第3話「へんな男とおばけ野菜」(1989年2月12日)
冒頭、小奇麗な若い主婦が、八百屋で買い物をして自宅に帰り、結婚式の定番ソング「てんとう虫のサンバ」を口ずさみながら台所仕事をしている。
主婦「(中略)虫たちが口付けせよと囃し立て、あなたは『虫けらの分際で命令すんじゃねえっ!!』と言って踏み潰しました~♪」
……違ったかな?

それはともかく、主婦は二つレモンを買ったのだが、そのレモンがひとりでに増殖し、4つになってしまう。
主婦「八百屋さん、間違えたのかしら? もうけ、もうけ」
主婦はレモンの数が合わないのに気付くが、不審に思うどころか、ラッキーだと喜ぶ。
そんなさもしい根性を懲らしめるように、4つが8に、8が16に、16が32に、32が64に、64が128に、128が、えーっと……とにかく倍々ゲームであっという間に大量のレモンが出現する。
まさに、リアル「バイバイン」である。
しかも、ただ増えるだけではなく、その野菜は自ら動いて人を襲ったり、毒ガスを吐いたりと言う、はた迷惑なオプションまでついているのだ。
サブタイトル表示後、空き地で直人が子供たちを相手に野球のコーチをしている。

直人「ボールは両手でキャッチしなきゃ駄目じゃないか」
真冬と言うことで、その吐く息が白いが、冷静に考えたら、ロボットである直人が白い息を吐くと言うのは変だよなぁ。

と、土手の上に赤いブラウスにレザーのジャケットとタイトスカートで決めた洋子先輩が車を停め、こちらにやってくる。
洋子先輩、普通の特撮ヒロインと違って、いつも同じ服を着ず、頻繁に服装が変わるのも好ましい。
洋子「どう、元気してる?」
直人「冗談じゃないっすよ、なんで僕が野球のコーチなんかしなくちゃいけないんですかっ」
直人が早速不満を漏らすが、洋子は課長の真似をして腕を組み、
洋子「課長いわく、我がセントラルシティ署は市民との信頼の絆を強くする為に、ママさんバレーや、少年野球のコーチを定期的に買って出ている……」
直人「ゆえに捜査同様、命をかけてコーチをやってこい、あーあー」
洋子先輩の台詞を引き取って、溜息をつく直人。
それはそれとして、赤いブルマを履いてバレーのコーチをしている洋子先輩の姿を是非見たい!!

洋子「あら、まゆみちゃん、こんにちは」
まゆみ「こんにちは!!」
洋子「わあ、可愛い、手乗り文鳥?」
……
洋子先輩の方がよっぽど可愛いです!! 
まゆみ「うん、一郎君の飼ってるチャコ、練習している間だけ預かってるの」
洋子「わあ、可愛い」
……
洋子先輩の方がよっぽど可愛いです!! あ、さっきも言ったか。
洋子がしゃがんで文鳥を可愛がってると、その一郎少年が来て、
一郎「まゆみちゃん、僕のチャコ、大事にしてよ、命の次に大事なんだから」
まゆみ「うん」
安い命だな、オイッ!! ちなみにチャコと言う変な名前、「スカイライダー」33話に出て来たハムスターと同じだが、何か関係があるのだろうか?
直人がノックを再開しようとすると、さっきの主婦が慌てた様子であらわれ、直人たちに助けを求める。
その主婦こそ、一郎の母親だった。
半信半疑で直人たちが一郎の家に行き、直人が玄関のドアを開けると、

果たして、家に入りきらなくなった大量のレモンが溢れ出て、直人の体に降り注ぐ。
まゆみ「レモンが笑ってる」
直人「そんなバカな……」
さらに、レモンのひとつが人間並みの大きさになり、直人たち目掛けて白いガスを噴射する。
直人「毒ガスだ、みんな逃げろ!!」

さらに、別の方角から悲鳴が聞こえて来たので行ってみると、今度は大量のタマネギが坂を転がり落ちていた。
他にもかぼちゃ、大根、ピーマンなど、ありとあらゆる野菜が増殖してガスを撒き散らし、生き物のように人や車を襲い、街はパニック状態に陥る。

洋子「みなさん、すぐに避難して下さい、野菜が出しているガスは有害です、早く逃げないで吸ってると、命に関わります!!」
直人と一緒に、暢気に見物している近隣住民に呼びかける洋子タン。
ほどなく、セントラルシティ署の刑事たちも駆けつける。

村松「情けないねえ、セントラルシティ署きっての名刑事が野菜退治なんて……はい、かぼちゃちゃん、トマトちゃん、動いちゃダメだよ」
ガスマスクをつけて網を持ち、ぼやきながら野菜の群れに近付く村松たちであったが、野菜は空を飛んで逃げ回り、エイリアンのように強酸性の毒液まで吐いて反撃するので手に負えず、尻尾を巻いて退散するしかなかった。
レポーター「東京の一部の地域で発生した野菜の異常増殖はその後勢いが止まらず、毒ガスや強い酸のため、住民たちが避難するなどの状況が出ています」
危機感もあらわに現場から状況を報告するテレビレポーターであったが、
レポーター「政府では、異常増殖している地域が北落合と富士見町の一部と限られているところから、この現象は長くは続かないだろうと言っています」
最後に、政府の楽観的な憶測を垂れ流して締め括る。
ジバン基地でそれを見ていたまゆみは、

まゆみ「なにのんびりしたこと言ってんの、バイオロンの仕業だったら、長く続かないどころか、このまま放っといたら、東京中、野菜に占領されちゃうじゃない」
政府の見通しの甘さに、呆れ果てたような声を上げる。
……
これが当時の人気子役だったと言うのが俄かには信じられないが、時代の勢いと言う奴だろう。
考えれば、80年代の聖子ちゃんカットにしろ、90年代のワンレングスとか太い眉毛とかにしろ、当時は別に変だとも思わなかったのだから、不思議でもなんでもないのかもしれない。
無論、今度の一件も、バイオロンの仕業であった。
野菜に襲われて逃げ惑う人々の様子を、楽しそうにモニターで鑑賞しているギバたち。

ギバ「見ろ、愚かな人間ども、バイオロンの恐ろしさを思い知ったか」
マーシャ「さすが、ギバ様、野菜で町ひとつを占領しちゃうなんて、
もう翔んでる!!」
エクスタシーに達したような声を上げ、ギバの作戦を絶賛するマーシャ。
「翔んでる」か……これも、今となっては懐かしくも恥ずかしいフレーズだなぁ。
ギバ「やがて野菜が東京を覆い尽くし、毒とガスで誰も住めなくなる、無血占領とはまさにこのことだ」
一方、直人と洋子は、怪しい野菜の流通経路を辿って、郊外の農作地にやってくる。
聞き込みをすると、野良仕事をしていた女性から耳寄りな情報を得る。

女性「この先のビニールハウスに変な男がいたわよ」
直人「えっ、変な男を見た?」
女性「たーくさん野菜を作って運び出してたわよ」
いや、農家なんだから、当たり前なのでは?
ともあれ、二人がそのビニールハウスに行くと、ハウスのそばの畑に農家らしい男がぽつんと立って何かを燃やしていた。

洋子「すいません、このビニールハウス、使ってないって聞いたんですけど」
男「ああ、十分休ませたんで、また作り始めたよ」
男の台詞、いまひとつ分かりにくいのだが、ビニールハウスの土地を十分休ませたので、ハウス栽培を再開したと言うことなのだろうか?
それに洋子の質問もなんかピントがずれてるよね。
彼らはビニールハウスで野菜を作っている「怪しい男」を捜しに来たのだから、
洋子「すいません、このビニールハウスで野菜を作ってるって聞いたんですけど」
or
洋子「すいません、このビニールハウスの所有者を知りませんか?」
などと言わせるべきだろう。
また、男の曖昧な答えを聞いた洋子が、何の追及もせず、
洋子「別に変わったことはないようね、空振りかぁ」
実際にハウスの中を調べようともせず、さっさと引き揚げようとするのもなんか変である。
それはそれとして、「空振りかぁ」と言う言い方が、なんか子供っぽくて可愛いと思いました。
だが、直人は男からバイオロンの臭いを嗅いだのか、男の動きをマークする。
男は野菜で埋まった普通のビニールハウスの中を通り抜けると、別のビニールハウスに入り、何やら複雑な装置の前に腰掛けると、自分の頭にコードを繋げる。
コードの先には、小さな電波塔のような機械が立っていた。

男「育て、育て、私の可愛い野菜たちよ、もうじきこの超音波発信機の数十倍、いや、数百倍の出力タワーが完成する、そのときにはこんなちっぽけな畑の中じゃない、日本中で暴れさせてやるぞ」
今回の怪人ドロノイドの人間態を演じるのは、「ジャッカー電撃隊」や「メタルダー」でもお馴染みの林家源平さん。
そのタワーは、ドロノイドから発せられる特殊な超音波を増幅して放射する役目を果たしており、実際に、洋子たちの目の前で、それを浴びた野菜が次々と増殖していく。
ただ、のちの説明では、ただの野菜ではダメで、あらかじめバイオテクノロジーで改造されている必要があり、ドロノイドの電波だけではこの現象を引き起こすことは不可能のようにも解釈でき、この辺のメカニズムの曖昧さが、今回のストーリーのつまらなさに繋がっているような気がする。
つまり、改造された野菜は都内のいたるところに流通しているが、一部の地区だけで異変が起きたのは、そこが、実験用の電波発信機の及ぶ範囲だったからなのだろう。
それはともかく、二人はすぐにビニールハウスに踏み込む。

直人「貴様、バイオロンだな」
洋子「警察よ、大人しくしなさい」
男「……」
洋子「逮捕します!!」
男「……」
一瞬、洋子先輩にだったら逮捕されても良いかなぁと思ったドロノイドであったが、嘘である。

洋子「うっ!!」
無論、バイオロンの一味が大人しく縛につく筈がなく、物凄い勢いで突進して、洋子先輩の首を掴んで持ち上げる。
ちなみに榎田さん、女優にしては珍しく(?)歯列矯正してないのだが、そこがかえって親しみを感じさせる……と言うのは「あばたもエクボ」の類だろうか。

そのまま投げ飛ばされ、野菜の中に埋まる洋子先輩。
男は掴み掛かった直人も投げ飛ばし、逃走しようとするが、

男「ぐわぁーっ」
一瞬でジバンになった直人が追いすがり、洋子先輩のお返しとばかりに喉輪でその体を持ち上げる。
ジバンによってビニールハウスの基地は破壊されるが、男には逃げられてしまう。
気絶していた洋子、直人に起こされて目を覚ます。
洋子「一体どうなったの」
直人「敵は逃げました」
洋子「うっ」
立ち上がろうとした洋子の肩に激痛が走り、思わず呻く。
直人「大丈夫ですか、先輩は一旦署に戻って下さい、僕は捜査を続けます」
洋子「うん……」
素直に直人の指示に従う洋子先輩が可愛いのである!!
その後、逃げ出したチャコを探して、避難命令の出ている場所に入り込んだまゆみたちであったが、

偶然、あの男が言っていた巨大な出力タワーが地面からそそり立つのを目撃する。
正直、放っておけばいいと思うのだが、バイオロンは子供たちを捕まえ、地下のアジトに連れて行く。
CM後、直人が持ち帰った野菜の分析結果が出る。
ボーイ「このかぼちゃはバイオテクノロジーで遺伝子を組み替えたものと判明、超音波を照射すると活動を開始、細胞分裂して増殖します」
直人「と言うことは、あの男の頭が超音波を発信していて、機械で増幅していたと言うことか」
と、そこへ、ひとり逃げ延びたまゆみから電話があり、友達が攫われたこと、タワーが出現したことを知らせるが、電話の途中で戦闘員に見付かり、捕らえられる。
そして地下のアジトに連れて行かれ、一郎たちと一緒に縛られる。
そこへマーシャ、カーシャ、ドロノイドがあらわれ、

まゆみ「私たちをどうするつもり?」
マーシャ「どうするって? あんたたちが見たのはついさっき完成したばっかりの、超音波発信タワーなのよ、ごめんね、あれを見た以上、帰す訳に行かないのよ」
まゆみの質問に、にこやかな顔で恐ろしい答えを返すマーシャ。
しかし、あんなでかいもん、まゆみたちが発見しなくてもじきにジバンに見付かっただろうから、無理して口封じする必要があったか、甚だ疑問である。
それに、最初から殺すつもりだったのなら、なんで見付けたその場で射殺しなかったのか?

カーシャ「この町で野菜が増殖しているのはほんの小手調べで、あの巨大なタワーから超音波が出たらどうなると思う? 日本中にばら撒いた野菜たちが一斉に増殖し始めてたちまち誰も住めないガスの海になるのよ」
美しい足を見せ付けつつ、全くする必要のない説明を子供たちにするカーシャ。
カーシャ「じゃ、あとは頼んだわよ、私たち、こういうじめじめしたところ苦手なのよ」
悪の幹部なのに、ギャル気質を多分に持つ二人は、そう言ってさっさと引き揚げる。
その後、ジバンがアジトに突入し、

男にサーチバスターを浴びせて、その正体を暴き出す。
ま、それは良いんだが、これからラス殺陣だと言うのに、BGMが、宇宙刑事シリーズで、主人公が事件の探索中にかかるようなサスペンスフルな曲なのは、明らかに選曲ミス。
色々あって、ジバンがドロノイドを倒し、タワーもアジトも粉砕して事件解決。
エピローグ、一郎少年の家で、直人や洋子も参加しての食事会が開かれている。
一郎の母親の手作りのご馳走が並ぶテーブルを囲んで、まずはジュースで乾杯する。
一郎「ところでチャコは何処行ったのかなぁ?」
母親「何言ってんのよ、あなたの目の前にいるじゃない」
一郎「ヒィイイッ!!」 ……嘘です。
事件解決の時、ちゃんと一郎少年のところに戻ってます。
洋子「一体今度の事件、どうなってんのかしら?」
開口一番、素朴な疑問を口にする洋子先輩。

洋子「私の分かんない間に解決しちゃうんだもん!!」
膨れっ面でそっぽを向く洋子先輩が可愛いのである!!
直人「でも、毒野菜はなくなるし、ガスはなくなるし、良かったじゃないですか」
洋子「うん!!」
直人の言葉に、素直に頷く洋子先輩が可愛いのである!!
母親が運んで来た野菜サラダを、
「俺、サラダ大好き」「ビタミンいっぱい」 などと、心にもないことを言いながら頬張る子供たち。
無論、教育上の配慮と言う奴である。

まゆみ「お兄ちゃんもにんじん食べなきゃ駄目よ。はいっ」
直人「ええっ、僕、馬じゃないぜ」
生のにんじんを差し出されてしかめっ面をする直人。
その後ろでケラケラ笑っている洋子先輩が……もういいか。
以上、滑り出しはそこそこ有望だったが、中盤以降の盛り上がりに欠ける凡作であった。
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