第34話「総毛立つ幽鬼は死霊界への案内人」(1983年10月28日)
冒頭、電が鈴木モータースで仕事をしていると、リュックを背負った千秋が来て「じゃ電さん、行って来ま~す」と声をかける。
千秋たちはこれからキャンプに行くところなのである。
電も仕事の手を休めて、見送りに出る。

電「小次郎さん、しっかり頼むよ」
小次郎「任せといてよ、千秋ちゃんと星空の夜を楽しむで、うひゃひゃひゃひゃ」
運転を担当する小次郎さん、何か良からぬことを考えているように、ヒソヒソ声で答え、不気味な笑い声を立てる。
千秋「なんか言ったー?」
小次郎「あ、なんでもねえ、こっちの話だ」

千恵「ばいばーい」
サンルーフから顔を出し、電に元気よく手を振る千恵たち。
電「……」
一瞬、仕事も何もかも打ち捨てて同行したい衝動に駆られる電であったが、
電「うんと楽しんでおいで!! ……さあ、俺は仕事、仕事」
平静を装って送り出すと、笑顔で仕事に戻るのだった。
EDで歌われているように、「悲しみに微笑んで」生きるのが男の道なのである!!
一方、幻夢城では、魔王サイコがえらい怒ってはった。

サイコ「いつまでシャリバンをのさばらせておくのだ、早く始末して、マドー帝国を打ち立てねば……」
ポルター「はーっ」
しかし、マドー帝国とやらをなんで地球に打ち立てねばならないのか、その辺が良くわからないのである。
マドーはすでに銀河の多くの惑星を手中に収めているはずなので、無理に強敵のいる地球にこだわることはないと思うのだが……
レイダー「ふっふっふっふっ、もはやめくらましは通用せぬ。屁っ放り腰で宇宙刑事シャリバンが倒せるものか」
などとやってると、どこからか、地獄の底から響いてくるような低い男の声が聞こえてくる。
言わずと知れたレイダーである。
それにしても、レイダーの第一声の「めくらましは通用せぬ」と言う台詞、何度聞いても意味が分からない。
「めくらまし」を得意とするのはむしろレイダーの方なので、「?」となってしまうのだ。

レイダー「ふっふっふっふっふっ」
それはともかく、広間の中に雷光が走ったかと思うと、空間から浮かび上がるように、世にも恐ろしげな姿をした、長身の怪人があらわれる。
レイダーは驚きおののくポルターたちの間を滑るように突き進むと、サイコの前に立ち、
サイコ「何者だ」
レイダー「レイダー、死霊界から来た」
サイコ「死霊界?」
ガイラー「屁っ放り腰がどうのと生意気な!!」
レイダー「シャリバンなど赤子の手を捻るが如し……見ておれ」
そう言うと、レイダーは姿を消す。

レイダーの声「ふっふっふっふっ、お前は間もなく死ぬ」
電「……」
バイクにまたがって性能テストをしていた電、突然聞こえてきた不吉な声に油断なく周囲を見回していたが、

ふと見ると、グリップを握っている自分の右手が白骨になっているではないか。

電「はっ」
慌てて右手を引き寄せると、それは軍手を嵌めた普通の手であった。
だが、なおもレイダーの不気味な笑い声が聞こえる。
サブタイトル表示後、今度は屋外でバイクの走行テストをしている電。
背中に得体の知れないものの存在を感じ、勾配のある橋の中央付近まで来たところでバイクを停め、周囲を見渡す。
だが、橋の下の緑豊かな水辺に霧が立ち込めているのを除けば、不審なものは見当たらない。
電「気のせいかな……」
が、次の瞬間、電は瘴気漂う沼の水際に立っていて、

向こうから、棺を載せたボートが流れてくるではないか。

ボートが接岸すると、ひとりでに棺の蓋が開き、中に花に包まれた人が横たわっているのが見えたが、それは他ならぬ電自身の死体であった。
電「あっ」
レイダーの声「自分の死に顔はどうだ、気に入ったかね?」
電「誰だ?」

電「誰なんだ、出て来い!!」
からかうようなレイダーの声に、思わず叫ぶ電であったが、その途端、電は自分がさっきの場所に立っていることに気付く。
そして、目の前には犬を連れた少女がいて、電の叫び声に立ち竦んでいた。
うっかり子供を怯えさせてしまったことを電は悔やむが、

その少女が
割りと好みのタイプだったので、彼女がそそくさと走り去るのを見て、二重の意味で精神的ダメージを受ける電であった。
……嘘である。
電は、そこまで考える余裕もなく、
電「夢なのか、真っ昼間に夢を見たんだ。きっとそうだ」
遠ざかる犬の吠え声をぼんやり聞きながら、自分に言い聞かせるように言うと、改めてバイクにまたがる。

だが、サイドミラーを見ると、ヘルメットの中の自分の顔が骸骨になっているではないか。

ただ、ちょっとおかしいのは、それに対し、電が自分の左手を確かめることである。
普通は、ヘルメットを脱いで顔を触るよね。
おそらく、骸骨ショットの前後に、今度は左手が白骨になっているカットがあったが、何かの都合で削除されたのではあるまいか。
矢継ぎ早に、巨大なトラックが突っ込んできて、電がバイクから飛び降り、代わりにバイクが爆発炎上するシーンとなるが、これは蛇足だったような気がする。
自分の力を見せ付けたレイダーは、再びサイコたちの前にあらわれる。
レイダー「ふっふっふっふっふっ」
サイコ「シャリバンをあそこまで追い込んだ手並み、見事だ」
レイダー「あれは挨拶代わりだ」
サイコ「マドーの指揮を取る気はないか、戦略を任せる」
実力主義のサイコ、その場でレイダーを指揮官に据えたいなどと言い出す。
素性も目的も分からぬ男を抜擢しようなどと、サイコの態度はあまりに軽率であったが、それだけポルターたちの不甲斐なさに失望していたのであろう。

ポルター「魔王様!!」
レイダー「マドーの指揮か、こんな有象無象どもを指揮するのは骨が折れる」
ガイラー「なにぃ、許さんーっ!!」
レイダーの言葉に、当然、古参幹部のガイラーは怒り狂って剣を抜き、レイダーに斬りかかるが、なにしろ「基本、自分、霊ッスから」のレイダーには剣も素通りして効き目がない。
それでも幹部の意地でレイダーの首を刎ねるが、

ガイラー「うおっ!!」
首はそのまま宙を飛び、ガイラーを子供のように怖がらせる。

しかし、実際、こんなモンが目の前に飛んできたら、子供ならずともビビるで。
元々中盤のテコ入れとして投入されたレイダーだったが、その造型と安藤さんの演技があまりに怖いので、逆に視聴率が下がったと言うのも頷ける。

ガイラー「わっ、首が」
だが、レイダーの霊力はそれに留まらず、今度はその首がガイラーの頭にすっぽり被さり、その体を乗っ取られると言う、ホラー映画でもあまり見たことのない物凄いシチュエーションとなる。
個人的には好きだけど、これはいささかやり過ぎの感がある。
ガイラー「ぐわーっ、なんとかしてくれーっ、ドクターポルター!!」
半狂乱になって、恥も外聞もなく同僚に助けを求めるガイラーであったが、
ポルター「来るなーっ!!」 ……
今日の格言
「人間なんてそんなもんである」 それはそれとして、

パニックの中、体を回転させたミスアクマ1のミニスカの下から、むちっとした尻肉がはみ出るのを、尻フェチ系キャプ職人の管理人の、鷹のように鋭い目は見逃さないのでした。
我ながら立派だと思います。
色々あって、レイダーの首はガイラーから離れ、元の胴体にくっつく。

ガイラー「……」
恐怖のあまり声も出ないガイラー。
前線指揮官がこの体たらくでは、新参者のレイダーに一任したくなったサイコの気持ちも分からないではない。
それに、戦隊シリーズとかだと、途中でパワーアップしたりすることもあるのだが、ガイラーもポルターも、最初から最後まで何の進歩もないんだよね。
それでも、同じ無能でも、「スピルバン」のデスゼロウと比べれば、上司に媚びへつらったりしないだけマシかもしれない。
さて、レイダーは何事もなかったように、
レイダー「これからシャリバンめにトドメを刺してくる」
ポルター「待て、レイダー、シャリバンは我々の手で倒す、余計な手出しは無用だ」
ガイラー「そうだ」
ポルター「魔王様、私どもにもう一度チャンスを……今度こそ、今度こそ必ずシャリバンめを!!」
今まで何度も口にしてきた常套句を放ってワンモアチャンスを願うポルター。
サイコは、こう見えて温情家……と言うより、女に甘いので、その願いを聞き入れ、魔怪獣まで作ってやる。
電は、グランドバースでリリィの手当てを受けていた。

リリィ「マドーかしら、その得体の知れないものは」
電「奴の声を聞くと、背筋がゾーッと冷たくなるんだ」
夜、千恵たちのいる富士川村キャンプ場という所で、カラオケ大会が開かれていた。

それに参加して、気持ち良さそうに演歌を歌っている千秋。
千秋「杜の都の仙台あとに~♪」

小次郎「うまい、日本一、痺れる!!」
明「うまい、さすが姉ちゃんだ、優勝だね」
千恵「絶対よ、ね!!」
小次郎「美声だなぁ、ウグイスみたいな声だな」
小次郎さんたちがキャアキャア言いながら聞き惚れていたが、身贔屓ではなく、確かになかなか上手いのである。
中川みどりさんの特技なのであろう。

千秋「きゃあああーっ、お化けーっ!!」
ところが、その途中、千秋が何かに気付いて、小次郎たちの背後を指差し、けたたましい悲鳴を上げる。
見れば、後方にしつらえてあった四角いキャンプファイヤーの炎の中から得体の知れない物体が浮かび上がっているではないか。

千恵「きゃあああーっ!!」
振り向いて、悲鳴を上げる千恵。

物体は炎に包まれながら宙に浮かび、キャンパーたちに襲い掛かる。
小次郎「早く逃げろ!!」
しかし、子役がいるのに、フィルターじゃなく、ちゃんと夜中に撮影してるのはえらいなぁ。

やがて、その物体はヒャクメビーストと言う、口の中に目玉がある、気持ちの悪い造型の魔怪獣の姿になる。
たまたまその付近を走っていた電は、千恵の「助けてーっ」と言う叫び声をキャッチすると、直ちに急行する。
この辺、幾度もの戦いの過程で、電の性癖を知り尽くしたポルターたちならではの巧みな作戦であった。

小次郎「あああああ」
千秋「きゃーっ!!」
自分たちのテントに逃げ込み、抱き合う4人。
個人的には、明と千恵のポジションは逆の方が良かったかな。
ついで、テントの中で、小次郎さんと千恵が一緒に空中に持ち上げられるという、「ポルターガイスト」的な怪奇現象が起こる。
やがて電が駆けつけ、シャリバンに変身してキャンパーたちを逃がす。
そしてAパートなのにラス殺陣が始まり、幻夢界が作り出される。
サイコ「レイダー、行け」
レイダー「……」
このタイミングで、サイコがレイダーに出馬を要請する。
CM後、メカアクションをこなしてスポンサーへの義理を果たすと、ヒャクメビーストとのバトルとなる。
普通に戦えばシャリバンの楽勝だったが、

戦いの途中、シャリバンの前に、再び自分自身の死体があらわれる。

今度は崖の上の十字架に掛けられてぐったりしていたが、

不意に顔を上げると、それがドクロに変わる。
これがまたかなりの気持ち悪さである。

そして、十字架から離れると、シャリバンに攻撃を仕掛けてくる。
これは、渡さん本人が演じてるんだと思うが……
己の死体に背後を取られ、
シャリバン「誰だ、貴様?」

レイダー「死神さ、貴様を地獄へ送るためにやってきた」
と、ドクロがレイダーの姿になる。
その後、レイダーとヒャクメビーストの二人を相手に大苦戦するシャリバンであったが、かろうじてヒャクメビーストを撃破し、現実世界に帰還する。
だが、

レイダーに何度もまとわりつかれたせいか、その体は死霊の呪いに蝕まれており、勝ちポーズを決めた後、力尽きたように膝を突く。
が、レイダーはそれ以上何もせずに幻夢城に戻ってくる。
サイコ「トドメを刺すべきだったぞ」
レイダー「奴は死ぬ、もはや屍も同然」
サイコが不満そうに咎めるが、レイダーは自信たっぷりに言い切る。
果たして、電は勝利したものの、それっきり意識不明の重体となる。

リリィ「しっかりして、シャリバン、死なないで」
リリィの必死の看病も実らず、電の脈拍はどんどん弱くなっていく。

マリーン「まだ危篤状態が続いているようです」
バード星の銀河連邦警察本部は、電危篤のニュースを受けて、重苦しい空気に支配されていた。
珍しくその場には烈と月子の姿もあったが、この4人が同じ画面に映るって、これが最初で最後のケースではあるまいか。

月子「かわいそうに、相当ひどくやられたのね」
烈「マドーめ」
コム「ギャバン、もう一度地球担当に戻ってもらうかもしれないぞ」
烈「えっ」
コム「無論、シャリバンの容態次第だが……」
冷徹なコム長官は、早くも電の後任人事のことを考えていた。
烈「だいじょうぶですよ、シャリバンならきっと」
コム「そう祈りたい」
しかし、電が危篤なのに誰も地球に行こうとしないのは、いささか薄情のように思える。
実際問題、今は地球が無防備の状態なので、後任になるかどうかは別にして、ともかく烈が地球の守備に赴くべきでなかったか。
夢の中で電は、岩山の中を訳も分からず彷徨い歩いていた。

聖なるもの「若者よ、何処へ行く」
と、崖の上に、白いローブをまとった謎の人物があらわれ、電に問い掛ける。
電「はい、私はイガ星へ行く道を探してるんです」
聖なるもの「やめたほうが良い、イガ星への道は遠く険しいぞ」

電「いいえ、たとえどんなに険しくても、私は行かなければなりません。イガ星の再興は私の使命なんです」
聖なるもの「これを使うが良い」
電の覚悟を確かめた聖なるものは、水晶のかけらのようなアイテムを取り出し、宙に放り投げると、姿を消す。
電「あれはコンパスだ」
アイテムの飛んで行ったほうに向かってひたすら歩き続ける電。

やがて、「死の国」と「生の国」との分かれ道にやってくる。
その場所から見下ろすと、「死の国」には、明るい光が満ち、

天女のような美女たちが、パゴダのような建物のまわりで、楽しそうに音楽を奏でたり、踊ったりしているのが見えた。
反対の「生の国」は、蒸気と熱水の噴き上げる火山地帯になっていた。
電はふらふらと「死の国」に降りていく。

肌もあらわな美女たちがよりどりみどりの、そこはまさに天上の楽園のような場所であったが、レイダーが電の性癖を知らなかったことが裏目に出る。
もしここに、千恵のような可愛い女児がいたら、電はあえなく命を落としていたであろうに……

それはそれとして、結構可愛い子もいるのだが、画面がぼやけているので、はっきり顔が見えないのが口惜しい。
こういう効果を使うのは仕方ないにしても、女の子の顔が見えないのはNGである。
ともあれ、電は女の子たちにすすめられた何気なく酒を飲もうとして、
電(俺にはやることがあるんだ、イガ星を再興しなければ……その為には生きなければ)
と言うことに気付き、寸前でグラスを叩きつける。
それを見た女の子は、
女の子「グラス代、お会計に入れときますね」
電「すいません……」
じゃなくて、急に悪鬼のような顔になり、電を睨みつける。

電は「死の国」を出ると、「生の国」へ入る。
ところどころガスの噴き出す、険しい岩山を必死になって這い登る電。
死ぬことは「楽」であり、生きることは「苦」なのだと言うことを、台詞ではなくビジュアルでちびっ子たちに訴えた、奥の深いシーンである。
やがて前方に、オレンジ色に点滅する不思議な鉱石が屹立しているのが見えた。
電「イガクリスタル……」
と、いくつもの青白いドクロがあらわれ、電の邪魔をするようにその周りを乱舞し、エクトプラズムとなってその体を拘束する。
これもレイダーの仕業だったのだろう。
電(ここでくたばって堪るか、俺は、俺は……)
電は不屈の闘士でエクトプラズムを振り払うと、イガクリスタルに向かって走る。

その前で倒れた電が、右手を伸ばして、イガクリスタルの表面に触れた瞬間、

カメラは、意識のない電の右手をしっかり握り締めているリリィの姿に切り替わる。
ふと見れば、電の脈が徐々に戻っているではないか。
リリィ「シャリバン、シャリバン……」
リリィが電の名を呼ぶと、電が薄っすらと目を開ける。

電「リリィ……」
その目に飛び込んできたのは、おそらく、劇中で一番綺麗に撮れているのではないかと思える、リリィの慈母のような笑顔だった。
こうして、イガ星の守護者・聖なるものと、リリィの愛、そして電自身の生きたいと願う気持ちが三位一体となって奇跡を起こし、電はかろうじて死の淵から生還する。
だが、これでレイダーの呪いが完全に解けたわけではなく、次回も電はレイダーの妖術に苦しめられることになるのだ。
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