第4話「必殺!フェニックス戦法」(1973年7月25日)
前回の続きから、夕陽の中で対峙しているレッドバロンと飛竜。

だが、飛竜の中には健一郎そっくりに作られたアンドロイドXがいて、兄思いの健にはどうしても戦うことが出来ない。

健一郎「……」
だが、無論、アンドロイドXには健への遠慮など微塵もなく、容赦なく攻撃を仕掛けてくる。
健「やめてくれ、やめてくれ、兄さん!!」

殴った瞬間、ピストルのような発射音が響き、閃光が走る、飛竜の凄まじいパンチを一方的に浴びまくるレッドバロン。

真理「ああっ、健ーっ!!」
大作「健、このままじゃやられちまうぞ、やっつけちまえ」
哲也「健ーっ!!」
地上にいる仲間たちが必死に叫ぶが、

健「……」
健はそれどころではなく、コンソールに突っ伏すようにして、ひたすら苦悩していた。
デビラー「どうだ、紅健、無敵のレッドバロンが手も足も出まい、悔しかったら攻撃してみたらどうだ、ミサイル一発で兄さんを粉々にすることが出来るのだぞ、ふっははははは……」
そこに、デビラーの勝ち誇った声が聞こえてくる。
健「ちきしょう、デビラーめ、兄さんは操られてるんだ、そんな兄さんを攻撃することは出来ない。どうすりゃいいんだ」
ここはひとまず逃げるしかなかったが、健がグズグズ戦場に留まっているうちに、レッドバロンは左腕をもぎ取られてしまう。
なすすべもなく仰向けに倒れるレッドバロン。
この後、戦闘回路も破壊されたことが分かるので、レッドバロンを倒す絶好のチャンスだと思われたが、飛竜は何故かトドメを刺さず、足の裏からロケットを噴射して飛び去ってしまう。
デビラー、本気でレッドバロンを倒す気があるのか、大いに疑問である。
仮に飛竜のエネルギーが尽きて、一旦引き揚げざるを得ないにしても、別のロボットを繰り出してでも、この場で一気にケリをつけるべきではなかったか?
なので、ここはレッドバロンのほうから空を飛んで逃げるべきだったと思うが、そうすると、戦闘回路が壊れて動けなくなると言う展開に持って行きにくくなるからね。

それはともかく、レッドバロンは紅ロボット研究所に帰還し、真理たちの手で修理される。
左腕は簡単に元通りになるが、

健「作動スイッチオン……駄目です、動きません」
ボス「弱ったな」
飛竜から受けたダメージで、レットバロンの戦闘回路が損傷してしまったらしく、全く反応しなくなる。
ボス「故障箇所を発見するには、設計図で回路をチェックしていく必要がある」
健「設計図なんて見たこともありません」 ボス「使えねーなーっ!!」 健「……」
と言うのは嘘だが、ボスがいかにもそう言いたげに健をチラ見しているのがツボである。
でも、ロボットを直すのに設計図が必要と言うのは(当たり前ではあるんだが)戦隊シリーズなどと比べても実にリアルな描写である。
ただ、設計図もなしによく腕の修理が出来たな……と言う気がしなくもない。
ちなみに、この後、デビラーが「レッドバロンは戦闘不能になった」と断言しているのだが、なんでそんなことが水族館にいるデビラーに分かるのだろう?
まあ、周到なデビラーのことだから、スパイの一人や二人、SSIに送り込んでいても不思議はないが、そう言う形跡もないので、「もはやレッドバロンはおそるるに足らん」くらいで良かったかも。
ともあれ、レッドバロンを無力化したデビラーは、おおっぴらに人間狩りを行わせる。

どっかで見たことのある川べりの松林で、メカロボにカップルを襲わせる真里子姉さん。
別に彼らは自分たちがモテない腹いせにカップルを絶滅させようとしているではなく、捕まえて奴隷人間にしようとしているのである。
考えたら、この作品、「レオ」より先に作られてるんだよなぁ。
とてもそうは見えないが、ウルトラシリーズの制服や基地のデザインが、これと比べると野暮ったく感じられるからだろう。
その魔手はレギュラー子役たちにも伸び、4人が橋の上で熊野警部と話していると、いきなり鉄面党のマイクロバスが突っ込んできて熊野警部をぶっ飛ばし、

名前が分からないが、眼鏡をかけた子役にM字開脚の刑を執行しながら拉致する。

ヨシ子「放して!!」
多分、スタッフ、ほんとはこっちの女の子にしたかったんじゃないかと思うが、自重したのだろう。
熊野警部も必死に助けようとするが、多勢に無勢、4人とも連れ去られてしまう。
ちょうどそこへ健が車でやってきたので、熊野警部は事情を話して一緒にマイクロバスを追いかける。
ちなみにすっかり忘れていたが、レギュラー子役のリーダー格の大助は、大作の弟なのだった。
色々あって、二人は鉄面党のアジトを発見する。

アジトには、攫って来た人間を奴隷人間に改造するための手術室があり、拉致された大助たちも即座に手術されそうになる。
しかも麻酔なし!!
CM後、健は割りとあっさり手術室に殴りこみ、子供たちを救出しようとするが、そこへ熊野警部が人質として連れてこられたので、結局全員捕まってしまう。
で、ちゃっちゃと健を射殺すれば、またまた鉄面党の大勝利の筈だったのだが、例によって例のごとく、「悪の組織」は、わざと失敗の確率の高い選択肢を選ぶ傾向があり、健にも手術を施して奴隷人間に変えようとする。
しかし、レッドバロンが健在ならともかく、目下のところ、大きな鉄の塊に過ぎないのに、健をわざわざ奴隷人間にする意味があるだろうか?
鉄面党が駄目なのは、レッドバロンを破壊するのか奪うのか、健を殺すのか奴隷にするのか、その都度、方針が変わり、敵に付け入る隙を与えてしまうところだろう。
ま、これは、部下に命令を徹底させないデビラーが悪いんだけどね。

ついで、マスクをつけた白衣の看護婦が、手術器具をトレイに乗せて入ってくるが、

真理「……」
それは、いつの間にかアジトに潜り込んだ、真理の変装であった。
真理、健にウィンクして見せると、健もウィンクで応じる。
次の瞬間、健がメカロボを蹴飛ばし、真理も同時に攻撃を開始する。

真理「健、子供たちを」
健「よし」
全員廊下に出るが、すぐに新手のメカロボに囲まれる。

真理「警部、ここは任せて」
はい、何もかもお任せします!! と、思わず叫びたくなる、真理お姉タマのしびれるほどの頼もしさ!!
なお管理人、彼女を含め、「魔女先生」の月ひかる、「ストロンガー」のユリ子、「チェンジマン」のさやか、「ジバン」の洋子先輩の5人を、特撮界の「頼りになる姐御キャラ」ベスト5に認定したい所存である。
ま、ほんとなら「コセイドン」のウララも加えるべきなのだが、諸般の事情により除外されました。
ここから、熊野警部が子供たちを守って奮闘する、無駄に長いアクションとなる。
ヨシ子役の女の子がもうちょっと可愛かったら、多少は貼る気になるんだけどね。
その後、ボスたちも駆けつけ、メカロボを殲滅するが、彼らの前に再び飛竜があらわれる。
ボスは哲也の運転するジープに乗ってあえて飛竜に接近し、ガン型の望遠カメラで、操縦席の映像を撮る。
そして本部に引き揚げると、その映像を分析し、操縦席に座る健一郎が、アンドロイドに過ぎないことを暴き出す。

ボス「お前が兄さんだと信じていたのは、アンドロイドだったんだ」
健「……」
ボス「レッドバロンを倒す為の罠だったんだ」
健「ちきしょう」
ボス「だが気付くのが遅かった、レッドバロンを戦闘不能にされちまったんだからな」
こうして健のジレンマは解消されるが、レッドバロンが動かないのでは同じことであった。
その夜、地下基地に佇むレッドバロンの頭上には、美しい満月が皓々と輝いていた。

健「兄さん、レッドバロンが動かないと人類は大変なことになってしまうんだ、鉄面党の思いとおりにされてしまうんだ、頼む、もう一度力を貸してくれ!!」
困ったときの神頼み、健は、兄の霊に向かって助けを求める。
だが、死んだ人間は何も答えてはくれず、レッドバロンの巨体が死のように沈黙しているだけであった。
健、絶望に打ちのめされて肩を落とすが、ここで奇跡が起きる。

開きっぱなしになっている(?)発射口から、青白い月の光が差し込み、レッドバロンの体を照らすと、レッドバロンの両目から同じような光が反射され、

健の左腕のリモコン装置に注がれ、

それがさらに反射して、左側の壁に当たると、隠し扉が開き、その奥にあった金庫のドアを開ける。
そして、その金庫の中に、彼らの探していた設計図が入っていた!!
これは、健一郎の霊の導きなのか、元々そう言う仕掛けが用意されていたのが、偶然が重なって作動しただけなのか、いまひとつはっきりしない。
無論、健としては、健一郎が助けてくれたと信じたいところであろう。
いずれにしても、設計図のお陰でレッドバロンの戦闘回路は修復され、健は勇躍レッドバロンで出撃するのだった。
レッドバロンが、例のアジトを地上から攻撃していると、再び飛竜が立ちはだかる。
だが、今度は健も遠慮会釈なく戦えるので、レッドバロンの一方的な戦いになる。

健「見たか、デビラー、お前のたくらみなど通用せんぞ」
凡百のシナリオライターなら、このまま普通にレッドバロンが飛竜を倒して終わらせているところだが、
デビラー「ふふふふ、アンドロイドXを見破ったぐらいで安心するのはまだ早い、お前もレッドバロンもあと僅かの運命なのだ」
健「なにぃっ」

用意周到なデビラーは、今度もプランBを用意しており、山のあちこちからアームが伸びてきてレッドバロンの両足を掴み、飛竜がその体に抱きついたところで、いくつもの火炎放射装置がせり出し、レッドバロンに狙いを定める。
勝ったと思いきや、もうひと波乱起きる、この辺の盛り上げ方はさすが上原さんである。
それにしても鉄面党、さっきはその一貫性のなさをけなしたけど、勝つことだけを想定せず、常に負けた場合の対策を準備しているあたり、「悪の組織」としてはかなり優秀だと言えるだろう。
デビラー「さあ10万度の高熱に耐えてみろ」

身動き取れないところに、四方八方から凄まじい火炎放射が浴びせられる。
ボス「健、早く脱出しろ」
健「駄目です、脱出不能」
地上で戦いを見守っていたSSIも、ただ手を束ねて二体のロボットがバーベキューにされるのを見ているしかなかった。
レッドバロンに使われているバロンニウムはその高熱に耐えるが、コックピット内は当然、灼熱地獄と化し、健はやがて意識を失う。
一方、バロンニウムほど堅牢ではない飛竜は、あえなく焼け爛れて泥人形のように崩れ落ち、アンドロイドXも座ったまま焼き殺される。
と、途中で火炎放射が止まる。

デビラー「どうしたんだ」
女「は、放熱装置が過熱してこれ以上の高熱は無理です」
デビラー「むー」
ここで、真里子ちゃんが再び登場するが、これっきりフェードアウトしてしまうのは勿体無い。
でも、この手のキャラが、倒されることなく物語から消えるというのは珍しいよね。
やがて、火炎放射装置ならびに地下アジトの構造物がオーバーヒートを起こして大爆発を起こし、レッドバロンの姿も煙と炎に包まれて見えなくなる。

煙が流れたあと、レッドバロンが黒焦げになりながら仁王立ちしている姿が見えたが、内部にいる健の生存は絶望的と思われた。
ボス「健、無事なら返事をしろ」

哲也「無理ですよ、ボス、飛竜が溶けてしまう高熱ですよ」
無線機で呼びかけるボスに、哲也が暗い眼差しでつぶやく。
ボス「健、返事をしろ!!
お前に貸した7万はどうなるんだっ!!」
哲也「……」
途中から嘘だが、無駄と分かっていても、ボスも真理も必死で健の名を呼び続ける。
だが、当然ながら、主人公がそんな簡単に死ぬ筈がなく、健はピンピンしていた。
おそらく、レッドバロンの操縦席には、パイロットを急激な温度変化から守るハイテクシステムが組み込まれていたのだろうが、それにしては、健が早々に意識を失ってしまったのがちょっと引っ掛かる。
意識を取り戻した健、仲間を安心させる為にレッドバロンを歩かせる。

大作「見ろ、レッドバロンが動き出した」
真理「……」
悲しそうに俯いていた真理、大作の言葉に顔を上げると、

真理「あーっ!!」
健の無事を知って、瞳を輝かせる。
……
いやぁ、何度見ても可愛らしい真理タン。
特撮ヒロインは数あれど、ルックス、アクション、演技、声、コスチューム、髪型など、これだけ非の打ち所のないキャラはいないのではあるまいか。
これでもうちょっと乳がでかけりゃ完璧超人だったのだが……
ボス「信じられん」
熊野「炎の中から蘇った、まさにフェニックス」
ラスト、沈み行く夕陽をバックに戦いの疲れを癒すレッドバロンの姿を映しつつ、幕となる。
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