第32話「日本名作民話シリーズ! さようならかぐや姫 竹取り物語より」(1974年11月15日)
冒頭、城南スポーツクラブで、ひとりの若い女性がトランポリンの上で軽やかに舞っている。
体操選手のような見事な動きで、ゲンも猛も感心したように見とれている。
ゲン「良かったよ、さあ、次!!」
演技を終えた女性、中島弥生をざっくり褒めるゲンだったが、

弥生を演じるのは、70年代特撮ヒロイン四天王のひとり、小野ひずるさんであった!!
だが、弥生は、演技をしている時から自分に訴えかけてくる得体の知れない何かに心を奪われ、気もそぞろであった。

センターの屋上へ出て、煌々と輝く満月を見詰めながら、
弥生「あなたは誰? 私に何の用なの? 毎月、毎月、私の邪魔をしないで下さい」
どうやら満月の夜だけ、月から何らかのメッセージが彼女に届けられ、そのことで弥生はいささかノイローゼ気味になっているらしい。
その後、ゲン、猛、百子がセンターの中を走り回って弥生の姿を探している。

ゲン「いないのか?」
猛「ええ、一時間ほど前に屋上で見かけた人がいるだけです」
百子「ジーッと月を見詰めてたそうよ……この二、三ヶ月、なんとなく沈みがちだったの」
ゲン「もう一度探してみよう」
ちなみに前年の「仮面ライダーV3」23話では、小野さんがレギュラー、丘野さんがゲストとして共演しているが、今回は立場を変えての共演となる。
もっとも、百子さんの出番はこれだけで、二人が直接絡むシーンがないのが残念だ。
次のシーンでは、ゲンが、それこそ昔話に出てきそうな、竹林に囲まれた、藁葺き屋根の弥生の実家を訪ねている。

ゲン「なにしろ、スポーツセンターに来る人には責任があるもんですから、それで伺った訳なんです」
父親「だいじょうぶじゃ、うちの弥生に限って間違いありませんよ」
ゲン「ええ、でも、この二、三ヶ月、なんとなく沈みがちだなんていう仲間もいるもんですから」
母親「そりゃ、なんてったって年頃の娘だから、時にはつまらんことを考えて、沈むこともありますよ」
だが、絵に描いたように純朴そうな老親たちは、こともなげに言って心配する素振りは見せない。
と、ダンから月に異常が起きたと言う知らせが入ったので、ゲンはMACステーションへ向かうため、その家を後にする。
土間には坊主頭のBMI高めの太郎と言う若者がいたが、
太郎「弥生のどこがおかしいと言うんじゃ、なあ、おっとう?」
父親「ああ、どこもおかしいとこねえ」

太郎「おっとう、おっかあ、弥生はおらの嫁っ子になるんじゃな?」
心配そうに確かめる太郎に対し、

母親「そうとも、そうとも、あの子はお前の嫁になるんじゃ」

太郎「うん!!」

太郎「月がなんじゃあ」
わが意を得たりとばかり頷いた後、外へ飛び出すと、
太郎「こら、月ぃ、おらの弥生に妙な真似したら、承知しねえぞ!!」
夜空に浮かぶ月に喧嘩を売る、ちょっと頭が気の毒な太郎であった。
ところで、以前のレビューでも書いたと思うが、この太郎ってこの夫婦の息子なんだろうが、それが同じ両親の娘……つまり、妹の弥生と結婚しようとしているのが、いささか引っ掛かる。
まあ、後に弥生は養女だと判明するから、血統的・法律的には問題ないが、そうすると、弥生は自分が養女であることを知らされて育ったことになり、なんとなく釈然としない。
なので、この太郎は彼らの息子ではなく、近所に住んでる若者にしといたほうが妥当だったんじゃないかと思う。
つーか、小野ひずるさんがなんでこんな奴に抱かれなきゃならんのだ? ふざけるのも大概にしとけよ。
ちなみに、この人、「魔女先生」16話で、道場に来た教頭先生を門前払いしてた棒読み空手マンだよね。

それはさておき、車を走らせていたゲンは、前方に他ならぬ弥生が立って、夜空を見上げているのに出くわす。
いやぁ、スカートはそれほど短くないけど、それを補って余りある、白のハイソックスの可愛らしさ!!

ゲン「弥生さん、何処行ってたの、みんな心配してたんだよ」
弥生「……」
ゲン、車から降りて弥生に話しかけるが、弥生はまじまじとゲンの顔を見詰めるだけ。
ゲン「こんな淋しい道をひとりで歩いちゃいけないな、家まで送るよ」
だが、ゲンの申し出に答えるより先に、前方でまばやい光が弾けたのを見ると、弥生はそちらに向かって突然走り出す。

で、これも以前のレビューで貼ったと思うが、勢い良く走ったのでスカートがめくれ、二枚目の画像、左太ももとスカートの間にうっすらと白い筋のようなものが見えるが、これが由緒正しきパンチラではないかと管理人は睨んでいる。
まあ、そもそもパンチラと言うのは、こういう肉眼では捉えきれないような、一瞬の露出を言うのであって、「スピルバン」のダイアナや「チェンジマン」のさやかのような見えて当然のパンチラは、本来は邪道に属するものなのである。
無論、邪道は邪道で管理人は大好きだが。
それはともかく、竹林の中に踏み込んだ弥生の頭上から、月から放射される神秘的な光が差し、

声「王女様、いよいよ明日、十五夜にお迎えに上がります。この15年間、王女様のお命を狙う悪い奴らと私たちは戦い続け、とうとう勝ったのです」
どこからか壮年の渋い男の声が語りかけ、さらに、前方から白い煙が生き物のように弥生に向かって押し寄せてくる。
弥生「私は地球で生まれ、地球で育った普通の女の子よ、なんのことだか分からないわ」
声「無理もございません、生まれ落ちられるとすぐ地球にお移ししたのですから……しかし王女様、この私の声が聞こえると言うことは人間ではないということなのです。あなたは我々月の中心に住む月族の女王になられるかたなのです」
弥生「いや、いやです。私は人間の子よ、この地球でお嫁に行って赤ちゃんを産む。だから私を迎えになんて来ないで……そんなことしたら、私、死んじゃうから」
何もそこまで先走らなくても良いと思うが、弥生は自分の人生設計を声高に訴えて、「声」の招きを激しく拒絶する。

ゲン「よさないかっ、何の関わりもない子に変なこと言うな!」
と、見兼ねたゲンが弥生の前に立ち、得体の知れない相手に向かって吠えるが、
声「王女様、明日必ず迎えに参ります。用意してお待ちになっていてください」
煙はゆるゆると引っ込んで行き、同時に神秘的な月からの光も途絶える。
弥生「おおとりさん!!」
ゲン「だいじょぶ、誰かが仕掛けをしていたずらしてるんだよ」
弥生「でも怖いんです、この半年の間、満月が近くなると変な音が聞こえるんです」
ゲン「何もかも気のせいだ、だって、月には生き物は何もいないんだよ」
弥生「そう、そうよね」
ゲンに諭されて、やっと安堵の笑顔を見せる弥生であったが、無論、それで不安が完全に払拭された訳ではない。
しかし、ゲンなら声を聞いただけで相手が宇宙人かどうかぐらい分かりそうなものだが、ことさらなんでもいなことのように処理しようとしているのは、いささか無責任のように聞こえる。
つーか、月には夕子たちが住んでるんじゃなかったっけ?
弥生を家まで送り届けた後、ゲンはやっとMACステーションに戻る。
ゲン「すいません、遅くなり……」
ダン「バキヤロウ!! 今まで何をやってたっ?」 ゲン「へぶっ!!」
いきなりダンに頬骨が砕けるほどぶん殴られるゲンであったが、嘘である。
ダンがそんな鬼教官だった、どこか郷愁を誘われるようなあの時代は、もう終わってしまったのである。
隊員たちは、月のレーダー反応を注意深く見守っていた。
ゲン「月の裏側じゃないですか」
ダン「凄いエネルギーだ。大爆発を起こして月が跡形もなくなるかもしれんな」

白川「隊長、コンピューターによりますと、15年前に月面に全く同じ現象が現れてるんです」
ゲン「15年前? あの子も確か15歳だ」
ダン「?」
ゲン「隊長、かぐや姫ですよ」
ダン「かぐや姫?」
ゲン「実はですね……」
ゲンは弥生と、さっき聞いた「声」のことを他の隊員たちに話す。
しかし、弥生って15歳なの? どう見ても18か19くらいだが。
と、月の裏側に赤い光点が瞬き出す。
白川「噴火でしょうか?」
ゲン「そんなばかな、月の火山は全部死火山で、活動してないはずだ」
ゲンが断言した直後、

月の火山が思いっきり噴火する。
ゲン「……」
ダン「……」
白川「……」
これが世に言う、
「ゲンの面目丸潰れ事件」(1974)である!!
さらに、噴火口の中から、岩石のボールのような巨大な物体が飛び出し、地球に向かって飛んでくる。
岩石にはちょっとユーモラスな二つの目までついていた。
ゲン「怪獣のようですね」
ダン「うん」
白川「現在のままの軌道ですと、落下地点はAX501地点、明日の午後8時前後です」
ゲン「弥生さんの家の近くだ」
ゲンがつぶやくと、佐藤隊員も考え深げに、

佐藤「午後8時といえば、『8時だョ!全員集合』が始まる時間だ」
ゲン「……」
じゃなくて、
佐藤「午後8時と言えば、月がちょうど昇りきった時間だ」
ゲン(あいつが月よりの使者……)
翌日、太郎は家の戸や窓に外側から板を打ち付け、何者も入らせまいとする。
あっという間に夕方になり、MACがロディーで応援に駆けつける。

ゲン「太郎さん、大丈夫、MACが全力を上げて弥生さんを月なんかへ遣りはしない」
太郎「弥生はおらの嫁っ子になるんじゃ」
ゲン「……」
ゲン、発作的に太郎を射殺したくなったが、なんとか我慢する。
射殺するのはいつでも出来るからである(註・違いますっ!!)
だが、弥生の両親はすっかり気弱になっていて、
父親「ああ、もう駄目だ、うう……」
ゲン「お父さん!! だいじょぶですよ」
父親「月から来た子は、また月にけえってしまうんだ」

弥生「お父さん!!」
父親の衝撃の告白に、母親と抱き合って泣いていた弥生が思わず叫ぶ。

父親「弥生、黙っていて悪かった」
母親「お父さん、何を言うんだね?」
父親「仕方ねえ、これもみんな運命だ。逆らえやしねえ」
父親によると、15年前、満月の夜、竹やぶに稲光が落ちて爆発し、翌朝、その場所に行ったところ、

父親「びっくりしたよ、生まれたばかりの赤ん坊が……おらたち夫婦は女の子が欲しいと思ってた頃で、はー、これぞ、天からの授かり物と……」
まさに「竹取物語」そっくりの、弥生の出生の秘密であった。

で、その時、赤ん坊のそばに落ちていたのが、いつも弥生がぶら下げている三日月形のペンダントなのだった。

父親「それが弥生なんだ……うう」
弥生「お父さん!!」
むせび泣く父親の腕に縋りつき弥生タンが可愛いのである!!
ゲン「弥生さん、お父さん、お母さん、15年もの間、弥生さんは人間としてこの地球に暮らしてきたんだ、何処にも帰ることなんかないんだ」

弥生「……」
ゲンの言葉に励まされたように、弥生は涙に濡れた目を上げる。

さて、中天に月が懸かるころ、いよいよ隕石怪獣キララが地上に降下し、障害物を押し潰しながら弥生の家目掛けて驀進する。

弥生の家の周りを固めていたMACが攻撃すると、人型に変形して立ち上がり、頭から蒸気を噴射する。
なかなかユーモラスな造型の怪獣である。

ついで、お腹のクレーターのようなくぼみから、緑がかった金色の不思議な光を放つ。

その光を浴びた弥生は、

一瞬で平安貴族の女官のような服装になってしまう。
と、同時に、何処からか雅やかな和楽の調べが聞こえてくる。
弥生は両親の泣き叫ぶ声を背に、床を滑るように進む。

外に出ると、いつの間にか、レッドカーペットのように緋毛氈が家から怪獣に向かって敷かれていた。

既に月の人間として覚醒しているのか、無表情でキララの姿を見上げる弥生。
まあ、改めて言うことでもないが、小野さんは美しい!!
正直、今回は彼女の美貌だけで成り立っているようなエピソードなのである。

キララ「王女様、お迎えに上がりました。お迎えに参りました。さあ、王女様、月族のキララでございます」
キララの呼びかけに、弥生は無言で、これまた滑るようにして布の上を進んでいく。
このキララのおちょぼ口がめっちゃ可愛い……
だが、このまま手を束ねて弥生を連れ去られたのでは番組にならないので、ゲンが半ば強引にレオに変身し、キララに戦いを挑む。
弥生「戦いをやめてください、行きます、私が月に行きます」
母親「弥生!!」
佐藤隊員「だいじょうぶだ、レオは必ず勝つよ!!」
キララの攻撃を連続バク転でかわしたあと、
レオ(ああ、不可抗力のふりして高架橋の上に大の字で寝そべるのってサイコーだなぁっ!!) ……と言うのは嘘だが、今回、レオが余計なちょっかいを出したために、被害が広がったのは事実である。
さらに、団子状に変形したキララに、無防備な股間を何度も踏みつけられて悶絶するレオ。
キララ「無駄な抵抗はやめろ、王女様は月に帰ると言っておられる」
レオ「生みの親より、育ての親だ。彼女は地球で育ったんだ」
キララ「ばぁか、生まなきゃ育てられないんだ」
反論するレオに、頭から湯気を放って言い返すキララ。

レオ、ウルトラマントでキララのパワーの源であるお腹のクレーター(噴火口)を覆い、得意の閃光攻撃を封じ込める。
キララの上に馬乗りになってボコボコにしていたが、
弥生「やめて、やめてください」
レオ「……」
レオも既に相手が戦意を失っているのに気付き、

立ち上がると、おずおずと差し出された怪獣の両手を掴み、優しく起き上がらせてやる。
なかなか清々しいシーンであったが、怪獣はぺこりと頭を下げて帰るふりをするが、再び何事もなかったようにレオに向かっていくのだった。
うーん、毎回言ってる気がするが、アクションシーンが長過ぎるんだよね。
戦いの決着はなかなかつかなかったが、

キララが目から放った青白いビームが弥生の胸のペンダントに当たると、
弥生「ああーっ!」
それが砕けて落ち、弥生は一声悲鳴を上げて、その場にくたっと倒れてしまう。

意味もなく貼りたくなる、小野さんの美貌。

母親「あのペンダント、あれが壊れたんで、心を月に持ってかれたんですよぉ、おおお……」
老母が両手で顔を覆って嘆き悲しんでる後ろで、
ゲン「終わりました」
ダン「お疲れサン!!」
とでも言いたげに、ダンと、素早く変身を解いて戻ってきたゲンが顔を見合わせて頷き合うのが割りとツボである。

再び、意味もなく貼りたくなる小野さんの美貌。
やっぱりこの手の話の成否って、つまるところはゲストヒロインのキャスティングに掛かってるんだよね。

弥生「……」
と、月から神秘的な光が弥生の体に降り注いだかと思うと、死んだと思われていた弥生がぱっちり目を開き、立ち上がると、

幽玄な琴の調べをバックに、扇を手にして優雅に舞ながら、緋毛氈の上を進んでいくと言う、幻想的なシーンとなる。
父親「弥生」
母親「私たちを見捨てないで!
せめて養育費だけでも払って!!」

両親の悲痛な叫びにも心を動かされず、弥生はあくまで美しくたおやかに舞いながら、どんどん二人から離れていく。
いやぁ、ほんと、絵になるお方や。
かぐや姫役にはこれ以上ないというキャスティングである。
え、沢口靖子? 誰それ?

弥生、最後は月から注がれるオレンジ色の光の中に入り、振り向いて一礼してから、キララと一緒にエスカレーターを昇るように、光の階段を昇って行く。

振り向いてこちらを見下ろしている弥生の映像で幕となるが、終盤の映像は、中川監督の傑作「地獄」(1960)のラストシーンに通じるものがある。
多分、前のレビューでも同じこと書いてると思うが。
でも、さっきのギャグじゃないけど、弥生が15年間手塩にかけて育ててもらった両親のもとから、恩返しもせずに去ってしまうと言うのは、さすがに人としてどうかと思う。
まあ、オリジナルと違って両親には太郎と言う息子がいるからまだ救いがあるけど、そのかわり、オリジナルではかぐや姫のお陰で幸運が続いて家が金持ちになるんだよね、確か。
だから、忘恩の徒と罵られても仕方のない弥生の所業であったが、これも以前書いたと思うが、弥生はもともと太郎と言う肥満児と結婚させられるのを生理的に嫌悪しており、月からの突然の招きは弥生にとっては勿怪の幸い、渡りに舟の好都合な出来事だったのではあるまいか。
以上、終わってみれば、「弥生が月に帰る」と言う、ただそれだけの内容で、意外性や捻りと言うものが全くないのが残念だが、小野さんの美貌がそれを補って余りある佳作であったと言えよう。
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