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「水もれ甲介」傑作選(補遺) 第19話「おひかえなすって!」 前編


 第19話「おひかえなすって!」(1975年2月16日)

 終わった筈の「水もれ甲介」のお時間です。

 いや、こないだ「パパと呼ばないで」を最後まで見終わったのだが、その後、この19話を見て、この話が「パパ~」のセルフパロディになってることに気付いたので、急に書きたくなったのである。

 あと、貼りたいチャミーの画像もあるので、まとめて補遺としてレビューすることにした。

 冒頭、珍しく家族水入らずで朝食を取っている甲介たち。

 そう、お手伝いのマコの姿が見えないが、

 
 甲介「ねえ、マコ、いつ帰ってくるんだよ」
 滝代「うん、ニ、三日って約束なんだから」
 輝夫「鉄砲玉みたいに行ったっきりになっちゃうんじゃないかな」

 甲介たちの説明的台詞で、マコが一時帰郷していることが分かる。

 無論、川口さんのスケジュールの都合であろう。

 輝夫の懸念に、

 朝美「だいじょうぶよ、マコちゃんは……なんたって甲兄ちゃんの魅力に取り憑かれちゃってんだから」
 輝夫「ちげーねー」

 二人の仲を悪戯っぽい顔で冷やかすチャミー。

 甲介「冗談言うなよ、お前、あんなガス漏れに惚れられてたまるか」
 滝代「いいじゃないのよ、今時お前の良さが分かる女の子なんてそうざらにはいないわよ」

 判で押したように反発する甲介に、息子を褒めてるのかけなしてるのか、良く分からない表現でとりなす滝代であった。

 その後、水道の修理を頼まれて、輝夫が顔馴染みのクリーニング店に顔を出す。

 
 辰吉「すまないね、忙しいのに、台所の蛇口なんだ」
 輝夫「お邪魔するよ」
 辰吉「邪魔するんやったら帰ってや」
 輝夫「新喜劇かっ!!」

 ……と言うようなギャグを思いついても、常人なら「ふっ」と口の中で笑ってボツにするところを、こうやって堂々と書いてしまう自分の鋼のような精神力を、心から誇りに思う管理人であった。

 でも、この手のホームドラマにギャグを入れるのは至難の業なので、僅かな隙でも見逃さない姿勢は大事である。

 時を、いや、話を戻そう。

 輝夫「お邪魔するよ」
 辰吉「ああ、おたくはいいなぁ、甲ちゃんと輝ちゃんと二人仲良くうちの仕事を継いでさ……死んだおやじさん、きっと喜んでるよ。ああ、そこへ行くとうちの息子なんかオヤジの商売バカにしやがって……もうはええとこコイン入れる機械に変えて、もっと儲かるようにしろなんて言いやがるんだぁ。どうして近頃の若い奴は……」

 アイロンを掛けながら、オヤジが延々と愚痴を漏らすのを、台所でニヤニヤしながら聞いている輝夫。

 ちなみに、このオヤジの名前は浅井辰吉と言うのだが、店の看板には「横尾クリーニング店」って書いてある……

 などとやってると、煙草を咥えた、いかにもヨタモン風の若い男が来て、辰吉のクリーニングした服にシミがついていたとクレームをつけ、その服ともう一枚の服をタダでクリーニングしろと脅す。

 
 輝夫「お客さん、そいつはひどいよ」
 岩村「なんで、てめえは」
 輝夫「シミをつけたのは悪かったかもしれないけどさぁ、一度着たものまでタダにするなんて……」

 困ってる辰吉を見兼ねて、輝夫が横から口を挟むが、

 岩村「なんだ、お前、俺に因縁つけるのか」
 輝夫「因縁つけてるのはあんただろうが」
 辰吉「て、輝ちゃん、やめなよ」
 輝夫「おじさん、黙って聞いとくことはないんだよ、こんなチンピラの言うことなんか」
 岩村「チンピラだと、この野郎?」

 輝夫も割りと短気な方なので、言い争いからたちまちマジ喧嘩に発展する。

 なにしろ、岩村を演じているのがヒョロッとした松山英太郎さんなので、どう考えても輝夫の勝ちだと思われたが、喧嘩慣れしている岩村に逆にコテンパンにやられてしまう。

 ま、そう言う話だから仕方ないんだけど、いささか不自然である。

 六郎から輝夫の災難を知らされた甲介は、仕事をほったらかして家に飛んで帰る。

 
 甲介「おい、テル、だいじょぶか?」
 輝夫「だいじょぶだよ、な?」
 甲介「あーあー、こりゃひでえや、まるでパンダじゃねえか」

 なんだかんだで弟思いの甲介、輝夫のひどい顔を見て憤激し、下にいた辰吉から岩村の住まいを聞くと、ごつい、工事用のスパナのような工具を手に、六郎を引き連れて殴り込みに向かう。

 だが、喧嘩っぱやい割りに腕っ節に自信のない甲介は、岩村のアパートの前まで来ると急に怖気づき、

 
 甲介「やめたやめたやめた、お前、声掛けろ」
 六郎「いや、俺はね、どうもこういうの駄目なんだ」
 甲介「いいんだよ、いつものように『こんにちは、近江屋です』って言やいいんだから」

 甲介、御用聞きの六郎を囮にして、相手が顔を出しところを不意討ちしようと目論むが、

 
 チエミ「今日は、間に合ってますけどぉ」

 六郎の声に顔を出したのは、チンピラとは程遠い、小学4年生くらいの可愛らしい女の子だった。

 そう、シリーズでもっとも有名な「パパと呼ばないで」で、石立さんの娘(正確には姪)役を演じていた杉田かおるさんである!!

 甲介「あのさ、君ン家にさあ、物凄く喧嘩の強い男の人いない?」
 チエミ「その手に持ってるもの、何の為? 暴力はお断りよ!!」

 チエミ、甲介たちの風体を見てピシャリとドアを閉めてしまう。

 甲介「お前、この家間違ってんじゃねえのか」
 六郎「いや、確かに……ほらほら、表札だって岩村ってなってんじゃねえかよ」

 二人が首を傾げながら階段のところまで戻ると、ちょうど、その岩村が階段を登ろうとしているのに出くわす。

 甲介、工具を振り上げて、ほとんどヤケクソ気味に岩村に突進し、岩村も実際は大して強い訳でもないので慌てて逃げ出す。

 近くの神社の裏手で追いつかれるが、

 
 岩村「おひかえなすって、おひかえなすって!!」
 甲介「へっ?」
 六郎「おひかえなすってって」
 甲介「おひかえ……したでござんす」
 六郎「早速おひかえくださってありがとうにござんす、むかえます上さんとは初めて御意を得ます、手前、生国と発しますは……」

 岩村に、寅さんでお馴染みの、いわゆる「仁義」を切られ、目を白黒してその口上を聞いてしまうお人好しの甲介であった。

 しかし、甲介、ここではいかにも喧嘩慣れしてないキャラになってるが、確か第1話では、喧嘩っ早くて、すぐ暴力沙汰を起こすトラブルメーカーのように描かれていたと思うので、矛盾してるようにも見える。

 それはともかく、岩村のペースにまんまと乗せられた二人は、不意討ちを食らって尻餅突いているうちに、あえなく逃げられてしまう。

 一方、甲介のうちには、忠助が心配して様子を見に来ていた。

 滝代から、甲介が輝夫の仕返しに行ったと聞かされると、

 
 忠助「甲ちゃんじゃあ、今頃腕の一本ぐらいへし折られてるかもわからねえな。ははーっ」
 滝代「忠さん、あんた縁起でもないこと言わないでよ!!」

 甲介の威勢が見掛け倒しであることを知っている忠助、他人事だと思って物騒な予言をして、ノミの心臓の滝代をヒヤヒヤさせる。

 二人がなおも神社の境内を探し回っていると、

 
 甲介「何すんだよ」

 さっきの女の子が出て来て、二人の体を縄跳びのナワで、柱にぐるぐる巻きつける。

 
 チエミ「パパが何かしたの?」

 
 六郎「パパぁ?」
 甲介「それじゃお前、あのチンピラの子供か」
 チエミ「……」

 父親のことをチンピラと言われて、悲しそうに目を伏せるチエミ。

 そう言えば、この三人、前作「雑居時代」でも共演してるんだよね。

 六郎「冗談はよして、これ取ってくれ」
 チエミ「いやよー」
 甲介「君のパパはな、おじちゃんの弟を何にも悪いことしないのにぶん殴ったんだぞー」
 チエミ「嘘よ、そんなのぉ」
 甲介「ほんとだよー」

 二人が子供同士のように言い争っていると、なんだかんだで心配になった忠助が駆けつける。

 忠助「なんだ、喧嘩の相手は女の子か」
 甲介「ば、馬鹿なこと言わないでよ、相手が逃げちゃったんだよ」

 それを潮に、チエミはロープを外してやる。

 六郎が仕事に戻ったあと、

 忠助「甲ちゃん、喧嘩すんならそんな道具使って勝とうなんてのは根性が良くないねえ」
 甲介「あ、いや、相手が卑怯な奴だって聞いたもんでつい……」
 忠助「まあ、今日のところはやめときな……あっはっはっはっ、だいじょぶかよ」

 甲介に喧嘩の心得を指南すると、忠助は、血気に逸ると言うより、むしろ怖がっているように見える甲介の肩を叩いてその場を去って行く。

 甲介「大物だねえ……」

 兵役経験者で、喧嘩の場数も甲介とは段違いの忠助、とっくの昔に甲介の心底などお見通しであった。

 
 チエミ「お兄ちゃん、パパをそれで殴るつもりだったのね」
 甲介「……」
 チエミ「パパを殴るなら、代わりに私を殴って!!」
 甲介「……」

 チエミの子供らしからぬ健気な言葉に、その思い詰めた表情をまじまじと見返す甲介。

 
 甲介「ほら、味噌おでんだ、美味しいぞ」
 チエミ「……」
 甲介「食えよ、なんだおでん嫌いなのか」

 その後、甲介は境内で売られているおでんを買ってチエミに食わせようとするが、チエミは手をつけようとしない。

 チエミ「お兄ちゃん、パパをいじめないで」
 甲介「何言ってんだよ、いじめたのはお前のパパのほうだぞ」

 チエミ、そのまま帰ろうとするが、しきりにおでんをすすめる甲介の声に途中で立ち止まって振り向き、

 
 チエミ「じゃあ、約束して、パパをいじめないって」
 甲介「そんなこと言ったってねえ、悪いことをした奴をそのままほっとくわけに行かないの」
 チエミ「……」
 甲介「あのなぁ、おにいちゃんの言ってることが間違ってるかどうか、うちに帰ってママに聞いてご覧」
 チエミ「……ママなんていないわ」
 甲介「えっ?」
 チエミ「死んじゃったもの……今のパパだって私の本当のパパじゃないの」
 甲介(どっかで聞いたような話だなぁ……)

 ……と言うのは嘘だが、チエミの突然の告白に、なんとも言えない複雑な表情になる甲介であった。

 ま、実際、台本読んだ石立さんや杉田さんが、同じようなことを思ったのは間違いあるまい。

 「パパ~」を見たことのない人のために説明すると、石立さん演じる主人公・安武右京は、千春と言う、杉田さん演じる女の子を引き取って実の親子のように暮らすのだが、彼女は、安武の死んだ姉の忘れ形見、つまり、姪っ子なのである。

 しかも、しかも、「パパ~」で、千春の実の父親(註1)を演じていたのが、松山英太郎さんなのである。

 つまり、今回のエピソード、「パパ~」における石立さんと松山さんの立場を逆にしたような設定になっているのである。

 もっとも、「パパ~」では、おじが姪の面倒をしっかり見ているが、こちらでは、おじが姪の面倒をろくに見ず、甲介たち赤の他人が世話を焼くことになる。

 言い換えれば、「パパ~」で、もし安武がダメ人間だったら……と言う、パラレルワールド的なプロットとも言えるのである。

 そう考えると、「おひかえなすって」と言うサブタイトルも、シリーズ1作目の「おひかえあそばせ」のもじりのように思えてくる。

 註1……父親と言っても、千春が小さい頃に女を作って家を飛び出したきりで、安武に父親の資格はないと軽蔑されている。

 その晩、いつもの焼き鳥屋で、甲介と忠助がその話を肴に飲んでいる。

 
 忠助「ふうん、子連れヤクザか」
 甲介「ところがね、ほんとの子供じゃないらしいんだよ」
 忠助「なんだ、ややっこしいじゃねえか」
 甲介「あの子のお袋の弟、つまりね、おじさんらしいんだな、あのパパって言われてる男は」

 忠助に説明しながら、またまた「あれ、どっかで聞いたような話だなぁ」と思わずにいられない甲介であった。

 世間を知ってるようで世間知らずのところがある甲介、チエミを自分が引き取ろうかなどと言い出すが、忠助にやんわりたしなめられる。

 忠助「人の心配するよりも、自分の心配したほうがいいんじゃねえのかなぁ、そろそろ嫁さんだってもらわなくちゃなんねえんだし」
 甲介「そうじゃないんだよ、忠さん……」

 などと言ってると、別の客が入ってきて甲介の右隣に座るが、

 
 その客こそ、話題の主・岩村健次であった。

 岩村「ああ、邪魔だよ」
 甲介「すいません、許して下さい」

 相変わらず「水もれ」している甲介、それが弟のカタキとは知らず、肩が触れ合ったのを咎められてペコペコ謝る。

 
 甲介「……」

 そしてもう一度前を向くが、ここでやっと気付き、

 
 甲介「あっ!!」

 かなりテンポの遅れた「二度見」をする。

 
 岩村「あーっ!!」

 甲介の叫び声に振り向いた岩村も漸く相手の顔を認識し、すっ飛んで店から逃げ出す。

 甲介もすぐ後を追うが、忠助は、ちょうど店の前に来た竹造に甲介の助っ人を命じる。

 
 甲介「ちくしょう、また逃げられちまったか」
 竹造「甲ちゃん、俺、助太刀するよ」

 路上で岩村を見失った甲介に竹造が追いつくが、この場所、「パパ~」でも、ちょくちょく出て来たような気がする。

 初子が輝夫の見舞いに訪れるシーンを挟み、甲介たちは岩村のアパートに行き、屁っ放り腰で部屋に飛び込むが、

 
 部屋には岩村の姿はなく、電気をつけたまま、チエミがコタツに入ってうたた寝しているだけだった。

 竹造「ガキだけじゃねえか」
 甲介「帰ってきた様子はねえなぁ」

 念のため、岩村が隠れていないか家の中を調べようとした甲介の目に、タンスの上に置かれた粗末な仏壇と、写真立てが飛び込んでくる。

 
 それは、赤ん坊の頃のチエミと、死んだ母親の写真だった。

 それを見た甲介は、

 
 甲介(なんか、前にも似たようなことがあったような……)

 どうにもその点が引っ掛かる甲介であったが、嘘である。

 甲介「……」

 なんともやるせない顔になり、とりあえず仏様に手を合わせるのだった。

 竹造「いつもこうやってコタツで寝てんのかな、火事にでもなったらどうすんだよ、うんとに……風引いちゃうよ、これじゃ」
 甲介「タケさん、布団引いて寝かせてやろうか」
 竹造「そうだな」

 ……と言う訳で、無類のお人好しの二人は、殴り込みに来た家の娘の面倒を見ると言う、落語みたいなことをするのだった。

 竹造が押入れを開くと、山のようにたまった洗濯物が落ちてくる。

 甲介「ひどいなー」
 竹造「うちのかあちゃんだってこんなに溜めやしねえ」

 
 竹造が布団を敷く間、甲介は眠りこけているチエミの体をお姫様抱っこするのだが、「パパ~」で何度も杉田さんの体を抱き上げていた石立さん、あれから2、3年しか経ってないのに、すっかり重くなったことに、深い感慨を覚えておられたのではあるまいか。

 その後の「雑居時代」でも共演してると言っても、彼女を抱きかかえるシーンはほとんどなかった筈だからね。

 
 甲介「ははっ、可愛い顔して寝てやがる」
 竹造「そう言えば、うちのガキが同級生で朝飯もろくに食わねえで来る子がいるって言うけど、この子じゃねえのかなぁ」
 甲介「……」
 竹造「子供は母親がいねえとみじめだよな」

 すっかりチエミに同情した甲介は、そのまま自分の家に連れて帰ろうかと言い出すが、さすがに誘拐はまずいだろうと竹造に止められる。

 甲介も諦めるが、その代わり、

 
 甲介「タケさん、行こうか」
 竹造「ああ……なんだ、甲ちゃん、それ持ってくの? 泥棒みてえじゃねえか」
 甲介「大丈夫だよ、返しにくるんだから」

 洗濯物を適当な風呂敷包みにくるんで、自宅で洗濯する為に持って帰ると言う、これまた落語みたいなことをするのだった。

 翌朝、滝代が他人の家の洗濯物を洗濯機に放り込んでいるのを見た輝夫は、

 
 輝夫「呆れたね、兄貴にも、殴り込みに行った家からそんな汚れ物持って帰ってやるなんて」
 滝代「いいじゃないのよ、甲介らしくって」
 輝夫「だけどいちいち知らない人に同情してたらさ、身がもたねえよ」

 甲介に負けず劣らずお人好しの……と言うより、甲介のお人好しの遺伝的源流である滝代は、そんな仕事を押し付けられても気を悪くした風もなかったが、朝美も輝夫に同調し、

 朝美「そうよー、自分でやるんならともかく、結局は母さんにやらせてんでしょう」
 滝代「まあいいじゃないの、母さんがね、働けるんだから」

 
 朝美「また悪くなっても知らないわよ。マコちゃんだっていないんだからぁ」

 撮ってる方も見てる方も忘れがちだが、以前、滝代は膵臓か何かを悪くして寝込み、そのためにマコがお手伝い兼三ッ森工業所の社員として雇われたのである。

 それにしても、セーラー服の上にエプロンをつけて朝食の用意をする女子高生って、噂には聞いていたが、実在したんだね。

 さすがに、今では絶滅種だと思うが……

 善行も母親に頼りっぱなしの甲介は、滝代の作ってくれた弁当を持って嬉しそうに出掛けて行く。

 無論、行き先はあのアパートで、

 
 チエミ「あら、お兄ちゃん」
 甲介「これから学校か、これ持ってけ、お弁当だ」
 チエミ「お弁当? 学校は給食よ」
 甲介「へっへっへっ、それくらいのことは知ってるさ、これはね、朝ごはん」
 チエミ「あら、朝ごはんなら食べたわよ」
 甲介「ははっ、嘘つけー」

 甲介、強がりを言うチエミの額をチー坊にしていたように小突くと、

 甲介「お兄ちゃん、ちゃんと知ってんだから」
 チエミ「……」

 甲介、ついでに洗濯物を持ち出したのが自分だと告げ、チエミを驚かせる。

 チエミ「どうして?」
 甲介「どうしてって言われても困るけどね、ははっ、夕方までにはちゃんと洗濯物返してやるから安心しろ」
 チエミ「いつの間にそんなことになっちゃったの、まるで魔法使いみたい」

 などとやってると、竹造が自転車でやってくる。

 
 竹造「お嬢ちゃんよ、これね、おむすび入ってんだ。それからこれは即席の味噌汁、これに熱いお湯入ってるからね、これ入れて食うとうめえんだ」

 そう、考えることは同じで、女房に用意させたのだろう、握り飯の包みとお湯の入った魔法瓶をチエミに渡そうとする。

 甲介「ちょっと待ってよタケさん、こっちのがね、先口、これね、お弁当」
 竹造「なんだ」

 と、急にチエミが泣き始めたので、甲介たちは戸惑う。

 
 甲介「どうしたんだよ?」
 チエミ「だって、お兄ちゃんやおじさんがあんまり親切なんだもん……ぐすっ、ありがとう、本当にありがとう」

 気丈なように見えて、やはりつらかったのだろう、ポロポロ清い涙を流しながら二人に礼を言うのだった。

 そんなことも知らず、岩村は朝から近江屋で酒を飲んでいた。

 おまけに酒代を踏み倒し、帰り際に缶詰を失敬するという無法ぶりだったが、ヘタレの六郎にはどうすることも出来ず、おろおろするばかり。

 だが、そこへ桃太郎侍のごとくあらわれたのが忠助で、

 
 岩村「何すんだよ」
 忠助「今取ったもの、ここへ戻しなよ」
 岩村「なんだと、この野郎」
 忠助「おらっ!!」

 忠助、足を引っ掛けて岩村に尻餅を突かせると、パコパコその頭を叩いて胸倉を掴み、

 忠助「おいっ、二度とこんな真似しやがったら街を歩けねえようにしてやるからな、良く覚えとけ!!」

 ヒグマのように凄んでからその体をもう一度地面に叩きつける。

 岩村「ちっきしょう、いてえなこの野郎、覚えてやがれ」
 六郎「覚えてるよ!!」

 なんか、記憶術の合宿所みたいな様相を呈してきたが、岩村は捨て台詞を吐いて遁走する。

 
 六郎「さぁすがぁ、おじさん、若いとき牛殺しただけあって、すげえなぁ」

 缶詰も取り戻し、称賛と羨望の眼差しを忠助に向ける六郎であった。

 ほんとか嘘か、忠助は若い頃、素手で牛を殴り殺したと言うのが自慢なのである。

 後編に続く。
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コメント

人は見かけに寄らない

因縁を付けた岩村を咎めた輝夫ですが、返って返り討ちにあってしまったようですね😅喧嘩を売った相手が悪かった悪かったですね👊

Re: 人は見かけに寄らない

なんか納得行かないですが。

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zura1980

Author:zura1980
70~80年代の特撮、80年代のドラマを中心に紹介しています。

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