第9話「7ストレート!! 地獄の必殺拳」(1977年6月4日)16
若き日のデューク真田こと真田広之さんがゲスト出演していることで知られるエピソードである。
OPでは、

真田広之とウイリー・ドーシーと魔神提督が揃ってクレジットされるという奇跡が起きる。
ドウジーになってますが……
冒頭、若いカップルの乗る車が東都銀行の前に止まる。

男のほうは、スペードエースのスーツアクターも務めていた春田純一さんである。
男はハンドルを握っている女に頷いて見せてから、ひとりで銀行に入り、ダイナマイト(に見せかけた発煙筒)で脅して幾許かの金を奪う。
ただし、台詞は別の俳優の吹き替えである。
男が車に戻ると、運転手役の女はすぐ車を発進させる。

で、その女性を演じているのが、これまた若き日の松井きみ江さんなのだった。
こうして見ると、キリッとしたなかなかの美形である。
二人はパトカーに追われて必死に逃げるが、最後は高架橋のコンクリートの柱に真正面から激突して即死する。
直ちにジャッカーの五郎とカレンが現場にやってくる。

五郎「青木豊」
カレン「石山あゆみ」
五郎「二人とも城東大生だ」
カレン「大学生が銀行強盗を……」
二人は「世も末だ」とばかりに暗い眼差しを交わす。
カレンは遺体から、ドリームフラワーと呼ばれる特殊な麻薬の臭いを嗅ぎ取る。
今回の脚本は上原さんだが、「ギャバン」の26話「人形は見た!! 毒ガス殺人部隊の正体」に出てきたドリームバードと言う殺人部隊の名前を連想させる。
二人は本部に戻り、鯨井に報告する。

文太「なんです」
竜「そのドリームフラワーって?」
鯨井「うむ、アマゾンの奥地にだけ生息する薬草で、その花の匂いに溺れたら二度と抜け出せないと言われている」
竜「銀行強盗の二人がドリームフラワーの常用者だったとすると、薬を買うために」
前回書いたように、今回からカレンの髪がショートになる。
正直、衣装とマッチしてないと思うが、

続いて、いかにも「夜の女」っぽく、どぎついメイクをして夜の繁華街に繰り出したカレンの姿は実に魅力的で、こんな感じでもっとコスプレしてくれれば良かったのにと、今更ながら惜しまれる。
無論、カレンは遊び呆けているわけではなく、遊び人に成り済まして飲食店やディスコなどに立ち寄り、ドリームフラワーの流通ルートを探っているのだ。
しかし、まだクライムの関与も不明なのに、麻薬Gメンを差し置いてジャッカーが捜査に乗り出すというのは、若干の違和感があるなぁ。
おそらく、クライムがドリームフラワーを資金源にしていると言う情報でもあるのだろう。
カレンはとあるゲームセンターで、やっとドリームフラワーの売人らしき男を発見する。

カレン「面白そうね」
男「よう、姉ちゃん、ちょっとつきあわねえか」
カレン「私もヤリたいわ」
男「うん、何を?」
カレンが数枚の紙幣を取り出して見せると、
男「来いよ」
男は何の疑いも持たず、カレンをボスのところに連れて行ってくれる。
いまだかつて、これほど簡単な潜入捜査があっただろうか? いや、ないっ!!

男「例のものを欲しいんだ」
ボス「カツ、案内しろ」
で、そのボスを演じているのが、中さんなのだった。
ちなみに中さん、これとほぼ同時期の「ズバット」でも麻薬売買を手掛けてるんだよね。
と、ボスに呼ばれてプレハブ小屋から出て来たのが、

勝也「どうぞ……」
まだあどけなさの残る真田さん演じる中山勝也だったのである。
何しろまだ16才だからね。

カレン「勝也くん!!」
そしてカレンと勝也は顔見知りの間柄で、思いがけない場所で勝也の姿を見かけて、思わずその名を叫んでしまう。
ちなみに予告編では、「勝也」ではなく「勝次」となっている。
ボス「知ってるのか」
勝也「ジャッカーだ!!」
何を考えているのか、勝也はカレンの正体をばらし、ボスと一緒に逃げ出す。
途中、ボスは勝也と別れて自分が根城にしているスナックに逃げ込むが、仲間は全員射殺されていた。
さらにカウンターの中から二人の戦闘員があらわれ、ボスにも銃を向ける。

戦闘員「秘密を守る為に口を封ぐのだ、悪く思うな」
ボス「助けてくれ、命だけは助けてくれ」
情けなくも命乞いするが、あえなく銃殺される。
なお、今までボスと呼んで来たが、ボスと言うよりただの売人だったようである。
中さんの使い方としては、かなり贅沢である。
一方、カレンは駐車場で勝也をつかまえ、厳しく問い質していた。

カレン「どういうことなの、何故あなたがクライムに? あなたの兄さんはクライムに殺されたのよ」
カレンの言葉に合わせて、そのときの様子が再現されるが、

勝也の兄と言うのが、よりによってジャーク将軍だったので、管理人、盛大に吹く。
高橋利道さんね。
麻薬Gメンである勝也の兄は港に停泊していたクライムボスの船に潜入しようとするが、戦闘員に見付かり、あえなく刺し殺されて海に投げ捨てられたのだった。
カレン「兄さんはクライムに殺されたのよ」
勝也「うるせえ!!」
勝也はヤケ気味にカレンに殴りかかるが、空手の達人であるカレンにはかなわず、逆にボコボコにされる。
と、その腕を背後から掴んだものがいる。
ずっとカレンを尾行していた五郎だった。
カレンは失望したように勝也の体を突き放すが、

勝也「兄さんの仇を討ちたかったんだ、兄さんは僕の誇りだった、目標だった」
勝也は別に悪の道に入った訳ではなく、その逆で、兄の仇を取る為にドリームフラワーの売人に近付いていたことが分かる。
あるいはその空手の腕を生かして、売人の用心棒でもやっていたのかもしれない。
勝也の案内でカレンたちがあのスナックへ行くと、凄惨な地獄絵図が広がっていた。

カレン「見たとおり、クライムは血も涙もないのよ、あなたが仇を討てる相手じゃない」
勝也「僕はクライムボスの親衛隊になるつもりだ。そうすれば麻薬ルートが探れる」
五郎「どうやって親衛隊になるつもりだ」
勝也「クライムカンフーで優勝すれば良い」
カレン「クライムカンフー?」
勝也「クライムの武術大会です、そうだ、ねえ、カレンさん、僕をサイボーグにしてくれ」
軽はずみなことを言う勝也を、カレンは悲しそうな顔で殴り飛ばす。

カレン「サイボーグなんてそんなに簡単になれるもんじゃないわ」
勝也「……」
勝也の口ぶりでは、カレンがサイボークであることも知ってるようだが、彼らがどういう関係なのか、いまひとつ分からない。
一方、ドリームフラワーの供給元であるクライムボスは、誇らしげにアイアンクローに報告していた。

アイアンクロー「なに、ドリームフラワーの売れ行きは物凄いと?」
クライムボス「はい、今に日本中の若者がドリームフラワーの虜になることでございましょう」
アイアンクロー「ジャッカーが嗅ぎつけていると聞く、気をつけるのじゃ」
クライムボスを演じるのは高野真二さん。
しかし、これだけとっかえひっかえ、毎回のように大物悪役俳優がゲスト出演する特撮番組って、他にはないだろうなぁ。
ま、あんまり嬉しくはないが……
その後、ドリームフラワーに溺れた若者による凶悪犯罪が続発し、社会問題にまで発展する。
ジャッカーとは別に流通ルートを追っている西崎と言う麻薬Gメンがいたが、

それが、よりによってガイラー将軍だったので、管理人、盛大に吹く。
しかも、そのまま「西部警察」に出れるくらいの潔い五分刈りなのだから、こんなん誰でも笑うわ。
だが、ジャッカーに捜査資料を渡し行く途中、怪人デビルスパイダーに襲われ、あろうことか大量のデビルフラワーを注入され、一瞬でパッパラパーになってしまう。
ほどなく待ち合わせ場所にやってきたカレンと五郎が見たのは、近くのビルの屋上に立ってあらぬことを口走っている西崎の変わり果てた姿だった。

西崎「私は飛べる、鳥のように大空を飛べるんだ」
カレン「危ないわーっ!!」
五郎「やめろーっ!!」
西崎「私は鳥だぁっ、あはははぁ、鳥だーっ!!」
五郎たちの叫びも空しく、西崎はそのままビルから飛び降り、無残な死を遂げる。
そう言えば、栗原さん、「電子戦隊デンジマン」にゲスト出演した時もこんな風に壊れちゃってたなぁ。あっちはパンチドランカーだったけど。
ついでに、その回には、春田さんもウイリー・ドーシーさんも出てるのだった。
手掛かりが得られず、捜査が手詰まりとなったのを見た鯨井は、勝也の望みどおり、クライムボスの親衛隊にさせようと言い出す。
鯨井「君が反対しても、彼はクライムカンフーに出場するだろう」
カレン「やめさせます」
鯨井「若者たちをドリームフラワーから守る為なんだ。特訓するんだ、カレン、勝也君を優勝させろ」
鯨井も苦渋の決断であったろうが、弟のような勝也を死地に追いやる手助けをするカレンはそれ以上につらかった。
しかし、クライムカンフーの行われる場所が分かっているのなら、普通にジャッカーが攻め込めばいいんじゃね? と言う気がしなくもないが、勝也がクライムカンフーに出場する方がドラマとしては断然面白いので忘れることにしよう。

ぷりっぷりのお尻を躍動させて、どっかで見たことのあるような場所で空手の稽古をしている勝也に近付くカレン。
16才の真田さんには、カレンの巨尻は目の毒だったろうなぁ。

カレン「どうしても出場するつもり?」
勝也「……」
カレン「あなた、優勝する為にサイボーグになりたいと言ったわね、本気なの?」
勝也「……」
カレンは、勝也の右手を掴むと、
カレン「こんな手じゃ、クライムは倒せないわ」
勝也「だから頼んだんだ、サイボーグにしてくれって」
カレン、勝也の右手を掴んだまま、コンクリート製のパイロン(カラーコーン)のようなもののそばへ連れて行き、勝也の右手をその上に乗せ、自分の右手には角張った大きな石を持つ。

勝也「何をする?」
カレン「強くなるのよ、サイボーグ手術よりは遥かに楽よ」
勝也「え?」
カレン、石を高々と持ち上げるが、まさか本当に打ち下ろしたりはしないだろうなぁと思っていたら、

カレン「ふんっ」
勝也「ぐわっ」
本気で打ち下ろしちゃうのである!! 正直、意味が分かりません。
最初は、石を打ち下ろすと脅して勝也の覚悟を試すつもりなのかと思ったが……
カレンはさらに何度も勝也の両手に石を打ち下ろし、骨をぐちゃぐちゃに砕く。
普通なら勝也がブチ切れて警察沙汰になってると思うが、

次のシーンでは、両手に血の滲む包帯を巻いた痛々しい姿の勝也が、カレンを相手に空手の特訓をしている。
はい、ますます意味が分かりませんっ!! 一体何のために拳を傷つけたのだ?
肉体を改造することの怖さを叩き込んで、サイボーグになることを諦めさせる為?
でも、サイボーグ手術なんて、包茎手術と違って本人が受けたいと思って受けられるものではないのだから、そこまでする必要はあるまい。
やはり、勝也に戦いの厳しさを教え、覚悟を固めさせる為だろうか?
しかし、大会はもうすぐなのに、拳を本気で潰してしまっては出場することが出来なくなり、元も子もないではないか。
とにかく、このシーンは不可解である。
ストーリー自体は面白いだけに惜しい。
とにかく、マンツーマンによるハードトレーニングが行われる。

さすがミッチー・ラブさん、女ながら、あの真田さんと遜色のないバトルを演じて見せる。
身体能力では志穂美さんに匹敵する彼女だが、20代前半で引退されてしまったのが惜しまれる。
ちなみに、勝也のお姉さんっぽい雰囲気だが、実際は当時16才、つまり、真田さんと同い年だったらしい。
CM後、

早くも、クライムボスの屋敷の中庭で、クライムカンフーが開催されている。
勝也は、富士勝也と言う偽名でエントリーしている。
ちなみに、あえて言及するまでもないが、今回のお話は、クンフー映画の金字塔「燃えよドラゴン」のパロディーになっている。
主人公が兄弟の仇を討つ為に、悪党の主催する武術大会に参加して、麻薬の製造工場を突き止めようとするところなど、そっくり同じである。
どうせなら、主催者はクライムボスではなく、「燃えよドラゴン」のハンがモデルになっていると思われるアイアンクローにして欲しかった。
そして若き日の真田さんと日本屈指の空手家であった石橋雅史さんとの一騎打ちと言う、失禁モノのバトルを実現させて欲しかった。
さて、トーナメント形式で一対一の戦いが行われていくのだが、そのひとつひとつを紹介する必要はあるまい。
ただ、勝也の二回戦の相手が、
審判「坂上三兄弟!!」
勝也「えっ、いや、三兄弟ってどういうことなのーっ?」 と言うのは嘘だが、一対一の勝負の筈なのに、こいつらだけトリオでエントリーとしてるのはさすがにどうかと思う。
勝也は順調にAブロックを勝ちあがり、Bブロックの勝者ビッグサターンとの決勝戦を行う。

で、そのビッグサターンを演じているのが、前記したように、ウイリー・ドーシーさんなのである。
しかし、こうやって間近で見ると、悪役の癖に妙に澄んだ目をしているのが分かる。
多分、めっちゃイイ人だったんだろうなぁ。

勝也(こいつを倒せば親衛隊員になれる)
しばらく睨み合ったあと、試合開始。
格闘術では勝也のほうが断然上だったが、何しろ体格の差があり過ぎて、勝也は苦戦を強いられる。

カレン「頑張るのよ、勝也君……」
ジャッカー本部で、勝也の勝利を祈っているカレン。

その後ろ姿を、
(良いケツしてやがんなぁ~)と、たっぷり視姦してから(註・断じてしてませんっ!!)、
五郎「ジョーカー!!」
デスクの上にトランプを並べて、暢気にトランプ占いをしている鯨井に迫る五郎たち。
最後に出たカードはスペードのエースだった。

竜「スペードは、悪、災難、そして死を意味する凶相のカード」
五郎(いや、ワシ、そのスペードエースなんやけど……) 竜の言葉に、割りとガチで凹む五郎であったが、嘘である。
でも、よりによってスペードのエースを見て不吉なカードだと言い切っちゃうのは無神経に過ぎるよね。
一応、鯨井が「スペードはイタリア語で剣、王、軍隊をあらわすから勝也は勝つ」と、いまひとつ分かりにくいフォローをしているが。
カレン「いよいよピンチの時は、相手の目を狙うのよ」
カレン、身も蓋もないアドバイスを口走る。

勝也(そうだ、目だ!!)
ビッグサターンに首を締められていた勝也も、その身も蓋もないアドバイスを思い出し、

ビッグサターン「ぐわぁあああああ」
ビッグサターンの目を潰すという、身も蓋もない攻撃をする。
この後、強烈な飛び蹴りを放ってビッグサターンを倒し、優勝をもぎ取る。
で、不思議なのは、

鯨井「カレン……」
五郎「良かったな」
カレン「……」
時を移さず、遠く離れたジャッカー本部にいるカレンたちが、勝也の優勝を知り、歓喜することである。
何故彼らに勝也が優勝したことが分かったのか?
ともあれ、勝也はその場で親衛隊員に任命される。

クライムボス「君は今日から名誉ある親衛隊だ、しっかり頼むぞ」
勝也「はい」

勝也(地下室だ、もしかしたらこの中に……)
その後、勝也はトレーナー姿で建物の地下に忍び込み、ドリームフラワーの遂に製造工場を突き止める。
これなんかも、「燃えよドラゴン」で、リーが夜中に部屋を抜け出して施設内を探索するシーンそっくりである。
勝也はすぐに発信機を使って、カレンたちに合図の信号を送る。
うーん、だったら、勝也が優勝したことをカレンたちが知るのは、そのシグナルを見てからにすべきだったのではあるまいか。
勝也、自分の部屋に戻ろうとするが、戦闘員につかまり、
クライムボス「どうしたね、富士勝也君、いや、なかやまきんに君」
勝也「パワーーーッ!!」
じゃなくて、
クライム「どうしたね、富士勝也君、いや、中山勝也君」
勝也「その通り、俺の名は中山勝也、お前たちに殺されたGメンの弟だ」
そう、クライムボスは最初から勝也の正体を知っていたのである。
……だったらなんですぐ殺さないのよっ!!
彼を泳がしておく意味が分からない。
この後、ジャッカーが駆けつけ、怪人デビルスパイダーを倒す。
「ジャッカー」の残念なところは、怪人や、変身後のジャッカー電撃隊がいなくても、ストーリーが成立してしまう点であろう。
と言うより、いない方が良いくらいだ。
つまり、ハードボイルドなストーリーに、特撮のフォーマットを無理やりくっつけているような感じがするのである。
それに、五郎たちは変身せずとも色んな能力を使えるので、いっそのこと、変身システム自体をなくしても良かったんじゃないかとさえ思えてしまうが、さすがにそこまでやると違う番組になっちゃうか。
デビルスパイダーが倒されたのを見て、クライムボスは慌てて逃げようとするが、勝也に見付かる。
勝也、クライムボスに拳を叩き込もうとするが、

カレン「待ちなさい」
勝也「こいつは兄さんの仇なんだ」
カレン「悪魔を殺しても、あなたの手が汚れるだけよ」
勝也「……」
カレンに説得された勝也はクライムボスをフリーにするが、クライムボスは、アジトに戻ったところをアイアンクローに建物ごと爆破され、あえなく死亡する。

五郎「明日も晴れるな」
竜「うむ」
五郎「さあ行くか」
ラスト、まるで最初から仲間だったかのように、五郎たちと一緒に夕陽を眺めている勝也。
なんか、このまま勝也が加入して5人体制になりそうな雰囲気だが、いきなりメンバーを増やすわけにもいかないからなぁ。
ただ、後に宮内さんを加えて彼に番組をのっとられてしまうよりかは、思い切って真田さんを加入させた方がマシだったんじゃないかと思う。
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