第20話「恐怖の大砂漠!二人の藤兵衛!?」(1975年8月16日)
のっけから、

ライダーが、バイクならぬ馬にまたがって砂漠を進んでいるという、強烈なショットを放り込んでくるスタッフ。
ライダー「タイタン、ストロンガーだ」
タイタン「ふっふっふっ、ストロンガー、良く来た、待っていたぞ」
そしてストロンガーの前に現れたタイタンも、テンガロンハットこそ被ってないが、フリンジのついた黒のズボンにポンチョと言う、分かりやすいスタイルで決めていた。
無論、マカロニウェスタンを意識した絵作りで、睨み合う二人の顔が徐々に大きくなりながら交互に映し出され、緊張感を高めていくという手法は、まんま、決闘シーンのそれであった。
こういう遊び心って大事だよね。
ちなみにロケ地は、毎度お馴染み、静岡県浜松市の中田島砂丘です。
タイタン、何を思ったか、急にストロンガーに決闘を申し込み、ストロンガーがそれに応じてやって来たところなのである。
しばらく格闘した後、

以前にも使った特殊な銃が火を吹き、ストロンガーの目の前で爆発する。

ライダー「とおっ!!」
さらに、真っ黒な爆煙を背に空高くジャンプするストロンガーと言う、ド迫力ショット。
だが、勝負はあっけなくつく。
互いのエネルギーがぶつかり合って爆発し、その衝撃で両者とも動けなくなると言う、ライダーシリーズでも稀な、正真正銘、掛け値なしの相討ちであった。
タイタンは残った力を振り絞ってアジトに瞬間移動するが、ストロンガーは駆けつけたおやっさんによって、関東第一原子力研究所なる施設へ連れて行かれる。
そこに勤めている立木藤太郎と言う博士だけが、ストロンガーの体を修理できるらしい。
アポなしで乗り込み、茂の体を研究室に運び入れてから、
立花「博士、お願いします」

立木「わかっとるよ」
扉の向こうからあらわれた立木博士であったが、その顔は、他ならぬおやっさんに瓜二つだった。
ライダーシリーズでは珍しい、一人二役である。
何で珍しいかと言うと、撮影が面倒になるので、スタッフがやりたがらないからである。

立花「あ、あ、あんた……」
立木「君は……はぁああ」
これにはさすがのおやっさんも唖然とし、立木博士もまじまじと相手の顔を見詰めて嘆息する。
ちなみにその研究所、壁に「ゴレンジャー」っぽいラインが引いてあるのだが、何か別の番組のセットを流用してるんだろうなぁ。
一方、ブラックサタンのアジトでは……
首領「タイタンを死なせるわけにはいかん、立木博士はどうした」
シャドウ「間もなく到着の予定です」
首領「到着次第、タイタンの再生手術を開始しろ」
よほどお気に入りなのか、首領はまたしても瀕死の状態に陥ったタイタンの蘇生手術を、同じく立木博士にやらせようとしていた。
なんか、二人の言い方だと、立木博士がブラックサタンの協力者のようにも聞こえるが……

シャドウ「全く世話を焼かせる奴だ」
それはそれとして、またしてもタイタン復活を命じられたシャドウはいささか呆れ顔であったが、その口調の裏に、なんとなく、
「もうっ、私がいないと何も出来ないんだからぁっ!!」などと言う、ちょっと嬉しそうな本音が隠されているようにも感じられるのである。
実際、この二人、互いを出し抜こうとしたり、罵り合ったりする割りに、どちらも相手に一目置いてるような節が見られるんだよね。
さて、おやっさん、茂を立木博士に任せて、ユリ子を探しにジープに乗ろうとしていると、

男「立木博士ですね」
男「急用です、お願いします」
立花「いや、だからね、あたし……」
男「黙ってついてくるんだ」
突然、ガタイの良い二人の黒服があらわれ、有無を言わさずおやっさんを拉致してしまう。
……
いや、これ、誰がどう見ても立花藤兵衛だろ。
いくら顔が同じだからって、今まで何度も顔を合わせてきた戦闘員が二人を取り違えるというのは、どう考えても変である。
もっとも、この二人の黒服、最後まで戦闘員の姿にならないままだし、奇械人アリジゴクにもタメ口を利いているので、ブラックサタンが臨時に雇った外部の人間だったのかもしれない。
だとすれば、おやっさんのことを知らなくても不思議はないが、それにしても不自然である。

タイタン「ストロンガーめぇ」
戦闘員「タイタン様、もう少しの辛抱です」
手術台に寝かされたタイタン、意識は一応あるらしく、苦しそうに呻き声を上げる。
シャドウ「ふっふっふっふっ、俺の占いに逆らってストロンガーと戦うから、そんな目に遭うのだ」
憎まれ口を叩くシャドウだったが、その台詞から、タイタンが出撃する前にわざわざ戦いの帰趨を占い、忠告までしていたことが判明する。
これはもう、あれだな、完全にツンデレだな。
やがておやっさんがアリジゴクに連れて来られるが、
シャドウ「立花藤兵衛……間抜けめ!! 牢にぶち込んでおけ」
さすがにシャドウは一目でそれがおやっさんだと気付き、
シャドウ「本物の立木博士をタイタンのために連れてきてやれ」
改めてアリジゴクに命じるのだった。

茂「ありがとうございました、もう大丈夫です」
その頃、茂は、立木博士の手で、すっかり元通りの体に戻っていた。
うーん、手術の様子を全く見せないのは、いくらなんでも手抜きだよなぁ。
立木「いやぁ、君の回復力は素晴らしい」
茂「しかし、博士がおやじさんとそっくりなんで、驚いたのは僕の方です」
立木「はっはは、全く気味の悪いほど良く似ていたなぁ」
茂が改めて偶然のいたずらに感心して見せると、博士も落ち着いた声で応じる。
当たり前だが、小林さんが二つのキャラをちゃんと演じ分けているので、ほんとに別人のように見えてしまう。
そのおやっさんがなかなか帰ってこないので、茂が探しに出ると、建物の前にジープが置きっ放しになっていた。
茂「おかしいな……車を置いてく筈はないんだが」
茂が不審に思っていると、そこへユリ子がやってくる。

ユリ子「茂、無事だったの?」
茂「ああ、おやじさんを知らないか」
ユリ子「会わなかったけど」
茂「そうか」
前回よりはマシだが、今回もジーパンか……
たまにはミニスカ履いてーな。
さて、研究室の中に侵入したアリジゴクが立木博士を捕まえようとするが、戻って来た茂たちに邪魔される。

茂「ブラックサタンの奇械人、何故立木博士を狙う?」
相変わらず絵になる二人だったが、
アリジゴク「奇械人を知っている、さては貴様は?」
茂「城茂だ」
もう20話だってのに、いまだに奇械人が茂の顔を知らないのは、さすがに「悪の組織」としてどうなんだろう?
アリジゴク「良いところで会った、まず貴様を消して本物の博士を連れて行く」
茂「本物の? そうか、おやじさんは立木博士と間違われて連れて行かれたな」
二人が外へ出た後、なんだかんだでタイタンのことが心配で堪らないシャドウ自らお出ましとなり、

シャドウ「トランプパンチ!!」
ユリ子「うっ、ううっ」
カードをユリ子の腹に当てて気絶させると、

猫がネズミをとらえるように、猿臂を伸ばして立木博士の襟首を掴んで引き寄せ、同じく当身を食らわせる。
こうして見ると、シャドウの河原崎さんがかなりの長身であることが分かる。
シャドウが立っているところが少し高くなっているせいもあるが、二人が並ぶと、まるで大人と子供である。
そうとは知らない茂、ストロンガーに変身してアリジゴクと激闘する。
ライダー「さあ言え、アリジゴク、立花のおやじさんはどこだ?」
アリジゴク「大砂漠の地底よ、かわいそうに」
ライダー(言っちゃうんだ……) 自分で聞いておきながら、相手が即答したことに驚き、ブラックサタンの将来に一抹の不安を覚えるストロンガーだったが、嘘である。
ライダー「アリジゴク、案内しろ!!」
アリジゴク「勝手に行け」
調子に乗ったストロンガー、重ねて図々しい要求をするが、さすがに断られる。
冷静に考えたら、フリーの敵に向かって「案内しろ」はないよなぁ……
アリジゴクは結局地中に潜って逃げるが、入れ替わりにユリ子が駆けつけ、
ユリ子「ストロンガー、立木博士がシャドウに攫われたわ」
ライダー「なにっ、すると立花のおやじさんと一緒に砂漠のアジトだ」
CM後、砂丘の入り口でバイクを捨て、徒歩で広漠とした砂地を走っている茂とユリ子。
で、何故かこのシーンで、「仮面ライダー」の、チャラララララッと言うBGM(分かるかっ!!)が使われている。
一方、おやっさんは、薄暗い牢獄にぶち込まれて呻吟していたが、
立花「なんとかこっから逃げ出して茂に知らせたいが……よし、一か八かやってみるか」
一計を案じ、

立花「おーい、水くれえ、死にそうだぁ、おおい、頼む、水くれぇ」
見張りの戦闘員に向かって哀れっぽい声を掛ける。
すると、

戦闘員「ギュッ」
まるで、「待ってました」とばかりに、5秒もしないうちに戦闘員が水の入ったコップを持ってやってくる。
さすがにこれは不自然である。
なので、ここは、単に戦闘員が様子を見にやってくるだけにしておいた方がリアルだったと思う。
立花「ありがと、ありがと……」
戦闘員「ギュッ!!」
それはともかく、親切にも水を持ってきてくれた戦闘員の腕を取り、殴りつけて気絶させ、鍵を奪うと言う、恩知らずの所業に走るおやっさん。
その動きはシャドウに筒抜けだったが、何故かシャドウは静観する。
おやっさん、立木博士が降りてきた通路を逆に昇って、拍子抜けするくらい簡単にアジトから抜け出すことに成功する。
もっとも、地上に出られたとしても、砂漠から水もなしに脱出するのは困難で、だからシャドウも好きなようにさせていたのかもしれない。

なにしろ真夏のことなので、改造人間である茂もユリ子も容赦ない日差しに炙られて早くも汗だくとなり、ユリ子は持参した水筒をがぶ飲みしていた。
茂「おいおい、水はそれだけなんだ。大事に飲めよ」
ユリ子「いいじゃない、水ぐらい、ケチね」
茂「今に困るのはユリ子だぞ」
だったらもっとたくさん水を用意しておけばいいのにと思うが、何しろ、ペットボトルなんて便利なもののない時代だからね。
それにしても、せっかくのユリ子の巨乳なのに、それが活用されてないのは遺憾である。
せめてタンクトップくらい着てもらわないと……
立花「ああ、ここでへばっちゃ、今までの苦労が水の泡だ」
だが、条件はおやっさんの方が遥かに過酷で、拉致されてから一滴の水も口にしていないので、たちまちその場にへたり込む。
それにしても、今まで何度も耳にしたような台詞がおやっさんの口からこぼれるが、伊上さん、よっぽどこの言い回しが好きだったんだろうな。
立花「水か欲しい、水か欲しい……」
顔を砂だらけにして喉の渇きを訴えるおやっさんのアップに続けて、

ほとんどフェティッシュ的な撮り方で、ユリ子が水筒を口に含むところを映すのが、なかなか意地の悪い編集である。
茂「おい、もうよせよ、おやじさんのために残しておくんだ」
見兼ねて茂がたしなめると、

ユリ子「分かったわ、ごめんなさい」
素直に謝って、栓を閉めるユリ子であった。
その後、二人はやっとおやっさんを発見するが、
茂「待ち伏せしてたのか」
彼らが合流するのを待っていたのか、シャドウと戦闘員たちがあらわれ取り囲む。
二人が砂漠を歩き回って体力を消耗するのを待った、シャドウの巧妙な戦術であった。
茂、遮二無二シャドウ目掛けて斜面を駆け上がろうとするが、伏兵のアリジゴクの罠に嵌まり、変身する余裕もなくじわじわと体力を奪われる。
ユリ子「私がタックルに変身しなくちゃ……」
ユリ子、群がるピカチュウをなんとか振り払い、タックルに変身しようとするが、

ユリ子(あれ……前にも似たような目に遭った記憶が……デジャブかしら?)
シャドウのトランプパンチを食らい、あえなく気絶。
勿論、おやっさんも捕まり、

三人ともシャドウの前にマグロのように並べられるという、完敗を喫する。
その優れた判断力と水際立った指揮ぶりは、大幹部と言う枠に収まりきらないものがあったが、ブラックサタンの首領が何かにつけシャドウを邪魔者扱いするのは、いつか自分がシャドウにとってかわられるという、予感にも似た不安に根差しているのかも知れない。
シャドウ「どれ、始末するか」
このまま何事もなければ、茂たちの死は不可避だったろうが、
タイタン「待てい、シャドウ!!」
シャドウ「ほう、立木博士の手術で治ったのか、タイタン」
そこへ、右手で杖を突きながらタイタンがやってきて、

タイタン「シャドウ、勝手な真似はさせん」
シャドウ「どういうつもりかね、タイタン」
タイタン「憎い三人だ、むざむざとは殺さん、長い時間を掛けて力を奪い、地獄の責め苦を味わせてやる」
と、手前勝手な横槍を入れてくる。
三人を捕らえたのは、誰かどう見てもシャドウ(とアリジゴク)の手柄なのに、今まで手術台のベッドで寝ていただけのタイタンが、まるで当然の権利だといわんばかりに引き渡しを主張するのも相当変だが、
シャドウ「ははははっ、俺の性に合わんやり口だな、ま、好きなようにやれ、あとは知らん」
それに対し、シャドウが文句ひとつ言わず、ほとんど投げやりにタイタンに指揮権を渡してしまうのも相当おかしな展開である。
いや、シャドウ、あれだけストロンガー抹殺に燃えていたのに、なんでそんな簡単にタイタンに譲ってしまえるのか?
ま、タイタンはタイタンで、
「アリジゴクは俺の部下、部下の手柄は俺のもの、だから俺にも権利がある」と言う、ジャイアニズム的三段論法を用意していたのかもしれないが。
それでも、タイタンがさっさと三人を殺しておけば何の問題もなかったのだが、

三人を縛っておやっさんのジープで引き摺り回した挙句、「仮面ライダー」でもやっていたように、三人を首から上だけ出して生き埋めにする。
小林さん、「またぁ?」とか思ってただろうな。
ま、百歩譲って、ここまでは良いとして、ここでタイタン、とんでもない行動に出る。
タイタン「アリジゴク、あとはお前に任せる」 ええ~っ、帰っちゃうの~っ? まるで、管理人が書くウソ台詞のようだが、ほんとにこう言ってるのである。
いや、さすがにそれはないんじゃない?
わざわざシャドウの手柄を横取りした挙句、ケツカッチンって……
つーか、こないだの18話でも、処刑の途中で帰ってなかった?
ほんと、そんなに家を空けていられない重大な理由でもあるのか知らん。
クロネコの荷物が届く時間とか……
ま、今回に限っては、手術を受けた直後で体が万全ではなく、家に帰って寝たかったというのが真相かもしれない。
じゃあ、最初からしゃしゃり出てくるなよ……
その後も延々と灼熱の太陽に晒された三人の体はカラカラに乾き、ほとんど生ける屍と化していた。

茂「水をくれ……」
アリジゴク「ほうれ、水だ」
アリジゴク、乾いて白くなった唇を喘がせて水を求める茂に対し、その目の前の砂に水を捨てるという、定番のいぢわるをする。
だが、これがまさかの命取り。
茂「エネルギーチャージ!!」
茂が砂の中でグローブを外し、剥き出しの両腕をクロスさせると爆発が起き、一瞬で体力を取り戻した茂が、自力で砂の中から飛び出す。
茂「ぬかったな、アリジゴク、水のショックで俺の力を取り戻させたんだ」
アリジゴク「ううっ、お、おのれーっ!!」
うーん、これもなんか釈然としない。
まあ、水が導体であり、電線に触れるとショートするというイメージからの発想だろうが、さすがに水だけでは無理なのでは?
ともあれ、どう見てもわざとやってるとしか思えない、ブラックサタンの皆さんの二重三重の失策のお陰で、絶体絶命の窮地を脱した茂、ストロンガーに変身してアリジゴクを撃破する。
そして、アジトに取り残されていた立木博士を救出するが、アジトは首領自らの手で爆破される。
立花「すまん、ワシのために危ない目に遭わせてしまって」
茂「なーに、立木博士とおやじさんのお陰でアジトが潰せたんですから」
立花「ま、そう言って貰うと嬉しいが……」
……
考えたら、おやっさんと立木博士が同じ顔だと言う設定、終わってみれば、ほとんどストーリーに関係なかったな。
一人二役は映像にするのが難しいから、スタッフが意図的に避けたのかもしれないが、おやっさんが立木博士のふりをしてアジトに潜入するとか、合成を使わずともストーリーに組み込むことは可能だったと思うんだけどね。
一方、タイタンはまだ砂漠に留まっていたが、

タイタン「くそう、今ひと息のところで!!」
あたかも、自分が茂たちを捕まえたような顔して、全力で悔しがっておられました。
つーか、
途中で帰った人に言われてもなぁ……
以上、シャドウやタイタンの不可解な行動、一人二役の看板倒れなど、不満もあるが、ここ最近の低迷を吹っ飛ばすような、いかにも伊上さんらしい、骨太なストーリーと男臭い演出が見事に噛み合った、見応えのある力作であった。
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