第35話「勇介とケンプの約束!!」(1988年10月29日)
グラントータスで仕事中、丈がみんなに熱いコーヒーを振舞うが、勇介は、ひとりパソコンのモニターの前に座って、ぽつねんと物思いに耽っていた。
丈「明日は10月29日か」
勇介「ああ……」
丈が何気なく言うが、この場合は、勇介が言うべき台詞じゃないかと思う。

めぐみ「きっと、ボルトの攻撃ももっともっと厳しくなるわ、ねえ、勇介」
勇介「だろうな」
めぐみタンが水を向けるが、勇介は相変わらず心ここにあらずという様子で、素っ気無く応じるとコーヒーには手もつけずに外へ出る。
海に面した岩場に立ち、

勇介「10月29日か……」
柄にもなく自分ひとりの世界に没入する勇介。
勇介(言えないよなあ、肉の日が楽しみでしょうがないなんて……) じゃなくて、
丈「10月29日がどうかしたって?」
背後から丈の声がしたので振り向けば、

めぐみ「どうしたの、勇介? 妙に考え込んじゃって、あなたらしくないわよ」
丈「悩みがあるならみんなで相談に乗るぜ」
いつの間にか、仲間たちが勢揃いして勇介のことを心配していた。
……
ウザい……と思ったのは管理人だけだろうか?
これが以前のように三人体制なら、めぐみと丈だけなのでさほど付きまとわれている感じはしないけど、4人もぞろぞろついてくるのはねえ……
しかも鉄也と純一は、ついこないだ知り合ったばかりだし……
かと言って、二人を外すと、仲間はずれしてるみたいになるからね。
何度も言うが、安易にキャラを増やしたのは失敗だったな、と。
せめて片方が女の子だったらなぁ……田山真美子さんとか。
……え? お前はそれしかないんかって? それしかないんですねえ、困ったことに。
いや、仮に加入するのがマミマミだったとしても、自分は断固三人体制を支持する。
田山さんは、ゲスト出演って手もあるからね。
それはともかく、勇介は、4年前の10月29日の出来事をありありと思い描く。
それはまだ科学アカデミア島で学んでいた頃、ケンプこと剣史がビアスに感化されておかしくなる前の話だった。

剣史「人間はバイオテクノロジーを使って、もっと進化できるはずだ、病気や怪我に負けない強化された人間にね、そうすれば人類には永遠の繁栄が約束されるんだぜ。俺はやる、アカデミアで勉強して必ずそれを実現させて見せる」
剣史が若者らしいひたむきさで自分の夢を語れば、
勇介「ふっ、そうか、俺の夢は人類の平和と未来のために宇宙開発することだ、俺もやるぜ、剣史」
勇介も眩しそうに空を見上げて自分の夢を打ち明ける。
剣史「ああ、どっちが先に自分の夢を実現するか、競争だ」
勇介「よし、今日は10月29日、アカデミアを卒業してたとえ何処にいようと、4年後の10月29日、必ずここで会おうぜ」
剣史「OK」
勇介とがっちりと握手を交わして約束する剣史。
今の二人からは想像もつかないが、かつて彼らは無二の親友だったのである。
サブタイトル表示後、

鉄也「冗談じゃないぜ、ケンプは純一のお姉さんと俺のアニキを殺した奴だ!! もし勇介さんがそんなケンプを信じたいって言うなら、俺はあんたを信じない」
純一「僕もだ!!」
勇介「鉄也、純一……」
非常識にも人の回想シーンに割り込んでくる二人を、「これが若さか……」とでも言いたげな目で見る勇介であった。
……と言うのは嘘だが、実際のところ、敵とは言え、4年以上前から付き合いのあるケンプのことで、つい2ヶ月前に知り合った若造たちにとやかく言われたくないと言うのが、勇介の偽らざる気持ちだったのであるまいか。
一方、当然剣史、いや、ケンプも4年前の約束を覚えていたが、それを思い出して勇介のように感傷的になったりすることはなく、

ケンプ「頭脳獣ギルヅノー、あいつがお前の標的だ」
それどころか、ギルヅノーなる頭脳獣を開発して、三次元ホログラムで作り出した勇介をターゲットに、勇介暗殺の訓練を行わせていた。
ケンプ「勇介、アカデミア島こそ、お前の墓場……明日こそお前の命日だ」
惚れ惚れするほどの腐れ外道ぶりであったが、それでも、ちゃんと約束を覚えていて勇介に会いに行こうとしているだけマシだったろう。
勇介にとって一番堪えるのは、ケンプがその約束を綺麗さっぱり、気持ちが良いぐらいにスカッと忘れてしまうことなのだから……
翌日の早朝、

朝焼けの中、赤味がかった琥珀色に彩られたアカデミア島の岬にひとり立つ勇介。
勇介「俺は最後の賭けをして見る……ケンプと一対一で決着をつけるためにも」
この画像を見ると、「自然は世界最高の画家である」と言う、誰が言ったか知らないが、多分誰か言ってるだろう金言を思い出さずにはいられない管理人であった。
一方、グラントータスでは、勇介がケンプに会いにアカデミア島に渡ったと知った鉄也と純一が、勇介への不信感を爆発させ、勇介たちとの訣別を宣言して出て行ってしまう。
めぐみ「鉄也、純一、お願い、待って!! どうしよう、丈、このままじゃライブマンがバラバラになってしまうわ」
丈「勇介のバカヤロウ……」
しかし、これも、つい最近仲間になったばかりの二人が抜けても、見てるほうからすると大して痛痒を感じられず、いまひとつドラマとして盛り上がらないんだよね。
今更言っても仕方ないが、鉄也と純一は、対ギガボルト戦のワンポイントリリーフキャラにすべきだったんじゃないかと……
あと、関係ないが、星博士の一人娘の役かなんかで、田山さんを準レギュラーで出して欲しかった。
え、お前は重ね重ねそれしかないんかって? ええ、残念なことにないんですねえ……

勇介がいつものように、名前忘れたけど、鉄也たちの兄弟の墓に花を供えて拝んでいると、背後にケンプがあらわれる。
ケンプ「勇介」
勇介「剣史、来たか」
ケンプ「お前もな」
勇介「俺は4年前、お互いに語り合った夢と情熱を忘れやしない」
ケンプ「俺もだ」
勇介「だが、お前はその夢を捨てたんだ!!」
勇介が激しい口調で糾弾するが、

ケンプ「違う、俺は夢を捨ててはいない」
ケンプ、その目に月形剣史だった頃の純粋さを微かに宿しながら反論する。
だが、それも束の間、
ケンプ「俺は科学的進化を遂げて、美獣ケンプになれる、真の天才として地球を支配し、永遠の反映をこの手に握る」

ケンプ「夢は間もなくかなう、ふっはっはっはっはっ……」
無論、そんな約束ごときでケンプが改心する筈もなく、抜け抜けと言ってのけると、いつものように、野望と狂気に取り憑かれた目をして、高笑いを響かせる。
勇介「剣史……お前の夢は捻じ曲がった」
ケンプ「俺の夢を邪魔するものは、死、あるのみ、頭脳獣ギルヅノー!!」

満を持して、全身これ武器の塊のような凶悪な頭脳獣を差し向ける。
ギルヅノー、いきなり目からビームを放ち、勇介の左腕を貫いて流血させる。
ついで、体当たりを食らって弾き飛ばされ、小さな倉庫のような建物の屋根を突き破って落ちるが、

その建物もビームで爆破され、

間一髪で窓から逃げ出す……と言うより、爆風で吹っ飛ばされているようにも見えるが、なんとか命拾いする勇介。
ちなみに言うまでもなくスタントだが、ワイヤーで引っ張られているようだ。

ケンプ「いいザマだな、勇介」
勇介「黙れ、ケンプ、俺がここに来たのは、かつて夢を語り合った友として一対一で決着をつけるためだ」
物陰に潜んで戦いを見守っていた鉄也と純一は、勇介の言葉を聞いてふんぎりをつけ、トドメを刺そうとしていたギルヅノーにWライダーキックを放つ。
勇介「鉄也、純一……」
純一「本当の気持ちが良く分かったよ」
鉄也「俺たちは誤解してたんだ……ケンプ、お前が勇介さんを葬るために来たように、俺たちはお前を叩きのめし、アニキと麻理さんの仇を討つために来た」
ケンプ「黙れ、スプリットカッター!!」
ケンプ、ブーメランのような武器を投げ飛ばすが、今度は変身済みのライオンとドルフィンがあらわれ、剣で弾き返す。
ライオン「勇介、頭脳獣は俺たちに任せろ」
勇介「よし!! お疲れしたーっ!!」
勇介はそのままグラントータスに帰り、それからしばらくみんなから口を利いてもらえなかったそうです。
じゃなくて、
勇介「よし!! ライブマン!!」
鉄也たちと一緒に変身し、ギルヅノーやジンマーは仲間に任せ、自分は美獣ケンプと一対一で激闘を繰り広げる。
だが、その途中、ギルヅノーが撃ったビームで吹っ飛ばされ、ファルコンもケンプも海に落ちて、それっきり行方不明となってしまう。
指揮官を失ったギルヅノーは一旦ヅノーベースに戻るが、
ビアス「ギルヅノー、一刻も早く勇介を探し出し、射殺しろ、状況によってはケンプもろともでも構わん」
ビアスは冷酷な命令を下すと、

左手からビームを放って、その場でギルヅノーを自分の直属の頭脳獣に改造してしまう。
意気揚々と再出撃するギルヅノーを見送りながら、
アシュラ「ケンプまでも……恐ろしいお方だ、ビアス様は」
マゼンダ「戦いに犠牲はつきもの、お前も私もケンプの心配をしている暇はない」
CM後、自分がアカデミア島の近くにある無人島(猿島にしか見えんが)の岸辺に打ち上げられていることに気付く勇介。

勇介「ケンプ……」
ケンプもすぐそばに倒れていたが、まだ意識が戻らず眠っていた。
勇介、よろよろとケンプの上に屈み込み、
勇介「ケンプ、お前が卓二と麻理を殺し、平和を願う人々を苦しめた罪は重い!! お前に救いはない、死をもって罪を償うんだ」

ケンプ「うっ……」
勇介、眠っているケンプの首に手を当て、その場で絞め殺そうという、およそヒーローらしからぬ挙に出るが、途中でハッと我に返り、

勇介「出来ない、気絶して無抵抗な人間を葬るなんて、俺には出来ない!!」
自分のやろうとしていたことに恐れをなしたように、声を震わせて割りとでかい声で叫ぶ。
ここで、
勇介「出来ない、気絶して無抵抗な人間の唇を奪うなんて、俺には出来ない!!」
などというBL的なギャグを嵌め込もうとしたが、うまくいかず、断念した管理人であった。
この作品、前作と差別化を図るためか、恋愛要素が極端に少ないので、余計そんな妄想に走ってしまうのだろう。
せいぜい、コロンとジンマーの恋とか、勇介のルイへの片思いとか、それくらいだもんね。
まあ、「ジェットマン」みたいに任務そっちのけで恋愛ごっこに現を抜かすよりはマシだが、あまりに真面目過ぎるのもどうかと思う。
なので、アシュラがめぐみに惚れるとか、ボルトの新幹部として悪の天才美少女(演・田山真美子)を登場させ、彼女が丈に惚れるとか、メインストリームではなくアクセント程度にそう言う要素を加えたほうが、ドラマとしての奥行きが増したかもしれない。
え、お前は死ぬまでそれしかないんかって? ええ、死ぬまでないんです。
やがて、ケンプも目を覚ます。
勇介の姿に気付くと慌てて飛び退き、
ケンプ「勇介!! 何故だ、気を失っていた俺を殺さなかった?」

勇介「ケンプ、俺は正々堂々と戦って貴様を倒す」
一発芸「生まれたての小馬」みたいな構えを取りながら、改めてケンプに宣言する勇介。
結局また戦いとなるが、剣を持っているケンプの方が当然有利で、

勇介の体に馬乗りになると、思いっきり剣を振り下ろそうとするが、
マゼンダ「やれっ!! 何をグズグズしているんだ?」
と言うマゼンダの叱咤の声に、ふと横を見ると、そこにギルヅノーがいてこちらにビームを撃とうとしているところだった。
二人は左右に飛んで間一髪でビームをかわすと、
ケンプ「ギルヅノー、血迷ったか?」

マゼンダ「ギルヅノーは血迷ってなどいない、ビアス様の命令により、勇介抹殺のためには手段を選ばぬ、狙撃獣になったのだ」
と、ギルヅノーの前にマゼンダがあらわれ、冷たく言い放つ。
なんだかんだで、マゼンダって綺麗だよね。
ああ、ボルトの新幹部の悪の天才美少女(演・田山真美子)が、サディストのマゼンダにネチネチいびられているところが見たかった……
え、いい加減にしろ? はい、いい加減にします。
これにはさすがのケンプも衝撃を受け、

勇介「ビアスはお前のことを道具にしか思っちゃいない」
ケンプ「黙れ、黙れーっ!!」
勇介の追い討ちに、動揺を隠せず喚き散らす。
ただ、ケンプが有利に戦いを進めているタイミングでの攻撃は、逆に勇介を助ける結果となっていて、ビアスの作戦が成功しているかどうかは疑問である。

マゼンダ「あっはっはっはっ……あーっはっはっはっ」
ギルヅノーの攻撃で吹き飛ばされる勇介を見て、いささか頼りない哄笑を響かせるマゼンダ。
相変わらず、来栖さん、大笑いするのが苦手のようだ。
剣史「勇介は必ず俺が倒す!!」
その後、再び岩場に出て、ギルヅノーとマゼンダに追い詰められた勇介であったが、

ケンプ「マゼンダ、ギルヅノー、勇介の命は俺がこの手で奪う、邪魔するな!!」
勇介「ケンプぅ」
今度はケンプが割り込んでくる。
ま、こう言っちゃなんだけど、ケンプたちが功名争いをせずに一致団結して戦っていれば、とっくの昔にライブマンを倒せてると思うんだよね。
考えれば、基本、指揮官+頭脳獣+戦闘員しか戦いに参加しないボルトと、常に(コロン以外の)全ての戦力を投入しているライブマンとでは、後者が勝つに決まってるんだけどね。
ケンプ「勇介、あの世から、我々の進化と繁栄を見るが良い」
だが、ここで漸くめぐみたちが駆けつける。
ケンプ「もう一歩のところを!!」
勇介「ケンプ、貴様こそ人類の平和な未来を地獄から見るが良い!!」 勇介、お返しとばかり、戦隊ヒーローにしてはドスの利いたタンカを切ってから、ライブマンに変身する。
……
私も、是非「人類の平和な未来」が見たかったのだが、どうやらそれは幻だったようである。
ここからラス殺陣となるが、怒りに燃えるファルコンは美獣ケンプを圧倒し、
ファルコン「これがお前の誇る天才最高の力かぁーっ?」
ケンプ「なにぃぃぃ」
ファルコン「その思い上がり、叩きのめしてやる」

ファルコン「ファルコンセイバー!! ファルコン○○○!!(聞き取れない……ダイブ?)」
ジャンプして、渾身のファルコンセイバーを振り下ろし、

ケンプ「ぐわわわわーっ!!」
ケンプの体を存分に斬る。
まさか、早くもケンプが死ぬのかと思いきや、トドメを刺される直前、ビアスの放った転送ビームでヅノーベースに連れ戻されて、九死に一生を得る。
戦いのあと、

ケンプ「……」
ビアス「天才にあるまじき惨めな姿……見苦しかったぞ!!」
転送ボケから回復していないケンプの耳に、ビアスの厳しい叱声が矢のように突き刺さる。

ケンプ「ビアス様……」
ビアス「その屈辱、死をもって晴らしてやろうと思ったが……」
ケンプ「ビアス様、この屈辱、勇介を抹殺することによって、必ず、必ず晴らしてご覧に入れます」
ビアス「戦え、死力を尽くし、どちらかが滅びるまで……」
一時はビアスに捨石にされたかと動揺したケンプであったが、ビアスに危ないところを助けてもらったことでその迷いも消し飛び、改めて勇介打倒を誓うのだった。
それにしても、ビアス様、下手すればケンプに離反されかねないような非道な真似をしておきながら、ケンプのプライドを手玉にとってその怒りを巧みに操り、勇介への闘志に転化させるあたり、並大抵の人心掌握術ではない。
以上、終わってみればストーリーらしきストーリーもなく、ひたすら勇介とケンプの戦いが描かれるだけで、女っ気もチラもない、ハードだが索漠としたエピソードであった。
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