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「白い素肌の美女」~江戸川乱歩の「盲獣」(リライト版) その2


 一方、明智は小松ひとみのアパートを訪ねる。

 ひとみは寝ていたらしく、ガウン姿だった。

 明智「失礼、学院の方へ伺いましたら、お休みだと聞いたものですから」
 ひとみ「さっき電話で連絡がありました、かぁぜを引いてしまいまして……三千子さん、まだ見付かりませんの?」
 明智「は……」

 などとやってると、ノックの音がして、若い男が入ってくる。

 
 蕗屋「あ……風邪って聞いたもんだから、あとでいいです」

 だが、男はひとみの顔を見ると、何か不思議なものでも見たように固まり、逃げるように帰っていく。

 
 ひとみ「蕗屋シンイチさん、学院のピアノの先生です」
 明智「そうですか……」

 さっきの態度から見て、二人が恋仲であることは明らかであったが、明智はそれ以上追及せず、

 明智「ところで、三千子さんの行方に何か心当たりありませんか」
 ひとみ「さあ、あの晩はお喋りをして帰ったのは10時ごろでしたでしょうか」

 その夜、とあるデパートの花嫁衣裳売り場で、赤い唇の尼僧が白無垢のそばに立っているのを警備員が目撃すると言う事件が起きる。

 
 客「きゃーーーっ!!」

 翌日、その花嫁衣裳を見ていた親子連れが、マネキンの左腕が、切断された人間の腕だと気付いて絶叫する。

 その指にエメラルドの指輪が嵌めてあったと聞いた明智は、

 
 山野邸で見た、三千子の写真を思い出す。

 さすが明智さん、「捨て目」が利くと言う奴で、目にしたものはどんな細かいことでも記憶しているのである。

 どうでもいいが、真理子さん、この髪型で損してるよなぁ。

 明智は小林少年と共に山野家に行き、百合枝立会いのもとで、三千子の身の回りのものを調べさせてもらう。

 果たして、そこに付着していた指紋と、生腕の指紋が一致する。

 
 小林「同じですか」
 百合枝「あの、同じって?」

 そこへキミさんが小包を届けに来る。

 百合枝「後にして頂戴」
 明智「あ、ちょっと……」

 明智は慌ててキミさんを呼び止め、ボトルでも入ってるような細長い小包をためつすがめつし、

 明智「差出人の名前がありませんね……すぐに開けた方が良い」
 百合枝「どうして」
 明智「どうしてもですっ!!」

 何気に笑えるやりとりだ。

 明智が許可を得てテキパキと包装を解くと、中には、黒い蓋の細長い箱が入っていた。

 
 百合枝「はっ」

 案の定と言うべきか、箱の中には、あの左腕と対をなすと思われる、切断された右腕が麗々しく収められていた。

 百合枝がショックのあまりベッドに倒れ込むと、鉄心が忠実な家来のように飛んでくる。

 鉄心「奥様、どうなさったんです? 貴様、奥様に何をしたんだ」
 百合枝「鉄心!!」

 百合枝、二人に支えられながらなんとか立ち上がると、

 
 百合枝「明智先生、まさか、まさか……」
 明智「残念ながら、塩鮭じゃありませんでした」
 百合枝「ああっ……それだけを楽しみに生きてきたのにぃいいいっ!!」

 じゃなくて、

 明智「残念ながら、お嬢さんは何者かに殺されたものと思われます」

 明智がズバリ指摘すると、背後で山野の呻き声が聞こえる。

 振り向けば、いつの間にか山野が部屋の入り口に立って、物狂おしい目で娘のものと思しき生腕を見詰めていた。

 
 山野「ああっ」
 百合枝「あなたっ」
 キミ「体に障ります」
 山野「放せ、放せ!!」
 山野「三千子ーっ!!」

 百合枝とキミさんが、二人がかりで山野を寝室へ連れ戻す。

 その後、明智は鉄心と庭を散歩しながら、事件についての意見を聞いてみる。

 明智「何か気付かれたことありませんか、三千子さんが殺されたことで」
 鉄心「知りませんね、私は世を捨てた人間ですよ、20年もとうの昔に……」
 明智「20年前?」
 鉄心「ちょっとした事故がありましてね、それ以来世の中のことはもうどうでも良くなった。人が何をしようがされようが、一切興味はありませんね」
 明智「そうでしょうか……ここからは眺めもさることながら、あの二階の奥の部屋もよく見えるようですね」
 鉄心「何が言いたいんです」
 明智「別に……」

 
 鉄心「確かにあの部屋は奥様の部屋だが、夜な夜な私がセレナーデでも掻き鳴らしているとでも言うんですか、ふっふっふっふっ」
 明智「……」

 明智の疑念を、可愛いワンコを撫でながら一笑に付す鉄心だったが、何気なく漏らした一言が、明智にその素性を見破られる手掛かりとなる。

 ひとまず山野家を後にした明智だったが、入れ違いに、あの蕗屋と言う男が人目を憚るように山野家に入っていくのを見る。

 
 蕗屋「ご存知でしょう、芸術って奴は金が掛かるんですよ、ま、ちょうど留学したいと思っていたときなんです、それに僕が海外に留学してしまえばご安心でしょう」
 山野「分かった、留学の世話をしよう」

 山野と二人きりで対座し、分かりやすいゆすり行為を働く二代目バルイーグル。

 山野、どんな弱みを握られているのか、ほとんど言い成りに金を渡す。

 だが、その会話をお茶を持ってきた百合枝に聞かれてしまう。

 その後、蕗屋が山野が切った1000万の小切手を路上でニヤニヤしながら見ていると、明智が後ろから声を掛ける。

 
 明智「物騒ですよ、こんなところでそんな大金……」
 蕗屋「……」
 明智「蕗屋さんですね、先日、ひとみさんのアパートでお目にかかった明智です」
 蕗屋「ああ」
 明智「よくお会いしますねえ」
 蕗屋「偶然ですよ、第一、あなたに関係ないでしょ」

 さっさと行こうとする蕗屋を通せんぼするように回り込むと、

 明智「お見舞いですか、それにしてはお土産が小切手とは」
 蕗屋「これですか、これはね、留学の費用ですよ」

 明智の追及に、蕗屋は開き直って言い放ち、足早に立ち去る。

 緩い下り坂を降りていく蕗屋の背中を見ながら、

 明智「小林君、彼の周辺を洗ってくれないか」
 小林「はい」
 明智「文代君と手分けして、彼と山野家、それにひとみさんとの関係だ」

 
 と言う訳で、早速文代さんが山野文化学院に大学生として潜り込むこととなる。

 物怖じしない文代さん、手当たり次第に学生に声を掛け、必要な情報を掻き集める。

 それによって、三千子とひとみが、蕗屋を巡っていわゆる三角関係にあったことが判明する。

 文代「元々はひとみさんの恋人だったのを三千子さんが強引に奪ったらしいんですよね」

 明智は山野家に行き、百合枝にそのことを質すと、百合枝はあっさり事実だと認める。

 明智「しかし豪勢なものですね、餞別代りに1000万円とは」
 百合枝「1000万円?」

 明智が世間話のようにつぶやくと、百合枝が弾かれたように振り向く。

 明智「ご存じなかったんですか、蕗屋氏にお渡しになった小切手」
 百合枝「ええ……」

 明智、山野に会わせて欲しいと頼むが、百合枝は頑なに拒む。

 百合枝「確かにあれは留学の費用の足しにと餞別代りに与えたものです、蕗屋先生は技も心も立派なピアニストです。ですからそれを後援するのは私どもの務めですわ」
 明智「……」

 山野を弁護するように空々しい言葉を並べる百合枝の横顔に、明智は厳しい眼差しを注ぐ。

 百合枝が、明智に何か隠し事をしているのは確かであったが、その具体的なことまではさすがの明智さんにも分からない。

 事務所で事件について話し合っている波越たち。

 
 小林「最後に三千子さんを見たのは小松ひとみなんですから、僕は犯人は彼女だと思うな……いいですか、二人は蕗屋のことで激しく言い争ったんです、そしてですね……」

 小林少年の推理に合わせて、二人が言い争った挙句、ひとみが石膏像で三千子を殴り殺す様子が再現される。

 文代「でも、死体はどうしたの?」
 小林「問題はそれなんだよな」
 明智「死体は恐らく古いピアノの中に隠されて運び出されんだろう」

 小林少年の代わりに、明智がお茶を啜りながら独り言のように答える。

 が、大昔から指摘されているように、ピアノの中に人は隠せないので、明智の推理には無理がある。

 
 波越「ようし、犯人は分かった」
 明智「いや、ちょっと待って下さい、私は小松ひとみの犯行だとは断定してませんよ」

 結論を急ぐ波越を、明智がやんわりとなだめると、

 波越「うん、そうなんだよね、いくら聞き込みをやっても彼女の悪い評判なんてひとつも出てきやしない。優しくて思いやりがあって地味で控え目で、誰もケチをつけるものなんかいやしないからね」

 波越も、むしろ納得したように引き下がる。

 小林「猫被ってるのかもしれないでしょ」
 文代「それ、おおあり名古屋のコンコンチキチキ!!」

 小林少年の言葉に、我が意を得たりとばかり、意味不明の戯言を叫ぶ文代。

 ついに発狂したのかと思いきや、

 文代「子猫はどうでもいいの、猫を被った大猫がいますよ、皆さん、山野百合枝、私は断然犯人として推薦しちゃいます」
 波越「山野夫人ねえ」

 小林少年、聞き捨てならぬと言う顔で、依頼人である百合枝が犯人の筈がないと訴えるが、

 文代「これまでだって何食わぬ顔した依頼人が、実は犯人だったって言うケースが何度もあったじゃないですか」

 文代はそんな常識論を一蹴すると、百合枝には財産と言う確かな動機があると言い、自分の推理を滔滔と披露する。

 
 文代「彼女は義理の娘とは上手くいってなかった、それに目の上のたんこぶをなくしちゃえば、なんと財産独り占めじゃないですか」

 文代の台詞に合わせて、今度は百合枝が三千子を殴り殺す様子が再現される。

 でも、文代は一般論で軽く片付けているけど、犯人なのにわざわざ明智を呼び出して依頼すると言うのは、やはりどう考えても変である。

 一方、一応思考能力を持っている波越は、山野が犯人だと言い、最近臥せっているのは娘を殺したことへの罪悪感からだと指摘する。

 で、意外なことにその推理に明智が同意を示す。

 明智「私もそれはちょっと考えたんですがね」
 波越「そう思うだろ、そうだよ!!」

 百万の援軍を得た勢いで、波越も、

 
 「なんかムカつくから」と言う理由だけで、山野が三千子を殴り殺すシーンを思い描く。

 登場人物すべてに犯人の可能性があるという、これは原作(一寸法師)どおりの展開なのだが、別に家庭内暴力を振るうわけでもなく、単に素行不良でワガママと言うだけで、自分の可愛いひとり娘を殺す親はいないだろうとは思う。

 しかも、山野のような地位も分別もある紳士が、怒りに任せてそんなことをするとは到底考えられない。

 られないのだが、

 波越「うん、これで決まりだなぁ」

 何の証拠もないのに、山野が犯人だと決め付けてしまう波越であった。

 さすが、警視庁が誇る「冤罪製造マシーン」だけのことはある。

 明智は波越の推理については(その価値もないと思ったのか)論及せず、

 
 明智「しかし、私はどうも、謎の尼僧が気になりましてね……あの尼僧は誰なのか、それとも誰かの変装なのか……この事件を解く鍵は、どうもその辺にありそうですね」

 さすが、明智、余人とは全く別のところに着眼していたが、今回に限ってみんな明智に倣え右することなく自説に固執し、

 小林「変装ならやっぱりひとみだな」
 文代「断然、山野百合枝……」
 一同「……」
 文代「どうして美人だと甘くなっちゃうの、男の人たちってぇ」

 文代、誰も自分の推理に賛同してくれないので、じれったそうに叫ぶと、明智が咥えていた煙草を毟り取り、

 文代「以後、禁煙!!」
 明智「……」

 腹立ち紛れに無情な宣告を下す。

 明智、例の山寺に行き、何度も声を掛けるが、何の反応もない。

 と、近くで赤ん坊をあやしていた主婦が、

 主婦「誰もいませんよ」
 明智「こちらお留守ですか」
 主婦「留守も何もこの寺はずっと誰もいません」
 明智「ずーっとって、確かこの間、住職が……」
 主婦「またですか、先代のお住さんが首吊って亡くなってから誰も住んでないんだから……前にも女の幽霊を見たって人がいてね」
 明智「……」

 主婦の意外な言葉に、当惑して立ち尽くす明智であった。

 では、明智が会ったあの男は一体何者なのか……

 
 はい、ここでお父さん待望の和貴子さんの入浴タイムとなる。

 「天国と地獄の美女」であれだけ盛大に脱いでおられたので、当然、今回も大いに期待されたが、

 
 浴槽から出て脱衣所に向かった時に、脱ぎ女優さんのつるんとしたお尻の割れ目が見え、

 
 擦りガラスの仕切りの隙間から、同じく脱ぎ女優さんのおっぱいがちらっと見えるだけで、ご本人の脱ぎはなし。

 ……

 なんじゃこりゃあああああーっ!!(管理人の魂の叫び)

 それにしても、同じ女優さんが脱ぐ場合と脱がない場合の違いって、一体なんなんだろう?

 第19作で井上梅次さんが番組を卒業されているが、監督との信頼関係と言うのもあるのかなぁ?

 百合枝、ネグリジェを着て、2階に上がる。

 誰かが、三千子のピアノを弾いているようなのだが……

 百合枝が部屋の前まで来ると、ピタリと音がやむ。

 恐る恐るドアを開けて入るが、部屋には誰の姿もない。

 「学校の怪談」のような分かりやすい怪奇現象に、百合枝は怖くなって部屋を飛び出す。

 
 と、階段を降りようとしたところ、死んだ筈の三千子が恨めしそうな顔をして、階段を上がってくるではないか。

 百合枝「三千子さん……」

 後ろの壁に縋りつくようにして震えていた百合枝だったが、振り向いて、それが三千子ではなく鉄心だと知って、安堵のあまりその場に倒れ込む。

 鉄心は慌てて駆け寄り、

 鉄心「奥様、どうかなさったんですか?」
 百合枝「大丈夫です、なんでもありません」

 
 百合枝「それより、あなた、どうして?」
 鉄心「はい、旦那様が今夜は泊り込むようにとおっしゃいましたので」
 百合枝「そう……」

 鉄心、普段は母屋とは別の建物に寝泊りしているのだろう。

 引き下がろうとする鉄心を呼び止め、

 百合枝「聞かなかった、ピアノの音?」
 鉄心「お嬢様がお亡くなりになってからお屋敷でピアノが弾けるのは奥様だけで……」
 百合枝「私が? 私であるわけがないでしょう!!」

 ヒステリックに叫ぶ百合枝の両肩を優しく抱くと、

 
 鉄心「どうか、お気を静められて……人間、時には思わぬものを見たり聞いたりしたような気がするものです、つまり幻を見たり、幻聴を感じたり、それは心に屈託があるからです……たとえば恐れ、罪の意識……」

 鉄心、まるで愛人ででもあるかのように、百合枝の柔らかな頬の感触を楽しみつつ、顔を摺り寄せ、愛を囁くように語り掛ける。

 百合枝「放して!!」

 その愛撫と声に陶然となる百合枝であったが、夢から醒めたように鉄心の胸から逃げ出す。

 鉄心、なおも百合枝の手を掴み、

 鉄心「奥様!! 奥様もお悩みがあるなら、どうかこの鉄心にお打ち明け下さいませ」
 百合枝「……」

 百合枝、乱暴に鉄心の手を振りほどくと、自分の寝室に駆け込む。

 その3へ続く。
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コメント

冤罪

また浪越警部の十八番のパターン(冤罪捏造推理)が発動されましたね😅

Re: 冤罪

まあ、引き立て役ですからね。

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Author:zura1980
70~80年代の特撮、80年代のドラマを中心に紹介しています。

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