第5話「消された時間」(1967年10月29日)
冒頭、
ナレ「南極にある地球防衛軍科学センターから一機の超音速ジェット旅客機が飛び立った。目的地は日本、中には地球の頭脳と呼ばれるユシマ博士が乗っていた」
と言うナレーションにあわせて、

澄み切った青空を超音速で飛んでいる旅客機の姿が映し出される。
旅客機と言っても、乗客はそのユシマ博士ただひとりであった。
CA「ユシマ博士、どうぞ」
ユシマ「ありがとう……」
いかにも穏やかな物腰のユシマ博士は、静かにカップを手に取って口に運ぶ。

ユシマ博士を演じるのは山本耕一さん。
とてもそうは見えないが、当時32才である。
ユシマ博士がカップを下ろすカットにつなげて、

遠く離れたウルトラ警備隊のフルハシ隊員が同じようなカップをソーサーに置くシーンに飛ぶのが、なかなかしゃれた編集。

フルハシ「つまり、その、ユシマ博士が視察の為に基地に滞在してる一週間、俺に博士の身辺護衛をやれって命令なんだよ。しかし、そんなボディーガードみたいな仕事、俺弱いんだよ」
フルハシは、メディカルセンターでダンたちとお茶を飲みながら雑談していた。
ダン「いや、そんなことはないと思うな、博士に万一のことがあったらこの基地の防衛力だってガタ落ちになってしまう」
頭を掻きながらぼやくフルハシに、ダンが、いまひとつピントのずれた答えを返す。
あと、普段は南極にいるユシマ博士に何かあったからって、防衛力が「ガタ落ち」になると言うのは変じゃないか?
ダン「博士は視察に来るんじゃなくて、本当の目的は別にあるって話ですよ」
フルハシ「なんだい、その本当の目的ってのは」
ダン「なんでも、博士が発明したユシマダイオードを使ってこの基地に超遠距離レーダーをセッティングするんだそうです」
ユシマダイオードと言うのは、江崎玲於奈博士が発明した、画期的なダイオード「エザキダイオード」が元ネタであろう。
カメラは再び機内に戻る。
今度はコックピットから機長が出て来て、

機長「ユシマ博士、飛行は順調です。基地へは予定通り3時きっかりに着きますよ」
ユシマ「するとあと10分足らずですね」
手前に映っているキャビンアテンダントの胸に、さりげなく地球防衛軍のマークが入ってるのがさすがのコダワリある。
なお、ファンには説明の必要もないが、CAを演じているのは、シリーズに三回も出ている若山真樹さんである。

雑談を交わした後、機長は博士の葉巻に自分のライターで火をつけてやり、それをポンと空中に放り投げるが、その瞬間、奇妙な音がして、三人の体が……いや、タバコの煙もライターも何もかもが止まってしまう。
が、次の瞬間、時間は何事もなかったように動き出し、ユシマたちも全く異変に気付かない。
映像では省略されているが、時間が止まっている間に、博士はビラ星人に催眠術を掛けられたらしい。

やがて博士を乗せた旅客機がウルトラ警備隊の基地に飛来するが、明らかにさっきと翼の形と長さが違うよなぁ。
まあ、設定では可変翼らしいが……
あと、せっかく「消された時間」と言うタイトルなんだから、到着した博士の腕時計が少しだけ遅れていて、それを見たダンが不審に思う……みたいな描写があっても良かったと思う。
旅客機は、森の中に作られた細長い滑走路に無事着陸する。

ソガ「あ、見えました」
ユシマ博士を、キリヤマたちが勢揃いして、どう見ても地下鉄のホームとしか思えない場所で待つ、ここでしか見られないユニークな演出。
これは実際に地下鉄で撮影しているのだろう。

アンヌ「よぼよぼのおじいさんかと思ったら、若いのね」
ダン「29才、博士号を5つも持ってんだってさ」
アンヌ「素敵だわ~」
これも地下鉄の階段にしか見えない階段を降りてくるユシマ博士を見て、アンヌがなんとなく玉の輿を狙う肉食系OLみたいな軽口を叩く。
この脚本を書いたのは菅野昭彦と言う人で、全般的にキャラクターの描き方が庶民的と言うか、人間臭い感じがして個人的には好きだが、これ一本きりしか書いていないのが惜しい。
ユシマ博士はよほどのVIPらしく、キリヤマ隊長以下ウルトラ警備隊全員、さらにはマナベ参謀までが最敬礼で博士を出迎える。
キリヤマ「ようこそ、お待ちしておりました、この基地を一層強力なものにするためよろしくお願いします」
ユシマ「いやぁ、私のほうこそ勉強させてもらいたいと思ってるんです、日本の基地は世界のどの基地よりも優れた装備を持ってるそうですね」
キリヤマはボディーガード役のフルハシを博士に引き合わせる。
ユシマ博士は逆に恐縮して見せると、
ユシマ「しかし、こんな警戒厳重な基地に忍び込んで私をどうにかしようなどという宇宙人が果たしていますかね、はっはっはっはっ」
すでにビラ星人の手先になっている癖に、自分からそんな冗談を言ってみんなを笑わせる。
なかなかの役者よのう。

続いて、基地の中の地下モノレールと言う触れ込みの車両に乗り込むのだが、その内装がまるっきり地下鉄の車両にしか見えず、いささか興醒めである。
内部の映像は出さないほうが良かったんじゃないかなぁ。
それでも、実景に繋げて、ちゃんと地下トンネルを進むモノレールのミニチュアを走らせるあたり、さすがである。
ユシマ博士は一旦、一般のホテルに移り、仕事は一晩休んでからと言うことになる。
送り迎えはダンの運転するポインターで、フルハシは博士に同行し、同じホテルに宿泊する。
あくまで仕事で来たんだから、基地内のゲストルーム(あるんだろう?)に寝泊りしても良さそうなものだが、超VIPの博士をそんな狭苦しく、眺めも悪い部屋に泊めるのは畏れ多いということで、箱根の一流ホテルを予約しておいた……と言うことかな。
夜、すでに博士はベッドに入っていたが、フルハシは隣接する控えの間で寝ずの番をしていた。
無論、警護はフルハシひとりではなく、ホテルの駐車場では、二人の防衛隊員が巡回をしていたが、その中にポインターが混じっているのはちょっと変じゃないか。
フルハシはホテルに入る際、ダンに「7時に迎えに来てくれ」と言ってたんだから……

それはそれとして、深夜、また例の奇妙な音がして、空中から金色に輝く不思議な光が降ってきて、ホテル全体を包み込む。

椅子に座って睡魔と戦っていたフルハシは、ついうとうとして腕組みしたままぐらりと床に倒れそうになるが、ここで時間停止が起き、現実にはありえない姿勢で固まる。
ビラ星人「ユシマ博士、起きるのだ」
と、博士の部屋のテレビがひとりでにつき、その中にエビとかもカニともつかない宇宙人が映し出され、ユシマ博士を呼び起こす。

これが今回の仕掛け人、ビラ星人であった。
ビラ星人「我々はビラ星人、全宇宙の征服者だ」
こんなのに征服される宇宙、ちょろいなぁ。
ビラ星人「我々は地球侵略の手下としてお前を選んだ、お前の乗ったロケットを時間停止光線で捉え、時間の進行を止めておいてお前の頭にビラ星人の心を植え付けた」
まあ、ほんとにビラ星人の心になっているのなら、こんなこといちいち説明する必要はないのだが、無論、視聴者に向かって言っているのである。
ビラ星人「命令する、まずユシマダイオードを出せ」

ユシマ博士が言われるがまま、金属製のケースに入った6個のユシマダイオードを差し出すと、ビラ星人はテレビの中からビームを放って、ユシマダイオードに何らかの変化を与える。
ビラ星人「よろしい、それから、明日の朝、レーダーの心臓部を破壊せよ、分かったな」
ユシマ「……」
ビラ星人「注意する、地球には人間に味方する宇宙人がいる。名前はモロボシ・ダンと言う、この男に気をつけろ」
ビラ星人が消えると、ユシマ博士はベッドの上にごろんと仰向けになる。
フルハシ「うっ……あつっ」
ここで時間停止が終わり、フルハシはそのまま床に激突して目を覚ます。
慌てて博士の部屋に飛び込むが、博士はぐっすり眠っており、何の異常も見受けられない。
しかし、時間をストップさせるという、魔法のような技術を所有しているのなら、何も地球人のスパイなどに頼らずとも、防衛基地そのものの時間を停めて攻撃すれば楽勝なのでは?
次のシーンでは、すでに翌朝となっていて、ダンがポインターで博士を基地に送っている。

ダン(この男、本当にユシマ博士なんだろうか、いや、間違いない、前に写真で見たことがある。しかし何故あんなことを言ったんだろう、僕が宇宙人だと言うことを知ってたのだろうか……まさかそんなことはありえない、いずれにしても注意しなければ)
後部座席の博士をチラチラ見ながら、ダンが心の中でつぶやくのだが、なんか、編集ミスのように唐突な台詞となっている。
これには理由があって、台本では、ダンがホテルに博士を迎えに来た際、「夢を見た。地球防衛軍の中に宇宙人が紛れ込んでいて、それが僕の仕事の邪魔をするんだ」みたいなことを博士が言っているのだが、本編では割愛されたため、ダンの台詞が宙ぶらりんになってしまったのである。
あと、「前に写真で見たことがある」と言うのもちょっと変だよね。
昨日、他の隊員と一緒にユシマ博士と会ってるのだから、写真もクソもないだろうと。
まるで今初めて会ったみたいではないか。
それはそれとして、基地に到着すると、ユシマ博士は早速レーダー室の視察を行う。

隊員「レーダーはここにセットしてあります」
ユシマ「……」
隊員「どうかなさいましたか、博士」
ユシマ「ダン君、これを第三回路へセットしてくれたまえ」
じっと制御盤を見詰めていたユシマ博士は、わざわざダンを指名して例のケースを渡す。
一方、作戦室では、
キリヤマ「博士は?」
アマギ「レーダー室を視察してます」
キリヤマ「そうか、超遠距離レーダーが完成すればこれまでも4倍も遠くにいる敵がキャッチできる、その間に防衛体制を固める、怖いもの無しだよ」
キリヤマがアンヌとアマギを相手にバラ色の未来予想図を描いて悦に入っていた。

続いて、ダンが、ユシマダイオードをふたつ、制御盤の下部に嵌め込む様子が映し出されるが、さすがにドライバーはないよなぁ、ドライバーは……
「ウルトラセブン」でも有数の「トホホショット」である。
ダン「終わりました」
ユシマ「これをひとつ換えただけでもレーダーの感度は随分違いますよ」
隊員「はあ、ありがとうございました」
博士のありがたいお言葉に、隊員たちは喜色満面となるが、

ユシマ博士がおもむろにスイッチを入れると、いきなり制御盤が火を吹く。
ダンたちは慌てて博士を避難させる。
警報ベルが鳴り響き、基地内はたちまち緊迫したムードとなる。

キリヤマ「どうしたと言うんだ、一体」
隊員「レーダーが突然止まってしまったんです、厳重な管理をしてんですが、こんなことが起こるはずは絶対にないんですが」
キリヤマ「弁解は良い、すぐ修理にかかれ、レーダーは防衛基地にとって大事な目だぞ」
普通なら、事故はユシマ博士のせいだと考えるところだが、

ヤマオカ「今日、基地内のレーダー装置が突然故障を起こすという不祥事が起こった、原因はいまだに不明であるが、この防衛基地が絶えず宇宙からの侵略の魔手に狙われていることを考え合わせると単なる偶然とはどうしても思えない節がある……」
相手がVIPと言うことで、ヤマオカ長官は1ミクロンたりとも疑いの目を向けない。
人間の目がいかに肩書きに騙されやすいかと言う、分かりやすい実例となっている。
ヤマオカ「その前にフルハシ、ボディーガードとして何やっとったか」
ヤマオカはフルハシを指差すと、厳しくその責任を追及する。
いや、責任も何も、別にユシマ博士が怪我をしたというのでもないのだから、今回のことでフルハシが責められるいわれは1ミクロンもないと思うのだが、

フルハシ「はっ、私の責任であります、博士、本当に申し訳ありません」
今度は「すまじきものは宮仕え」の生きた実例のように、一切弁解せず、謝る必要もない相手に全力で謝るフルハシなのだった。
そもそも、事故の原因さえ特定されていないのに、フルハシを𠮟ると言うのはどうにも納得が行かないが、いずれ彼らの多くが所属することになるであろう「組織」と言うものの理不尽さを今のうちからちびっ子たちに叩き込む、ある意味、大変教育的なシーンと言えるかもしれない。
ま、ヤマオカとしては、大切なVIPの前で醜態を晒してしまったので、とりあえず誰かを叱り飛ばす必要を感じ、不運にもその犠牲者に選ばれたのがフルハシだったのだろう。
ユシマ「いや、フルハシ隊員の責任ではありませんよ」
だが、当のユシマ博士は穏やかにフルハシを庇うと、
ユシマ「残念なことにこの基地内には宇宙人のスパイが入り込んでいるようですな」
自分がそのスパイでありながら、いけしゃあしゃあと言ってのける。

ユシマ「ダン君、私の手から受け取ったダイオードをあの時、何かと摩り替えたんじゃありませんか」
さらに、ダンを名指しで犯人扱いする。
ダン「なんですって、博士、あなたは私がスパイだと言うのですか?」
ユシマ「……」
これにはさすがにダンが色を成して反問するが、ユシマ博士は「それはあなた自身がよくご存知でしょ」とでも言いたげに、いやみったらしい笑みを浮かべるだけ。
アンヌ「ダン!!」
思わず前に出るダンをアンヌが慌てて止める。
部下をスパイ呼ばわりされて黙っているようなキリヤマではなく、
キリヤマ「お言葉ですが、博士、何の証拠があってそのようなことを?」
ユシマ「証拠? レーダーが故障するという重大なアクシデントが起きているじゃありませんか」
それに対し、非難するような声で反論するユシマ博士。
でも、これ、言ってる人がえらいから見過ごされているけど、めちゃくちゃ非論理的な発言だよね。
「レーダーが故障した」→「宇宙人のスパイであるダンの仕業だ」 と言っておいて、
「ダンがスパイだという証拠を示せ」→「レーダーが故障したから」 だもんね。
それに、博士にユシマダイオードの交換を命じられることが、事前にダンに分かる筈がないのだから、博士の推論は間違っている。
繰り返すが、事故の原因がなんなのかも分かってない段階で、いくらこんな話をしても無駄だと思うんだよね。
つーか、博士の言い草では、ユシマダイオードのせいだと自分で認めているようなもので、だったら一番怪しいのはそれを作った博士自身ってことになると思うのだが、前述のように、相手がVIPということで、誰もそれを指摘しないのが見ていて実に歯痒く、またドラマとして面白いシーンとなっている。
ユシマ「まぁ、私はあえてこの中にスパイがいるとは言いませんが、明らかに私の仕事を妨害しようとする何者かの計画的な犯行であることに間違いありませんな」
ユシマ博士の言葉を受けて、
ヤマオカ「最悪の事態を予想して早急に対策を立てよう、博士のお知恵を拝借し、このピンチを切り抜けるんだ。ウルトラ警備隊は直ちに緊急非常態勢に入れ」
事故を起こした張本人を知恵を借りろと言うのが、なかなか皮肉が利いている。
とりあえず、ダウンしたレーダーのかわりに、ホーク3号が基地から飛び立ち、上空を監視することになる。
すでにビラ星人の宇宙船団が地球に向かって接近中であったが、
ナレ「ウルトラホーク3号のレーダーはその異変を捉えることは出来なかった」
ただ、極東基地のレーダーが駄目でも、宇宙ステーションや海外の基地は健在なのだから、宇宙から飛来する巨大な人工物を探知できないと言うのは変だよね。

ダン(ユシマ博士から、目を離してはいかん、彼は僕の秘密を知り、罠に陥れようとしている……何か企みがあるんだ)
一方、ダンは暗い面持ちで考え込みながら通路を歩いていた。

フルハシ「おい、ダン、ユシマ博士にあんなこと言われたからって気にしない、気にしない、誰もスパイだなんて思っちゃいないよ」
と、フルハシがダンの姿を見掛けて優しく慰めてくれる。
そう言えば、前回は、このフルハシおよびダン自身のニセモノがスパイとして基地に潜入して悪事を企むという話だったんだよなぁ。
ニセモノと洗脳された人間では微妙に違うのだが、似たような設定が続くのは感心しない。
ダン「ユシマ博士は?」
フルハシ「機械室で作業中だ」
ダンは真っ直ぐ機械室に行くが、扉の前には防衛隊員が頑張っていて、どうしても入れてくれない。
ダンは一旦引き下がるが、超能力で機械室の中を透視する。

ビラ星人「良くやったぞ、ユシマ博士、レーダーの故障を利用して我々の宇宙船は集結を完了した。総攻撃の準備はすでに整っている、お前は直ちにウルトラホークの発射台に行き、三つのウルトラホークを徹底的に破壊せよ。防衛基地の混乱に乗じて我々は一気に地球に突入する」
案の定、ユシマ博士はビラ星人の操り人形と成り果てていた。
それにしても、防衛基地の内情を知り尽くし、なおかつ、内部を撹乱してその隙に奇襲を仕掛けようとは、ビラ星人、顔の割りに極めて優れた戦略家と言えるだろう。
ただ、それだけの知能を持ちながら、肝心のセブンについては特にこれと言った対策を立てていないのは解せない。
その点では、変身できないようにウルトラ・アイを盗んだピット星人、ゴドラ星人のほうが上手だろう。
もっとも、ビラ星人までそれをやると、さすがにマンネリになっちゃうからね。
それはともかく、まだウルトラ警備隊員としては未熟なダンは、機械室からでてきたユシマ博士にいきなり掴みかかる。
ダン「見たぞ!!」
機械室に逃げ込んだユシマ博士を取り押さえようとするが、連絡を受けてキリヤマたちが駆けつける。
前回のように、ユシマ博士がニセモノなら話は早かったのだが、あいにく本物なので、キリヤマたちはダンが乱心したのだと思って無理やり引き剥がす。

切羽詰まって、ウルトラガンを抜くダン。
キリヤマ「ダン、何をする?」
遅れてやってきたアンヌがダンの前に一歩踏み出し、

アンヌ「ユシマ博士は地球の頭脳なのよ!!」
ダン「博士は宇宙人に利用されてるんです」
いやぁ、アンヌのいかにも女性らしいふっくらとした体つきが堪りません!!
ソガ「ダン、やめろ」
さすがにダンが引き金を引けずにいると、マブダチのソガに銃をもぎ取られる。
ユシマ「見たかね、諸君、この男は僕を殺そうとまでしたんだ。これではっきりしたでしょう、この男こそ宇宙人なんだ。スパイなんだ」
勝ち誇ったようにダンを糾弾するユシマ博士。
しかし、ダンもあまりに芸がないよね。
ユシマ博士が機械室で何か細工をしていたのは見てる筈なのに、それを指摘しないのだから。
キリヤマ「フルハシ、ソガ、ダンを独房に監禁しろ」
非情な命令を下すキリヤマ。
フルハシとソガは「はい、喜んで!!」とばかりにダンの体を押さえて腕尽くで連れ出す。
この辺、あまりに冷たい感じもするが、まだダンがウルトラ警備隊に入って間もない頃の話と思えば、不思議と説得力がある。
ただ、アンヌが大してショックを受けた様子を見せないのは、さすがにどうかと思う。

ダン「フルハシ隊員、宇宙人は博士のほうです、はなしてください」
フルハシ「こいつ、だいぶ重症だな」 ダンを連行しつつ、
「さっきの優しいフルハシ隊員は何処行っちゃったのーっ?」と叫びたくなるような酷薄な台詞をつぶやくフルハシであった。
ダン「どうして僕の言うことを信じないんですか、博士は宇宙人に操られて……」
なおもくどくどと訴えるダンを、患者を扱う精神病院のスタッフのように容赦なく独房に叩き込む二人。

ダン「あの頭脳は確かに世界的なものかもしれないが、宇宙人はそこに目をつけたんです、信じてください!!」
フルハシ「あんまり騒ぐとこれぐらいじゃ済まさんぞ……行こう」
ソガ「おう」
二人は一切耳を貸さず、さっさと行ってしまう。
主人公が誤解されたり濡れ衣を着せられたりして仲間に白い目で見られると言うのは、ウルトラシリーズでは定番のプロットだが、今回の話はその嚆矢と言えるのであるまいか。
と、同時に、それらの中でも、新マンの「天使と悪魔の間に……」に匹敵する、トラウマ級のエピソードではなかろうか。
特にフルハシたちのよそよそしい態度が怖過ぎる。
おまけにアンヌは全然気遣ってくれないし。
色々あって、ビラ星人の宇宙船団が地球にやってくる。

キリヤマ「ウルトラホーク1号、出動スタンバイ、アンヌは連絡要員として本部に残れ」
アンヌ「はい」
うーん、アンヌの態度があまりに普通で、物足りないのを通り越して不可解である。
あと、この場に全員いるってことは、ホーク3号に乗ってるのは誰だってことにならんか?
ま、機械室のシーンにアマギの姿が見えなかったので、乗っていたとすればアマギだろうが、この時はもう基地に戻っていたのだろうか?
ダン「おい、開けてくれ、開けてくれ!!」
ダンは鉄格子を叩いて叫ぶが、誰も相手にしてくれない。
基地に残っている筈のアンヌが寄り付きもしないと言うのは、あまりに薄情に感じられる。

ダンはやむなく独房の中でウルトラセブンに変身し、その剛力で鉄格子を引き千切る。
ユシマ博士は管制室へ行き、ホーク1号の発射台を傾けるが、今にも攻撃が始まろうかと言う緊急事態なのに、その場に誰もいないと言うのは不自然だよなぁ。
だが、飛んできたセブンにビームを撃たれて気絶し、セブンは発射台を元の角度に戻す。
セブンが基地から飛び出した後、ホーク3号、1号の出撃シークエンスが映し出される。
つまり、短いスパンで3号の出撃シーンが二度繰り返されることになり、ちょっと芸がない。
あと、キリヤマは1号で行くと明言していたのに、3号がいるのはなぁ。
ちなみに撮影の都合か、ホーク1号も3号も操縦席の映像は全く出て来ず、どちらに誰が乗っているのかは全く分からない。
ゴルフボールが枝状にくっついたような宇宙船は次々と撃ち落とされていく。
ビラ星人、某「時間が止まる腕時計」シリーズをガチで撮れるスーパーテクノロジーを持ってるのに、なんでこんなに弱いんだーっ!!

それはともかく、赤い鳥居が並ぶ神社の近くに落ちた宇宙船の中から、巨大なビラ星人があらわれる。
セブンは他の宇宙船はキリヤマたちに任せて、その前に着地して対峙する。
シリーズを通してもひときわ印象に残るバトル用セットである。

ビラ星人、尻尾(?)を本物のエビのようにぐいっと曲げると、空中をスーッと飛んで、尾でセブンの体を突き飛ばす。
なんか、シャコ類が捕脚で獲物を攻撃するようなユニークな動きではあるが、こんなんじゃあセブンには勝てんよなぁ。

ついで、ワシャワシャ触手が動く口からビームを放つが、セブンに先読みされてバリアーで弾かれる。
不利を悟ったビラ星人はそろそろと後退するが、セブンは仲間にキチガイ扱いされた怒りをアイスラッガーに込めてその首をぶった切る。

そして、その死体の上に1号と3号に撃たれた最後の宇宙船が落下し、火力が強過ぎて失敗した車えびの姿焼きみたいになるのだった。
余談だけど、ビラ星人の肉ってうまいのかなぁ?
グロテスクな生き物ほど美味しいって言うが……
戦いの後、メディカルセンターで手当てを受けていたユシマ博士が意識を取り戻す。

キリヤマ「あっ」
ヤマオカ「博士、気がつきましたね」
今回、苦境のダンに対する素っ気無い態度で、ヒロインとしての株を下げたアンヌだが、それでもやっぱり色っぽい。

ぼんやりした顔で、パジャマ姿の上半身をベッドの上に起こすユシマ博士。
しかし、いつの間にかダンが自由の身になっているのは、若干違和感がある。
何故なら、ユシマ博士が発射台を傾けるところはセブン以外誰も見ていないのだし、ビラ星人が敗北したからと言って、ダンの容疑が晴れたことにはならないからである。
逆に、鉄格子を素手で壊すと言う、人間業とは思えない方法で脱走していることから、ますます疑いは濃くなったのではあるまいか。
かと言って、引き続きダンが宇宙人&スパイ扱いされていては番組が成立しないので、あまり細かいことは気にすまい。
ユシマ「ここはどこです、どうして僕はここに?」
キリヤマ「地球防衛軍、極東基地の中ですよ」
ユシマ「私はロケットに乗っていたのでは?」
ダン「博士、あなたはビラ星人の陰謀に利用されたんです……あなたを自由に操ってこの防衛基地を破壊しようとしたんです」
ユシマ「私がこの基地を?」
アンヌ「いいえ、博士が悪いんじゃありません、
全部ダンの仕業です」
ダン「おいっっっ!!!」 じゃなくて、
アンヌ「いいえ、博士が悪いんじゃありません、ビラ星人がいけなかったんですわ」
ユシマ博士は正気に戻るが、ダンにとって好都合なことに、洗脳されている間の記憶はすっぽり抜けているので、自分が宇宙人であることを知られずに済む。
……
そう言えば、ユシマ博士が機械室で何をしていたのか、結局触れられないままだったなぁ。
月並みだが、時限爆弾でも仕掛けていたのか?
ただ、さすがにキリヤマたちもそこに爆弾があったら気付くだろうし、ユシマ博士が爆弾を持ち込むのも難しいだろうから、機械に何か細工してシステムが暴走するようにしていたのかもしれない。
……だったら、このままにしといたら、まずいのでは?
以上、色々と腑に落ちない点はあるが、ビラ星人の周到かつ巧妙な侵略計画に、サスペンス溢れるストーリー、そしてスパイの汚名を着せられて窮地に追い込まれるダンの人間臭い描写など、本格的なSFドラマとして、見所の多い力作であった。
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