第8話「白骨都市の大魔王」(1980年3月22日)
冒頭、時間を操り、人間を老人にすることが出来るフィルムラーが誕生する。
それを踏まえて、法被を着たケラーとミラーが映画スナック「おもかげ」なる店の開店キャンペーンの呼び込みを賑やかに行っている図となる。
映画スナックと言うのが良く分からないのだが、要するに、映画を見ながら飲食が出来る店と言うことなのだろう。

源一「昨日までハンバーグの店だったのに」
ケラー「あ、坊やたち、見てらっしゃい」
ミラー「とっても面白い映画やってるわよ」
そこへたまたま通り掛かったのがレギュラー子役たちで、なんとなく、初めて風俗に来た男子学生が入ろうかどうしようか迷っているような風情だったが、

肝心の映画と言うのが、どう見ても
頭にクソがつきそうな映画だったので、素通りしたと言う。
と言うのは嘘だが、ベーダーも、客を集めたいのならもうちょっと訴求力の強いタイトルを引っ張ってこないと。
東映系の映画なら、ポスターくらい借りられるだろうに……
源一「面白そうだな、見て行こうかな」
子供たちもその気になるが、折悪しくそこにやってきたのが青梅だった。

青梅「こらぁっ、何をしてるんだ」
源一「いけねえ」
青梅「今日は空手の稽古日じゃないのか?」
怖い顔で子供たちを一喝する青梅であったが、そのメンタリティーは子供たちと大差なく、

青梅「映画とコーヒーの無料サービスか……ちょっと覗いて行こうかな」
自分も興味をそそられ、ふらっと入りそうになる。
源一「青梅先輩、ひとりでずるいよ!!」
青梅「わかった、わかった、それじゃあどうだ、ここはひとつみんなで映画を見てから稽古に行くと言うことにしないか?」
メンバーの中では「話せる」青梅は、結局子供たちと一緒に映画を観ることになる。
ケラー「あれはまさしく、青梅大五郎」
店内には店員も客の姿もなかったが、青梅たちは気にせず、壁に貼ってある矢印に従って奥へ奥へと進んでいるうちに地下に降りてしまう。

しかも、地下は迷路のように入り組んでいて、明かりもなく、「注文の多い料理店」のような細かい指示があるだけで、一向にそれらしい部屋に辿り着けない。

ケラー、ミラー、フィルムラーたちは、映写室のような小部屋から、彼らの様子をニヤニヤしながら観察していた。
やがて、突き当たりから白い光が漏れている長い廊下に出るが、光に向かって歩き出した途端、シャッターが降りるように入り口が閉ざされ、再び暗闇の中に取り残される。
子供たちはすっかり怯えて青梅の体に団子のように密着していたが、
青梅「心配は要らないよなー、幽霊屋敷と同じ仕掛けだ、たっぷりと俺達を怖がらせて楽しませてくれるんだ」
肝が太いのか、それとも
ただのアホなのか、青梅はなんら怪しむことなく、歩を進めていく。
しかし、これから映画とコーヒーを楽しもうと言うのに、なんで客を怖がらせる必要があるのか、青梅が不審に思わないのはやっぱり変だよなぁ。
せめて、映画がホラー映画だったら分かるんだけどね。

と、最後尾を歩いていたゆみ子がふと後ろを見ると、廊下の突き当たりの壁に不気味な老人が立って笑っているではないか。
ゆみ子「きゃあああーっ!!」
青梅「どうしたんだ、ゆみ子、どうしたの?」
ゆみ子「今そこにおじいさんが……」
思わず悲鳴を上げて青梅の体に顔を埋めるが、例によって例のごとく、青梅たちが見たときには老人の姿は忽然と消えていた。
源一「ばーか、そんな人、何処にもいないじゃないか」
ゆみ子「い、いたのよ、ほ、本当だったら」
青梅「先に進むぞ」

青梅たちは再び歩き出すが、他でもない、彼らの真横に、さっきの老人の顔が大写しになっているではないか。老人は、落ち窪んだ黒い目を輝かせ、獲物を前にした肉食獣のように舌なめずりをしていたが、何故か、青梅たちは全く気付かず、通り過ぎてしまう。
老人はフィルムラーの人間態なのだが、演じるのは説明不要の安藤三男さん。
老人は今度は全員にその姿を見せると、爆発を起こして恐ろしげなサソリに姿を変え、青梅たちを死ぬほど怖がらせる。
もっとも、それもフィルムラーの作り出している幻影なので、実害は生じない。
サソリから逃げて廊下の角を曲がると、老人が目の前にいてゆっくり近付いてくる。

青梅「ちょっと来ないでよ、わかったよ!!」
青梅、恐怖のあまりヒステリックな叫び声を上げるが、
老人「恐怖映画館にようこそ」
老人はそう言って、にこやかに右手を差し出し、あたかも、今までの出来事が映画の余興のように振る舞う。
青梅も、やや落ち着きを取り戻し、反射的にその手を握り返す。

青梅「それにしてもおじいさん、冷たい手してるねー、死人みたい」
そう言えば、これ、ギャバンとレイダーの共演になってるんだよね。
「シャリバン」本編では、確か、二人は顔を合わせることはなかったと思うが。
老人「うふふわぁーっはっはっ、あーはぁははーっ!!」 何気ない青梅の言葉に、地獄の底から響いてくるような笑い声を上げる老人。
さすが、その存在が怖過ぎて「シャリバン」の視聴率を下落させたほどの安藤さん、そのホラーな演技は他の追随を許さない。
その後、白骨となり、さらにそれがいくつにも分裂して青梅たちを死ぬほど怖がらせるのだが、

最後の最後に、このカクカクした骨踊りはどうかと思う。
思わず子門真人の名曲「ホネホネロック」が頭の中に鳴り響いてしまうではないか。
もっとも今までのは長い長い前戯に過ぎず、真の目的は竦んで身動きできない青梅たちに白いガスを浴びせることであった。
しばらくして、青梅たちは何事もなかったように明るいお日様の下に出てくるが、

青梅「あっはっはっはっ、わりかし面白かったなぁ、なぁ、源一や」
なんと、いつの間にか青梅が白髪白髯の老人になっていた。
子供たちも同様で、髪が白くなって髭の生えている子供さえいた。
まあ、背格好が子供のままなのはご愛嬌だが、まさかほんとの老人に演じさせるわけにもいかないからねえ。
青梅たちはアスレチッククラブに行くが、仲間たちの反応は冷淡で、

赤城「おい、青梅、いい加減にその変な変装やめたらどうだ?」
黄山「そうだよ、それしきの変装じゃ俺たちは驚かないよ」
てっきり、青梅が自分たちをからかっているのだと思い込み、本気で取り合おうとしない。
青梅、怒りのあまり雑誌を投げつけると、
青梅「バカッ!! 変装じゃないんじゃよ、みんなで映画を見てて、おかしな煙を吸ったらこうなってしまったんじゃよ」
黄山「なんだとぉ」
赤城「浦島太郎じゃあるまいし……」
二人は目配せすると、同時に青梅に飛び掛かり、そのカツラを毟り取ろうとするが、

青梅「いたたたた、黄山、これは本物なんじゃよ!!」
いくら引っ張っても取れず、また、青梅の痛がり方が尋常ではないので、二人もやっと異変に気付く。

赤城「本物?」
黄山「……」
二人は顔を見合わせると、
赤城「じゃあ、絶好のチャンスじゃないかっ!!」 黄山「今までの恨み晴らしてやる!!」 青梅「鬼か、お前らはっ!!」 ここぞとばかりに老人虐待に精を出すのだったが、嘘である。
二人はいつも元気な源一たちが疲れ果てた老人のように黙りこくっているのを見て、これがシャレや冗談ですまない事態であることを悟り、粛然となる。
そこへあきらがけたたましく叫びながら飛び込んでくる。

あきら「大変よ、映画を見たらあっという間に老人になったと言う人が……あ、いらっしゃい……続出してるのよ」
あきら、話しながら青梅の姿を目に留めるが、お客さんだと思って挨拶すると言うボケをかます。
青梅は思わず立ち上がってその腕を掴み、

青梅「あきらちゃん!!」
あきら「あらっ」
青梅「ワシも被害者なんじゃよ」
あきら「……」
緑川「……」
あまりに非現実的な状況に、あきらも緑川も惘然として言葉を失う。
青梅、苦しそうに咳き込むと、
青梅「あきらちゃん、助けてくれ」
黄山「うん、瞬く間に老化が進んでいる」
青梅「みんな助けてくれ……」
さすがの青梅もほとんどパニック状態になって仲間に縋りつく。
そこへトコトコと、明らかに何も考えてないアイシーが入ってくる。
青梅、そのモコモコした首を掴むと、
青梅「アイシーちゃん、何とかしてくれ、助けてくれ」
アイシー「……」
だが、こんな時に限ってアイシーは何の手助けもしてくれない。

青梅、忌々しそうにアイシーの頭を叩くと、床にべったり座り込む。
青梅「老人はいやじゃ~ううう……」
その様子をじっと見詰めていた赤城は、
赤城「よし、新しい仲間を探そう!!」 じゃなくて、
赤城「よし、その映画館に行ってみよう」
ここで、ヘドリアンが欲を出さずにフィルムラーを引き揚げさせておけば、ベーダーの大勝利だったと思われるが、古今東西、「悪の組織」と言うものは引き際を知らない、あるいは、勝ち逃げしないものなので、青梅を含めたデンジマンが行った時も、引き続き営業していた。

青梅「ここじゃ」
赤城「よし、乗り込むぞ」
にしても、あきらの剥き出しのフトモモ、エロ過ぎるやろっ!!
つーか、これだけ見せてくれるんなら、いっそのこと下着or全裸でも良いんじゃないのかと思ったりしてしまう管理人は真性のアホである。
二匹目のドジョウを狙うフィルムラーたちは、前回とほとんど同じような方法で5人を幻惑し、老化ガスを浴びせようとするが、デンジマンに変身した赤城たちには通用しない。
さらに、レッドたちの投げたデンジスティックが命中し、フィルムラーが混乱してフィルムを逆回転させてしまい、青梅もあっさり元通りの年齢に戻る。

青梅「ヘーイ!!」
嬉しさのあまり、サーカスで技を決めた時のような、お得意のポーズを取る青梅。
しかし、もう一度フィルムを回転させればまたジジイになりそうな気もするが……
ま、この辺、ガスを浴びて老人になるのか、フィルムに定着した人間の年齢を操ることで老人にするのか、どっちとも取れる描写になっていて曖昧である。
CM後、フィルムラーは手当たり次第にガスを噴きつけ、人々を次々と老人に変えていく。
その映像を見ると、映画とか関係なく、ガスで老人にしているようにしか見えないのだが、
フィルムラー「見てください、今夜はあのビルの壁をスクリーンに今世紀最大の映画ショーを開いてやるぞ」
ミラー「それは面白い、何万と言う大群衆がそれを見てシャレコウベになる」
ケラー「考えただけでゾクゾクしてくるわ」
一方で、こんなことを言い出すので、頭が混乱してしまう。
結局、人間をガスで老化させることと、人間をフィルムの中に取り込んでその時間を操るということとがごっちゃになってしまったのが、今回のシナリオの最大の問題点と言えるだろう。
しかもミラーは、「シャレコウベになる」って言ってるし……
色々あって、デンジマンはフィルムラーの乗る車を追いかけて、新映撮影所と言う、東映撮影所をそのまま使った映画スタジオに入り込む。
フィルムラーは5人を攻撃したあと、編集室に逃げ込み、

フィルムラー「うん」
フィルム缶に収められたフィルムをチェックしていたが、自らの体を小さくして缶の中に潜り込む。

レッド「奴はフィルムの中に逃げ込んだに違いない、片っ端から探すんだ」
5人が入ってきて捜索を開始するが、何故フィルムラーがフィルムの中に入り込むことが出来るのをレッドが知っているのか、謎である。

社員「困るなー」
だが、そこへあらわれたのが、「快傑ズバット」第12話で早川をボコボコにしていた、東映最強の大部屋俳優の異名を取る五野上力さんであった。

社員「勝手なことされちゃあ、あっ、今日映画館まで届けるフィルムまで引っ張り出しちゃって……」
ガミガミと叱りつけると、フィルムラーの隠れている缶の蓋を閉じる。
ここ、男がデンジマンを見ても驚かず、撮影所に見学に来た一般人でも扱うように応対するのが、シリーズでも有数のツボとなっている。
また、それに対してデンジマンが抗弁するわけでもなく、困ったように立ち尽くしているのが追い討ちをかけている。
フィルムラー「助かった」
社員「……何が助かったんだ?」

ブルー「えっ、いや、別に……」
男に噛み付かれて、慌ててなだめるブルーの様子がこれまた爆笑必至である。
結局、デンジマンはフィルムラーを発見できず、フィルムラーは社員にフィルム缶ごと撮影所から運び出される。
レッドも遅蒔きながらそれに気付き、フィルム缶を追跡して、大作映画「二百三高地」を絶賛上映中の新宿日活・東映ホールに行き、支配人を拝み倒してそのフィルムを客のいない状態で、スクリーンに映してもらう。
それは一見、戦国時代を舞台にした変哲のない時代劇であったが、デンジマンの特殊な目は、フィルムの中に隠れているフィルムラーの姿を暴き出す。
フィルムラーはとっととフィルムから飛び出し、大作映画「二百三高地」を絶賛上映中の新宿日活・東映ホールの正面口からスタコラサッサと逃げ出す。
この後、操車場に場所を変え、ラス殺陣となるが、「デンジマン」はラス殺陣にも工夫が凝らしてあって、

要所要所でフィルムラーがカチンコを叩くと、

デンジマンもそれに応じたキャラクターになりきって戦うと言う、楽しいお遊びが見れる。
勿論、管理人が着目するのは、全人類が待ち望んでいた、ミニスカ・ガンマンに扮したあきらだけである。
でも、戦隊シリーズも「ダイナマン」あたりから、あまりこういうお遊びが見られなくなり、怪人が違うだけで、やってることは毎回ほぼ同じと言う、ルーティンワーク的で無味乾燥なラス殺陣になってしまうのが残念である。
さて、メンバーひとりひとりに見せ場が用意されているが、

肝心のあきらには、是非、飛んだり跳ねたり転がったり尻餅を突いたりミニスカをめくったりして欲しかったところだが、なにしろアクションが苦手な小泉さんなので、編集で早撃ちしているように見せかけた連射ショットだけなのは、正直物足りない。
それでも、

銃口にキスするように息を吹きかけ、

色っぽくウィンクして見せる様は、さすが本職のモデルと言う感じで、
戦闘員「もうダメー」
戦闘員「もうダメにゃ」
撃たれた戦闘員が、その魅力に骨抜きにされたようにひっくり返るのも納得の可愛らしさであった。
続いて時代劇となるが、

あきらが、体の線がほとんど見えない腰元風のキャラなのは残念であった。
大体、こういう髪型が似合わない顔立ちだからね。
しかも、懐剣は構えているが、鞘から抜かないままで戦うと言うのも迫力不足。
これもやっぱり、特撮ヒーローが刃物を振り回しては教育上よろしくないと言うことなのだろうか……と思ったけど、赤城たちは普通に剣でゲシゲシ斬ってるんだよね。
あるいは、刀なら真似しようと思っても真似出来ないのでOKが、懐剣だと小刀で代用できるからNGってことなのかしら?
ま、単に、小泉さんが殺陣が苦手なので、危なっかしいからと言うことなのかもしれないが。
続いてスポーツとなるが、予算の都合か、全員アメフトで統一されている。
あきらだけ、チアリーダーと言う選択もあったと思うが、

あきらもごついプロテクターを着て、みんなと同じポーズを決める。
で、これがあきらのクールな顔立ちになかなかマッチしたコスプレになっているのだ。
ちゃんとヘルメットを外しているのもポイント高し(7億点)

ボールを持ち、そのおっきなお尻を活かして敵陣を突破するシーンなんかもあるが、優しい戦闘員の皆さんは、勿論、あきらに直接触れることなく勝手に吹っ飛んでくれてます。
お遊びはここで終わり、デンジブーメランでフィルムラーを撃破、ついで巨大ロボバトルをこなして事件解決。
フィルムラーの死と共に、老人にされた人たちが元通りになったのは言うまでもない。
以上、前半の映画スナックでのシーンと、後半の撮影所や操車場での追いかけっこと、一本で二つのエピソードが楽しめるような密度の高い快作であった。
ただ、サブタイトルについては、いささか誇大表示になってるような気がしなくもない。
誰一人白骨になってないし……
つーか、大魔王って誰よ?
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