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「気まぐれ天使」 第22回「ヒットラーが脱ぐ日」 後編


 夜、忍がわかりやすくしょぼくれながら会社から戻ってくる。

 結局、忍の……と言うか、友江の眼鏡にかないそうなモデル候補は見付からなかったのだろう。

 渚、忍が部屋に入ると、すぐにガラス戸の前に行き、少し開けて中の様子をうかがうが、仕事で疲れ切っている忍は、机の上など見向きもせず、コートを着たまま横になるのであった。

 つまらなそうにそれを見ていた渚、静かに立ち上がると部屋の前から数歩離れるが、

 
 渚「なにもかも、なにもかも捨てちまってぇ~、うん、バイパスを!! 突っ走る、フーフーフー」

 突然大声で流行歌を歌い出し、無理やりテンションを上げながら勢い良く忍の部屋の戸を開ける。

 渚「おっちゃん、風邪引くよ~」
 忍「うるせえな、向こう行けよ」

 しかし、前にも書いたかもしれないが、こんな可愛い女の子(しかも処女!!)と襖一枚隔てた部屋に住んでる忍が実に羨ましい。

 渚、若いだけあってせっかちで、すぐ机の上の手紙に手を伸ばし、

 
 渚「あ、手紙が来てる」
 忍「手紙?」
 渚「うん、沢島千鶴って人から……」
 忍「どうせ飲み屋のツケかなんかだろ、破っちまえ」
 渚「飲み屋のツケじゃないよ」
 忍「どうして分かるんだよ」
 渚「だって分厚いもん」
 忍「じゃあそこへ置いといてくれ」
 渚「読まないの?」
 忍「うるせえなぁ、向こう行けったら行けよぉ」
 渚「駄目、読んでぇ」

 渚、強引に手紙の封を切ると、忍の顔の前に突き出す。

 しぶしぶ手紙に目を通し始める忍であったが、

 忍「拝啓、加茂忍さま、ありがとうございます……」

 一行目を読んだ途端、その顔が急に真剣になり、体を起こして居住まいを正す。

 渚「ねえ、おっちゃん、どうしたの」
 忍「黙ってろ」
 渚「何の手紙?」
 忍「黙ってろ」
 渚「ねえ、沢島千鶴ってだあれ?」
 忍「黙ってろ!!」

 幼児のように無邪気に尋ねる渚を一喝すると、続きを読み始める。

 
 忍「……突然こんなことを書くとびっくりなさるかもしれませんが、それでも私は一番初めにありがとうございます……と言いたい気持ちで一杯なのです……」

 
 渚「……」

 自分が書いた手紙を忍が読むのを、少し濡れた目で見詰める渚。

 ここから、イメージ映像を交えて手紙の続きの内容が示される。

 
 忍「だって私は、あなたさまが『子供の世界』と言う雑誌にお書きになった『山彦ホー太郎』と言う童話を読んで、もう一度生き直してみようと決心したんですもの……私はその時死のうと思っていたんです、両親に先立たれ天涯孤独の私は幸せを求めた男にも捨てられ、生きる気力を失っていたのです。見知らぬ土地で人知れず……」

 
 忍「汽笛の音が聞こえて、列車の近付いて来る音が聞こえてきました。その時、不意にここへ来る途中の列車の中で隣に座っていた子供の見せてくれた『山彦ホー太郎』の文章が蘇ってきたのです」

 
 忍「同じ孤児なのにあの無邪気な明るさ、勇気に応えて山の神様がホー太郎に山彦と言う友だちを呼んでくれたというお話……俺は一人じゃないぞーっと、彼が叫ぶとあっちの山、こっちの山から一人じゃないぞーっと山彦たちが励ましてくれるというお話……列車が間近に近づいてきたとき、私ももしかしたら一人じゃないんだ、そんな気持ちがこみ上げてきて、私は思わず傍らの草叢に身を伏せました」

 ちなみにこの再現映像(と言ってもフィクションなのだが)に出てくる千鶴だが、最初、由利の浅野さんかと思ったが、良く見たらぜんぜん違う人だった。

 
 忍「(中略)これからも素晴らしい作品をどんどんお書きになって下さい、私はいつかお会いできる日を楽しみに、新宿のレストランで働いています。どうか、どうか頑張ってお願い致します。千鶴……」

 それにしても、一応プロの作家である忍を感動させてしまうほどの名文を一夜で書き上げてしまった渚、何気に文才があるんだなぁ。

 ともあれ、それが渚の手によるものだとは夢にも思わず、忍は感激して有頂天になり、下に降りて荻田夫妻や綾乃にその手紙を、鬼の首でも取ったよう大威張りで見せびらかす。

 人の良い荻田夫妻もそれを真に受けて涙ぐまんばかりに感動する。

 
 荻田「いやぁ、大したもんだね、あんたの童話も」
 もと子「ほんと、ほんとよ、まあ、実際にあんな馬鹿馬鹿しいものって実は軽蔑してたの、ごめんなさい悪かったわぁ」
 忍「おばさん、良いよ良いよ、よおし、俺ね、明日会社に行って辞表を叩きつけてやるよ、俺は童話一本で食って行くからね」
 綾乃「加茂さん、そんな、早まったことを……」

 綾乃、忍が会社を辞めると自分たちの暮らしもピンチになるので慌てて止めようとするが、興奮している忍は聞く耳持たず、綾乃にもその手紙を読ませ、

 忍「どうだい、バサマ、これでも俺に早まったって言えるか、ええ?」
 綾乃「だって、あなた童話一本じゃ生活が……」

 
 光政「……」
 渚「……」

 その場にいた光政は、すぐにそれが渚の策略だと見抜き、ものといたげに渚の顔を見るが、渚は「黙ってなさい」と言うように、その頭を小突く。

 忍「そんなこと問題じゃないよ、俺はね、この読者のためにも、この沢島千鶴さんのためにも俺はね、童話で生きていかなくちゃいけないんだ。それが俺に与えられた天からの宿命なんだよ!!」

 乗りやすい忍は、とうとうそんな妄言を口にするが、何も知らない荻田夫妻は無責任に拍手して忍をますます調子付かせる。

 もっとも、忍が会社を辞めて安定収入を失ったら、下宿代が滞る可能性があるので、少しはその点を心配しそうなものだけどね。

 忍が狂ったように舞い上がっていると、珍しく榎本が顔を出す。

 
 忍「お、エノ」
 榎本「やあ、な、なんだかさ、ちょっと先輩のこと気になったモンでね」
 忍「エノ、俺会社辞めるぞ」
 榎本「……やっぱり思った通りだよ。先輩、いい加減にしてくださいよ」

 半ば予期していたのか、榎本は大して驚きもせず、レジの机を叩いてウンザリしたように言う。

 綾乃「そうよ、榎本さんもそう思いになるでしょ。どうぞ加茂さんが頭冷やすようにおっしゃってくださいまし」

 自分の生活が掛かっているので、綾乃は榎本に援軍を頼むが、忍は先手を打って問題の手紙を榎本にも見せる。

 忍「エノ、お前これ見てみろ」
 榎本「……」
 忍「これを読んで俺に会社を辞めるなって言えるか?」
 榎本「……」
 忍「どうだ、エノイチ、これでもまだあの巴御前にバカにされながら会社に勤めろ、二足のわらじを履けっていうのか?」
 榎本「いやいや、それは……」

 いささか険悪なムードの二人の間に割って入るように、荻田がその手紙を肴に一杯やろうと持ち掛け、忍もすぐその気になって奥へ引っ込むが、

 光政「榎本さん、あの手紙ね、お姉ちゃんが書いたんだ」
 榎本「ええっ?」

 光政が榎本にだけ真実を打ち明ける。

 渚のほうも、自分たちの部屋に戻ると、綾乃に何もかも話す。

 綾乃「あのお手紙、お前が書いたの? でもね、そんなことしたってなんにもならないのよ、だって加茂さんの童話はちっとも売れやしないんだもの」

 綾乃、調子に乗った忍が会社を辞めたら、自分たちまで路頭に迷う羽目になると早くも泣きじゃくるが、渚の信念は揺るがず、

 
 渚「それでも良いと思った」
 綾乃「私、加茂さんとお別れするのイヤだわ」
 渚「私だってイヤ……それでも良いと思った」
 綾乃「……」
 渚「それでも良いと思ったの……」

 目に涙を溜めながら、自分に言い聞かせるようにつぶやくのだった。

 
 綾乃「……」

 綾乃も、初めて渚の忍に対する思いの深さを知ったように、真顔になって孫の顔を見返す。

 渚「おっちゃんと別れたくないけどさ、別れなきゃいけないって思ったんだ。おっちゃんに良い童話書いてもらいたいし、あたしたちが厄介になってるためにさ、おっちゃんが良い仕事できないなんて、そんなのイヤだ。そんなの私ヤだよ」
 綾乃「……」
 渚「ね、おばあちゃん、この家出よう、私一生懸命働く、おばあちゃんだってさ、拾い屋の特技生かせばまだまだ働けるじゃん。そしたらさ、そしたら、おっちゃん……きっと良い童話書いてくれるよ」
 綾乃「……」

 努めて楽天的に、明るい声を出そうとするが、最後は涙声になるのを抑え切れない渚。

 綾乃も孫の気持ちを理解したのか、悲しそうな、それでいて慈母のような優しい目に、晴れ晴れとした笑みを浮かべるのだった。

 
 榎本「……」

 そして、廊下で二人の会話を立ち聞きしていた榎本の胸には、何とも言えない切ない思いが込み上げてくるのだった。

 翌朝、榎本は会社の前で忍と会うが、浮かない顔の榎本と対照的に、忍は妙に自信たっぷりであった。

 榎本「例のモデルのことが気になりましてね」
 忍「はっはっはっはっ、心配するなよ、俺に任せとけって、最高なモデルを見付けたんだから!! まあな、部長が四の五の言ったらな、わらじを一足返したらいいんだから」
 榎本「あ、先輩!!」

 また忍が何かとんでもないことをやらかすのではないかと気が気でない榎本であった。

 その頃、渚と綾乃は早くも荷物をまとめて、自ら下宿を出て行こうとしていた。

 渚&綾乃「さよならさよならグッバーイ、さよならさよならありがとさん!!」

 誰もいない忍の部屋に向かって、おどけた別れの挨拶をする二人だったが、

 
 綾乃「……」
 渚「……」

 無論、別れが悲しくない訳がなく、襖を閉めると、膝の上に手を置き、肩を震わせ、溢れる涙を噛み殺してそのつらさに耐えるのだった。

 これだけ見るととても悲しいシーンなのだが、なにしろ、既にニ、三回同じようなことやってるので、いまひとつ真剣味が感じられない。

 もっとも、忍を怒らせて追い出されるのではなく、自分たちの判断で退去しようとするのはこれが初めてだったと思うが。

 さて、二人がそんな悲愴な覚悟を決めているとは夢にも知らない忍、早速友江に会議室に呼ばれ、課題について問われるが、

 
 忍、何を思ったか、壁にかけてあった鏡を持つと、それを友江の顔に向ける。

 忍「この人です、モデルは」
 友江「加茂さん!! 冗談もいい加減にして頂戴!!」
 忍「冗談じゃありません、僕は本気です。清純で可愛くて悪戯っぽい、これほどうちの条件にぴったりしたモデルはいないと思います」

 そう、他ならぬ友江をモデルに起用しようと言う、奇抜なアイディアであった。

 まあ、サブタイトルを見れば、最初から簡単に予想できるオチではあるが……

 
 友江「馬鹿馬鹿しい、私はここの人間ですよ、なんでモデルなんか……」
 忍「このアイディアは社長にも気に入っていただけると思います、な、副部長?」
 榎本「あ、ああ、このモデルだったら絶対だよ、灯台下暗しもいいところだ」
 友江「なんですか、榎本さんまで」
 榎本「はい」
 友江「そんな誤魔化しには乗りませんよ、第一、下着姿になるなんて……」

 考慮する価値もないとばかりに友江は拒絶反応を示すが、

 忍「へーっ、そうですか、しかし部長は日頃仰ってるじゃありませんか、仕事のためなら鬼になれ、蛇になれ、裸になれ!!」
 友江「裸ぁ?」
 
 忍もいつになく強硬に、自分のアイディアを押し通そうとする。

 忍「僕は第一の約束を守ったつもりです、でもどうしても気に入らないと仰るなら……よろしくこれを検討してください」

 忍、あらかじめ用意していた退職願を懐から取り出して置くと、友江の反応も待たずにさっさと退室する。

 友江「私はモデルにはならないわ、この辞表、受け取ったほうが良さそうね」
 榎本「いや、部長、そんな……あの、実はですね」

 榎本は、やむなく例の手紙のことを友江に話し、忍は舞い上がってるだけなのだと釈明する。

 友江、忍の童話が人の命を救ったと聞いても大して意外でもなさそうで、

 
 友江「そう言うこともあるかもしれないわね。私も加茂さんの童話、読ませてもらったわ」
 榎本「あ、そうすか、この、あの、頭が混乱して泣きたくなったでしょう?」
 友江「とんでもない、私は感動したわ」
 榎本「ええっ?」
 友江「そりゃあ、文章ももうひとつって感じがするし、ストーリーの飛躍も多過ぎるけど、でも、あの人の童話には何か胸に訴えてくるものがあるわ」
 榎本「部長……」

 友江の意外なカミングアウトに、驚きを隠せない榎本。

 ついでに友江は、忍はこのまま童話の道一筋に邁進すべきではないかと自分の考えを述べる。

 榎本、やっと腑に落ちたように、

 榎本「それで部長は、加茂さんにわざとあんなひどいことを……」
 友江「……」
 榎本「しかし、その手紙は読者からの手紙じゃなかったんです」
 友江「ええっ?」

 榎本の暴露に、思わず振り向く友江。

 夜、忍が帰宅すると、綾乃たちの姿がなく、部屋も空き家のようにがらんとしていた。

 
 忍「あれ、どうしたんだ、こりゃ?」
 光政「おばあちゃんとお姉ちゃんは引っ越し先探すって出て行ったよ」

 忍が戸惑っていると、光政が入ってきて淡々と告げる。

 忍「引っ越し先?」
 光政「加茂さんが会社辞めたら、自分ひとりでも食っていけなくなるだろう、だからおばあちゃんたち……」
 忍「おん、案外物分り良いじゃねえか……ま、しょうがねえだろな、俺もあの手紙に応えて素晴らしい童話を書かなきゃいけねえからな」

 二人が出て行ったと聞いても、忍は意外なほど平然としていたが、いくら舞い上がっているにしても、この態度はいささか冷淡すぎるようにも思える。

 そんな忍に、光政が冷水をぶっ掛けるように冷たく言い放つ。

 光政「加茂さんに良い童話なんか書ける訳ないよ」
 忍「なんだと、このやろ」
 光政「だって、加茂さん、お姉ちゃんの気持ちなんかてんで分かってねえじゃねえか」
 忍「渚の気持ちぃ?」
 光政「あの手紙はね、お姉ちゃんが書いた手紙なんだよ!!」
 忍「なんだと……てめえ、いい加減なこと言いやがると……」
 光政「嘘だと思うんだったら筆跡調べりゃいいじゃねえか!!」

 
 忍「渚の奴、人をコケにしやがって……」

 天国から一気に地獄へ叩き落されたような気持ちになった忍、鬼瓦のような顔になって悔しそうに唇を噛むが、光政はその体を強く突き飛ばすと、

 
 光政「ほらっ見ろ、やっぱりわかってねえじゃねえか、この家を出て行ったらね、明日からどうやって食って良いかわからない連中なんだよ、それでもね、お姉ちゃんは加茂さんのためにあの手紙を書いたんじゃねえか、バカヤロウ!!」

 かつてないほどの怒りを爆発させ、最後は忍を突き倒してしまう。

 シリーズ中、一番光政がカッコ良く見えるシーンである。

 
 忍「……」

 子供になじられ説教され、尻餅を突いたまま、口を尖がらさせて固まっている忍。

 シリーズ中、一番忍がカッコ悪く見えるシーンである。

 とりあえず、二人を探しに外へ出て、あちこち歩き回っていると、向こうから友江と榎本がやってくるのが見えたので、反射的に身を隠そうとするが、すぐ見付かってしまう。

 
 榎本「先輩のトコに行く途中だったんですよ」
 忍「俺のところへ?」
 友江「モデルの件でね」
 忍「あ、部長、あの、その件はもう一日待っていただけないでしょうか。あのきっと素晴らしいモデルを見付けます。だからあの辞表はですね……」
 友江「もう間に合わないわよ。約束は三日だったでしょ?」
 忍「そんな……おいエノ、なんとか言ってくれよ、頼むよ。俺ね、どうしても辞めらんない事情が出来ちまったんだよ、あの、俺、どんな笑われても貶されても、部長に屑だ間抜けだおっちょこちょいだって言われても構わない、でもどうしても辞められない事情が出来ちまったんです!!」

 忍、恥も外聞もかなぐり捨てて、友江に必死で嘆願する。

 
 と、友江、不意に、悪戯っぽい笑みを浮かべて振り向く。

 いやー、なんだかんだで、酒井和歌子さんは可愛い!!

 忍が捨てられた子犬のような憐れみを誘う流し目をしていると、友江はバッグから忍の出した辞表を取り出し、

 友江「これ、お返しするわ」
 忍「だって……」
 榎本「先輩は三日の約束は守ったじゃないですか。モデルをちゃんと見付けて来たんだから」
 忍「?」
 友江「私よ、モデルは」
 忍「部長……」

 友江のありがたいお言葉に、安堵と感動の入り混じった笑みを浮べる忍。

 友江、少し面映そうに、

 友江「童話を書くことだけはやめないで……これからも二足のわらじ、半人前っていびるかもしれないけど……」
 忍「部長!!」
 榎本「そうそう、先輩の辞められないわけの二人がね、そこの屋台で飲んでたよ」
 忍「屋台で? ちくしょう、人の気持ちも知らないで……あ、ちょっと失礼します」

 忍、二人に断ると満面に朱を漲らせて走り出す。

 ちなみに下着モデルになる決意をした友江さんでしたが、この後、社長から「人生舐めんなよ!!」と、死ぬほど怒られたそうです。

 まあ、でも、ほんとのところ、ターコがお色気DJとして新聞に載ったときもカンカンになっていた上役たちなので、社員、それも部長がモデルになるなんてことを認めるとはとても考えられないのは事実である。

 無論、実際に酒井和歌子さんが下着姿を披露してくれる、なんてシーンは出て来ないし、この後、その話題が社員たちの間で交わされることもないのでありました。

 特に第2クール以降、この番組は、単発ドラマとしての色合いが濃くなって、たとえば、この前やった21話では、忍の予想外の活躍で宣伝部は破格の予算を獲得してしまうのだが、だからと言って22話以降の仕事の規模が変わったりすることはないのである。

 さて、ここから、シリーズ全体の中でも、管理人が特に好きなシーンとなる。

 
 綾乃「加茂さん、さよーなら」
 渚「おっちゃん、グッバイ」
 綾乃「さーよならー、ジャバニーズグッバ~イ♪ 加茂さん、グッバイ」

 家出した直後だと言うのに、暢気におでん屋の屋台で酒を飲んでいる二人。

 いかにも彼らのやりそうなことで、その自由で気ままな生き方を見ていると、心がほっこりするのである。

 歌を歌って忍との別れを惜しんでいたが、

 
 忍「バカヤロウ!! 誰が俺んちの居候を卒業させてやるっつった?」

 いきなり二人の背後に忍があらわれ、大きな雷を落とす。

 忍「どけっ」
 綾乃「あ、加茂さん、あら……きつい」

 忍、強引に二人の間に割り込むと、腕組みをしたまま、

 
 忍「俺にもくれ、酒」
 おやじ「へいっ」
 渚「おっちゃん……」
 忍「わかってる、わかってるって、沢島千鶴さん!!」
 渚「……」
 忍「いつかな、その人のために素晴らしい童話を書くから」

 忍の言葉に思わず涙ぐむ渚。

 渚「からしが辛いよ……」
 綾乃「だからね、言ったでしゅよ、荷物まとめるなど無駄ですよって私」

 忍の出現にも、間断なくおでんを口に放り込んでいる綾乃を見て、忍が焦れたように、

 忍「酒、早く!!」
 おやじ「へい、どうもお待ち」
 綾乃「私も、もう一本入れてください」
 渚「私も」
 忍「……」

 綾乃の相変わらずのうわばみぶりに、驚異の目を見張る忍。

 それを遠くから微笑ましそうに見ていた友江たちは、

 友江「私たちは他で飲みましょ」
 榎本「ええ、そうですね」

 気を利かしてその場を離れるのだった。

 
 忍「乾杯!!」
 綾乃「どうも」
 忍「またお前たちと一緒に暮らすのか……」
 綾乃「えっへっへっ」
 忍「ついてねーなー」

 忍、口ではぼやきつつ、その顔はどこか楽しそうであった。

 以上、今回も「人の善意の素晴らしさ」を真っ直ぐに描いた秀作であった。
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コメント

優しい世界…。

特にエキセントリックな話でも無いし、どちらかと言えば他愛も無い話かもですけど、役者さん達の魅力で引っ張られちゃいますね。

Re: 優しい世界…。

まあ、他愛ないといえば全部他愛ないことになっちゃいますが、大好きなエピソードです。

ちなみに忍が怒らせたカメラマンは峰岸徹さんだったりします。

峰岸さんも出てたんですね。でも、こんな見終わった後に自分も優しい気分になれるドラマは良い物ですよね。ある種のファンタジーかもですけど、小さな暖かい幸福が在りますから。

安心して見れる?

>特に第2クール以降、この番組は、単発ドラマとしての色合いが濃くなって、たとえば、この前やった21話では、忍の予想外の活躍で宣伝部は破格の予算を獲得してしまうのだが、だからと言って22話以降の仕事の規模が変わったりすることはないのである。

 石立シリーズも特に気まぐれシリーズにおいては、余程の事がない限り松木ひろし脚本以外では後の回に波及することは決して無いので、そもそも21話は鶴島脚本、22話は窪田脚本なんで、その回だけの単発設定で見ていて安心(笑)

現代ドラマも、この様に安心して見れる作品が復活してくれないかなぁ…

Re: タイトルなし

返信ありがとうございます。

こういうドラマを地上波で放送すべきだと思うのです。

ちなみに峰岸さんと石立さんは「赤い魂」や「秘密のデカちゃん」でも共演されてますね。

Re: 安心して見れる?

>  石立シリーズも特に気まぐれシリーズにおいては、余程の事がない限り松木ひろし脚本以外では後の回に波及することは決して無いので、そもそも21話は鶴島脚本、22話は窪田脚本なんで、その回だけの単発設定で見ていて安心(笑)

そうですね。ま、友江の下着姿は見たかったですが……

〉こういうドラマを地上波で放送すべきだと思うのです。

ですねぇ…でも、この頃のホームドラマって文字通りに一家に一台しか無いテレビを家族皆んなで見て、笑ったり泣いたりしてた頃のドラマですもんねーそう考えるとホームドラマの意味って事から考えちゃいますね。

Re: タイトルなし

返信ありがとうございます。

考えたら、ホームドラマってもうほとんど死語ですもんね。

No title

「いつかな、その人のために素晴らしい童話を書くから」
このセリフって、意図してない愛のセリフみたいに
渚ちゃんは感じたのではと思いました。

放送当時、自分も下宿の息子のような気持ちで渚ちゃんを応援したり、ちょっとセクシーな目でみたりしていたのを思い出しました。

Re: No title

感動的な台詞ですよね。

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zura1980

Author:zura1980
70~80年代の特撮、80年代のドラマを中心に紹介しています。

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