第47話「さらば嵐!妖怪城に死す!!」(1973年2月23日)
最終回である。
冒頭、ツムジとイタチの仲良しコンビが、一路、妖怪城への道を走っている。

イタチ「あいたっ、あたっ!! ははぁ、いてぇ……へっ、へへ、いやはは、カッコ悪いところカゲリちゃんに見られなくて良かったよ」
ツムジ「……」
イタチ「さ、行くぞ」
途中で足を滑らせてコケるイタチであったが、最終回だというのに頭の中は相変わらずカゲリのことばかり。

二人は何事もなかったようにその場を通過するが、ポォーオオッみたいな、表記しにくい効果音と共にフィルムが切り替わり、

イタチ「妖怪城一番乗りは俺だ」
ツムジ「そうは行かないの」
ツムジとイタチがまたしても向こうから走ってくるではないか。
進歩のないイタチ、全く同じところでコケると、

イタチ「いやぁ、一度ならず二度までも……」
ツムジ「変だ?」
イタチ「なに、変だ? ちぇえっ、どうせ俺の顔は変ですよーっ」
ツムジはイタチの軽口には取り合わず、真剣な顔で、
ツムジ「見ろ、イタチ、ここは今通ったばかりのところだぜ」
イタチ「えっ、なんだって? さっき転んだのと全然同じだ」
ツムジ「そうだ、この道はきっと大魔王サタンの妖術が働いてるんだ」
イタチ「えっ、なんだって? すると前には行けない? と言うことは妖怪城にも行けないな」
早くも道の異変に気付いたツムジ、腕を組んで考え込んでいたが、ふと、頭上に細い吊り橋が掛かっているのを見て、目を輝かせる。
イタチ「た、高い、怖い」
二人は早速その細い吊り橋を渡ろうとするが、相変わらず屁っ放り腰のイタチは怖がってなかなか前に進めない。

ツムジ「早く、イタチ」
イタチ「そ、そんなこと言ったって、俺は高所恐怖症なんだよ」
天下の大泥棒を自称するくせに、高いところが苦手と言うイタチ、子供の前でも一切見栄を張ることなく、自分の生き方を貫くのであった。
ある意味、カッコイイ。
当時ではまず不可能だが、今だったら、こういう「何をやらしてもダメな子」系のヒーローが主人公の特撮なんてのもありかもしれない。

ツムジ「全く世話が焼けるなぁ」
ツムジ、ウンザリした顔で言うのだが、その橋と言うのが、めちゃくちゃ幅が狭く、左右の手摺に掴まって、綱渡りのように進んでいかねばならないキョーフの吊り橋なので、本物の忍びではないイタチが死ぬほど怖がるのも無理はないと言う気はする。

それを踏まえた上で、この約一年前に放送された「魔女先生」の最終回で、菊さんが、同じ(?)吊り橋を手摺に掴まらないで渡っていたシーンを思い出し、改めて菊さんの運動神経と度胸の良さに賛嘆を禁じえない管理人なのだった。
しかも、ロングブーツで!!
ツムジ「目をつぶりな、手を引いてやるから」
イタチ「頼む」
ブツブツ言いながら、イタチの手を引いてやるツムジ。
なんだかんだでその友情の篤さに目頭が熱くなる管理人であったが、

ツムジ「あっ、サタンの円盤だ」
イタチ「ええっ? ひええっ、進むに進めず、さりとて引くに引けず、間の悪いときに……」
二人が文字通り進退窮まっていると、
サタン「妖怪城に近づくものは必ず死ぬ、馬鹿め、火の橋を渡りおって」
ツムジ「火の橋?」
イタチ「橋が燃え始めた!!」
頭上にサタンの円盤があらわれ、その言葉に左右を見ると、いつの間にか橋のあちこちから火が上がっているではないか。
考えたらこれ、死神博士が地獄大使を殺そうとしているわけで、なかなか凄い状況だよね。

イタチ「ひあああっ!!」
んで、もっと凄いのは、イメージ映像だけじゃなくて、俳優の乗っている橋の手摺にほんとに火をつけちゃうことなのである!!
イタチ「助けてくれ!! バカ、マヌケ、トンチキ!! 忍者の癖に本物かニセモノか分からないとは」
ツムジ「諦めてくれ、イタチ」
イタチ「イヤーッ、死ぬのはいやだ、第一、お前と一緒じゃ、死んでも死に切れない、助けてくれーっ!!」
さっきまでの麗しい友情は何処へやら、子供に八つ当たりして、身も世もなく絶叫して命乞いする、ダメな大人の代表選手のようなイタチの醜態であった。
にしても、このシーン、どうやって撮っているのか?
手摺は、ワイヤーの上に別の素材を被せて燃やしているのかと思ったが、
オイオイオイオイ、本気で火ぃつけてるぞっ!! これ、ちゃんと許可は取ってあるんだろうか?
で、ツムジとイタチはあえなく橋から落ちていくが、そこへターザンよろしく崖の上からロープにぶら下がったハヤテが滑空して、空中でイタチとツムジの体をキャッチする。

カゲリ「うっ、だいじょぶかい」
ツユハ「ハヤテさんの言うことを聞かない罰よ」
で、そのロープをカゲリがたった一人で引き揚げるのだが、さすがに無理じゃね?
つーか、ツユハも手伝えよ。

ハヤテ「進めない道を造り、火の橋を渡らせようとした、サタンの企みか」
イタチ「助かった……全くこれから先、何があるのか」
カゲリ「そうさぁ、どうだい、いっそここで待っていたら?」
死ぬ思いでロープを伝い上がって来たイタチが全力で弱音を吐くのを見て、カゲリがからかうような口調で勧める。
イタチ「えっ? いやいやいやとんでもない、カゲリさんの行くところ、たとえ地の果て海の底」
カゲリ「はぁーっ」
いけしゃあしゃあと言ってのけるイタチにカゲリたちが呆れていると、いきなり物凄い雷が落ちてくる。

イタチ「きゃあ、雷弱い!! 雷は……カゲリ殿!!」
ツムジ「高所恐怖症の次は、雷か、面倒見切れねえや」
イタチ「……」
イタチ、どさくさ紛れにカゲリに抱きつこうとするが、カゲリはすかさずツムジの体を押し出し、自分の身代わりにする。
何度も言ってきたが、イタチとカゲリ、ツムジの掛け合いが実に楽しく、いっそのこと、彼らを主人公にした新番組を作って欲しいとさえ思う管理人であった。
実際、もし菊さんがあんなことにならなければ、この数年後に、潮さんが再び正義の忍者を演じることになった「忍者キャプター」に、菊さんも女忍者として出演し、イタチとカゲリの共演がもう一度見られたかもしれないのに……
ハヤテ「ただの雷ではないぞ」
サタン「そうだ、お前たちの立つ崖は、妖怪城の砦、いかずちの砦だ、怒れ雷、走れよ稲妻!!」
次々と落ちてくる雷を前に、逃げ惑うばかりのハヤテたちであったが、
イタチ「あ、俺の全財産が……小判、小判」
イタチが、落とした小判をせっせと拾い集めているのを見て、
ハヤテ「小判に当たった、そうか、金属を利用すれば……とぉっ!!」
手にしたサイを頭上に投げて、それを避雷針代わりにして難所を切り抜ける。
サタン「おのれ、ハヤテ、この上は……」

サタン、ひとまず円盤で、妖怪城のある噴火口の中に入り、

妖怪城の本体の上に着地し、

サタン「……」
その中を、狭苦しいエレベーターに乗り、いかにも人の手で動かしてるんだろうなーと言う感じのぎこちない動きで降下していくサタン。
大魔王サタンのビンボー臭さ、侘しさをこれほど的確に表現した映像は他にあるまいっ!!
それはともかく、いよいよ追い詰められたサタンは、

サタン「永遠の呪い、不滅の悪の下に、開けよ、魔法陣、眠りし悪に命の炎を……サタンの名の下に、再びいでよ」
なかなか本格的な魔法陣を使って、過去に倒された部下たちを甦らせようとする。
ちなみに天本さん、晩年に、同じくこう言う魔法陣が出てくる映画「エコエコアザラク」に出てるんだよねぇ。
考えたら、映画の中で菅野美穂が呼び出そうとしていたのはルシファー、すなわちサタンだったわけで、彼女を導く重要な役に、その大魔王サタンを演じたことのある天本さんがキャスティングされていたとは、面白い偶然である。
で、てっきり、特撮ではお馴染みの、倉庫に眠っていたスーツの再利用……すなわち、再生怪人たちが出てくるのかと思いきや、

悪魔道人「お呼びですかな、サタン様」
あらわれたのは、大幹部(……と言うか、ほんとは西洋妖怪の首領なのだが)のひとり、悪魔道人ただひとりであった。

サタン「悪魔道人、ほかの、大魔王サタンの手となり足となるほかの妖怪たちはどうした? 」
この予想外の事態にはさすがのサタンも狼狽を隠せない。
悪魔道人「お言葉ですが、魔法陣の中で五体健全なのはこの悪魔道人ただひとり……恐らく、嵐のガンビームを受けた妖怪どもは二度と復活できぬものと思われますが……」
……と言う訳で、怪人を蘇らせようとしたけど(スーツの損傷がひどいので?)無理でしたーと言う、たぶん、「悪の組織」の歴史上、空前絶後のみっともない事態となり、サタンの情けなさにますます拍車がかかるのだった。
サタン「ならばお前の力で、手足を作れ」
悪魔道人「その手足にする相手とは?」
サタン「これを見るが良い、手頃な奴どもが、夢中で走っている」
サタンは妖原子球の中に、こちらに向かって走っているタツマキ以下、6人の伊賀忍者たちの姿を映して見せる。
そう、前回のラスト、ツムジが伊賀の里にいるタツマキに連絡しようと言っていたが、それを受けて早くも伊賀の精鋭たちが、来なくても良いのにやってきたのだ。
つまり、今回は、
・天本英世
・潮健児
に加え、
・沼田曜一
・牧冬吉
と言う、シリーズ中、最強に濃いおじさんたちの共演が実現したわけである。
しかもこれに菊さんまで加わって、ちびっ子向けドラマとしてはかなりの豪華キャスティングだと思うのだが、どうしてこれで、この程度の作品にしかならなかったのかなぁ?
ぶっちゃけ、無理に金のかかる時代劇形式にせずとも、現代を舞台に忍者同士の戦いを描いた、それこそ「忍者キャプター」のさきがけみたいな、異色特撮として作ったほうが良かったかもしれないなぁ……って、今更言っても仕方ないが。
ともあれ、ハヤテの頼もしき援軍・伊賀軍団は、

悪魔道人「ふっはっはっはっはっはっ」
待ち伏せていた悪魔道人の、掟破りのひとり掃射攻撃を食らい、一瞬で壊滅。
ク○の役にも立たないと評判の伊賀忍者にふさわしい、有終の美を飾るのだった。
つーか、こんな便利な武器があるなら、なんでもっと早く使わなかったのだろう?

悪魔道人「ははははははっ、はーっははーっ!!」
めっちゃ楽しそうに銃を撃ちまくる悪魔道人。
うーん、正直、陰気な天本さん演じるサタンより、陽性の沼田さん演じる悪魔道人を引き続き登場させていたほうが、番組の人気も上がったんじゃないかなぁ。
ま、サタンはサタンで好きだけど。
タツマキ「ただでは死なん!!」
悪魔道人「わーっはっはっはっはっ」
ヤケになって突進するタツマキだったが、悪魔道人の容赦のない銃撃を受け、

タツマキ「ぐっ、無念……ツムジーっ!!」
まさかの、最終回での戦死と言う、壮絶な最期を遂げる……と思いきや、
悪魔道人「悪魔道人の魔弾を受けたものは、道人の手足となる」
悪魔道人が、ひょいひょいと手招きすると、

タツマキ「道人様、なんなりとご命令くだされ」
その死体が立ち上がり、悪魔道人の前に跪いてその忠実なしもべとなる。
ク○の役に立たないどころか、ク○よりも始末に悪い伊賀忍者たちであった。

イタチ「へっへっへっ、三度三度おまんまが食べられるとは、へへっ、妖怪城へ行くのも悪くないな」
一方、河原にて、捕えた魚を焚き火で焼いているイタチ。
とりあえず、ご飯さえ食べられれば満足だという、ある意味、聖人のような無欲さであった。
考えたら、結局、イタチって、劇中では一度も盗みを働いたことがないんだよね。
持ってる小判も、ゴーストファーザーや白髪鬼から仕事の報酬として貰ったものだし。
やがて探索に出ていたハヤテたちが戻ってくる。

イタチ「して、妖怪城への抜け道は」
ハヤテ「道と言う道は途中で消えてる」
イタチ「ひゃっはぁ、それは結構」
カゲリ「うん?」
イタチ「いやいやいや、残念ですな、残念だ」
思わず本音を口にして、慌てて誤魔化すイタチ。
妖怪城が見付からないうちは、メシに不自由しないし、カゲリとも一緒にいられるということなのだろう。
ハヤテたちがひとまず腹ごしらえしようとしていると、突然頭上から、大きな岩がいくつも落ちてくる。
イタチ「崖崩れだ!! ハヤテさん、カゲリ殿、ついでにツユハちゃん、助けて」
例によってひとりだけ逃げ遅れて岩の下敷きになるイタチであったが、今度も彼を助けたのは、普段はいがみ合っているツムジであった。
カゲリとツユハは崖の上に飛び上がり、その場にいた怪しい忍びの腕に縄をかけ、

ツユハ「岩を落としたのはお前?」
タツマキ「ふふふふふ」
カゲリ「やはりサタンの手先」
と、カゲリは言うのだが、カゲリもツユハも、タツマキの顔は知ってる筈なんだけどね。

タツマキ「ワシを捕まえたつもりか、馬鹿め、よく見るが良い、罠に掛かったのはお前たちだ!!」
タツマキの一喝と同時に、カゲリたちの足元から刀が飛び出してくる。
役に立ったことのない伊賀忍者たちが地中に隠れているのだろう。
カゲリ「おっ、ツユハ!!」
タツマキ「ふん、そんなことでうろたえるようでは、とてもとても妖怪城に乗り込みサタンとは戦えん。のう、ハヤテ殿?」
ハヤテ「そうだな、タツマキ」
タツマキの問い掛けに、近くに力道山みたいなポーズで立っていたハヤテが、会心の笑みを浮かべてタツマキの前に飛び降りる。

ハヤテ「しばらくだな」
カゲリ「タツマキ殿」
ツユハ「それに、
名前知らんけど伊賀五人衆の皆さんも」
タツマキが頭巾を取ると、やっとカゲリたちも相手が誰か分かって笑顔を見せるが、さすがに上の画像で分からないなんてことはないだろう。
タツマキ「ツムジから使い鳩で手紙を受け取り、いや、矢も盾もたまらず駆けつけ申した」
ハヤテ「そうか」
カゲリ「でも、どうして落盤などと言う手荒いことを?」
カゲリのもっともな質問に、
タツマキ「我らのことをサタンに気付かれぬようにと思いまして」
かなり苦しい言い抜けをするが、ハヤテも相手が盟友のタツマキだけに何の疑いも持たず、

ハヤテ「すると、後をつけさせたのも狙いか?」
タツマキ「それと言うのも、既に我らが妖怪城への道を見付けましてござる」
カゲリ「妖怪城への道?」
ツユハ「あんなに探してもダメだったのに、さすがね」
最終回なので、ツユハの可愛い笑顔を貼っておこう。
結局、ツユハ、単に可愛いだけの妹キャラで、ストーリー的に全然スポットが当たらないまま終わってしまったのが残念である。
まあ、常にキャラクターが移動しているロードムービー形式だと、特定のキャラのメイン回と言うのが作りにくいんだよね。
タツマキ「これよりはそれがしがご案内を」
ハヤテ「ツムジには会わぬのか」
タツマキ「仕事のほうが先でござるわい」
CM後、

ツムジ「そんなのってあるかい」
イタチ「そうそう、ハヤテさんとタツマキ殿だけで行っちまうとはな」
カゲリ「ハヤテの命令なんだよ。ここで待てって」
タツマキ「チェッ、馬鹿にしてらあ」
さっきの場所に戻って来たカゲリたちから話を聞き、置いてけぼりを食ったことを知ったツムジが不満たらたらであったが、
イタチ「ま、カゲリさんがここにおられるなら、俺にとっちゃそのほうが」
カゲリ「うん?」
ツユハ「まあ」
相変わらずイタチの頭の中はカゲリのことだけで、その一途さに、ツユハがちょっと焼餅を焼くような顔さえ見せる。
見てるほうも、まるっきり恋するおじさんと化したイタチが、不気味を通り越して可愛らしいとさえ思えてしまう。
これもやっぱり役者の魅力によるんだろうなぁ。
と、そこへ悪魔道人があらわれたので、4人はとっとと逃げ出そうとするが、あえなく彼の妖術にかかり、タツマキ同様、操り人形と化してしまう。
悪魔道人、強えぜっ!!
なんでその強さを、西洋妖怪編の時に発揮できなかったかなー?
この後、ハヤテはタツマキたちの裏切りに合い、あえなく捕縛される。
悪魔道人「にっくきハヤテは、生かすも殺すも思うがまま」
サタン「よくぞやった、悪魔道人、人柱をイケニエとして悪魔の祭りを執り行おうぞ」
で、さっきの銃でとっとと射殺させればいいものを、例によって例のごとく、サタンは七面倒臭い悪魔の儀式を行って、じっくりハヤテを責め殺そうとする。
進歩のないお方だ。

磔にされる罪人のように、十字架に縛られたハヤテの足元に、サタンのしもべとなって黒いマントをつけたツムジたちが次々と柴や藁束を積んで行く。
悪魔道人「ハヤテ、お前に呪いの火をかけ、その火がお前を焼き尽くし、灰となって全世界に散る時、再び全世界に妖怪どもが立ち上がるのだ!!」 いつものように、気張り過ぎてウ○コ漏らすんじゃないかと心配になる、沼田さん渾身のオーバーアクト。
ハヤテ「それをお前がやるのか」
悪魔道人「ワシではない、お出来になるのは全能の支配者サタン様……大魔王サタン様、準備が整いましたぞ!!」
その場に跪くと、妖怪城のサタンに向かって叫ぶ。

タツマキたち「サタン様ぁ……」
ハヤテ(つくづく使えねーなーっ!!) 悪魔道人に倣ってサタンに祈りを捧げる仲間たちの姿に、心の中で毒づき、殺意さえ覚えるハヤテであったが、嘘である。
しかし、イタチやツムジやツユハはともかく、カゲリまでがあっさり術に掛かっているのはちょっと幻滅だなぁ。
と、ハヤテの背後の山の中腹に、爆発と共にサタンがあらわれる。
何気にサタン、円盤や妖怪城から出るのは、これが初めて(&最後)であった。

ハヤテ「サタンめ」
サタン「サタンに逆らう愚か者の最期だ、燃えよ、地獄の炎、憎しみと呪いを込めて人柱を焼き尽くせ」

サタン「はっははははっ」
サタン、ハヤテの足元に火をつけると、依然トランス状態にあるタツマキたちにその周りを踊りながらぐるぐる回らせる。
サタン「人柱の灰よ、風に乗って全世界に飛んで行け……蘇れ、全世界の妖怪よ」
ハヤテ「……」
勝利に酔い痴れ、目をギラギラさせていたサタンであったが、ここでハヤテが十字架から抜け出し、「変身」の掛け声すらなく、いきなり嵐に変身してしまう。
さすがにこれは唐突過ぎて萎える。ちゃんと撮っていれば、一番燃えるシーンとなっていたであろうに……
一例を挙げれば、
ハヤテ「はーっはっはっはっ!!」
サタン「何がおかしい、ハヤテ、恐怖のあまり気でも狂ったか?」
ハヤテ「馬鹿を言え、罠とも知らずにのこのこ地上に降りて来た大魔王サタンの愚かしさを笑っているのだ」
サタン「な、なんだと、では……」
ハヤテ「そう、すべては貴様を地上におびき寄せるための芝居よ!! 吹けよ嵐、嵐……嵐!! とりゃーっ!!」(註1)
註1……最後なので従来の方法で変身する。
みたいなね。
個人的には、ここでカゲリが手裏剣を投げて、ハヤテを縛っているロープを切る、なんて展開もありだったと思う。
つまり、カゲリだけは正気で、悪魔道人の術に掛かったふりをしていただけだったのである。
それはともかく話を続けよう。

サタン「嵐、き、貴様……」
嵐「サタン、俺の体の中には兄・月ノ輪の命の炎が燃えているのだ(註2)、聞け、サタン、妖怪城へ行く道はひとつ、お前の円盤だ。だからこそ罠と知って掛かり、お前をおびき寄せた」
註2……だから?

サタン「そこまで見抜いていたのか、しかし、妖怪城には行かせん、道人、防げ!!」
悪魔道人「はぁ」
さしものサタンも狼狽を隠せず、悪魔道人に命じるのだが、それに対する返事がミョーに落ち着いていると言うか、間延びしてるのがツボである。
再生怪人にしてはかなりのポイントを稼いだ悪魔道人であったが、時間もないので、

嵐「正義の光線ガンビームを受けてみろ」
悪魔道人「がっ、うううーっ!!」
前戯もなしにガンビームを食らい、一矢報いる間もなく崖から落ちて爆死する。
爆死の映像は、多分、一回目に死んだときのバンクフィルムだと思うが、良く分からない。
それと同時に、タツマキたちも正気に返る。

嵐「タツマキ、魔力は解けたぞ」
タツマキ「嵐殿!!」
で、何故か、お腹を思いっきり撃たれて死んだ筈のタツマキや伊賀五人衆まで、ケロッとして生き返っちゃうのである。
うーん、さすがにこれは都合が良過ぎるなぁ。
イタチ「ああっ、円盤が逃げていく、ほらっあそこに」
嵐「待て、サタン、今度こそ逃がしはせんぞ」
嵐、その場でジャンプすると、サタンの乗った円盤の上に飛び乗り、一気に内部に突入する。

サタン「嵐!!」
嵐「すべての悪の源、大魔王サタン、最後だ」
サタン「ふふふふふ」
嵐「正義の光線ガンビーム!!」
嵐、すぐに必殺技を放つが、さすがサタン、ガンビームを浴びてもケロリとしている。
サタン「大魔王サタンは、ガンビームなど受け付けぬ」
サタンはその妖術で嵐の体をぐるぐる回転させるが、嵐、バトンを刀に変えると、
嵐「この大刀には魔術よけの秘法が備わっているんだ」
サタン「なんだと?」
何の伏線もなしにそんなことを言うと、

嵐「秘剣・影写し!!」
ここで久しぶりに初代必殺技を披露する。
考えたら、ハヤテも嵐も、大魔王サタン編ではほとんど剣を使うことがなかったんだよね。
それでも最初は刀を持っていたが、後半からは十手みたいな形をしたサイがメイン武器になってたからね。
嵐「とおりゃっ!!」
嵐、気合一閃、サタンの首をかっ飛ばすが、

首はそのまま宙を舞って、妖原子球の中に入り、
サタン「ふっ、サタンは死なず」
なおもニタニタ笑って見せる。
ひょっとして、このシーンが、「魔界転生」のラスト、サニー千葉に首を斬られたジュリーが首だけになっても笑っているシーンの元ネタではないかと思ったが、さすがに違うかな?
嵐「サタンの魔力はすべて妖原子球か……これを破壊すればサタンは死ぬ。ようし、私の命と引き換えに」
嵐、妖原子球こそサタンの魔力の源泉、否、妖原子球そのものがサタンの本体なのだと見抜き、全身からまばゆいほどの超能力を迸らせる。
ま、それこそ、円盤から落っことせばいいじゃんと言う気がするのだが、生半可な方法では破壊できないのだろう。
サタン「や、やめろ、嵐、お前の超能力と妖原子球の力が衝突すれば、この円盤は爆発し、誘導を受けた妖怪城も爆発する」

嵐「それが本望だ、平和と正義のために私の命は問題ではない!!」
サタン「や、やめろ、狂ったか嵐!!」
嵐「母上、嵐は死にます、今一目お会いしたかった。母上ーっ!!」
宙を睨んで最後に母シノブに語りかける嵐。
……
そう言えば、シノブ、何処行っちゃったの?
嵐「行くぞ、サタン!!」
ともあれ、嵐は妖原子球に体当たりして、円盤および妖怪城もろとも妖原子球を木っ端微塵に砕き、その命と引き換えに遂に大魔王サタンを滅ぼすのだった。
ヒーローの死と言う、まさかの悲劇的結末……と思いきや、

ツムジ「お、おやじぃ」
タツマキ「あ、嵐殿が」
カゲリ「サタンと一緒に」
ツユハ「この世から消えた」
ハヤテ「母さーん!!」
イタチ「あ、あそこですぜ」
ちなみにこれがカゲリたちの最後の台詞となってしまう。
ほんと、このメンバーの活躍をもっと見たかったものだ……
それはさておき、イタチの指差すほうを見れば、

シノブ「ハヤテ!!」
ハヤテ「母さーーーーーん!!」
なんのことはない、ハヤテはピンピンしており、何処からともなくあらわれたシノブに向かって元気に駆け出すではないか。

シノブ「ハヤテ」
ハヤテ「母さん!!」
涙ながらに抱き合う悲劇の親子。
しかもシノブの目もいつの間にか見えるようになっていて、さすがにご都合主義が過ぎるし、タイトルに偽りありではないかと思ったが、
ナレ「変身忍者嵐は全能力を使い果たして大魔王サタンと共に消えた。そしてハヤテは人間として蘇ったのである。これからのハヤテを待つものは母と二人だけの平和な生活なのであろう」
と言うナレーションで、強引にオチがつく。
つまり、死んだのは嵐と言うヒーローであって、ハヤテ自身は無事だったと言うわけなのだ。
うーん、でも、ハヤタとウルトラマンの関係のように、ヒーローが生身の人間に憑依していたとかならそれもありかもしれないが、ハヤテの場合は父親の手で変身忍者に改造された訳で、嵐が死ねばハヤテも死ぬのが当然だと思うんだよね。
「嵐死す」とは言ったが、「ハヤテ死す」とは言ってないよ~んと言う、スタッフの小狡い笑顔が浮かんでくるのがいささか癪だが、

母親にしがみついて号泣しているハヤテの顔を見ているうちに、やっぱりちびっ子向け特撮ドラマは、あくまでハッピーエンドでなければいけないのかもしれないなぁと思い直して、これ以上追及するのはやめにしようと言う気にさせられるのであった。
それに、もしシノブだけ生き残ってしまっては、あまりに救いがないオチになっていただろうからね。

ただ、番組最後のカットが
「母親に抱きついて号泣している、マザコン男の横顔」と言うのは、さすがにどうかと思う。
せめて最後にカゲリたちのアップを映して欲しかった。
以上、最後はかなり駆け足で、説明不足の感がハンパない最終回であったが、今回のエピソードだけ見ると、悪魔道人の生き生きした悪役ぶりのお陰で、かなり楽しめる一本になっていたと思う。
ただ、作品全体を総括すると、めまぐるしい路線変更とキャスト交代が甚だしく統一感を欠く結果を招き、全般的なシナリオ&文芸&ビジュアルのお粗末さも手伝って、遺憾ながら失敗作だったと言わざるを得ない。
せめて、個人的には一番面白いと思った大魔王サタン編が、もう少し長かったらなぁ……
と言う訳で、だいぶスルーしてしまったが、「変身忍者嵐」のレビュー、これにて終了です。

最後は、予告編に出てくる、カゲリこと菊容子さんの凛々しい横顔を読者の皆さんと一緒に鑑賞しつつ、お開きといたしましょう。
長い間のご愛読、ありがとうございました!!
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