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「気まぐれ天使」 第18回「ブラジャーで首を吊れ!」 前編


 第18回「ブラジャーで首を吊れ!」(1977年2月2日)

 のっけから、忍と榎本が友江に叱られている。

 
 友江「月給泥棒!!」

 そのきつい一言に、忍と榎本は思わず顔を見合わせ、他の社員たちも何事かと目をそばだてる。

 友江は、二人が提出した広告図案にダメ出しをしているのだ。

 友江「……って言われても仕方ないわね、よくもまあ、こんなセンスのない広告を考え出したもんだわ。これじゃあ売り上げが伸び悩んでるのも当然よ」
 榎本「しかしですねえ、このキャッチフレーズは僕と先輩が二日がかりで……」
 友江「それでこの程度の知恵しか出ないんなら、ブラジャー売るより、(ブラジャーで)首吊ったほうがマシみたい」
 榎本「ひどいこと言うなぁ」
 友江「なにこれ、『春風さんを呼ぶエレガンスな下着』……こんなの今時、保育園の子供だって考えるわよ」

 クソミソにけなされてカッとなった榎本は、だったらあなたの案を聞きたいと逆襲するが、

 
 友江「いくらだってあるじゃない……『下着は女のもう一枚の皮膚です』とか、『殿方が脱がせたくなる下着』とか」

 友江がすらすらと答えると、後ろの由利たちが盛んに拍手する。

 ま、ほんとは、どっちも似たようなレベルなのだが、そう簡単に素晴らしいキャッチコピーが書ければ世話はないのである。

 OP後、屋台のおでんで飲みながら、榎本が友江に対する怒りを爆発させている。

 
 榎本「ブラジャーで首を吊れだとぉ、それが俺達に対する言葉か」
 忍「ふざけやがって」
 榎本「女の下着はもうひとつの皮膚だぁ?」
 忍「うまいこと言いやがって」
 榎本「ははは、だから女は二枚も皮膚を持ってるから図々しいんだよ」
 忍「贅沢しやがって」
 榎本「こうなったら男の意地だよ、あの女をぎゃふんと言わせてやろうよ」

 忍は榎本に付き合って合いの手を入れるが、実際はさして怒ってる訳ではない。

 もともと童話作家志望で、会社勤めは身過ぎ世過ぎのためにやってるだけの忍は、それだけ仕事に対する姿勢がいい加減なので、上司に何を言われてもあまり気にならないタチなのだ。

 榎本「先輩は悔しかないのかよ」
 忍「悔しいよ、だからこそね、こうやってお前のおごりで酒を飲んでるんじゃないか」
 榎本「えっ、俺のおごり?」

 どさくさ紛れに後輩に勘定を押し付けると、

 忍「いいか、彼女が男を男とも思わないのは要するに別れた亭主の面影を引き摺ってるからこそ男性不信に陥っちゃってるんじゃないの。そいつを取り除いてやれば彼女は本来の女性らしい優しさを取り戻すであろうなぁ」

 評論家のような口ぶりで、友江の性格改善法とやらについて持論を並べ立てる。

 
 榎本「でも、どうやって?」
 忍「決まってるじゃないか、女心をとろかすような殿方の魅力を教えてあげるのよ」
 榎本「そんな殿方がいるかなぁ」
 忍「カーッ、ツッツッツッ……」

 つぶやく榎本に対し、忍は舌を鳴らして自分の顔を指差して見せる。

 
 榎本「はーっ……」

 思わず額に手をやり、溜息をつく榎本。

 忍「あれ、なんだよ、俺じゃ役不足だっての」
 榎本「無理じゃねえかなぁ、大体先輩はターコで実験済みじゃないですか、ターコはひとりでパリへ行っちまった、それが証拠じゃないですか、ははははは」
 忍「……」
 榎本「すいません」

 うっかり忍の心に土足で踏み込んでしまったことに気付き、軍隊式の敬礼をして謝るのだった。

 忍「ターコはね、俺の魅力を十分に知らないで行っちゃったんだよ。今にそれに気が付いてパリから飛んで帰ってくるだろう。あいつが青い目の外人にうつつ抜かすはずがねえもん」

 いまだに妙子に未練があるのか、何の根拠もなくそう言い切る忍であったが……

 
 友江「どうしたの真紀ちゃん」
 真紀「困っちゃった……この手紙ね、パリのお姉ちゃんから来たんだけど」

 同時刻、友江と真紀のマンションでは、真紀がその妙子からのエアメールを手に悩ましい顔をして考え込んでいた。

 友江「お姉さんから?」
 真紀「お姉ちゃんね、加茂さんと婚約してたの、でも、デザイナーの勉強する為に婚約解消してパリ行っちゃったの」
 友江「あ、そうだったの、お姉さん、あの加茂さんと?」

 友江も妙子のことは聞かされていたが、忍との関係を知ったのはそれが初めてであった。

 だが、まだ付き合いも浅く、忍のことはただの友人としか見ていないので、何の屈託もなく応じる。

 真紀「お姉ちゃんもまだ加茂さんのことは好きらしいんだけど……」
 友江「だったら何も問題ないじゃない、お姉さんだってパリに行きっぱなしって訳じゃないんでしょ」
 真紀「ところが問題大有りなのよ」

 思い余ったように、真紀はその手紙を友江に読ませる。

 
 真紀「あーあー、姉貴の奴、もう帰って来ないかも知んないわ、フランス人の恋人が出来ちゃったなんて言うんだもん」
 友江「あなたから、それとなく加茂さんに伝えて欲しいって書いてあるわね」

 そう、忍の予想は見事に外れ、妙子にはもう現地で新しい恋人が出来ていたのである。

 真紀「どうして(忍に)直接手紙出さないのかな」
 友江「そこがお姉さんの優しいところじゃない? これにも書いてあるわ、加茂さんの精神状態の不安定な時に手紙が着いたら大変だから時期を良く見て話してくれって……」

 しかし、そうしないとストーリーが成立しないから仕方ないのだが、妙子の性格として、自分で直接伝えずに、妹に別れ話(に等しいこと)を言わせるなど、およそ彼女らしくない卑怯な振る舞いだといわざるを得ない。

 それに、友江の台詞では、まるで忍が情緒不安定の病人のように聞こえるではないか。

 ともあれ、なんだかんだで姉に養ってもらっている真紀としては断るに断れず、そのことで思い悩んでいたのであったが、急に閃いたようにその役目を友江に代わって欲しいと言い出す。

 友江も会社ではともかく、家庭では優しくて押しに弱いタイプなので、最初は難色を示していたが、結局強引に引き受けさせられてしまう。

 一方、おでん屋を後にした忍と榎本は、連れ立って川のそばの道を歩いていたが、榎本が何度も忍の男性的魅力について懐疑的な発言を続けたせいか、忍も意地になって、

 
 忍「あいつの首に鈴をつけたらどうする? 10万円出すか」
 榎本「10万円?」
 忍「そう、10万円、期限は10日間、もし俺が負けたらお前に俺が10万円やる」
 榎本「ほんとですか?」
 忍「ほんとだ、加茂忍の言葉に二言はない」

 遂には友江を落とせるかどうかで賭けをしようと言い出すのだった。

 しかし、この忍の台詞、「猫の首に鈴をつける」と言う慣用句の派生だろうが、なんとなく使い方を間違ってるような気がするのである。

 もともとの意味は「口で言うのはたやすいが、いざ実行となると引き受け手がいないほど困難なことのたとえ」なのだが、そもそもそんなことを言い出したのは忍自身なので、今回のケースに当て嵌めるのは、なんか違うような気がするのだ。

 それにそんな曖昧な表現では、友江に男性としての好意をもたれるのことなのか、実際に恋人同士になることなのか、勝敗の基準がいまひとつ分かりにくいし……

 二人はそこで別れるが、

 
 榎本「10万円か……でも、先輩もこれでターコのことを忘れてくれればいいんだけどなぁ……せんぱーい」

 榎本は独り言をつぶやくと、親しみを込めて忍の背中に呼びかける。

 妙子と別れてからなんとなく元気のない忍のことが気になっていたのだろう、なんだかんだで先輩思いの榎本なのであった。

 下宿では、綾乃と渚もそのことを話題にしていた。

 渚「この頃さあ、童話だって書いてないみたいだよ」
 綾乃「やっぱ、あの、妙子さんとのことが痛手だったのかねえ」

 綾乃が、失恋直後の男性に優しくすると効果的だと言うと、

 
 渚「優しくしてるわよ、私」
 綾乃「どうやって?」
 渚「今朝だってさぁ」
 綾乃「ふんふん」

 渚の言葉に綾乃が思わず身を乗り出すが、

 渚「モタモタしてると車にぶっ飛ばされるぞっ!! て……」
 綾乃「何処まで遅れてんだろうね、この子は……」

 失望して、缶入りの日本酒を呷るのであった。

 いや、遅れてるとか遅れてないとかの次元じゃないよね。

 それに第1クールの終盤であれだけ熱烈に忍への愛を表明していたことを思えば、第2クールになって、以前のようにまた子供っぽくなってしまうと言うのもおかしな話である。

 それはそれとして、二人がそんな話をしていると忍が帰ってくる。

 それでも綾乃に「優しくしてやれ」と言われたは渚は、いそいそと廊下に出て、階段を登ってくる忍を待ち受ける。

 
 渚「おっちゃん……」
 忍「なんだ、まだ起きてたのか、お前」
 渚「おかえり」
 忍「かーっ、なんだ、蚤でもいるんじゃねえのか」

 渚、精一杯色っぽいポーズを取って忍の体に寄りかかるが、元々渚のことを女だと思っていない忍は一顧だにせず、冷ややかに自分の部屋に引っ込んでしまう。

 
 綾乃「じれったいね、くっ……と、こう、もうじれったいね」

 と、綾乃も出てきて、自らお手本を示して孫にお色気指南しようとするが、

 
 綾乃「だから……」
 忍「……」
 綾乃「……」

 その横から出てきた忍に胡散臭そうな目でひと睨みされたので、「しなを作る」と言うより、ロボットダンスでも踊っているようなぎこちない動きになる綾乃であった。

 ここ、彼らの部屋がふすま一枚隔てただけで行き来が自由であると言う住宅構造を利用した、ビジュアル的にも優れたギャグになっている。

 
 忍「君は間違ってるんじゃないかな……君、たった一度の経験で男嫌いになるなんてそりゃダメだよ」

 忍、自分の部屋に戻ると、渚が戸の隙間から見ているのも知らずに、鏡に自分の顔を映しながら友江を口説く練習を始める。

 忍「それは君、美しさに対する冒涜だよ、君自身の……なぁーんて、ちょっと気障かな、待てよ、ムードを変えて、美しい渚で君と抱き合いたい……」

 それこそ、下着の宣伝のキャッチコピーでも考えるようにあれこれ文句を吟味していたが、「渚」と言う言葉を聞いた途端、

 渚「ほんとーっ?」

 渚がいきなり部屋に飛び込んでくる。

 
 忍「なんだ?」
 渚「私、男嫌いなんかじゃないわよ」
 忍「え、えーっ?」
 渚「一度だって経験ないしさ……やなおっちゃん」
 忍「な、な、ナニ勘違いしてんだよ」
 渚「間違ってんのはおっちゃんのほうじゃないよー」

 渚、てっきり自分に向かって忍が喋っているのだと勘違いしたらしい。

 そして管理人は、渚が紛れもなくバージンであることを確認して、思わず万歳三唱したくなったものである。

 目を白黒させている忍を尻目に、渚は自分の顔をしげしげと鏡で見て、

 渚「だけど、私、そんなに綺麗だとは思わなかった」
 忍「なーに言ってんだよ、夢を見るならね、寝てからにしろ、寝てからに、ほら出てけ出てけ出てけ」

 忍、渚のおっきなお尻を押すようにして部屋から追い出す。

 忍「全く、バサマもバサマなら孫も孫だ、人間離れしてやがる」

 翌朝、結局いい殺し文句が思い浮かばなかったのか、下の古本屋でハウツー本を物色し、その一冊を借りるが、

 
 光政「女性の口説き方教えます……君みたいなタイプの男性は女の……」
 忍「……」

 それを光政に読まれてしまい、慌ててひったくるのだった。

 その後、会社の階段の踊り場で忍と榎本が例の件であれこれ話していると、そこへ友江がやってくる。

 
 榎本「部長!!」
 友江「……あ、おはよう」

 忍の顔を見て、一瞬引き攣った笑みを浮かべる友江であったが、挨拶してそそくさと行き過ぎようとする。

 無論、忍を男として意識し始めたからでは断じてなく、昨夜、真紀に押し付けられた厄介な問題が頭をよぎったからである。

 と、友江を榎本が呼び止め、

 
 榎本「部長、実はですね、加茂さんが一身上の重大なお話があるそうなんですよ」
 忍「おいおいおい」
 友江「なんですか、加茂さん」
 忍「いや、あの、昨日はほんとに申し訳ございませんでした」
 友江「謝る前に良い仕事してください」
 忍「は、はい、ど、努力します」

 突然榎本に話を振られて、しどろもどろで適当なことを言う忍であった。

 友江が行った後、忍が猛然と榎本に食って掛かる。

 忍「この野郎、てめえ」
 榎本「なに言ってんですか、先輩、僕はきっかけを作ってやったんじゃないですか」
 忍「冗談じゃないよ、俺は昼休みにちゃんと行動を開始するつもりだったんだよ!!」
 榎本「ああ、そうか、頑張ってね、先輩」

 忍の言質を取ると、榎本はその肩を軽く叩いて先に行く。

 忍「育ちが良い割りには根性が悪りぃなぁ……」

 が、それこそ「加茂忍の言葉に二言はない」ので、忍も腹を括って昼休みに決行することにする。

 
 その合間に、下宿で朝食を取る綾乃たちの姿が映し出される。

 ストーリーには何の関係もないのだが、京都の公家の出と言う割りに、綾乃の箸の持ち方が、鉛筆を持つときのように箸の先の方を持つ、子供みたいなのが可愛らしい。

 まあ、いくらメイクで70代の老婆に扮しても、中身は30代の樹木希林さんだからねえ。

 あと、当時はみんなそうだったのか、荻田家だけの習慣なのか知らないが、タッパーに入った納豆を、漬物のようにめいめいが箸で取って糸を引きながら口に持って行く食べ方が、なんかばっちい気がしました。

 宣伝部のオフィスでは、忍も友江も相手のことが気になってチラチラ視線を送り、どちらも仕事に身が入らない様子であった。

 
 書類に目を通しながら、溜息でもつきそうな顔になる友江。

 
 忍「……」

 そんな友江の後ろ姿を物欲しげな目付きでじっとり見ている忍。

 外見だけ見れば、恋に悩める男女のようであったが、友江の内実は全く違うのである。

 
 それにしても、やっぱり酒井さんは綺麗だ。

 さほど重篤ではないが、今回レビューしていて、「意味もなく女優さんの画像を貼りたくなる」病が再発してしまったほどである。

 ルックスだけじゃなく、なんとも言えない気品が漂っている感じである。

 二人の様子をニヤニヤしながら観察していた榎本は、仕事にかこつけて忍の席に近付き、

 榎本「先輩、もうすぐ昼休みですよ」
 忍「わかってるよ」
 友江「加茂さん、ちょっと」
 忍「はいっ」

 そのタイミングで呼ばれたので、忍は背筋を伸ばして友江の前に立つが、

 
 友江「この雑誌広告の見積もり、間違ってるじゃない、もう一度しっかり計算し直して頂戴」
 忍「あ、は、はい……」

 仕事のミスを指摘されただけだったので、すぐ席に戻ろうとするが、榎本が顎で合図するので勇気を振り絞って踏み止まり、

 忍「あのう……」
 友江「なんですか?」
 忍「ちゃんとやり直します」

 が、友江に見詰められると、結局何も言えずにすごすご引き下がる忍であった。

 榎本のからかうような視線を受けながら席に戻ると、口の中でぶつぶつ言いながら書類をめくっていたが、

 
 忍「……!!」
 友江の声「12時30分に宮下公園前のジローで待つ」

 書類の間に、友江からの直筆のメッセージが挟んであることに気付き、たちまち恵比須顔になって友江の方を振り向くのだった。

 昼休み、忍はスキップ踏みながらジローと言う店に行く。

 そこは、会社の近くのビルの中にあるピザ屋であった。

 忍が入ると、すでに友江が席についていて、しかも自分の隣の席を勧めてくるではないか。

 
 友江「あんな方法で呼び出したりして……」
 忍「いや、いいんですよ」
 友江「でも人目がうるさいと思って」
 忍「いや、あの、ターコの時もそうだっ……」

 忍、うっかり元婚約者の名前を言いかけて口ごもるが、友江はむしろ話の糸口が見付かったとばかりに、

 
 友江「あ、そうなんですってね、妙子さんて、パリにいらした真紀ちゃんのお姉さん……それは綺麗な方だったんですって」
 忍「いや、あの、気にしないで下さいね。あの、どういう話が伝わってるか知りませんが、あの、お互いに大人同士、あの、綺麗さっぱり別れたつもりです。今ではそうだなぁ、あんまり顔も思い出せませんから」

 ほんとはまだ未練たらたらで、最近パリに手紙まで出したくせに、これから口説こうとしている女性にそんなことが言える筈もなく、心にもないことを並べ立てるのだった。

 が、友江も馬鹿ではないし、敏感な女性なので、忍の胸を見透かすように、

 友江「やっぱり妙子さんのことを……」
 忍「いや、違いますよ、違いますよ、誰があんな奴を……」

 
 友江「あんな奴? 確かにあんな奴ですわね、女が仕事のために男を裏切るなんて」

 と、今度はその言葉尻を捉えるように、あえて妙子をけなすようなことを言う。

 無論、本心からではなく、手紙の内容を伝えやすい雰囲気に持って行くためである。

 忍「ちょっ、ちょっと待ってくださいよ、そりゃあんな奴かもしれませんけどね、ターコはね、気さくだし、才能もあるし、その才能を伸ばすためにファッションの本場であるパリに行ったんですからね、決して……」
 友江「……」

 ところが、今度は忍が妙子を弁護するようなことを言い出したので、また切り出しにくくなってしまう。

 友江「困ったわぁ……」
 忍「話してくれませんか、あの、ほら、会社でいつもポンポン言ってるみたいな感じで」
 友江「そうはいかないわよ、これはプライベートなお話ですもの」
 忍「プライベート?」
 友江「でも、こうやって顔を見合わせてると、言いにくくて」
 忍「ああ、そこがあなたのいいとこなんだなぁ、あの、でも、勇気出して言ってくださいよ、なんなら僕、目ぇつぶってますから」

 そんなつもりはないのに、結果的に思わせぶりな態度を見せてしまった友江も悪いのだが、自分がこれから口説こうとしている女性の方から愛の告白をされるのではないかと期待する、図々しいにもほどがある忍であった。

 だが、ちょうどそこに由利たち三人が入ってきたので、会社が終わってからまた会いましょうと約束して、友江は逃げるように店を出て行く。

 さらに忍が二人の関係を匂わすようなことを彼女たちに言ったので、

 朝子「ねえ、ちょっと、あの部長の慌て方」
 信子「この目で見たんじゃなきゃとっても信じられないね」
 由利「でも最近の才女ってのはああいうゲテモノ趣味に転向しちゃったのかしらねえ」

 てっきり二人が付き合っているのだと考え、由利などは、しみじみとした口調でつぶやくのだった。

 ちなみに彼らは最後まで忍と妙子の関係を知らなかったのだが、もしそれを知れば、由利はますます自説に自信を持ったことだろう。

 退社後、忍はルンルン気分で待ち合わせの宮下公園に向かう。

 
 実は自分も友江に惹かれている榎本は、気になってそのあとを尾行する。

 
 忍「友江さん!!」

 すでに公園で待っていた友江に忍が手を上げて駆け寄ると、友江も嬉しそうに手を振って応える。

 その姿は傍目には、デートの待ち合わせをしている恋人同士にしか見えなかった。

 さらに、

 
 忍が友江の腕に自分の腕をからめ、体を密着させるようにして歩き出したので、後方から見ていた榎本はかなりのショックを受ける。

 まあ、実際、友江がこんな馴れ馴れしい態度を見せるのは不自然なんだけど、ストーリー上の都合なので仕方ない。

 なお、去り際に忍が榎本に右手を振って見せているので、榎本が尾行していることは先刻承知だったらしい。

 榎本が険しい顔で二人の後ろ姿を見送っていると、真紀がやってくる。

 
 真紀「榎本さん」
 榎本「ああ」
 真紀「何よ、東京中のスモッグ全部吸い込んじゃいそうな口開けて」
 榎本「いやな、この目で確かめなきゃ信じられないことが起きたんだよ。信じられないこと」

 榎本が二人の方を指差すが、

 真紀「ああ、あの二人のこと」
 榎本「え、真紀ちゃん、見たか」
 真紀「なかなかお似合いのカップルじゃない」
 
 友江が忍にあのことを話す為に近付いていると知っているので、真紀は軽い気持ちで言ってのけるが、

 榎本「冗談じゃないよ、かたや水もしたたるような良い女、相手は先輩だよ、釣り合う訳ないじゃないか」

 榎本がムキになって反論するので、

 真紀「そうねー、榎本さんなら釣り合うわよね」
 榎本「え? ほんとか、おい、はっはっはっ、そうか……」

 真紀のお世辞に榎本が急にニコニコし出したのを見て、今度は真紀の顔が険しくなる。

 試しに、友江が忍のことを愛してると言っていたとデタラメを言うと、

 榎本「そりゃほんとかい、部長が先輩を?」
 真紀「わー、わー、真っ青、そう、やっぱり、あなたも? いやーっ!!」

 榎本の反応から、榎本も友江に気があるのだと察し、真紀はショックを受けたようにその場から走り出す。

 それでも榎本は必死に追いかけ、なんとかなだめるのだった。

 後編に続く。
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コメント

現代にも通じる?

“猫の首に鈴を付ける”とは西洋のことわざのようですね😅とある場所に🐭達が集まって🐱に食べられない為にはどうすれば良いかと考えたところそれなら“🐱の首に鈴を付ければ良い”ことに気付きます。では誰が🐱の首に鈴を付けるのかとなったら誰も付けたくないので結局のところ実現しなかったようですね😅

Re: 現代にも通じる?

解説ありがとうございます。

自分でもいまひとつ使い方が分からない慣用句です。

脚本家…

 石立コメディシリーズは、基本的に松木ひろしがメインライターで、何かストーリー上の展開があるときは必ず松木脚本。他の脚本家が書いた回はどんな大きな出来事が起ころうとも、その回限りで完結するので「安心して」見られるのが常道でした。
 特に「天使」と「本格派」はOPクレジットも、松木さんが書くときは「脚本」ではなく「作」表記で特別扱い!だっただけに、今回は天使初参加の窪田篤人脚本なのに、ストーリー上で重大な「ターコとの完全な婚約破棄」を織り込んでくるとは、ちょっと驚きました。
 「本格派」も含め、他のシリーズではこの様なパターンは無かったかと思います。

Re: 脚本家…

コメントありがとうございます。

>  特に「天使」と「本格派」はOPクレジットも、松木さんが書くときは「脚本」ではなく「作」表記で特別扱い!だった

え、そうだったんですか。迂闊にも今まで気付きませんでした……

「天使」は、松木さん以外の脚本家もみんな良い仕事してますよね。

Re: 脚本家…

そうなんですよ!同一ドラマで「作」と「脚本」を使い分けたのは、気まぐれシリーズ2作以外には知りません。確かに「天使」は松木さん以下3人の脚本家、良い仕事してますね!
 コレが「本格派」になると、松木さん以外に7人も脚本家がいて、聞いたことの無い人も乱立して、一発芸の怪しい回も多いのですが(笑)、それはそれで「本格派」の魅力となってるとは思ってます。

Re: Re: 脚本家…

返信ありがとうございます。

>  コレが「本格派」になると、松木さん以外に7人も脚本家がいて、聞いたことの無い人も乱立して、一発芸の怪しい回も多いのですが(笑)、それはそれで「本格派」の魅力となってるとは思ってます。

新しい人に書かせるのは賛成ですが、正直、平均点をだいぶ下げてる気がします。

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zura1980

Author:zura1980
70~80年代の特撮、80年代のドラマを中心に紹介しています。

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