第19話「おひかえなすって!」(1975年2月16日)
の続きです。
放課後、チエミが弁当箱を抱えて三ッ森工業所の前でうろうろしていると、チャミーが帰ってきて、

朝美「なんか用?」
チエミ「あ、あのー、もじゃもじゃ頭のお兄さん、いる?」
朝美「甲兄ちゃんのこと?」
チエミ「これ、返しに来たの」
チエミがおずおずと弁当箱を差し出すのを見て、腑に落ちたように、

朝美「ああ、あんたなの、例の女の子って……私、妹のチャミーよ」
チエミ「妹さん? 私、チエミって言うの、よろしく」
ちなみに当時、村地さんが15歳で、杉田さんが10歳なのだが、どちらも実年齢より大人びて見える。
特に村地さんが15歳というのは、自分も今初めて知ったのだが、俄かには信じられない。
学年で言えば、中学三年生!!(あと少しで卒業だけど)
一方、甲介は仕事場でもチエミのことが気にかかり、またぞろ、チエミを養女として引き取ろうかなどと無責任なことを言い出す。

竹造「やめときな、安っぽい同情は」
甲介「安っぽい同情とはなんだよ、随分じゃない、タケさん」
竹造「結局おかみさんが面倒見ることになっちゃうんだろう」
甲介「いや、そりゃそうだけどさぁ」
その頃、チエミはチャミーの部屋に上がって、洗濯物が乾くのを待つ間、チャミーに勉強を見てもらっていた。

チエミ「おばちゃん、どうもすいません」
滝代「いいえ、お勉強ちゃんと教えてもらってる?」
チエミ「うふん」
朝美「すっごく良くできんだ」
滝代「そう、じゃあね、今おやつ持って来て上げるからね」
チエミ、少し寂しそうな顔でコタツに戻ると、

チエミ「いいな、お母さんて……」
朝美「いくつン時に死んだの?」
チエミ「三つ」
朝美「じゃあ、顔覚えてないわねえ」
チエミ「でも、お姉ちゃんみたいなきれいな髪の毛してたのだけぼんやり覚えてんの」
と、チエミは言うのだが、部屋にはちゃんと母親の写真が飾ってあったので、チエミの台詞は若干違和感がある。
まあ、その目で見た記憶としては残ってないと言うことなのだろうが。

朝美「ふーん、ほんとのパパに会いたいでしょ?」
チエミ「ううん、今のパパがいるから会いたくないわ」
朝美が何気なく尋ねるが、チエミはきっぱりと否定する。
やがて甲介たちが仕事を終えて帰ってくるが、ちょうどそこへ、縄跳びをしようと二人が家から出てくる。

チエミ「お兄ちゃん!!」
甲介「おう、なんでこんなとこにいんだ、お前」
朝美「お弁当箱返しに来たの」
甲介「おお」
朝美「どうもありがとう、とっても美味しかったわ」
甲介「はっはっ、旨かったか、また持ってってやるからな」
朝美「さ、縄跳びしよ」
チエミ「うん」
甲介、走りかけたチエミを呼び止め、

甲介「今日、お前、一緒に風呂に行かねえか」
「パパ~」でよくやっていたように、チエミを風呂に誘う。
その瞬間、「パパ~」を杉田さんの丸出し入浴シーンだけを目当てに見ていた真性ロリコン戦士たちがどよめくが、
チエミ「お兄ちゃんと? いやだぁ」
チー坊と違い、既に異性の目が気になる年頃のチエミは即座に拒絶し、

甲介「どうして?」
チエミ「だって男湯に入るんでしょ、やーよっ!!」
甲介「ちぇっ、もう色気づきやがって」
この後、チエミはチャミーと一緒に風呂に行ったらしいのだが、残念ながら、その時の映像は出て来ない。
二人が銭湯で背中を流しっこするシーンがあったら、視聴率40パーは行ったと思う。
それにしても、10年後の「スクール☆ウォーズ」で、山下真司×小沢仁志、あるいは、山下真司×松村雄基の入浴シーンが堂々と放送されていたのに、なんで村地さんと杉田さんの入浴シーンはNGなのだろう?(真顔で言うな、真顔で)
甲介「俺も入れてくれ!!」

甲介、何を思ったか、二人のところへ駆け寄り、一緒に縄跳びをして遊ぶのだった。
しかし、気が触れたとしか思えない甲介は別にして、女子高生と小学生が縄跳びで遊ぶって、今では考えられない素朴さ&のどかさである。
それはともかく、たまたま輝夫の見舞いに来ていた辰吉は、それを見て、
辰吉「あの子、あのチンピラのガキじゃねえのか」
輝夫「うん、そうらしいね」
辰吉「どうなってんだ、一体?」
竹造「例の甲ちゃんの病気なんだよ、言い過ぎ、食い過ぎ、飲み過ぎ、考え過ぎって、ほんとにもう同情のし過ぎなんだよ」
狐に抓まれたような顔になる辰吉に、自分のことは棚に上げて、もっともらしく論評する竹造であった。
結局、チエミは三ッ森家で夕飯を取ることになる。
チー坊と同じく、左手で箸を持つチエミ……って、当たり前か。

甲介「そうか、そんなに垢が出たのか」
朝美「一週間ぶりなんだって」
甲介「へーっ」
チエミ「あんまり言わないで、恥ずかしいから」
甲介「はっはっ」
輝夫「無理もないよな、今、銭湯高いもん」
あれこれ話して、チエミが小学生らしくない不規則な生活をしていると知った甲介は、
甲介「これからはな、このおばさんをママだと思ってな、時々このうち遊びに来ていいぞ」
例によって、人のふんどしで善行を施そうとするが、
チエミ「でも悪いわ、そんな甘えちゃ」
甲介「ほおっ」
朝美「言うわね、なかなか」
チエミの大人びた台詞に、甲介たちがドッと笑う。
食欲旺盛なチエミを見て、甲介は輝夫のおかずを分け与える。
そこまでは良かったが、
甲介「どんどん食べて大きくなってね、ボインボインになって我々をね、楽しませてくれるか?」 ここで甲介、いつもセクハラギャグを書いている管理人でさえガチで引いてしまうほどの、最低のセクハラ発言をする。
特に、「パパ~」では事実上の親子を演じていた二人だけに、この台詞はかなりやばいと思う。
今だったら、大炎上間違いなしだが、

朝美「やあねえ、ボインだけ余計よ」
甲介「いや、冗談だよ、冗談、今のはね、男の希望的観測」
朝美が軽くたしなめるだけで、滝代も何も言わず、あっさりスルーされてしまうのだった。
時代の流れ、雰囲気と言うものは恐ろしい。
それはともかく、チエミは、勉強しながら眠りこけてしまったので、甲介たちはそのまま泊めてやることにする。
夜、例の焼き鳥屋で(鬼子母神には、他に飲み屋はないのか?)忠助が岩村に懇々と説教している。

忠助「おい、ヤクザから足洗え」
岩村「へえ」
忠助「ガキの為だ」
岩村「へえ」
忠助「へえへえへえってお前、さっきから返事ばっかしばかに調子いいけどな、俺が言ってること心底わかってんのかよ」
竹造「兄ちゃんよ、子供は可愛いだろ、俺んとこなんか5人もガキがいるけどね、一度だって粗末にしたことぁない。子供はね、宝物、宝物」
岩村「実は、あの子は死んだ姉貴の子なんですよ」
竹造「そういや似てないね、実の父親どこにいるの」
岩村「それがどこにいるのかさっぱりなんですよ、土台、あっしのようないい加減な若造に子供の面倒なんか見れるわけがねえんです、あの子が友達からバカにされねえように、パパなんて呼ばせてますけどね、これから先、あっしは年がら年中どうしたらいいのか、もう悩みっぱなしで……このままじゃスケだって寄りつかねえし、どーっしてこんな羽目になっちまったのか、情けなくて……」
意外と泣き上戸の岩村は、胸の奥にしまっていた生の感情を吐露しながら、みじめったらしくすすり泣くのだった。
忠助「バカッ、男が泣くない」
岩村「だって旦那、あっしはあの子が重荷で……ほんとに困ってるんですよ」
忠助「俺だって男でひとつで二人の子供を育てて来たんだよ……まず、足洗え、洗うんだよ、子供が不幸せになったら死んだ姉さんかわいそうじゃねえか」
深夜、滝代と同じ布団で寝ていたチエミがパッと目を覚まし、キョロキョロと周りを見回していたが、状況を把握すると、そっと布団を抜け出して家を出て行く。
ほどなく、滝代がチエミがいないのに気付いて大騒ぎになる。

甲介「しょうがねえな」
輝夫「自分のうち帰ったんじゃねえのかな」
甲介「そうだな、よし、俺見てくる」
輝夫「あ、兄貴、俺も行くわ」
着替えるためにあたふたと二階に上がりながら、甲介は、
「なんか、前にも似たようなことがあったなような……」と、またしてもデジャブに襲われるのだった。
なにしろ、「パパ~」では、いつのまにかチー坊が家からいなくなると言うのが、ひとつのパターンになってたからね。
岩村、それでもチエミのことが心配で派出所にまで足を運んでチエミの行方を探していたが、諦めてアパートに戻ってくる。
と、アパートの階段の下に、チエミが座って待っていた。

岩村「チエミ」
チエミ「パパーっ!!」
しばらく見詰め合っていたが、チエミは込み上げてくる激情に突き動かされるようにして岩村の胸に飛び込む。
岩村「バカヤロウ、黙って何処行ってたんだ、心配掛けやがって」
チエミ「ごめんなさい、怒らないで」
岩村「怒るもんか、パパ寂しかったんだよ」
チエミ「パパがいけないのよ、家に帰ってこないから」
岩村「ごめん、悪かった、悪かった」
チエミ、岩村から体を離すと、

チエミ「パパ、もう人に悪いことしないで」
岩村「え?」
チエミ「チエミ、悲しいの」
岩村「……」
チエミ「お願い」
チエミの真心が遂に岩村の心を動かし、岩村は本気で更生することを決意し、改めてその小さな体をちから一杯抱き締めるのだった。
離れたところからそれを見ていた甲介と輝夫も、安心した様子で引き揚げていく。
数日後、甲介が酒井工務店の前を通りかかると、珍しく忠助が自ら腕をふるって、ラーメン屋の屋台を作っていた。
足を洗ったと言う岩村に頼まれたのである。

甲介「あれ、おじさん」
忠助「よう、甲ちゃん」
甲介「商売替えでもすんの?」
忠助「馬鹿言え、ふふふふふ」
いかにも楽しそうに大工仕事をしている忠助に、甲介は怪訝な顔になる。
その岩村、今度は三ッ森工業所を訪れ、今回の騒動のきっかけとなった輝夫への暴行について謝罪していた。

岩村「ほんとに申し訳ありませんでした、おまけにチエミまでお世話になったそうで、なんともお詫びのしようもございません、これから若旦那の気の済むように、蹴るなり殴るなりなんなり好きなようにして下さいまし」
そう下手に出られては輝夫も怒るわけに行かず、
輝夫「なに、もう、済んだことなんだからさぁ、良いんだよ、さ、手ぇ上げてくれよ」
岩村「あっしはこれを機会に足を洗うことに決めたんでございます」
などとやってると、甲介と忠助があらわれる。
甲介「ねえ、君、ほんとに足を洗うの」
岩村「ええ、チエミに誓ったんでございます」
甲介「ああ、そう、ね、母さん、包丁とまな板持ってきてくんないかな」
甲介、滝代に変なことを頼むと、
甲介「俺はな、お前さんが口先だけかどうかこの目でちゃんと確かめたいんだよ」
岩村「あの、それは酒井の旦那に聞いていただけりゃわかります」
甲介「え?」
甲介の視線を受け、忠助はブルドックのように口を震わせると、
忠助「いやいやいや、俺はまだ信じちゃいねえよ」
やがて滝代が包丁とまな板を持ってくる。
甲介、応接セットのテーブルにまな板を置くと、それに包丁を突き立て、

甲介「あのさ、お前さんたちの世界ってさ、ほら、足を洗う時にさ、指をギッチョンチョンする習慣があるだろ。それを俺の目の前でやってもらおうかな」
と、飛んでもないことを言い出す。
輝夫「兄貴!!」
滝代「ねえ、やめておくれ、そんな残酷なこと」
甲介「いいから、いいから、さ、やってもらおう」
無論、甲介、ほんとに指を詰めさせるつもりなどさらさらないのだが、岩村の決意が本物かどうか試しているのである。
ちなみにこの石立鉄男シリーズって、妙に指を詰めるの詰めないのと言う話が多い気がする。

岩村「あのう」
甲介「なんだよ、男らしくさっさとやってみろ!!」
岩村が怯えたような顔で包丁を見詰めているのを、甲介がどやしつけるが、
岩村「いや、実は今さっき親分とこで一本詰めて来たばかりなんですよ」

甲介「へー……なにっ?」
岩村の衝撃の告白に、目を見開く甲介。
輝夫も思わず身を乗り出し、滝代もおぞけをふるう。

忠助「ほんとか?」
岩村「ほら」
しかし、ホームドラマで、登場人物がほんとに指を詰めちゃうと言うのは、今ではまずありえない話だし、当時としてもかなり珍しいのではあるまいか。
甲介「バカヤロウ!!」
岩村「もう一本詰めろと仰るなら仕方ありません、あの、やってみましょうか」
淡々と、右手の小指を立ててみせる岩村に、さっきまで切れと言っていた甲介が鬼のような形相で怒りを爆発させ、その胸倉を掴んで立たせる。

甲介「このバカヤロウ、親から貰った大事な体を細切れにしやがって、この、どチンピラ!!」
輝夫「そうだよ、そんなことまでしなくなっていいじゃないか」
岩村「どうも、申し訳ございません」
忠助「甲ちゃん、こいつはね、どうやら心の底から足を洗おうとしてんだよ、信じてやろうよ」
滝代「そうだよ、ねえ、もういい加減に許しておやりよ」
甲介「お前はバカだよ、俺の上を行く馬鹿だ……これからお前ちゃんとやれよな」
さんざん怒鳴り散らしたあと、ぶっきらぼうに岩村を励ましてやる甲介であった。
にしても、「親から貰った大事な体」って、今ではもう死語に近いけど、良い言葉だよね。
その日の夜かどうかは知らないが、早速ラーメン屋の屋台を引いている岩村。

朝美「美味しい」
チエミ「良い味よ、パパ」
岩村「そうか、うまいか。パパの腕も満更でもないだろう」
チエミ「すぐ自慢するんだから」
朝美とチエミに続いて、甲介と輝夫も顔を出す。

岩村「兄貴ぃ」
甲介「おい、その兄貴はよしてくれよ、俺は素っ堅気なんだから」
岩村「いや、兄貴、そう言わしてください。兄貴、ラーメン食いに来てくれたんでしょう」
輝夫「勿論、そのつもりで来たんだよ」
岩村「おめえらに食わせるラーメンはねえ!!」 じゃなくて、
チエミ「ラーメン二丁」
岩村「おうっ」
朝美「とっても美味しいわよ」
ラーメンを待つ間、甲介が屋台の中を見回していると、柱に写真入りの「たずねびと」の紙が貼ってあった。
チエミの実の父親だと言う。
岩村「あちこち歩いてるうちにそのうち知ってる人が出てくるんじゃないかと思いましてね」
甲介「ふーん」
朝美「早く見付かるといいわね」

岩村「ええ、あっしだってね、まだ若いんですから、いつまでもコブ付きじゃ、嫁さんが来てくれませんからね」
岩村がぼやくと、
チエミ「じゃあ、私がパパのお嫁さんになってあげる」 すかさずチエミが、全国の中年ロリコン戦士が死ぬまでに一度は聞きたいと思っているキラーフレーズをぶっこんでくる。
岩村「お前が? ほら最近の子供はこれですからねえ。はっはっはっ、焦っちゃうんですよ」
チエミ「じゃ、なってあげない」
岩村「え、負けたね、おい」
二人のやりとりを聞きながら、甲介は、どうにもやっばり、
「どっかで聞いたような台詞だなぁ」と言う既視感を抑えることができないのでありました。チャンチャン。
なにしろ「雑居時代」では、杉田さんはしょっちゅう鉄男のお嫁さんになってあげるって言っていたもんね。
以上、そのあまりの長さに途中で思わず出家したくなってしまったが、例によって、人の善意の素晴らしさを描いた佳作であった。
とにかく、これが最後の「水もれ」レビューとなります。
ああ、しんど。
おまけ 最後なので、チャミーの可愛い画像を貼っておく。

道で痴漢に会ったかと思ったら、酔っ払った竹造だったと気付くチャミー。

甲介に説教されてむくれているチャミー。

甲介にビンタされて目に涙を溜めているチャミー。
以上はすべて第20話からです。
そして、忘れてはいけないのが、

8話で見せた、四半世紀ほど時代を先取りした、眼帯少女コスプレ!!
って、まあ、コスプレじゃなくて、ものもらいが出来たので眼帯してるだけどなんだけどね。

通学電車の中で知り合ったハンサムで知的で優しい大学生に恋をして、とろけるような笑みを浮かべるチャミー。

キャスケットに眼帯をしたまま、工事代金の集金に行くが、その一軒が偶然その大学生の住むマンションで、大学生はそれがチャミーとは気付かずに、普段とはまるで別人のように刺々しい態度でガミガミと仕事(前日に甲介が水漏れを直した)にケチをつけ、チャミーの心は深く傷付き、角砂糖のように甘い恋は、角砂糖のように儚く砕け散ってしまうのだった。
しっかし、いくら髪型がいつもと違って眼帯してるからって、フツー気付くよな。
続いて第1話から、

甲介の思い出の中、大村崑みたいな眼鏡を掛けた中学生のチャミーが、甲介、輝夫たちと浜辺で遊んでいるシーン。
これ、最初は村地さんだと思っていたのだが、実は、村地さんの妹の村地富士美さんと言う人が演じているのだ。
彼女も、芸能活動をしていたのかどうかは知らないが……

浜辺を走る三人。
原田大二郎さんの制服姿が、かなりキツいです!!

序盤では、チャミーや銀子の貴重な夏服姿が見れるが、

こうして後ろから見ると、村地さんのトレードマークである黒髪が、ほとんど萌えアニメの登場人物のように度外れた長さであることが良く分かる。
髪洗うの、大変だったろうな……
以上、おまけコーナーでした。
と言う訳で、「水もれ甲介」傑作選、今度こそ終わりです。
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました!!
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