第38話「乱心ささやきクーデター 暗雲の幻夢城」(1983年11月25日)
この回から、上原先生のお家芸、「悪の組織」内部での熾烈な権力闘争が本格的に始まるのである。
冒頭、今日も今日として地球侵略そっちのけで、シャリバン打倒におおわらわのマドーの皆さん。

ポルター「シャリバンめは、明日もこの地区をパトロールするでしょう」
ガイラー「ワシには秘策がございます、今度こそ、必ずシャリバンめを」
サイコ「ガイラー将軍、作戦はドクターポルターとよく相談して決めることだ」
ガイラー「はぁ」
今まで積み重ねて来た数々の敗北から来る後ろめたさを
微塵も感じさせないガイラー将軍の大言壮語に、ほとんど小学校の先生みたいな言い方で釘を刺すサイコ。
要するに「お前の秘策など当てに出来ない」と言われてるようなもので、大いに威厳を傷付けられるガイラーであったが、逆らうわけにも行かない。
そこへレイダーがやってきて、

レイダー「私には良く見える」
ポルター「レイダー、何が見えるというのだ」
レイダー「死兆星」 一同(それ、見えたらヤバい奴っ!!) じゃなくて、
レイダー「乱心、囁き、クーデター、この城に暗雲が渦巻いておる」
サイコ「クーデター?」
自分自身がその「暗雲」に他ならないくせに、いけしゃあしゃあとそんな警告をしてみせるレイダー。
さらに「血の臭いがする」と訳のわからないことをいいながら出て行く。
ガイラー「なんだ、あいつは、乱心だ、クーデターなどと」
ポルター「魔王様、この幻夢城には裏切りも陰謀もございません、我らマドーの心はひとつ、魔王様に忠誠を誓うものばかりでございます、命かけて誓います」
ない腹を探られてはかなわんとばかり、改めてサイコに忠誠を誓うポルターたちであった。

作戦を控え、自室で剣を振り回しているガイラー。
しかし、仮にも将軍だと言うのに、このビジネスホテルより殺風景な生活空間を見ると、ガイラー、一体何が楽しみで悪をやってるのか、理解に苦しむ。
もっとも、それは他の「悪の組織」も似たり寄ったりで、彼らが悪事を働いて得た富で豪遊しているシーンなどと言うものは皆無に近く、特撮番組においては、正義を標榜するヒーローサイドより、悪の人たちのほうがよっぽどストイックなのが通例である。
と、急に部屋が暗くなったかと思うと、空間にレイダーの姿が浮かび上がり、

手にした杖(?)から妖しい光を放ち、ガイラーを催眠状態に落とす。
レイダー「何故、たかが将軍の座に甘んじている? 大幹部の座を狙わないのだ」
ガイラー「大幹部?」
レイダー「お前がドクターポルターの支配下にいることはない、強いものが大幹部の座につくのは当然だ」
ガイラー「どうしろと言うのだ」
レイダー「自分だけの力でシャリバンを倒せば良い、そうすればドクターポルターはお前の前に跪くであろう」
レイダー、ガイラーの功名心とポルターへの競争心を煽り立てると、パッと消える。
だが、催眠状態にあるガイラーには、それが現実の出来事とは思われない。
ガイラー「怖くないもん!! 一人でおトイレ行けるもん!!」 じゃなくて、
ガイラー「夢か、奇妙な夢を見た……」
一方、レイダーはポルターの私室にもあらわれ、
レイダー「ガイラー将軍に気をつけろ、ガイラー将軍はお前の部下であることを快く思っていない、チャンスがあればお前を倒し、大幹部の座に就きたいと考えている」
ガイラーと同様に、ポルターの心にも疑心暗鬼を吹き込む。
もっとも、今回の事件では、ポルターは常に受身に回っているので、ポルターにまで言う必要はなかったように思える。
電、いつものパトロールコースを歩いていると、

川なのか、池なのか良く分からないが、小学校の先生らしい女性と、数人の子供たちがボート遊びをしていた。
タイミングの良さと言い、いかにも電の気に入りそうな女の子を多数取り揃えていることと言い、てっきりマドーの仕掛けた囮かと思いきや、全然そんなことはなく、偶然その場に居合わせた本物の子供たちであることが後に分かる。
と、水中からアシュラビーストがあらわれ、子供たちに襲い掛かる。
悲鳴を聞きつけた電が「待ってました」とばかりに駆けつける。
電「マドーだ、みんな、早く逃げるんだ!!」
電、空き地にぽつんと立っている山小屋を見つけ、迷うことなくみんなを向かわせる。
うーん、子供を避難させるにはいかにも危険な建物で、グランドバースを呼んで回収してもらった方が安全なのでは?
それはともかく、電が山小屋の窓から周囲を窺うと、蟻も逃さぬ包囲網が完成しつつあった。
ミスアクマ1「全員配置につきました」
ガイラー「よし、ワシの合図で一気にシャリバンを倒すのだ」
ガイラー、剣を振り上げ、バズーカ砲を構えている戦闘員たちに命令を下そうとするが、

レイダー「ガイラー将軍、チャンスだ、自分だけの力でシャリバンを倒せば良い」
再びレイダーの声が聞こえてきて、剣の根本の部分に、レイダーの顔が浮かび上がる。

レイダー「ドクターポルターはお前の前に跪くであろう」
ガイラー「……」
すっかりレイダーにたぶらかされ、異様な目付きになるガイラー。
なかなか号令が出ないので、堪りかねたミスアクマ1が戻ってきて、

ミスアクマ1「将軍、いかがなされました?」
ガイラー「……シャリバンはワシ一人の手で討つ、作戦は変更するぞ」
ガイラー、二人に申し渡すと、小屋に向かって歩き出す。
ミスアクマ1「将軍、勝手に作戦を変更なされては……」
ミスアクマ2「ドクターポルター様とご相談なさいませ」
必死に止める二人の声を無視して、ガイラーは突き進むが、
ミスアクマ1「つーか、シャリバンに勝てるんですか、将軍?」 ガイラー「そだね……」
ミスアクマ1の冷静な指摘に、たちまち正気に返って戻って来たというが、嘘である。
ただ、実際、ガイラーが肝心な点を見落としているのは事実で、電に一対一の勝負を申し出て、電もそれに応じるが、
シャリバン「あーん、おめえドコ中だぁ~?」 ガイラー「すいません、ほんと、すいませんっ!!」
まともに戦ってシャリバンに勝てるくらいなら、とっくの昔に倒してる訳で、こんな感じで、たちまち劣勢に追い込まれるのでした。どっとはらい。
マドーは、シャリバンが小屋の中に入ったのを見て、一斉に砲撃を加えるが、

シャリバン「シャリバンプロテクション!!」
シャリバン、寸前でバリアーを張り、子供たちを守りきる。
要するに、仮にポルターの作戦通りやってても、シャリバンには傷ひとつつけられなかった訳で、なんか空しくなるなぁ……
結局、マドーは大軍を擁しながらシャリバンひとりに撃退される。
ま、いつものことだけど。
帰還したガイラーが、上司からめちゃ怒られたのは言うまでもない。

ポルター「乱心したか、ガイラー将軍、作戦を勝手に変更したりして」
ガイラー「いや、ワシはこの手でシャリバンを討ちたかったんだ」
ポルター「作戦通りなら、シャリバンを討てた筈だ」
……え、ポルターさん、さっきの戦い、見てなかったんですか?
ともあれ、ガイラーに非があるのは明らかなので、サイコはガイラーにも謹慎処分を言い渡す。
CM後、

電「全く、こんな故障くらいで人呼び出して」
小次郎さんに呼び出されて、公園でバイクの修理をしている電。
口ではぶつくさ言いながら、その顔はほたほたと崩れ落ちるのを必死に堪えているように見えた。

理由は……言わなくても分かりますね!!
小次郎「まあまあいいから」
千秋「あれえ、剣玉って難しいわねえ」
で、何故かみんなが剣玉に夢中なのだが、当時、そんなブームありましたっけ?
小次郎さん、千秋の剣玉を借りると、

見事な手捌きで、次々と技を成功させる。
鈴木さんはほんとに得意なのだろう、子役たちが「素」で感心している。
と、そこへあの女性教師があらわれ、にこやかに挨拶し、電を小学校に連れて行く。
電が教室に入ると、

あの子供たちが一斉に拍手をして電を歓迎する。
そう、いささか大袈裟なのだが、子供たちが電への感謝の気持ちを伝えるために、ちょっとしたパーティーを開いてくれたのだ。
電もさすがに恥ずかしそうに頭を掻いていたが、教師にすすめられるまま、素直に黒板の前に座り、用意されたジュースやお菓子をつまむのだった。
同じ頃、ガイラーも自棄酒を呷っていたが、それにはあらかじめ興奮剤のようなものが仕込まれていた。
無論、レイダーの仕業である。
ぐでんぐでんに酔っ払ったガイラーは、ふらふらと玉座の間に入ってきて、ポルターにからむ。
ガイラー「ポルター、ワシの実力が怖いのだろう?」
ポルター「酔ってるな、ガイラー将軍」
ガイラー「飲まずにいられるか、ふっ、女は怖い、なんだかんだと難癖つけてワシを失脚に追いやろうとする……だがな、貴様ごときの陰謀に乗る、ワシではないぞ」
ポルター「作戦を無視したのもシャリバンを倒し大幹部の座を手に入れんがため、私には全て分かっているのだ」

ガイラー「なぁにをぬかす、魔王様も魔王様だ、女に甘い」
サイコ「カァアアアーッ!!」
ガイラーが口を滑らせた瞬間、足元がパックリ開いて、一瞬で地下の牢獄に落とされる。
ガイラー「これもドクターポルターの陰謀だ、ワシを抹殺するつもりだ」

一方、学校では、引き続き電が子供たちと遊んでいた。
正直、こういうシーンは見てるだけでも気恥ずかしくて、思わず奇声を発しそうになる。
と、電は急にめまいを覚え、視界がぼやけ、立っていることさえ困難になる。

教師「ふっふっふっふっ」
女児のぬくもりの残る椅子に縋り付いてなんとか耐える電であったが、先生は、電を気遣うどころか愉快そうに笑い出す。
教師「痺れ薬が全身に回ったようだな」
電「なにぃ」
さらに、男の声になって勝ち誇ったように言うと、アシュラビーストの姿になる。
そう、これらはすべてマドーの策略だったのである。
子供たちも戦闘員が化けたニセモノだった。
しかし、どうせやるなら致死性の毒を盛れば、それでマドーの大勝利だったような気がする。
それに、電がシャリバンに変身すると、痺れ薬のことは「なかったこと」にされてしまうので、あまり意味がないのだった。

だが、ポルターは、ちゃんと本物の教師と子供たちも押さえており、屋上に並べて見せて、シャリバンの動きを封じる。

男子たちの必死の演技と比べて、左端の女の子が、いかにもやる気なさそうに演じているのが、いかにも「らしい」んだよねえ。
子供を人質にとられては電は手も足も出ず、無抵抗でアシュラビーストにボコられる。
と、そこへあらわれたのが、肝心な時に一切助けに来ないリリィではなく、

コスチュームを一新したヘレンであった。
ヘレン「シャリバン、助太刀するわよ」
シャリバン「子供たちを避難させてくれ」
ぶっちゃけ、あんまりカッコイイとは言えない衣装だが、以前の、全身タイツのようなものよりは遥かにマシである。
何故なら、
こう言うシーンが期待できるからである!! ま、あくまで見せパンなんだけど、スペインのことわざに「10のホットパンツより1の見せパン」とあるように、管理人的にはこれでも十分嬉しいのである。
どうせなら、黒じゃなくて白にして欲しかったが、贅沢は言うまい。
と、同時に、そろそろ寒くなる季節だと言うのに、あえて生足を出してアクションしておられる矢島さんに満腔からの敬意を表したい。
ヘレンが子供たちを助け、シャリバンがアシュラビーストを倒して事件解決……と思いきや、戦いの途中、幻夢城である事件が起きる。
ガイラーが牢獄で不貞寝していると、フードを被ったミスアクマ1と2が入ってきて、ガイラーを刺し殺そうとする。
だが、腐っても将軍のガイラー、逆に二人に当身を食らわせ、気絶させる。
ガイラー「これくらいのことは読めていた」
そして一気に玉座の間に駆け上がると、ポルターに斬りかかる。
ただ、ポルターがわざわざ謹慎処分中のガイラーの命を奪おうとするとは思えないし、ミスアクマたちが独断でこんなことをするとはなおさら思えず、この事件には何か裏があるようである。
考えられるのは、レイダーがミスアクマたちを操ってガイラーを襲わせたということだが、劇中では何の説明もない。

勿論、サイコが目の前でそんな狼藉を許すはずがなく、ガイラーは、電撃ビームを浴びてあえなく悶絶。
敵の内部でそんなことが起きてるとは夢にも知らず、シャリバンは淡々とルーティンワークをこなし、アシュラビーストを撃破する。

ヘレン「シャリバン」
シャリバン「ヘレン、子供たちは?」
ヘレン「ええ、無事保護したわ」
シャリバン「ありがとう、助かったよ」
ヘレンの肩を叩くシャリバンの言葉には実感が篭っていた。
なにしろ、誰かさんと違って、ちゃんと仲間のピンチに駆けつけてくれる相棒を得たのだから……
一方、ひとまず騒乱の鎮まった幻夢城では、
サイコ「ひとつの椅子を用意した、この椅子に座るものはワシの後継者だ」
後継者と聞いて、野心に目をギラつかせるポルターであったが、

背後にあらわれた椅子を見てギョッとする。
それもその筈、

その赤い大きな椅子を背負っているのが、青白い顔のガイラー将軍だったからである。
サイコ「だが、誰が座るか、まだ決まってはいない。この椅子を目指して励むのだ」
昨日までの将軍が、今日は椅子の下敷きと言う、サイコによる恐怖の人事異動であった。
もっとも、あれだけのミスと失態を繰り返したガイラーである。いまだ処刑されずにいることを、むしろラッキーと思うべきなのかもしれない。
と、陰謀の黒幕であるレイダーがしれっとあらわれ、
レイダー「私も座る権利がある」
サイコ「あ、これ、シルバーシートやないで」
レイダー「やかましいっ!!」 と言うのは嘘だが、ここへ来て、レイダーもその野心をあらわにする。

そして、魔王サイコと、椅子に押し潰されそうになった惨めなガイラーの姿を挟んで、ポルターとレイダーが睨み合っていると言う、たいへん分かりやすい権力闘争の図となるのだった。
ちなみにナレーターは「ポルターとガイラーの分断に成功した」と言うが、元々二人はそんなに仲が良くなかったので、「ガイラーの追い落としに成功した」のほうが良かったかも。
ラスト、あの湖(?)にやってきた電とヘレン、そしてリリィ。

ヘレン「空気が美味しいわ」
リリィ「うん、大好き、地球の緑」
今回の戦いでは全く役に立たない……と言うより、役に立とうとさえしなかったリリィであったが、まるでヘレンと一緒に電を助けたかのような堂々とした態度を見せていた。
どてらい女だ。
電「なんとしても守らなきゃマドーの手から」
と、凝りもせずにボート遊びをしている子供たちが電に手を振り、電たちが手を振り返すシーンで幕となるが、
ナレ「シャリバンの活躍で子供たちにまた平和が戻った。陰謀渦巻く幻夢城、レイダーの野心とは? そして、リリィが真面目に仕事をする日は訪れるのか? 出社せよ!! 宇宙刑事リリィ!!」
じゃなくて、
ナレ「シャリバンの活躍で子供たちにまた平和が戻った。陰謀渦巻く幻夢城、レイダーの野心とは? そして、ガイラー将軍に復活の道は開けるのか? 赤射せよ!! 宇宙刑事シャリバン!!」
以上、電の戦いと、マドー内部の内輪揉めとをバランスよく描いた密度の濃い力作であった。
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