第13話「青いキークイズ!! 密室殺人の謎・なぞ」(1977年7月9日)
本作、残念ながら当初のハードボイルドな作風が子供たちに受けず、視聴率が低迷した為、この13話から大幅な路線変更が行われることになる。具体的には前作「ゴレンジャー」に近い、明るくコミカルなタッチとなり、それと同時に今までついていた「4カード」「7ストレート」みたいな、ポーカーに関するフレーズがタイトルに付かなくなる。
さて、冒頭、岩崎と言う若いデザイナーが、林田民子と言う女性の運転する車で自分のマンションに帰ってくる。

岩崎「民子さん、未来は僕たちのものだぞ、全世界の女性に僕のデザインを着せて見せるからな」
民子「浩一さんなら絶対やれるわ」
岩崎「ああ、やってみせるとも、じゃあ、グッナイ!!」
民子「お休みなさい」
かなり酔っているらしい岩崎は、気取った仕草でそう言うと民子と別れてひとりでマンションに入っていく。
婚約している二人なのに、民子が相手の部屋に入ろうともせず帰って行くと言うのは、いくら健全明朗会計のちびっ子向け特撮とは言え、いささか物足りない気がする。
上機嫌の岩崎だったが、部屋でくつろいでいると、何か得体の知れないものに襲われてあえなく命を落とす。
ちなみにこの岩崎を演じているのが、ヘドラー将軍の香山浩介(藤堂新二)さんなのだった。
それにしてはいささかひどい扱いだが、彼が「スパイダーマン」の主役に抜擢されるのはこの翌年なので、仕方あるまい。
翌日、ジャッカー本部では、

文太「現代立花で大事なことは、この役枝を5つか7つ組み合わせることですね。つまり古典立花と違い、現代建築にもマッチする訳です、はい」
カレン「へー」
鯨井「キング、お前に生け花の心得があったとはな」
文太「えへへ」
文太が何かもっともらしい講釈を垂れながら、花瓶に花を生けていた。
路線変更に伴い、ジャッカー本部の雰囲気も、全体的に和気藹々としたものに変わる。
もっとも、この生け花うんぬんは、今回の事件とは何の関係もないのだった。
と、出先から五郎と竜が戻ってくる。
鯨井「どうだった」
五郎「第2埠頭から第3埠頭まで洗ってみましたが、手掛かりは……」
ジャッカーは、埠頭で密輸組織が活動しているとの情報を得て、捜査を行っているのだ。
で、今回のシナリオの一番おかしな点は、ここで緊急通信が入るのだが、
鯨井「密室殺人事件が起こった。キング!!」
一見、ジャッカーの仕事とは何の関係もない殺人事件だと言うのに、鯨井が迷うことなく文太を指名して出動を命じることである。
被害者が文太の知り合いだったとか、密輸事件の関係者だったとか、ジャッカーが出馬せねばならない理由が欲しかった。
ともあれ、文太とカレンは岩崎の部屋に行き、胸にナイフを突き立てられた岩崎の死体を見ながら、
文太「発見された時は完全な密室だったんでしょうか」
刑事「ああ、そりゃ間違いありませんな、今朝、彼女が電話しても出ないんで心配になって見にきたところ、鍵が掛かってるんで、管理人を呼んで一緒に入ったそうで」
部屋では第一発見者の民子がしくしく泣いていた。

文太「昨夜別れたとき、何か態度におかしい点は?」
民子「浩一さんは、自殺するような人じゃありません、殺されたんですわ」
文太「殺された?」
恋人の民子は断言するが、そばにいた中年紳士は、

武藤「岩崎君は最近悩んでいた、才能に行き詰まりを感じていたようでした」
刑事「となると、こりゃ、自殺ですな。酒を飲んでて発作的な」
男の言葉を聞いていた刑事は、早く帰りたかったのか、ろくに調べもしないで自殺で片付けようとする。
しかし、部屋がロックされていたからって、それを密室だと言い切っちゃうのはどうだろう。
普通は、犯行の後、合鍵で犯人がドアを閉めて逃げたと考えると思うんだけどね。
つーか、自分の胸にナイフを突き立てるなんて、時代劇の奥女中じゃないんだから、そんな方法で自殺する奴ぁいねえよ。
民子「嘘です、浩一さんが悩んでいたなんて」
武藤「岩崎君は私の弟子だ、弟子のことは私が一番よく知っている……ま、恋人の自殺を認めたくない気持ちは良くわかるがね。レイカ、失礼しよう」
男は穏やかに諭すように言うと、モデル風の美女を従えて部屋を出て行く。
文太「なにもんだ、ありゃ」
カレン「ジャン武藤よ、パリでの一流デザイナー」
次のシーンでは、早くも武藤が今回のクライムボスだと視聴者に明かされる。

武藤「林田民子は私を疑っている、消せ」
デビルグー「うーがーがー」
しかし、一応ミステリー仕立てのプロットなのに、あまりにネタばらしが早過ぎるような気がする。
その後、郊外の新興住宅地を車で走っていた民子がクライムに襲われるが、ひそかにその護衛をしていた文太とカレンが駆けつけ、戦闘員を蹴散らす。

ついで、今回の機械怪物デビルグーがあらわれるが、その名の通り、顔がゲンコツの形をした、そのまま「ゴレンジャー」に出れそうな愉快な造型のキャラであった。
二人はデビルグーに掴みかかるが、なにしろグーが大きいのでそのパワーは凄まじく、二人とも弾き飛ばされてしまう。

嫁入り前だと言うのに、豪快に全国のお茶の間に向けて股間を全開にしてしまうカレンさん。

無論、管理人が、こんな美味しいシーンを放っておく筈がなく、直ちに脳内に「コマ送りキャプ指令」が発令されるのだった。
五郎の乗るスカイエースの援護で二人はピンチを脱するが、デビルグーには逃げられ、民子は負傷して病院に収容される。

文太「あなたは何か隠してる、岩崎さんの死に関してね」
民子「……」
文太「話してくれませんか、岩崎さんは何故死んだんですか」
民子「殺されたんです」
文太「何故そう言い切れる? 岩崎さんは最近、才能に行き詰まりを感じてたそうじゃないですか」
民子「ジャン武藤がそう(言ったんですか)?」
この台詞、変だよね。
武藤がそう言った時、民子もその場にいたんだから……
ともあれ、民子は自分たちがジャン武藤の事務所から独立しようとしていたと告げ、さらに、ジャン武藤のデザインは実はほとんど岩崎の手によるものだと暴露する。
要するに、岩崎は武藤のゴーストライターをさせられていたのである。
鯨井もジャン武藤を洗う必要を感じ、文太にその調査を命じる。
そこで文太は、ヒッピー風の……と言うか、タメゴロー風の若者に変装して、武藤のビルにやってくる。
だが、受付の前にいる文太の姿は、マジックミラーで上階の武藤たちに観察されていた。

レイカ「ボス、あの男、どっかで見ました」
武藤「うん?」
レイカ「そうだわ、岩崎のマンションに来ていました」
武藤「ジャッカー?」
デビルグー「ジャッカー?」
武藤「待て」
武藤は血気に逸るデビルグーをおさえると、
武藤「私に面白い考えがある」
武藤はその正体を知りながら文太をアルバイトとして雇い、早速グラビアの撮影に同行させる。

そして、レイカをモデルにして海に面した岩場で撮影を行い、文太には大きなレフ板を持たせてその背後に立たせる。

にしても、レイカ役の女優さんがかなりの別嬪なのである。
清水恵子さんと言う人だが、多分、実際にモデルしてた人じゃないかと思う。
その場にいるスタッフは全員クライムの一味なので、互いに目配せをしながら、文太にカメラマンがうるさく指示を出し、

カメラマン「フレームに入っちゃうんだよ」
文太「そんなこと言ったって落っこちちゃいます」
どんどん文太を下がらせ、崖から落ちそうになったところをレイカがエルボーを食らわしてほんとに海に叩き込んでしまう。
ついで、レイカたちが海に向かってマシンガンを乱射する。
ま、サイボーグである文太がそれくらいで死ぬ筈がないのだが、
武藤「密輸ルートは鉄壁です」
アイアンクロー「ジャッカーが嗅ぎまわっていると聞くが、大丈夫か」
武藤「ジャッカーの一人はやっつけました」
アイアンクロー「うむ、次の手だ」
武藤はほんとに始末したと信じ込み、アイアンクローもその報告を鵜呑みにする。
ジャッカーと戦ったことのない武藤はともかく、何度も痛い目にあっているアイアンクローまでがそれを信じちゃうと言うのはかなり違和感があるが、このあたり、路線変更に伴い、4人がサイボーグだと言う基本設定すら「なかったこと」にされているようにも見える。
他の戦隊シリーズのようにヒーローが生身の人間だったら、あれで文太が死んだと思っても不思議はないからね。
そう言えば、路線変更後は、メンバーが自分の体に備わった特殊機能を使うシーンがほとんど見られなくなるんだよね。
無論、文太はピンピンしており、ナースコスプレをしたカレンが民子の包帯を取り替えてやっていると、ノックの音がして、

カレン「どなた?」
文太「殺されそうになったよ」
カレン「ええっ?」
文太「撮影会でね……崖から」
と、不意に民子が立ち上がり、岩崎の部屋にはマネキン人形があった筈なのに、事件の朝、それが消えていたと耳寄りな情報を告げる。
次のシーンでは、文太は困った顔をしながら洋装店に行き、

文太「これ下さい」
店員「下着ですね」
文太「いえ、まるごとです」
店員「えーっ?」
変態的な注文をして、店員をびっくりさせる。
さらに、

黒い下着を付けたマネキン人形を抱えた文太が、人込みでごった返す歩行者天国をひとりで歩くと言う、ほとんど俳優に対するイヤガラセとしか思えないぶっ飛んだ撮影が敢行される。
さすがに時間的には僅かだが、風戸さん、嫌だったろうなぁ。
まるっきり、ダッチ○イフだもんなぁ。
ま、ミッチー・ラブさんからしてみれば、
「それくらい何よ、私なんか、いつも尻丸出して歩いてんのよっ!!」 ってな感じだったかもしれないが。
ともあれ、文太は死ぬほど恥ずかしい思いをしてマネキン人形を持ち帰り、その改造を行う。

五郎「前の日にあったマネキン人形が事件の朝、密室から姿を消した……か」
文太「よし」
改造が終わると、文太たちはそれを持って再び岩崎の部屋に行き、民子立会いの下で、密室殺人のトリックを再現して見せる。
文太はラジコンでマネキン人形を操り、右手に持ったナイフで岩崎を刺す真似をしてから、その体をバラバラに崩す。
文太「各部分が電波でコントロールできる仕組みになってるんですよ」
文太がコントローラーを動かすと、今度はバラバラになった部品がひとつひとつ浮かび上がり、

天井の、かなり大きな換気口に吸い込まれていく。
……いや、そもそもどうやったらパーツが空を飛べるの?
ここはもうちょっとアナログに、パーツにテグスを結んで人力で引っ張りあげるというほうが妥当だったかも知れない。
と言うより……

文太「よし、これだ!!」
天井裏に忍んでいたデビルグーが同じ手口で岩崎を殺したシーンを思い描き、快哉を叫ぶ文太であったが、
文太「密室殺人のからくりは解けた!!」 一同(いや、これ、そもそも密室じゃねえじゃんっ!!) 五郎たちは、この事件の根本的な問題に気付いて、思わず心の中でツッコミを入れたと言う。
……と言うのは嘘だが、ほんと、これだけ間の抜けた「密室殺人」はなかろうという、トホホなトリックなのは確かだ。
そんな立派な出入り口があるなら、何も七面倒臭いマネキンなど操らなくとも、デビルグーがそこから降りて、岩崎を殺し、また天井に戻れば済むことではないか。
あと、こんなでかい換気口がありながら、この部屋を「密室」だと断言していた刑事の頭の中に、どんな味噌が詰まっているのか、とっくり調べてみたいものである。
五郎「民子さん、他にもジャン武藤について怪しいと感じたことはありませんか?」
民子「おかしいと言えば、ジャン武藤は二ヶ月ごとに東京とパリを往復していて、そのたびにファッションショーを開くんです」
竜「ファッションショーを年に6回も……」
文太「うーむ」
CM後、五郎たちはそのファッションショーを見に行き、武藤の尻尾を掴もうとする。
正装した五郎はカレンと、竜はフランスの貴婦人風の女性とペアを組んで会場に乗り込むが、

竜「では、のちほど」
楽屋の廊下のようなところまで来て、気取った仕草で竜と別れたその女性は、

案の定、女装した文太であった。
これはこれで「バトルフィーバーJ」っぽくて面白いんだけど、ハードボイルドタッチの序盤と引き比べると、なんとなく悲しくなってしまう管理人であった。
文太は着飾ったたくさんのマネキンが置いてある部屋に忍び込むと、ファッションショーの行われている間に、ジャン武藤が密輸をしている証拠を探し出そうとするが、マネキンには何の不審もない。
文太「おかしいな、何の細工もない……これで密輸したのではないのか」
ただ、そもそもジャン武藤が何を密輸しているのか、何のデータも与えられていないので、視聴者がいまひとつ乗れないシーンとなっている。
あと、文太が調べている様子と、ファッションショーのシーンとが、かなり細かくカットバックされるのだが、それがあまりに頻繁なので、はっきり言って鬱陶しいです。
ちなみにモデルの中には、15話に登場の女性隊員7号を演じる工藤るみさんの姿も混じっている。
やがてガードマンが巡回に来るが、

咄嗟にマネキン人形のふりをする文太を見ても、
ガードマン「カーッ、よく出来てるマネキンだな」
ガードマンが全く気付かないと言う、ドリフみたいなオチとなる。
だが、ガードマンで出て行って文太が安心した直後、周りにいるマネキン人形たちに襲われ、文太はあえなくクライムの手に落ちる。
五郎たちもその行方を探すが、とうとう見付からずじまいで引き揚げる。
一方、ファッション雑誌を見ていた鯨井は、
鯨井「ショーの本当の目的はこれだ、宝石の見本市だ。モデルが持っている化粧箱だ」
と、写真の中の化粧箱を指差す。
カレン「化粧箱?」
竜「ファッションショーは隠れ蓑だったのか」
鯨井「エース、キングが危ない」
鯨井の推理は正しく、ショーの後、

武藤「ヨーロッパから集めた上質の宝石ばかりです。どうぞ、ごゆっくりご鑑定ください」
モデルたちの化粧箱の下に隠してあった宝石を取り出し、バイヤーたちに見せる武藤であった。
ただ、何故鯨井がそれに気付いたのか何の説明もないし、「化粧箱の中に隠す」=「密輸の方法」にはならないと思うんだけどねえ。
それより、ファッションショーのシーンでこれ見よがしに映し出されていた、モデルの着ている服に付けられた宝石こそが密輸品で、服の一部として堂々と密輸していた……と言う方が意外性があって面白かったのではないかと思う。
取引がひと段落したところで、
武藤「では、ただいまより、アトラクションをご覧頂きます、我がクライムのデビルグー、対するはジャッカーの大地文太君の死闘です」

余興として、左手を鎖でつながれた文太が、右手に剣を持ってデビルグーと殺し合いをさせられることになるが、これも、文太は元々サイボーグなので、少々のことでは死なないと見てるほうも分かってるから、いまひとつスリリングなシーンになっていないのが残念だ。
それでも、さすがに苦戦するが、危ないところですでに変身済みの五郎たちが駆けつけ、文太を助け出す。

ま、そんなのはどうでも良いので、それを見て驚くレイカお姉様の美しいお顔でも貼っておこう。
文太も変身し、ここから場所を重機置き場に移してラス殺陣となる。
4人は無駄に長いアクションの末、ジャッカーコバックでデビルグーを倒す。

武藤「おぉのれっ!!」
二人はそれからやっと逃げ出し、アジトに駆け込むが、
アイアンクロー「うーん、しくじったな、クライムボス、死刑!!」
いつものように、アイアンクローによって粛清されてしまう。
その殺し方と言うのが、たくさんのマネキン人形に取り囲まれてナイフで刺されるという、因果応報的な死に方だった。
しかし、クライムボスはともかく、その愛人(?)のレイカまで殺したのは勿体無い。
こうして事件は解決するが、

五郎「スペードエース」
カレン「ハートクイン」
ゴミ袋みたいな服を着た五郎と、女子プロレスラーみたいな恰好をしたカレンが大勢のギャラリーの前でポーズを決めると言う、文太の街頭ロケ並みに恥ずかしいことをさせられている。
と、民子がその前に立ち、

民子「これは、
一見ただのバカに見えますが、ジャッカーの優しさと強さを形にしたものです」
それをデザインした民子が恥ずかしい解説を添えて追い討ちを掛ける。
さらに、似たような服を着た竜と文太も加わり、観客の冷たい視線に晒される。

民子「行動的なヤングにお勧めする、ジャッカーファッションです」
竜「なんでこんなみっともないこと引き受けたんだよ」
文太「民子さんの第一回目の発表会です。協力するの当たり前でしょ」
ぶつくさ言う竜を文太がたしなめるが、何が「当たり前」なのか、良く分からないのだった。
そして、恐ろしいことに、民子さん、これからデザイナーとして活動するつもりらしい……
以上、華やかなファッション業界を舞台にしたコミカルなエピソードで、密室殺人のトホホな謎解きを除けば、それなりに楽しめる力作であった。
そう言えば、肝心の岩崎の殺された理由が最後まではっきりしなかったが、おそらく、武藤の宝石密輸のことを知ったため、その口封じだったのだろう。
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