「男はつらいよ」レビュー 第9作「男はつらいよ 柴又慕情」（1972年）

男はつらいよ 柴又慕情(第9作)HDリマスター版 【DVD】 価格：3,072円（税込、送料別）

●作品鑑賞

　1972年8月公開。

　吉永小百合が初めてマドンナとして登場した作品である。

　ただ、管理人は吉永小百合があまり好きじゃないので作品自体に対する評価もさほど高くない。けれど、演出と言い、演技と言い、全ての面で円熟した味わいを堪能できる佳作であろう。

　
　森川信が亡くなった為、松村達雄が二代目おいちゃんとして登場。ついでに、満男も今回だけ中村はやとではない別の子役が演じている。

　松村氏はたしか第6作目でスケベ医者としてゲスト出演しているはずだ。

　さくらたちが家を建てると言うので、おいちゃんたちが寅の部屋を他人に貸して少しでも彼らの資金に充てようとするが、間の悪いことに寅が戻ってきて、例によって例のごとく、騒動になる。

　もっとも、結局さくらたちの計画はこの時は実現しなかったようで、実際に家が建つのははるか後、26作目……だったかな。

　家を飛び出した寅は、旅先で舎弟のノボルと再会する。

　
　一方、女子大生（だっけ？）の吉永小百合と友人（引き立て役とも言う）二人も観光旅行を楽しんでいて、寅たちと同じ旅館に投宿していた。

　寅は、ノボルや仲居と一緒にどんちゃん騒ぎ。この両者の対比が面白いし、それでいて旅先で感じる独特の哀愁みたいなのも描かれている。

　
　寅たちが廊下ひとつ隔てた部屋でバカ騒ぎをしているので小百合たちは女将に苦情を言って注意させる。この女将を谷よしのさんが演じている。顔にクリームを塗りたくりながら。

　
　その後、ふたりきりになった寅とノボルだが、例によってじゃれあって、突き飛ばされたノボルが襖を破って廊下へ飛び出たりする。

　翌朝、ノボルは置き手紙を残して先に発っている。

　
　寅は、女子三人組と小さな茶店（？）で偶然出会う。寅はハードボイルドキャラを演じていたが、記念撮影の際の「バター」（チーズの代わりに寅がしばしば使う鉄板ギャグ……最初に使ったのは1作目の御前様だったかな）と言って、たちまち化けの皮が剥がれ、それを境にたちまち小百合たちと意気投合し、それから楽しく一緒に旅をする。

　
　そして、寅が柴又に帰ってくると、土手のところで、小百合の友人ふたりと偶然再会する。

　さすがに偶然の力に頼り過ぎている気がしないでもないが……

　
　この時、源ちゃんが連れている白い犬がちょっとカワイイのだ。

　寅は、20年間故郷に帰ってないと言っていた手前、とらやに長いこと帰ってなかったような芝居をするが、無論すぐばれて大笑いとなる。

　
　ふたりは、小百合が寅さんと会いたがってると話して寅をいい気持ちにさせる。

　小百合は父親と二人暮しで、家庭的には不幸らしい。
　その父親（小説家）を宮口精二が演じ、彼は続篇の13作目にも出演している。上記の友人二人も、台詞はないがチラッと顔を見せている。

　
　とらやの団欒。

　（割といい年こいた）さくらさんの膝小僧をじっくり鑑賞できるミニスカ姿がたまりませんね（変態かワシは）。

　
　その後はいつものようにとらやにやってきた小百合と、彼女に惚れてしまった寅やさくらたちとの温かい交流。

　吉永小百合の演技は、いかにもお芝居と言う感じで、どうも好きになれない。まあ、老若男女が楽しめるプログラムピクチャーとしては、その方がいいのだろうが。

　で、いろいろあって、当然寅はふられ、小百合は陶芸家の男と結婚してしまう。

　ただし、13作目でこの陶芸家はコロッと死に、再び独身女性として小百合が戻ってくるわけである。

　
　最後は、再びノボルが登場し、寅と再会するのだった。

　これもまあ凄い偶然だけどね。

●評価

　作品そのものは優れているが、個人的にはマドンナにいまひとつ魅力を感じなかった。

　★★★☆☆（3点/5点中）