「高速戦隊ターボレンジャー」は、1989年3月18日に、東映まんがまつりの一本として公開された劇場用オリジナル作品である。
太古の昔、何処とも知れぬ地底世界で、暴魔百族と人間たちが乱闘している。
ちなみにOPクレジットに
「ぶるうたす」と言う、懐かしくて涙が出そうになる名前があったが、どうやらこの乱闘シーンで暴れている筋肉ムキムキ系の人間を演じているらしい。
せっかく呼んだんだから、そのアップくらい撮ってやれと思う。
それはともかく、ジャシンボーマと言う恐ろしい暴魔の猛攻に劣勢となる人間&妖精同盟軍。

その場にはシーロンと、全く同じ恰好をした別の妖精フローラがいた。
フローラ「暴魔獣!!」
シーロン「フローラー!!」
フローラ「許さないわっ!!」
人々がジャシンボーマの吐く地獄の炎で焼かれたのを見て、フローラは無謀にも正面から敵に向かっていく。

フローラ「キャアアーッ!!」
シーロン「フローラーッ!!」
フローラは情け容赦なくジャシンボーマの炎で生きたまま焼き殺される。
このフローラ役の女の子、顔は良く見えないのだが、数少ない台詞と言い、炎を浴びて両手を「勝手にしやがれ」のジュリーのように振っている動きから見ても、演技は素人同然である。

ジャシンボーマ「ギィエエエーッ!!」
だが、焼かれてもただでは死なない妖精は、不思議な光となってジャシンボーマの体にまといつき、その体を拘束する太い鉄鎖に変わる。
畳み掛けるようにラキアがその周りに土牢を作り上げ、ジャシンボーマを封印する。
OP後、ジャシンボーマに似た暴魔獣が細長い階段を降りてきて、封印中のジャシンボーマの前に立つ。

ジュニア「おお、父上、偉大なるジャシンボーマよ、この刀の威力でジャシンボーマJr、命に換えても必ず出してご覧に入れまするぞ!!」
ジャシンボーマ「それでこそ我が息子よ、2万年もの間、こんなところに封印された恨みを晴らしてやるのだ!!」
さすが暴魔百族の守護神といわれるだけあり、ジャシンボーマは封印中でも体を動かしたり、外部と会話したりすることが出来た。
さらには炎を吐き出して、ジュニアに浴びせることも出来た。
その結果、
ジュニア「あっつう!! 人がせっかく助けに来てやったのに、何すんだ、クソオヤジ!!」 ジュニアはプンスカ怒ってそのまま地上へ帰っちゃったそうです。
ジャシンボーマ(ちょっとやり過ぎたかしら……?) 親しき仲にも礼儀ありって言いますからね!!
……と言うのは嘘で、ジュニアは父親の封印を解こうと、張り切って行動を開始する。

さて、力たちの高校では、ちょうどマラソン大会が賑々しく開催されていた。
しかし、これ、どう見てもプロのブラスバンドで、たかが校内のマラソン大会にこんな大仰なことをするとは、意外と金持ち学校なのかもしれない。

そしてバトン部(だっけ?)のはるなは、チアリーダーの格好して男子たちの応援をしていたが、普通は男女とも同じ日にやると思うので、はるなだけ応援と言うのはなんか変である。
それにしても、この色気のカケラもないコスチューム、もう少しどうにかならなかっただろうか?
あと、仮にも競技会なのに、選手たちにまじって自転車に乗った山口先生がいて、黄色いメガホンで檄を飛ばしているというのも、微妙に変な光景である。
そんな折、シーロンが血相変えて飛んできて、何か悪い予感がすると力たちに訴える。
無論、力たちはレースも応援も放り出して、雑木林に落ちたシーロンの元に集まる。

シーロン「感じるの、とても邪悪な妖気を……恐ろしいことが起こりそうなんです」
力「シーロン、どうかしたのか」
はるな「シーロン、だいじょうぶ?」
息も絶え絶えに木の根っ子に縋りつくシーロンの体を、はるなが手のひらに乗せて気遣う。
はるな「はっ、凄い熱」
力「この様子はただごとじゃない、早く博士のところへ」
だが、彼らの前に、様子を見に来た山口先生が立ち塞がる。

山口先生「はいはいはい、何をさっきからぶつぶつ言ってるの? どうかしちゃったんじゃないの、気は確かなの?」
はるな「はいっ」
5人は適当に山口先生をあしらうと、博士の元へ急ぐ。
残念……でもないが、山口先生の出番はこれだけ。
ジュニア「いでよ、神聖封印!!」
一方、ジュニアは早くもひとつめの封印の場所を見つけ、柄に目玉のついた特殊な短剣で祈りを捧げていた。
そこへ変身済みのレッドたちが飛び込んでくるのだが、いささか話が飛躍し過ぎている。
さっきは太宰博士のところへ行くとか言ってたのに……

ジュニア「遂に見つけたぞ、神聖封印!!」
ブラック「神聖封印だと?」
やがて地中から、オベリスクのようなものがそそり立ち、ジュニアは短剣を投げつけて木っ端微塵に破壊する。
ラキア、ジャシンボーマの復活を防ぐ為、土牢とは別の場所に二つの神聖封印を施していたのだろう。
それを発見するためにジュニアが用いている特殊な短剣について何の説明もないのが物足りないが、ま、尺の関係だろう。
一方、暴魔城では、

ラゴーン「見事だ、ジャシンボーマJr、残る神聖封印はあとひとつ、それを破壊した時、暴魔獣ジャシンボーマが蘇るのだ」
レーダ「我らが暴魔百族の守り神、不死身のジャシンボーマが蘇るのですか」
ジャシンボーマ復活への期待に沸き立っていた。
ちなみに公開されたのが番組開始から間もない時期なので、いちいちキャラクターの名前がテロップで表示される。
ラゴーン「ジャシンボーマの地獄の炎で、この暴魔城を炎の城と化し、地上に生きとし生けるもの全てを焼き尽くしてしまうのだっ」
ラゴーンの台詞に合わせて、ジャシンボーマの炎を浴びた暴魔城が、宇宙から地球に向けて炎を吹きつけ、地上を灼熱地獄に変えるイメージが映し出される。
レーダ「あのー、ラゴーン様」
ラゴーン「なんだ?」
レーダ「地球を燃やす前に、ワシらが燃えるのでは?」 ラゴーン「はうっ!!」
……と言うのは嘘だが、炎を浴びたジュニアがもんどりうってたから、城の中にいる人もただでは済まないのではあるまいか。
ちなみに、ラゴーンの顔、ちびっ子にはちょっと怖過ぎたんじゃないかなぁ?
声は渡部さんだし……

ジュニア「いでよ、第二の神聖封印!!」
仕事が早いジュニア、次のシーンでは、もう第二の封印の場所を探り出し、浜辺でウーラーたちと儀式を行っていた。
その頃、力たちは、破壊された神聖封印の破片を持ち帰り、そこに刻まれていた古代文字を太宰博士に解読してもらっていた。
汗だくになりながらパソコンを操作していた博士、愕然とした声を上げる。

太宰「何と言うことだ……」
力「博士、何か分かりましたか?」

太宰「大変なことが分かったよ」
はるな「えっ」
どうでもいいけど、博士、いくらなんでも汗掻き過ぎなのでわ?
いま、3月だぞ。
寝込んでいるシーロンに聞かせないためか、太宰博士はみんなを家の外へ連れ出す。
外では、何か不吉なことの起きる前触れのように、おどろおどろしい雷鳴が響いていた。

はるな「ジャシンボーマをシーロンが?」
太宰「うん、不死身といわれているジャシンボーマを封じ込めることが出来るのはシーロンだけなんだよ。しかし、それは命と引き換えなんだ」
はるな「そんな……」
太宰「妖精が灼熱の炎で焼かれた時、命のオーラが発する、その命のオーラでしかジャシンボーマを封じ込めることが出来ないんだ」
博士は、もしジャシンボーマの復活を知れば、シーロンは自分の命を捨ててもそれを封印しようとするだろうと告げる。
はるな「いやよっ、シーロンを死なせるなんて」
力「俺たちはなんとしてもジャシンボーマの復活を阻止するんだ」
と言う訳で、変身済みの5人がマッハターボで第二の神聖封印に向かって疾走しているシーンとなるが、ひとつめの神聖封印といい、ターボレンジャーがどうやってその場所を知ったのか、何の説明もないのが不満である。

ジンバ「邪魔立て無用」
その途中、高みにジンバがあらわれ、

眼下を走るターボレンジャーにビームを放ち、その周囲で巨大な爆発を起こす。
ここは、自分がゴジラになったみたいで気持ちが良い。
5人はジンバを退けて再び走り出すが、そのタイムロスが致命的で、駆けつけたときには既に二つ目の神聖封印を破壊されたあとだった。
こうして、ジャシンボーマは2万年ぶりに自由を取り戻し、禍々しくも巨大な体躯をターボレンジャーの前にあらわす。
5人はターボレーザーを撃つが、ことごとく弾き返される。

ジュニア「はっはっはっ、ジャシンボーマは不死身、無敵の暴魔獣だ」
どうでもいいがジャシンボーマ、誰とまぐわってジュニアを生ませたのか、想像するとかなり気持ち悪いです。
ジュニアがやや人間っぽい姿なので、ジャーミンのような女性型暴魔とセックスした可能性が高い。
……なんか、コーフンしてきた(変態かっ!!)
ジャシンボーマ、例の地獄の炎を5人に浴びせるが、仰々しい名前と裏腹に、彼らを火球にして空の彼方に吹っ飛ばすだけで、殺傷力はいまいちであった。

太宰「ターボレンジャー応答せよ!!」
太宰博士、5人と連絡を取ろうとするが、小型モニターには何も映らない。
ちなみにこの機器、テレビ電話?
確か、これより数年前の「あぶない刑事」で、ホテルに、静止画みたいに画面の切り替えが遅いが、一応テレビ電話が使われていたから、家庭用のテレビ電話があっても不思議はない。
ドールハウスからそれを見たシーロンは、

シーロン「ジャシンボーマが出たんだわ、博士、博士!!」
窓を開け、必死に呼びかけるが、太宰は妖精グラスを外しているのでシーロンの声は届かない。
シーロン「私が行かなければ……さようなら、太宰博士」
シーロン、かつてその命でジャシンボーマを封印したフローラのことを思い出し、自分も死ぬ覚悟で窓ガラスを突き破って太宰博士の家から飛び出す。
5人は変身が解け、別の海辺に漂着するが、そこに太宰博士の車がやってくる。
博士からシーロンのことを聞いた5人は、シーロンを救うべく、再びジャシンボーマのところに向かう。
レッドはターボアタッカー、レッド以外の4人はマッハターボで急行するが、今度はジャーミンが邪魔に入り、一度は逃げられたものの、かっとびズルテンにまたがって追いつき、並走しながら電磁ムチをふるい、4人を道から叩き落す。

かっとびズルテンから大きなお尻を上げて、崖の端に向かうジャーミン。
こんな立派なフトモモをされているのに、全身タイツで肌が全く見えないと言うのは、実に嘆かわしく、特撮ヒロインにあるまじきコスチュームと言わざるをえない。
その上に着ているのが超ハイレグビキニだけに、この「蛇の生殺し」感は相当なものがある。
一方、別ルートを取ったターボアタッカーのレッドは、砂丘の上でジンバの乗るガラバー(暴魔百族の戦闘バギー)と戦うが、特に面白くないのでカット。
ラゴーンは、暴魔城を地表近くに降下させ、ジャシンボーマの地獄の炎を吸い取らせていたが、シーロンが接近しているのをレーダが察知する。
劇場版と言うことで、めったに城から出ないレーダが自ら地上に降り、地獄の炎の中に自ら飛び込もうとしていたシーロンを、杖で叩き落す。
一見、レーダの手柄のように見えるが、放置していれば、労せずしてシーロンを殺すことが出来たので、余計なことだったかもしれない。
シーロンに出来ることはジャシンボーマを封印することだけなので、だったらもう一度ジュニアに封印を解かせれば済むことだし。
あと、地球全体を地獄の炎で包んだら、暴魔百族も後で困るんじゃないかなぁ?

レーダ「なかなか勇敢な妖精だな」
シーロン「妖精の使命は命を掛けて暴魔百族を封じ込めること、みんな、みんな、そうやって戦ってきたのよ」
レーダ「ふっ、小癪な、そんなに死にたければこのワシが殺してやる」
大人気ないレーダ、シーロンをビームで殺そうとするが、そこへ力が飛び込んできて、間一髪でシーロンを救う。
しかし、ビームで妖精を殺したら、結局命のオーラでジャシンボーマが封印されることになるんじゃないかなぁ?
それとも、地獄の炎でジュージュー焼かれないと駄目なのかしら?
でも、だったらジャシンボーマを封印する時にしか使えない技になってしまうが……
なので、死因がなんであれ、妖精が暴魔獣に殺されると封印できる、で良いんじゃないの?
それはともかく、力、シーロンを安全な場所に連れて行くと、
力「シーロン、昔はね、ジャシンボーマを封じる為には妖精が死なねばならなかったかもしれない、でも今は違う、俺たちターボレンジャーがいるんだ」
と、他の仲間も湧いてきて、

洋平「そうともシーロン、君が探し出した戦士じゃないか」
シーロン「みんな……」
口々に、彼女がひとりじゃないことを思い出させる。
はるな「シーロン、命はとても大切なものなの」 シーロン「……」
はるなの言葉に、「毎週ウーラーや暴魔獣をザクザク殺してる人に言われてもなぁ……」と思うシーロンだったが、嘘である。
力「シーロン、俺達に任せてくれ」
5人は改めてターボレンジャーに変身し、ラス殺陣に突入する。
劇場版と言うことで、相手はジャシンボーマ&ジュニアを含めたオールスターキャスト、そしてふんだんにワイヤーアクションが盛り込まれ、かなり見応えのあるバトルになっている。
そのすべてを紹介する余裕はないが、ひとつだけ、

ブラック「ターボレーザー!!」

ブラック、レーダに向けてターボレーザーを撃つが、軽く跳ね返される。

ブラック「ターボレーザー!!」
位置を変えてもう一発撃つと、レーダ、今度は空中に浮かび上がってかわし、その背後で爆発が起きる。

レーダ、空中から電撃ビームをジグザグに放ち、

ブラック「うわーっ!!」
ブラックの胸に命中させる。
これは普通にカッコイイと思う。

ジャーミン「はははっ」
とりあえず、ジャシンボーマの火炎攻撃を受けるターボレンジャーを見て笑うジャーミンでも貼っておこう。
だが、レーダたちが敵の力を侮って油断している隙に、
レッド「みんな、妖精だって身を焼き尽くして戦ったんだぞ、5人の力を合わせるんだ」
レッドが仲間たちに檄を飛ばし、「5人の力を合わせる」と言う戦隊シリーズにおける勝利フラグをおったてる。
で、コンビネーションアタックからの、

ジャシンボーマ「ぐわーっ!!」
レッドの、特に技名もない剣の一撃で、あえなくジャシンボーマは倒されるのだった。
……
お前にはがっかりだよっ!! これでは、普通の暴魔獣より弱いではないか。
ま、2万年ものあいだ眠り続けて、体が鈍っていたということかもしれないが、それは他の暴魔獣も似たようなものだからねえ。
だが、ジャシンボーマ、完全に死んだわけではなく、原型を保っていた。
そしてここで、戦隊シリーズ史上、最大のタブーとも呼ばれているかもしれないショッキングなシーンとなる。

ジュニア「父上、何を? ぐおおおーっ!!」
なんと、自分の息子、それも封印を解いてくれた孝行息子を、頭からガブリと飲み込んでしまうのである。
レーダ「何をする、ジャシンボーマ?」
ジンバ「ジャシンボーマ!!」
ズルテン「なんてことを!!」
この暴挙には悪党揃いの幹部たちも驚き、

ピンク「我が子を食べるなんて……」
ヒーローたちも唖然とし、ことにピンクなどは、「オー、ジーザス」とでも言いたげに、レッドの肩に手を置いて目を逸らすのだった。
こんな過激でえげつない、人によってはトラウマになりそうな映像を、こともあろうに大スクリーンで流しちゃって良いのかと心配になる。
ま、ほんとは別に心配はしてないのだが、言葉の綾である。
ただ、てっきり、これでジャシンボーマがより凶悪になるかと思いきや、単に巨大化しただけだったので、思わずコケそうになる管理人であった。
巨大化なんて、暴魔百族の幹部にとっては誰でも出来る芸当なので、息子を食い殺してまでしなきゃいけないことなのかと、大いに疑問である。
それに、目玉のついた剣を持つジュニアのほうが、多分、戦闘力ではオヤジを上回っていたと思うので、余計に無意味なことのように思える。
ま、シナリオライターとしては、自分の身を焼いて使命を果たそうとする妖精と、我が子を食い殺してまで生き延びようとする暴魔獣との対比をより強調したかったのかも知れない。
この後、販促用に、無駄に各種メカを活躍させてから巨大ロボバトルとなり、サクッとジャシンボーマを倒して事件解決。
しかし、まあ、これだけ見掛け倒しの怪人も珍しいな、と。

はるな「なんて可愛らしいんでしょう、
私には負けるけど」
俊介「あんなに小さくても一生懸命生きてる、感動しちゃうよな」
ラスト、浜辺で、すっかり明るさを取り戻したシーロンが空中で楽しそうに踊っているのを、感動の面持ちで見詰めているはるなたちの姿で幕。
以上、ドラマとしての面白さはあまりないが、劇場用のパイロット版としては、そこそこ楽しめる内容であった。
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