第33話「瞬間旅行!幻夢城内は怪奇の花ざかり」(1983年10月21日)
冒頭、幻夢城の玉座の間。

その真ん中に、額にして数十億はあろうかという札束の山が積まれ、それをポルターたちが無言で見詰めている。
てっきり、活動資金でも盗んできたのかと思いきや、

札束の他にも、ブリキのバケツに自転車、プラカードなど、およそ「悪の組織」の中枢部にふさわしくない生活感溢れる雑多な品物も一緒に置いてあった。

サイコ「ワシが欲しいのはグランドバース。ところが、瞬間移動装置で運ばれて来たのはこのような紙切れ、それにこのガラクタ……」
ポルター「申し訳ありません」
怒りを押し殺したサイコの言葉で、それらが間違って運ばれて来たものだと分かる。
しかし、あんなでかいもんをこんなところに瞬間移動させたら、サイコたちは押し潰され、幻夢城も内側から壊れるのでは?
あと、全銀河征服を狙うマドーが、一介の宇宙刑事に過ぎない電の母船を欲しがるというのも、考えてみればおかしな話である。
それはつまり、マドーにはグランドバース以上の船を作る技術がないことを意味しており、だったら、銀河パトロールがちょっと本気を出せば、マドーなどたちまちのうちに鎮圧されてしまうのではあるまいか。
サイコ「グランドバースを手に入れたあとはシャリバンを抹殺、
そして最後は人間の良心までも瞬間移動で手中に収め、地球を征服せねばならない」

ポルター「分かっております」
嘘をつくな。 ま、ポルターもほんとは「ちょっと何言ってるか分からない」状態だったろうが、そこが宮仕えのつらさ、上司の言うことにはとりあえず頷かなければならないのである。
サイコ「このガラクタを宇宙空間に放り出せ、そして装置の完成を急げ」
サイコ、ガラクタは勿論、お金まで惜し気もなく捨てさせる。
でも、お金は地上で悪事を働く際に役に立つと思うので、捨てることはないのでは?
実際、25話では大会社の社長に莫大な借金をさせて、その会社を乗っ取ったりしているのだから、マドーもお金の価値・有用性を認識している筈なんだけどね。
サブタイトル表示後、そのガラクタや紙幣の一部が、他ならぬグランドバースの一室に積み上げられている。

電「リリィ、これ、どうしたんだい」
リリィ「宇宙空間に漂ってたそうなの、銀河連邦警察のパトロール艇が発見して参考のために送ってきたってワケ」
しかし、以前のレビューでも書いたと思うが、ヤケクソに広い宇宙空間で、よくそんな小さなものを発見し、その多くを回収できたものだと感心する。
つーか、レーダーに引っ掛かるかもしれない自転車やバケツとかならともかく、お札なんて、どう考えても見付かる訳がない。
宇宙の広さ舐めんなよ。
ともあれ、その紙幣の番号が、昨日、オリエント銀行から消えた分と一致したことから、
リリィ「あったわ、シャリバン、この一万円札は昨夜オリエント銀行から盗まれたお金よ」
電「そうか……やはりマドー!!」
……え、なんで? さすがにそれだけでマドーの仕業だと決め付けるのは乱暴であろう。
ベンガルブラザースのように、マドーに属さない宇宙の悪人だっているんだから。

続いて、広場の噴水のそばで、人形を抱いた小学2年生くらいの女の子が、三人の不良っぽい中学生たちに因縁をつけられて泣きそうになっていた。

バカ「おい、人に突き当たって黙ってんのかよ」
大人気ないにもほどがある三人は、女の子を突き飛ばし、彼女がしくしく泣き出してもやめようとせず、今度は人形をぐりぐり踏みつける。
さらに、人形を噴水の中に落とし、それを取ろうとする女の子の邪魔して笑う。
……
ま、不良と一口に言ってもピンキリだろうが、こいつらが最底辺に属しているのは間違いなく、この場でシャリバンクラッシュで真っ二つにされても、何処からも苦情は出なかったと思われる。
と、そこへ女の子の兄で、リュックを背負った小学6年生くらいの男の子が駆け寄り、不良たちから妹を守ろうとする。
不良たち、今度はその男の子にイチャモンにつけようとするが、漸く電があらわれ、

電「こんな小さい子をいじめて、何が面白いんだ? ええっ?」
バカたち「……」
弱いものにはとことん強く、強いものにはとことん弱いことを信条にしている三人は、電に凄まれるとスゴスゴと退散する。
電「怪我はなかったかい?」
一平「……カヨ、行こう」
ま、その二人にしても、助けてくれた電に「ありがとう」の一言もなく立ち去ろうとする、忘恩の徒なのが、いかにも当時のドライな世相を反映している塩対応。
不良たちとの対比の意味でも、ここはちゃんと礼を言わせるべきだったろう。
もっとも、幼女を前にした電はそれくらいのことでは怒らず、

電「ね、君たち、何処から来たの?」
一平「岩手県だ」
電「岩手県から……何か事情がありそうだね、良かったら僕に話してくれないか」
にこやかに呼び止め、しゃがんでカヨの視線に合わせつつ、実に、実にさりげなく、少女の肩に手を置いて事情を聞く。
この辺の自然な体捌きは、まさにプロフェッショナル(なんの?)と言えるだろう。
ともあれ、彼らは、東京に出稼ぎに来ている父親を探しに来たのだと言う。
と、ちょうどそこへ、かなりわざとらしく通り掛かったのが、小次郎さんと千秋だった。

電「これはこれはお揃いで」
千秋「小次郎さんが映画と食事奢ってくれるの」
小次郎「UFOの写真がね、週刊誌に売れまして、今ふところあったけえんだわ」
電「……」
UFO写真(インチキ)で小金を得たと自慢げに話す小次郎さんを、一瞬、汚物でも見るような目で見る電であったが、嘘である。
しかし、金に色はついてないとは言え、千秋、そんな金で遊興することに、疑問や後ろめたさを感じなかったのだろうか?
電「ちょうどいいや、小次郎さんも千秋さんも、この子たちの相談に乗ってやってよ」
と、電、ふと思いついたように、二人にも協力を求める。
ただ、その方法が、電が父親を探す間、二人の面倒を見てくれとか、手分けして探すとかじゃなく、全員でジープに乗って心当たりの工事現場を回ると言うものだったので、あまり意味のない協力要請だったように思う。
しかも、二人がこれから映画に行くと知っていながらそんなことをお願いするのは、どう考えても不自然且つ非常識である。
第一、ナレーターの口を借りて「伊賀電はマドーの奇妙な動きが気になったが……」と、エクスキューズさせているように、マドーの陰謀を調査中なのに、それを放置して大して緊急性もない仕事に没頭すると言うのは、宇宙刑事らしからぬ行為と言わざるを得ず、やっぱりこれは、カヨちゃんの存在が電を突き動かしているとしか説明がつかない事例である。
ともあれ、小次郎さんたちも、何故か電の頼みを素直に聞いて、一緒に工事現場巡りをすることになる。
だが、なにしろ東京なので、工事現場はいたるところにあり、なかなか父親を発見できない。
とある現場では、数羽のニワトリが飼われていたが、

小次郎「トートートー、いやぁ、懐かしいねえ、オーマイカントリーの匂いだって!!」
鶏糞の臭い(?)から、生まれ故郷のことを思い出し、ご機嫌になる小次郎さんであった。
一方、幻夢城では、ポルター自ら瞬間移動装置を修理していた。

ポルター「瞬間移動装置の故障が直りました、テストを行います」
やがてにこやかな笑みを浮かべて振り返り、魔王サイコに報告するが、

サイコ「……」
ポルター(ちくしょう、何とか言えよ、クソヤロー) かるーくシカトされたので、笑顔を湛えつつ、内心で悪態をつくポルターだった。
……と言うのは嘘だが、しばしば虚無の表情になる上司って、全力でイヤだよね。
あと、さっきは言い忘れたが、瞬間移動装置って、物凄い発明だよね。
動作が不安定とは言え、そのテクノロジーを応用すれば、グランドバースより優れた宇宙船を余裕で作れそうだが……
「コブラ」のタートル号みたいな。
さて、電、苦労した甲斐が実り、二人の父親、杉山善作が宇宙研究所の工事現場で働いていることを突き止める。
小次郎「じゃあ、トットちゃん、またねー」
のちにペットショップを開くくらいだから、動物好きなのか、小次郎さん、ニワトリたちに別れの挨拶するが、その瞬間、ニワトリたちがパッと消えてしまう。

小次郎「おっ」
今回、正直あんまり面白くないのだが、千秋の出番が多いのが救いである。
そのニワトリたちは、無論、ドジっ子ポルターが間違って瞬間移動させてしまったのだった。

結果、サイコの目の前で、ガイラーたちが右往左往してニワトリを捕まえようとするという、情けないにもほどがある光景が繰り広げられることになる。

サイコ「……」
か細い神経の持ち主なら、これだけで「俺、もう悪やめるわ……故郷に帰って農業やるわ」と言い出しかねない惨状であった。
ガイラー「ええい、汚らわしい!! 宇宙空間へ放り出せ!!」
動物愛護団体に聞かれたら滅ぼされそうなことを喚き散らすガイラー。

ポルター「……」
度重なる失態に、「オー、アイ・ハブ・ア・ヘデイク」とでも言いだけに額に手を当てて俯くポルちゃん。
ガイラー「修理のメドはあるのか」
ポルター「ひとつだけある、宇宙研究所に保管されている隕石だ。銀河系馬の首座に新しく誕生した第5の太陽系の隕石です。その石さえ手に入れば、この瞬間移動装置は完全無欠なものとなるのです!!」
ポルター、それ「修理」ちゃう、「改良」や……
サイコ「その隕石をすぐ手に入れよ」
それはともかく、サイコはシュンカンビーストなる魔怪獣を作り出し、隕石強奪を命じる。
一方、電たちも、一平たちの父親がいるという宇宙技術研究所を目指していた。
今更だけど、すっごい偶然!!
で、シュンカンビーストは問題の隕石を首尾よく盗み出し、ちょうどそこへ駆けつけたシャリバンの追撃も振り切って逃げる。
たまたまシュンカンビーストに鉢合わせして怪我を負った善作に、電たちが駆け寄る。

一平「父ちゃん、しっかりして」
善作「一平、カヨ……」
善作は子供たちの名を呼ぶと、気を失う。
ポルター「この隕石は内部に強力な磁場を秘め、その驚くべき超磁力であらゆるものをひきつけることが出来るのです」
ポルター、隕石を誇らしげに見せて説明するのだが、「物体を瞬間移動させる」ことと、「物体を磁力でひきよせる」こととは、全く別のメカニズムではないかと思うのだが……

ポルター「あっははははっ」
嬉しさのあまり、笑いながら隕石を瞬間移動装置に嵌め込むポルター。

その頃、リリィは、グランドバースの一室で、「ジ・エンド・オブ・エターニティー」と言うSF小説を読み耽っていた。
……
さては、仕事する気ねえな?
電が別の用事で手が離せないのだから、代わりにオリエント銀行の事件について調べるくらいのことはしろよ。
ヒーローより活躍していたアニーとはえらい違いで、髪型やルックスもだが、こういうところも管理人がリリィをあまり好きになれない理由になっている。
それはともかく、突然グランドバースが乱気流に突っ込んだようにコントロールを失い、右に左に上に下に、めちゃくちゃに揺れ始める。
無論、瞬間移動装置によるものなのだが、これじゃあ、瞬間移動でもなんでもない。
リリィ「シャリバン、大変、グランドバースが凄い力で引っ張られているわ」
電「なんだって」
リリィ「シャリバン、早く戻って、どうにもならないの」
電「リリィ、緊急移動装置を作動させるんだ」
リリィ、現にグランドバースの操縦席に座っているのに、何の対応も出来ず、地上にいる電に助けを求めると言う、仮にも宇宙刑事にあるまじき情けない台詞を吐く。
あんた、ほんとに宇宙刑事なの?
ちゃんと宇宙刑事訓練学校出てるの?
ともあれ、リリィは、逆噴射装置のようなものを作動させて、なんとかマドーの魔手から逃れる。
ほとんど同時に電が戻ってくるが、いくらなんでも戻ってくるのが早過ぎ。

電「リリィ、だいじょぶか」
リリィ「ええ、一体どうしたのかしら」
電「マドーの仕業だ。マドーは宇宙研究所から超磁力を持つ隕石を盗んだ、それを使って何か新しい兵器を開発したに違いない」
CM後、病院に収容されて眠っている善作。

付き合いのいい小次郎さんと千秋は、文句も言わず付き添っていたが、やっぱり変だよね、これ。
遊ぶ予定が狂って不満を漏らす千秋を、小次郎さんがなだめる(その逆も可)……みたいなやりとりがあったほうが、リアルだったと思う。
一方、またしても失敗したポルターは激しく落胆していた。
ポルター「もう少しで上手く行ったのに」
ガイラー「磁力が弱かったのだ、最大限にパワーをアップしてみよう」
と、根がガサツなガイラー、ポルターの了解も得ず、いきなりダイヤルを目一杯ひねってしまう。
案の定、たちまちメカがオーバーヒートを起こし、火花が散る。
ポルター「どけいっ!!」 目ン玉ひん剥いて、ガイラーの体を押しのけるポルター。
この辺、ほとんど、夫婦どつき漫才である。
さて、善作はほどなく意識を取り戻し、千秋が病院の中庭にいた一平たちに知らせようと呼びかけるが、

千秋「ああっ!!」
こちらに向かって走り出した二人の姿が忽然と消えてしまう。

二人は、次の瞬間、こともあろうに幻夢城のど真ん中にワープする。
ガイラーおやじがメカをいじったせいだが、さっきはグランドバースを磁力で引っ張っていたのに、ここではまた瞬間移動させており、一貫性がない。
それはさておき、異様な空間を目にして、声もなく固まる二人。
サイコ「幻夢城を見たものは生きて帰すわけには行かん、捕まえろ」
前にも似たようなツッコミを入れた気がするが、「生きて帰す」なと言ってるのに、なんで「捕まえ」なきゃいけないの?
魔王サイコ自身が電撃ビームを浴びせれば一瞬で黒焦げになっただろうに。
おまけに、戦闘員が二人を捕まえると、「監禁せよ」と、訳の分からない指示を出すし……

ま、サイコ、電が無類の幼女好きなのを知ってるので、彼女を電に対する囮にしようと考えたのかもしれないが……
ところが、二人は途中で逃げ出し、幻夢城内の、安い「エイリアン」のような不気味な空間をさまようこととなる。
結局、元の場所に戻ってくる二人だったが、案の定、全銀河征服を企む悪の皆さんが、なかなか子供を捕まえられないと言う、悪の首領が思わず出家したくなるような絶望的な光景が繰り広げられる。
さらに、メカから零れ落ちた隕石を、すかさず一平が掴むのだが、これも考えればおかしな話である。
一平は、たぶん(父親のことで頭が一杯で)隕石が盗まれたことなど知らなかっただろうし、生きるか死ぬかの状況で、そんなものを拾う余裕はなかった筈だからである。
これが、父親が隕石を盗んだ犯人だと誤解されている……みたいな状況だったら、一平の行動も納得できるんだけどね。
焦ったガイラー、またしても昭和オヤジのガサツさを発揮して、子供目掛けて斬りかかるが、

狙いは外れ、瞬間移動装置のコントロールパネルを思いっきり剣で叩いて手が痺れてしまう。
しかも、そのショックで、一平とカヨを再び元の場所に転送させるというおまけつき。
ポルターといい、ガイラーといい、ミスの連続で、これでは魔王サイコが匙を投げたくなったとしても無理はなく、実際、次回、レイダーと言う新しい幹部を登用することになるのである。
それにしても、科学技術面では総じて優秀な悪の人が、ひとつのメカで、これだけ同じ失敗を繰り返すと言うのは珍しいパターンだと思う。
事件解決後、故郷に戻る杉山親子を電が見送るシーンとなるが、

リリィ「カヨちゃん、はい、お土産」
カヨ「わあ可愛い、お姉ちゃんありがとう」
何故か、彼らとは初対面のリリィが見送りに来て、しかも、新しい人形をプレゼントしてカヨに感謝されると言う、なんとなく、小次郎さんたちの手柄を横取りするような恰好になる。
この辺も、激しく納得が行かない。

電「……」
それにしても、電のカヨを見るときの笑顔、これこそまさに真性ロリコン戦士が幼女にだけ見せる笑顔の好例であろう。
もっとも、管理人があまり画像を貼らなかったことからも分かるように、この子役、あんまり可愛くないです。

ちなみにこのシーンのリリィ、当時としては貴重なミニスカで攻めているのだが、無論、飛んだり跳ねたりするわけじゃないので、絵に描いたような「宝の持ち腐れ」となっている。
以上、ガイラー&ポルターの夫婦漫才以外に、特に見せ場のない凡作であった。
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