、当時のスタッフも、脱いでくれる女の子たちを集めるのにだいぶ苦労したと思うが、この10数年後、スタッフがSODの「全裸運動会」などを見て、どんな感想を抱いたかと考えると、ちょっと興味深い。
「こんなにたくさん脱いでくれる子がいて良いなぁ」と羨ましく思うか、はたまた、「現代女性のモラルの低下はこれほどまで進んでいるのか」と慨嘆するか……
まあ、全国放送のドラマとエ ロビデオを、同列に比べてはいけないんだけどね。

大野「みんながあなたを歓迎しているのですよ」
人見「さあみんな、島の女王様のお越しだ、用意したものを」
人見の言葉に踊り子たちが輪を作って千代子を取り囲み、

千代子も、OPクレジットで見せたような白いローブ姿に着替え、女王様然として、広場を見下ろす椅子の上に座る。
この後も、色んなヌードが画面に映し出されるが、さっきの繰り返しに過ぎないので、

杯を豪快に飲み干して微笑みかける、妙に肉感的な人魚さんだけ貼っておこう。
ただ、「エロスの園」と言う割りに、おっぱいやお尻がたくさん出るだけで、あんまりいやらしいシーンが出て来ないのが、看板倒れと言う感じがしなくはない。
まあ、さすがに本番は無理でも、おっぱいを揉むシーンくらいはやって欲しかった。
あと、基本的にみんな常に全裸なので、女性の下着姿や、服を脱ぐシーンが見られないのも、物足りないといえば物足りない。
この後、

神殿のような東屋に落ち着いて、裸婦たちの接待を受けている様子なんか、まるっきり安いおっぱぶに来てるようにしか見えないし……
大野「みんなこの世の幸せを満喫しているよ」
人見「私は人間の赤裸々な姿を表現したかったのだ」
いや、赤裸々な姿って言うか、ただの女の裸なのでは?
最初のほうで管理人がギャグにしていたように、あれこれ小難しい理屈を捏ね回していたが、結局、人見はひたすらおっぱいが見たかっただけなんじゃないかと言う気が、少なくともこのシーンを見る限り、凄くするのである。
まあ、300億かけたおっぱぶと思えば、それなりに壮観ではあるが……
と、そこへ一人の踊り子がやってきて、優雅な手つきでメモを大野に渡す。
それがお会計の請求書だったらかなり笑えたと思うが、

それを見た大野は、俄かに厳しい顔になると、人見のそばに行き、何やら耳打ちしつつ、本橋のほうに視線を向ける。
大野は手を叩いて侍っていた女の子たちのみならず、エロスの園にいるもの全員を下がらせてしまう。
と言う訳で、楽しい楽しいおっぱいタイムはこれにて終了。
ま、あれこれ注文をつけたが、なんだかんだで、テレビドラマでこれだけたくさんのおっぱいが見れるというのは、やはり偉大なことである。
千代子「一体どうしたんですか?」
いい気分でピアノを弾いていた千代子も、怪訝な顔で神殿にやってくる。

大野「本橋……」
本橋「はい」
大野が指を動かしながら、部屋の隅で一心不乱にチキンを食べていた本橋の名を呼ぶ。
本橋、呆けたような顔で「はぁ?」と聞き返す。
大野「来いと言ってるんだ」
本橋「はい……」
大野、ゆっくり本橋に近付くと、いきなり手にしたグラスの液体を本橋の顔にぶちまけ、その体を押さえると、本橋の特徴的な頬の痣をハンカチでごしごし拭く。
と、その痣が、絵の具のように綺麗に拭き取られたではないか。

人見「何者だ、貴様?」
大野「たった今、秘書の吉岡から連絡があった、本橋運転手が何者かに縛られて自宅の床下に転がされていたとな」
人見「そうか、にセモノだったのか、道理でおかしいと思った」
でも、本橋は別に犯罪者じゃないのだから、そんなことしたらあかんやろ。
実際、明智が、善意の(?)第三者をそんな非合法なやり方で拘束するのは、シリーズではこれが唯一の例ではあるまいか。
もっとも、そうではなく、進んで本橋が協力してくれたのなら、大野たちが目の前にいる本橋がニセモノだと永遠に気付いてくれないので、窮余の一策だったのかもしれない。ドラマ的に。

本橋「はははは、あなたの真似をしただけですよ」
人見「なにぃ」
本橋「他人に成りすますのも楽じゃありませんな、お互いに仮面を脱いでゆっくりと話し合いましょうか」 ここから、本橋の声が天知先生の声に切り替わる。
まず、カツラを外して投げ捨て、

何度見ても笑っちゃう、俳優の頭だけ天知先生みたいな髪形の状態になる。
明智「ふっふっふっふっ」
はい、ここでもう何回書いたか分からない、「ちゃらーらららー」&「ベリベリベリ」タイムとなりますが、さすがにもう貼りません。
代わりに、「スケバン刑事」第7話「愛と憎しみのアーチェリー」に出演した時の、

すげームカつく本橋(出光元さん)の画像を貼っておく(なんで?)
ともかく、つつがなく変身解除シーンも終わり、明智はその本来の姿を三人の前にさらけ出すが、

大野「貴様……
誰?」
明智(しまっつ!!) 明智、ここで重大なことを思い出す。
今回の犯人たちとは初対面だったことに……
まあ、ほんとは、
大野「貴様、確か明智小五郎」
人見「なに、探偵の明智?」
明智「いかにも、明智です」
何故か大野っちが明智の顔を知ってくれていた(註2)ので、明智さん、人生最大の屈辱を味わわずに済むのだった。
註2……カラスを引き取りに来たとき、大野が明智と顔を合わせていた可能性はある。
ちなみに「パノラマ島奇談」に出てくる探偵は、北見小五郎と名乗っているが、まあ、明智小五郎と思って差し支えあるまい。
ついでに言うと、真相が暴露される前に、千代子は人見によって殺されて、後の英子のように死体を壁に塗り込められてしまうんだけどね。
大野「何をしに来た?」
人見「ほおお、君が明智小五郎か、まぁ、図らずも外部からの最初の訪問者になったわけだが、このパノラマ島の印象はどうだね?」
ナイフを翳して殺気立つ大野とは対照的に、人見は本物の芸術家のように鷹揚な口調で尋ねる。

明智「史上最大の愚挙と言ってもいいでしょう」
人見「なにぃ」
明智「この島にあるのは驚くべき浪費だけです。とても芸術作品とはいえません」
だが、大野と違っておべんちゃらをいう必要のない明智、人見の畢生の「作品」をばっさり斬り捨てる。
ま、その割りに、本橋として見物してる時は結構楽しそうでしたが……
大野「おい、言葉に気をつけろ」
明智「第一、偽の人物から本物の芸術が生まれる訳はないでしょう」
が、明智にとってはパノラマ島の芸術性の有無などどうでもいいことであり、すぐに探偵としての本題に移る。
人見「それは、どういう意味だ」
明智「あなたは菰田源三郎じゃない」
人見「うん?」
明智「人見広介という全くの別人です」
大野「きっさまぁ、何を言う?」
ずばり、彼らの最大の秘密を暴露されて、大野も人見も一瞬ギョッとして顔を見合わせるが、
人見「ふっふっふっ、ははははは、明智君、君は実に奇想天外なことを思いつく人だね。私が何故菰田源三郎でないのか、説明してもらいたいもんだね」
人見はなおも余裕たっぷり態度を崩さず、あくまで穏やかにその理由を聞く。

明智「カラスですよ」
人見「うん?」
明智「菰田源三郎が可愛がっていた一羽のカラスがある日、迷子になりました。別の男を菰田と間違えてついて行ってしまったんです。その男、人見広介、つまりあなたは菰田源三郎とは偶然にも瓜二つだった。二人がそっくりであると知った人見の妻は、インチキ教祖・大野雄三と語らってとんでもないことを企んだ」
人見「インチキとは何だ!!」
明智「つまり、菰田源三郎と人見広介の入れ替えだ」
相変わらず快刀乱麻を断つ明智さんの名推理であったが、そもそもどうやってそのことに気付いたのか、肝心のきっかけが特にないのが、不満といえば不満である。
原作では、前記したように、人見が昔発表したパノラマ島の小説の内容と、ニセ菰田が作ったパノラマ島の様子がぴったり一致していることが決め手になるんだけどね。
あ、まあ、人見の工房に残されていた「エロスの園」と言う言い回しを、ニセの菰田がそのまま使っているので、バレバレと言えばバレバレなんだけどね。
だが、人見は依然として自信たっぷりで、

人見「私が菰田源三郎だと言う確実な証拠があるんです、それは、この証人だ、なぁ、千代子、私が源三郎かニセモノであるか、君が一番よく知ってるはずだね?」
千代子「……」
千代子の肩に手を回して確認すると、千代子も無言で頷くが、
人見「さあ、証明してくれたまえ、私が正真正銘の菰田源三郎であることを」
千代子「いいえ、あなたはニセモノです」 その美しい唇から、これがアニメだったら確実に人見の顎が外れて落ちていたであろう、衝撃の爆弾発言が飛び出す。

人見「なんだと、君は私が生き返った後もずっと一緒に暮らしたし、夜だって共に過ごしたじゃないか」
千代子「そう、昨夜あなたに初めて抱かれたわ、そしてはっきりニセモノだと言うことが分かったの」
人見「くそう、知っていたのか」
千代子の土壇場での「裏切り」に、人見も遂に菰田源三郎の仮面を脱ぐ。

大野「慌てるな、二人とも処刑してしまおう、悪魔の谷に連れて行くんだ」
二人はナイフと銃で脅しながら、明智たちを別の場所へ追い立てる。
しかし、明智さんにしてはちょっと無防備と言うか、迂闊だよね。
二人が後述するような回りくどい方法を選ばず、いきなりこの場で銃をぶっ放す恐れもあったのだから、ここは間髪入れずに波越たちを突入させるべきだったろう。
その6へ続く。
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