第12話「10ピラミッド!! 黄金仮面の迷路」(1977年7月2日)
この話、ほんとはスルーするつもりだったのだが、ハードボイルド路線の最後のエピソードなので、やはり書くことにした。
東京で行われていた「黄金のアフリカ展」と言う催しが終わるが、ファラオの黄金のマスクをクライムが狙っているということで、所有国のカーメン文化長官は、マスクを鬼瓦飛行場まで運搬する任務を、我らがジャッカー電撃隊に依頼する。

カーメン「この二個はイミテーションです、だがこのナンバー3は本物です。命より大事なものです」
五郎「クライムなんかに絶対渡しません」
だが、カーメン長官は念には念を入れ、二つのダミーと一緒に本物を輸送する計画を立て、大事な本物の入った箱を五郎に託す。
五郎たちはそれぞれのマシンを駆って、別ルートから鬼瓦飛行場へ向かう。
ま、戦隊シリーズではお約束のプロットであるが、運ぶものが美術品と言うのは珍しい。
カーメン長官は大使館に戻るが、駐車場でクライムに襲われてしまう。
しかも、その体には盗聴器がセットされており、

カーメンの声「この二つはイミテーションです……」
五郎の声「クライムなんかに……」
先ほどの会話は全て録音されていた。
クライムボス「この声は桜井五郎……本物のマスクは桜井五郎が運んでるんだ」
今回のクライムボスを演じるのは、説明不要の黒部進さん。
しかし、輸送するのは良いんだけど、

なんでこんな目立つ車で運ぶの?
せめてこんな時ぐらい、目立たない普通車を使って欲しかったな、あたい……
……
……
……
つーか、なんでスカイエースで運ばないの?
いっそのこと、それで相手国まで直接運んでやれば良いのでは?
色々あって、五郎はクライム戦闘機の空爆を受け、

さらには地雷地帯に誘い込まれる。
……
これもねえ……
クライムの狙いはマスクなのに、下手すればこの攻撃でマスクが壊れてしまうかもしれないではないか。
ともあれ、山の奥に入り込んだ五郎は、車を捨てて、マスクの入った箱をリュックに背負って徒歩で逃げようとする。

逃げる五郎に向けて、景気良くマシンガンをぶっ放す戦闘員の皆さん。
だから、マスクがぁあああ……
なんか、ジョン・ウー監督の「ブロークン・アロー」で、核爆弾があるから撃つなちゅうのに撃つ部下を怒ってるトラボルタみたいな気持ちになる。
五郎が谷を駆け上がって山道に出ると、ちょうど車が一台やってきたので、
五郎「すいません、お願いします」
運転手「どうぞ」
ヒッチハイクして、それで運んでもらうことにする。

五郎「ほんとに助かりました、たまに沢登りすると、くたびれてね」
五郎がまるで「いい旅夢気分」に出てるときのような素敵な笑顔で話し掛けるが、案の定、彼らもクライムの一味で、運転席と後部座席の間に透明なシャッターが降り、閉じ込められてしまう。
さらに催眠ガスを吸わされ、あえなく気絶してアジトに連れて行かれる。
ぶっちゃけ、マスクなどより、五郎の命をサクッと奪う方がクライムにとって有益だと思うのだが、「悪の組織」に通有の、融通のなさが災いしてそう言う発想が出来ず、

拷問用の椅子に拘束して、自白剤を打ち、マスクのありかを吐かせようとする。
五郎(体が鉛のように重い……
あ、俺、金属製なんだった……)
……と言うのは嘘だが、たまーに五郎たちが、自分たちが冷たいメカと電子部品の塊であるサイボーグであることを忘れてるんじゃないかと思えるのは事実である。
特に、13話以降では顕著である。
話を戻して、
五郎(体が鉛のように重い……何処だ、ここは?)
と、部屋に安置してあるファラオの棺の蓋が開き、その中に横たわっていた、黄金のマスクを被った人物が上半身を起こし、

ファラオ「桜井五郎、ファラオのマスクを出せ、何処へ隠したのだ?」
と、問い掛ける。
五郎「知らない……」
ファラオ「お前は鬼瓦飛行場へ向かって運んだではないか」
だが、それは、意識朦朧の五郎が見ている幻影に過ぎず、声の主はマスクも何も被っていないクライムボスであった。
クライムボスはリュックの中にあった空箱を見せ、

クライムボス「車にもリュックにもなかった、何処へ隠した、言え!!」
デビルスフィンクス「さあ、言え!!」
五郎「聞くだけ無駄だ、知らない、俺は知らない」
無論、ヒーローがそう易々と悪に屈服するはずがなく、五郎は頑として口を割らない。
アイアンクロー「ファラオの黄金マスクはヨーロッパのコレクターから是非手に入れてくれとせがまれておる、金に糸目は付けんとな」
クライムボス「なんとか方法を変えて吐かせます」
アイアンクロー「死んだって構わん、思い切ってやれ」
アイアンクローの許しを得たクライムボスは、今度は五郎の体に高圧電流を流すという、古典的な拷問を行う。
五郎「うっ、うっ……」
クライムボス「言え、ファラオのマスクは何処だ?」
五郎「知らない」
クライムボス「もっと電圧を上げろ」
この後、五郎はフルパワーを出して拘束具を引き千切ると、アジトから脱走するが、吊り橋の上でマシンガンで撃たれ、谷底に転落する。
それは良いのだが、

デビルスフィンクス「やったぞ、引き揚げろ!!」
戦闘員「へへへへ」
……
帰っちゃダメでしょおおおおおっ? 五郎からマスクのありかを聞き出さなきゃいけないのに……
しかも、五郎の体を眼下に見ながら、その死を確認しようとしないのだから、バカの極みである。
CM後、仲間と共に渓谷を走り回って五郎を捜索していたカレンは、遂に川の中に横たわる五郎の姿を発見する。

カレン、ムリッと言う音が聞こえてきそうなほど、豪快にホットパンツから尻肉をはみ出させつつ、意識を失っている五郎に駆け寄り、竜たちと協力して川から引き揚げる。
なお、一度スルーした12話だが、実はこのシーンだけは、13話の記事の中で紹介するつもりだった。
何故なら管理人は、女性のおっきなお尻が大好きだからである!!
ぶっちゃけ、このシーンがなければ、ほんとにスルーしてただろうなぁ。
五郎は直ちに病院に収容されるが、カーメン長官が急いで見舞いに駆けつける。
無論、視聴者には、それがニセモノであることは分かっている。

カーメン「どうですか、桜井さんは」
鯨井「まだ、記憶の方が」
カーメン「ファラオのマスクは何処です、思い出してください」
五郎「……」
カーメン「あれがなければ私、故国へ帰ることもできません」
五郎「……」
カーメンが必死に訴えるが、五郎は呆けたような顔をしているだけで、返事さえしようとしない。
鯨井「長官、拷問のショックが大きいんです。急いではいけません」
鯨井が横からたしなめるように言うが、拷問のショックと言うより、吊り橋から転落した時に頭でも打ったせいじゃないかと思うのだが……
原因がなんにせよ、五郎が記憶喪失になっているは事実のようだが、それを修理して直すことが出来ないと言うことは、五郎の脳自体は電子部品ではなく、本人のものが使われていると言うことなのだろう。
鯨井が五郎に反応テストを行うと、彼は自分がスペードエースであることは覚えていても、マスクの隠し場所は完全に忘れてしまったことが分かる。
鯨井「拷問に耐えながら、エースは念じ続けたに違いない、死んでも言うまい、漏らすまいと……そして記憶から追放してしまったんだな」
ほとんど廃人のようになった桜井を傷ましそうに見詰める仲間たち。

ナレ「鯨井隊長は、次に桜井がクライムに襲撃された場面を再現した」
続いて、スペードマシーンに竜と五郎が乗って、クライムに攻撃された時と同じような爆発の中を走らせる。
しかし、襲われたのは五郎ひとりで、その五郎は記憶をなくしているのに、鯨井たちはどうやって襲撃の様子を知ることが出来たのだろう?
それはともかく、その方法も効果がなく、相変わらず五郎の記憶は戻らない。
カーメン「あなたはここでマシンを乗り捨てた、それから、どうしました?」
五郎「……」
カーメン「ファラオのマスクを何処に隠しました? 思い出してください!!」
カーメンは五郎の肩に手を置き、躍起になって問い詰めるが、
カレン「無理です、桜井さんは一種の病気なんですよ」
カーメン「ええい、しかし……」
苛立つカーメンを尻目に、五郎はふらふらと車から降りると、

路傍に咲いていた白い花を摘んで、楽しそうに吹き飛ばす。
その様子は記憶喪失と言うより、完全なバカになっちゃったようにしか見えず、
カーメン「おお、クレイジー!!」
カーメンは絶望して頭を抱えるのだった。
いささかやり過ぎの感じがあるが、この手のプロットではありがちの、五郎が敵を欺く為にバカになったふりをしているのかと思いきや、後に、芝居でもなんでもないことが分かる。
一方、偽のカーメンが教えたのだろう、ジャッカーのひとりが使い物にならなくなったことを知ったクライムは大胆な悪事を次々と働く。
竜たちは出動するが、やはりリーダーを欠いては戦力不足で、デビルスフィンクスを倒せない。

竜「エース、クライムが蹂躙してるぞ」
文太「早く回復してくれ」
カレン「桜井さん!!」
五郎「……」
鯨井は、五郎の記憶は徐々に戻りつつあるが、本復するには何かきっかけが必要だと言う。

カレン「私はタクシーで転落して死にかけていたとき、あなたは炎の中から私を助けてくれたわ。それなのに私はあなたに対して何もして上げられない、ごめんなさい、ごめんなさい」
カレンは涙ながらに五郎の胸に縋りつくが、依然として五郎は無表情。
もし管理人が五郎だったら、カレンがホットパンツを思いっきり引っ張り上げて、尻の谷間に食い込ませるのを見れば、記憶もいっぺんで戻っていたであろうに……
と、カレンが何か思いついたように、
カレン「そうだ、あのときの事故を再現してみればいいのよ」
鯨井「しかし、それは危険が伴いすぎる」
カレン「他に方法がないのでしょ、是非やらしてください」
最初、鯨井は反対するが、カレンの熱意に押されてOKする。
しかし、五郎が記憶を失ったのは、マスクを死んでも守ろうと言う気持ちが原因なのだから、カレンの事故を再現したところで、意味がないような気がするのである。
五郎ではなく、カレンの記憶を取り戻させる為だったら、まだ分かるんだけどね。
で、第1話と同じように、カレンの乗った車を高架橋から落下させ、カレンが車外へ出たところで車に仕掛けておいた点火装置をオンにして、人工的な火災を起こす。
うーん、だったら、何も落下までさせる必要はなかったんじゃないかと……
ともあれ、最初は怪訝な顔で突っ立っていた五郎だが、炎の向こうから聞こえるカレンの「助けて」と言う声を聞くと、弾かれたように飛び出し、倒れていたカレンを助け起こす。

五郎「君、だいじょぶか、しっかりしろ」
カレン「……」
五郎「カレン、カレンじゃないか」
カレン「思い出してくれたのね!!」
そして、振り向いたカレンの顔を見た五郎は以前のような生き生きとした反応を見せる。
カレンの一か八かの賭けが成功したのだ。
と、直ちにカーメンが車で駆けつけ、

カーメン「戻ったのですか、桜井さんの記憶」
鯨井「もうだいじょぶです」
カーメン「そうですか、これで故国へ帰れます」
五郎(……どこかで、聞いた声だ)
肩の荷が下りたような笑顔を見せるカーメンであったが、その声を聞いた五郎が眉を顰める。
翌日、五郎はみんなと一緒に例の山に再び入り、乗り捨てた車の近くの大きなくぼみの中から、石で周りを覆って隠していたマスクを取り出す。

カーメン「おお、こんなところに……」
そう、五郎は車を捨てて逃げる際、本物はあえてその場に残し、あたかもリュックの中に入っているかのように見せかけ、自ら囮になって敵の注意をひきつけたのである。
少なくとも、偽のカーメンはそれを信じた。
五郎は、黄金のマスクを手にすると、それをカーメンの顔にあてがってみせる。
カーメン「な、何をする」
五郎「良く似合うぜ、クライムボス」
カーメン「私がクライムボス? 言いがかりだ」
五郎「変装していても声紋を誤魔化すことはできない、俺の耳はな、声を正確に分析することが出来るんだ」
カーメン「……」
五郎「本物のカーメン文化長官は、あの上だ」
五郎が頭上を指差すと、鯨井の操縦するスカイエースが飛んできて、その隣には、本物のカーメン長官が座っていた。
鯨井はスカイエースを着陸させると、偽のカーメンの前に立つ。
鯨井「大使館の地下室に閉じ込められていた」
しかし、なんでクライムはわざわざカーメンを殺さずにいたのだろう?
それはさておき、本物と対面させられては誤魔化しようがなく、偽カーメンは自らゴムマスクを脱いで素顔を見せるが、

その正体は、当然、クライムボスであった。
カーメン「おお……」
五郎「正体をあらわしたな」
クライムボス「ふっふっふっふっ、これは頂いていくぞ」
クライムボス、マスクを手に逃げ出すが、マスクは台座と一体になっているので、それだけ持って帰っても意味がないような気がする……と思ったら、良く見たら、逃げる際に、ちゃんと車の上においてあった台座を持ち逃げしていた。
この後、4人がジャッカーに変身、デビルスフィンクスを倒して事件解決。
と言うのも、クライムボスが誇らしげに持ち帰ったマスクを鑑定していたアイアンクローは、

アイアンクロー「うーん、ニセモノだ」
クライムボス「えっ」
アイアンクロー「一杯食わされたな、ジャッカーに」
クライムボス「そ、そんな……」
アイアンクロー「地獄への土産にくれてやる、死刑!!」
アイアンクロー、文字通り「鉄の爪」になっている右腕を飛ばし、クライムボスの喉を抉って処刑する。
そう、くぼみから五郎が取り出して見せたものは最初からニセモノだったのだ。
おそらく、事前にニセモノを埋めておいたのだろうが、カーメンの偽者に化けて自分たちを騙した相手を、ニセモノのマスクで騙すと言うのが、なかなか気の利いた返し技で、良く出来たスパイ映画でも見ているようで、感心してしまった。
で、肝心の本物だが、五郎が乗り捨てたスペードマシンの裏に隠されていたのだ。
面白い隠し場所だが、クライムがついでとばかりに車両を持って帰っていたらどうするつもりだったのだろう?
なので、無理に別の場所にせずとも、やはり隠したのはあのくぼみだったのだが、昨夜のうちに本物とニセモノを入れ替えておいた……と言う風にした方が現実的だったかもしれない。
あと、マスクは車体の下の燃料タンクの中に、ビニールで包まれて入っていたのだが、あんな危急の場合に、そんな凝った方法で隠す余裕があっただろうか?
実際、ここでは、自動車整備工場(?)の油圧ジャッキで車体を自分の背丈よりも高く持ち上げて、それでやっと取り外しているくらいだからね。

ともあれ、マスクは無傷でカーメン長官に返還されて、めでたし、めでたしとなるのだった。
もっとも、これから鬼瓦飛行場まで運ばなきゃいけないので、また襲われる可能性だってなくはないのだが、「悪の組織」と言うのは原則として、一度失敗した作戦は二度と繰り返さないものなのである。
以上、五郎の記憶喪失が治るまでのくだりが長過ぎて、やや間延びしている印象は受けるが、マスクを巡る知略を尽くした攻防戦はなかなか見応えがあり、このままハードボイルドタッチを維持して欲しかったと思わずにいられない力作であった。
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