第27話「秘境の激戦!! ザダムの地獄の罠」(1973年11月17日)
前回に引き続き、地獄のタイアップロケが行われたエピソードである。
冒頭、なんとなーくイチローと戦闘員たちとのバトルとなる。
イチローが軽く蹴散らすと、岩山の上にザダムがあらわれる。
イチロー「ザダム、ザダムだな?」
ザダム「飛んで火に入るとは貴様のことだ、こうなればわざわざ地獄の罠など使うまでもない、自分で死ね!!」
イチロー「馬鹿め、俺の体にはもう念力遮断回路が組み込まれている、貴様の念力、俺には通用せん」
ザダム、前回同様、イチローの腕を念力でもいで、その腕でイチローの首を絞めようとするが、既に念力遮断回路を装着したイチローには効果がなかった。
それでも、自分への念力は防げても、ザダムの超能力そのものを無効に出来るわけではないので、

01に変身してザダムのそばにジャンプしても、

テレポーテーションで一瞬で逃げられてしまう。
それでも01がザダムの胸板にキックを撃ち込むと、ザダムは急に威勢を失い、よろめくようにして退却する。

ザダム「この瀞峡を行く、ウォータージェットの動きを見るが良い、地獄の罠はここで仕掛けられる」
アジトに戻ったザダムは、元気百倍、モニターにかなりのスピードで川を下っている遊覧船の映像を映し出して、ハカイダーたちに作戦の内容を説明している。
ちなみに「瀞峡」は「どろきょう」と読み、和歌山、三重、奈良の三県を貫流して熊野灘に注ぐ北山川の上流にある渓谷のことである。
勿論、地元観光協会猛プッシュの観光名所である。
ザダム、ついで川に掛かる高い吊り橋を見せ、
ザダム「シャドウナイトはこの吊り橋の上で待ち、地獄河童は水中から01を襲うのだ」
シャドウナイト「甘い、そう上手く筋書き通りに01が来ると思うか?」
ザダム「そのためにその女を使う」
シャドウナイトのもっともな疑念に、

ザダムは念力で、前回捕まえた故・内山博士の娘かつらの体をうつ伏せの状態で浮かび上がらせる。
……
このシーンは、どうにか女優さんを
騙して説得して、ミニスカで撮影して欲しかった。
それはともかく、ザダムは彼女の腰に地獄ベルトと言う時限爆弾をセットし、無理に外そうとしたら爆発すると脅し、
ザダム「瀞峡の吊り橋の下に行け、そうすれば自動的に外れる、分かったか、女? 地獄ベルトが爆発するのは午後3時きっかり、いいな、お前のその美しい体をバラバラにしたくなかったらウォータージェットに乗って瀞峡の吊り橋の下まで行くのだ」
意識のないかつらに話しかけ、一種の暗示をかける。

続いて、瀧見寺から見た那智の滝の映像が、前回に引き続いてしつこく映し出される。
観光名所は何度映しても映し過ぎることはないと言うのが、70年代のタイアップ撮影の鉄則なのである。

そして、瀧見寺の前に気を失ったかつらが倒れているのを、ヒロシたちが発見する運びとなる。
無論、ザダムがわざとその場に置いたのである。
かつらはミサオたちに保護され、イチローの待つホテルながやまに戻ってくる。
しかし、かつらがかなり目立つ時限爆弾ベルトをつけているというのに、鋭敏なセンサーを持つイチローが全く気付かないというのは変である。
それ以上に、一度シャドウにつかまったものが、何の理由もなく解放される筈がないのに、イチローもミサオもその点に一切関心を払わないのも、相当変である。
だが、もしイチローがこの段階でベルトに気付いてしまうと、かつらがウォータージェットに乗る必要がなくなり、必然的にタイアップ撮影も出来なくなるので、たとえ変でも絶対に気付いてはならないのである!!
それが70年代の特撮の宿命なのだ!!
さらに、

彼らの部屋に、新鮮な海の幸を惜しげもなく使った豪華な料理が並べられ、

仲居「この料理は、当ホテルながやま自慢の黒潮焼きでございます」
イチロー「どうも」
ほとんど、
「いい旅夢気分」のような、露骨なタイアップシーンとなるのだった。
にしても、前回も書いたけど、今回の旅の費用、一体誰が払っているのだろうか?
ミサオ、イチローが料理など眼中にない様子で、しきりと考え込んでいるのを見て、
ミサオ「どうしたの?」
イチロー「え?」
アキラ「お姉ちゃん」
ミサオ「なにさ」
アキラ「お姉ちゃん!!」
ミサオ「なんだよう!!」
アキラに何度も注意されて、
ミサオ「……あ、イチローさん、人間じゃなかったんだっけ……」
やっとそのことに気付き、しょんぼりと肩を竦めるが、
ミサオ「気にしないよね、イチローさん、そんな人じゃないモン、ね?」
イチロー「……」
ミサオの明るい声にも、イチローが、なおも爪を噛んで考え込んでいるのを見て、

ミサオ「ごめん、あたし!!」
ミサオ、音がするほど強く自分の頭を強く叩き、舌を出して詫びる。
うひゃあ、あんまり可愛くねえ!!
ミサオ、キャラクターや喋り方はとてもラブリーなのだが、肝心のルックスと合ってないのが憾みである。
無論、イチローがそんなこと(自分だけ黒塩焼きを食べられないこと)を気にする筈がなく、

イチロー「いや、俺の考えていたのはザダムのことだ。どんな人間、どんなロボットにも弱点はある筈だ」
ミサオ「そうは言っても月で生まれた悪魔のロボットだからね」
イチロー「……」
イチロー、ミサオの言葉から連想を受け、さっきの戦いでザダムが急にうろたえ出したのは、太陽の光を恐れたからではなかったかと気付く。
イチロー「ザダムは月で生まれた、だから太陽に弱いんだ。今まで奴の動きから見ても日光の下では5分と持たないに違いない」
なるほど、そう考えれば、前回、01を殺せるところだったのに途中で姿を消したのも、長い間太陽の下で活動できない弱点のせいだったと納得できる。
……
ただ、月にも太陽の光は当たってますよね。
つーか、大気がない分、地球より月のほうがはるかに強い太陽光線が降り注ぐことになるので、むしろ太陽さん大歓迎なんじゃないかと……
なんてったって、昼には気温が110度にもなるんだから、地球のほうがよほど過ごしやすいのではあるまいか。
それはともかく、イチローはもう一度ザダムに太陽の下で戦いを挑み、自分の推理が正しかったことを確かめる。
イチロー「間違いない、ザダムは太陽に弱いんだ、しかも日光の下での限界時間は3分間だ」
そのザダム、本部でビッグシャドウから小言を貰っていた。

ビッグシャドウ「ザダム、あまり出過ぎた真似をするな、01にお前の弱点を見抜かれたらどーするんだ?」
ザダム「申し訳ありません」
ビッグシャドウ「あくまでもお前たちは前面に出るな、ハカイダーやシャドウナイトを働かせれば良い。お前は我がシャドウの最高幹部なのだからな」
ザダム「仰るとおりにいたします」
まだ生まれて間もないザダムに、指揮官としての心得を教え込むビッグシャドウであった。
一方、ミサオたちの地獄のタイアップはまだ終わらず、

ミサオ「いける、いける、かつらさんにも食べさせてあげたいね」
欠食児童のような勢いで、黒塩焼きを貪り食っているのだった。
ミサオ「美味しい?」
アキラ「美味しいね!!」
仮に子役たちが魚嫌いだったとしても、それを拒否することは出来ないのだった。
と、ここでやっとかつらが目を覚ますが、ザダムに吹き込まれた爆弾のことが頭をよぎり、ミサオたちが止めるのも聞かずにホテルを出て行ってしまう。
その様子は、ザダムたちもモニターでしっかり見ていた。
ザダム「地獄の罠作戦は開始された、シャドウナイト、良いな、お前はこの地獄河童と組んで……」
シャドウナイト「断る!!」
皆まで言わせず、シャドウナイトはザダムの命令を突っ撥ねる。
ザダム「なに?」
シャドウナイト「俺一人でたくさんだ、地獄河童か何か知らんが、こんな奴、足でまといになるだけだ」
ザダム「ようし、では、地獄河童の能力を見せてやろう。地獄河童は見たとおり水の中は思いのままだ、だが地上ではひとつの能力しかない。見せてやれ地獄河童」
地獄河童「ヒヤーッ!!」
地獄河童、奇声を発すと、

地獄河童「ヒヒヒヒ」
ハカイダー「何をするか、はなせ!!」
何を思ったか、いきなりハカイダーの背中にしがみつき、小泣きじじいのように張り付いて離れようとしない。
ザダム「この地獄河童は一度誰かの背中にへばりついたら最後、死んでも離れん」
シャドウナイト「馬鹿馬鹿しい、こんな能力が01に対してなんになると言うのだ?」
シャドウナイトが、苦々しげに疑義を呈すと、
ザダム「この地獄河童にお前の眼力殺人光線を当ててみれば分かる」
シャドウナイト「なんだと?」

ザダム「いいか、これは瀞峡を走るウォータージェットだ、そこに01を誘い出す、そしてシャドウナイトは地獄河童を水爆河童に変える。01はこれで水爆を背負っているも同じことだ」
ザダム、実際にイチローが地獄河童にしがみつかれ、眼力殺人光線を浴びて地獄河童が水爆を背負ったミイラとなり、イチローが逃げようとして空中に飛んだところを再び眼力殺人光線を浴びて爆死する様子を映して見せる。
ただ、なんで地獄河童に殺人光線を浴びせると水爆河童に変わるのか、その辺がさっぱり分からない。
つーか、水爆持ってるなら、なにもそんな面倒なことをせずとも、イチローの泊まっているホテルで爆発させれば簡単に殺せるではないか。
あと、そんなことしたら、シャドウナイトも巻き添えを食って死ぬと思うんですが……
ま、ぶっちゃけ、これは無理にでもウォータージェットをストーリーに組み込むためにひねり出された苦肉の策であろう。

シャドウナイト「なるほど、そういうわけか」
ハカイダー「自爆して死ぬだけのために生まれて来たとは、恐ろしい奴だ」
さすがのハカイダーも、最初から自爆することが宿命付けられている地獄河童の生い立ちに、驚嘆とも憐れみともつかぬ声を上げるが、
地獄河童「ヒヒッ、ヒヒヒヒッ!!」 ハカイダー「……」
そんな重い宿命を背負っているとは思えないほど地獄河童はファンキーな性格の持ち主で、二人の目の前で、おどけたように踊って見せるのだった。
さて、かつら、そんな恐るべき作戦が進行中とも知らず、観光バスでウォータージェット乗り場に着くと、切符を買って直ちに乗船する。

ガイド「差し掛かってまいりました、この川、はるか三重県の大台ヶ原山から流れている北山川でございます。これより瀞峡まで右が奈良県、左が和歌山県の……」
そしてそんな恐ろしい計画より遥かに大切なタイアップロケも、着々と進められていたのである!!
だが、かつらはガイドの案内など上の空で、腕時計と睨めっこしながら座っていたが、遂に我慢できなくなったように船長のところへ行き、

かつら「あと13分で瀞峡の吊り橋の下までやってください」
船長「13分? はっはっはっ、そいつはちょっと無理だな」
かつら「でないと、私の体爆発しちゃうんです!!」
船長「爆発?」
かつら「お願いします、このベルト、時限爆弾なんです。あと10分しかないんです」
船長「そ、そりゃあ、大変だ」
船長は血相を変えると、直ちにかつらの体を船から投げ捨て、何事もなかったように運行を続けたそうです。
第27話「秘境の激戦!! ザダムの地獄の罠」 ―完― じゃなくて、
船長は血相を変えると、かつらの巻いているベルトを外そうとするが、

イチロー「危ない、下手に触ると、爆発の危険性がある」
船長「ええっ」
イチロー「僕が外します」
それを止めたのが、ミサオから話を聞いてダブルマシーンで先回りして船に飛び乗ったイチローであった。
ちなみに船長を演じているのは、「キカイダー」の山陰ロケにも参加していた轟謙二さんである。
本職は、地方ロケのコーディネーターだとか。

かつら「あと5分しかない」
イチロー「しっ、静かに、少しでも間違うと爆発する」
かつら「でもあの吊り橋の下まで行けば、自動的に外れると言われたんです」
シャドウの恐ろしさを知らないかつらは、無理に外そうとしないで吊り橋の下まで行くべきではないかと主張するが、
イチロー「もしそれが嘘だったとしたらどうします?」
かつら「……」

やがて問題の吊り橋が見えてくるが、吊り橋の中央には、既にシャドウナイトが立って待ち構えていた。
息詰まるような緊張の中、ウォータージェットは吊り橋の下を通り抜けるが、シャドウナイトはザダムの指示を守って、何の手出しもしてこない。
イチロー、船を止めるよう船長に頼んでから、

イチロー「吊り橋の下を過ぎたら自動的に外れるといったのはやはり僕をおびき出すための作戦だったんだ。だが、時限爆弾だけは本物だ」
イチロー、さらに作業を続けて、残り0秒で何とか時限爆弾を止める。
……
いや、0秒だと爆発しちゃうのでは?
あるいは、最初から爆弾自体、フェイクだったのかもしれない。
あくまでザダムの狙いはイチローの命なのだから。

地獄河童「ヒヒヒヒヒヒ」
イチロー「おのれ、シャドウのロボットか」
地獄河童「背番号37、地獄河童、ヒヒヒヒヒ」
ともあれ、爆弾を解除したイチローが思わず気を緩めた隙を狙い、水中に潜んでいた地獄河童が船に飛び乗り、シミュレーションどおり、イチローの背中にしがみつく。
イチロー、しがみつかれたまま01に変身するが、どうやっても河童を引き剥がすことが出来ない。

ついで、頭上のシャドウナイトが眼力殺人光線を地獄河童に浴びせると、その姿が河童の干物のように変わり、何故だか知らんが、その体が水爆になる。
しかし、イチローが船を止めるよう指示したからいいようなものの、そのまま船を走らせていたら、シャドウナイト、一体どうするつもりだったのだろう?
01「しまった、こいつの体自体が水爆だ!!」
シャドウナイト「飛べ、早く飛べ、01、そうすればこの地獄の罠作戦も仕上げに入る。貴様はバラバラの部品となってくたばるのだ」
いや、至近距離で水爆が爆発したら、バラバラどころか、溶けて消滅すると思うんだけどね。
つーか、橋の上から眼力殺人光線が届いたのなら、別に01が飛ばなくても、そこからもう一度撃てば良いのでは?
だが、01、一旦吊り橋の上に飛んでシャドウナイトをぶん殴ってから、もう一度01ドライバーで体を高速回転させながらジャンプし、なんとか地獄河童を引き剥がす。

あわれ、地獄河童は使命を果たせぬまま、川に落ちて爆死する。
……
いや、水爆の威力ってこんなもんでしたっけ?
地獄河童の体そのものが水爆なのだから、水爆を爆発させずに地獄河童だけ倒すのは無理なんじゃないかと……
やっぱり、水爆と言うのは設定に無理があったんじゃないかなぁ。
その後、01は行き掛けの駄賃とばかりにシャドウナイトをもサクッと撃破する。
大幹部にしては、あまりにあっけないシャドウナイトの死であった。
エピローグ。
何故かかつらだけ「さんふらわあ」に乗り、ミサオたちと別れの挨拶を交わしている。
かつら「とっても楽しい旅だったわぁ」
嘘をつけ。 ついさっき危うく水爆で死ぬところだったんだぞ。
ま、タイアップ撮影においては、まかり間違っても、
かつら「もう二度と来たくないわ」
などと言うネガティブ系の台詞は出て来ないようになっているのである。

ミサオ「そうね、綺麗な景色を見て、美味しいものたくさん食べて」
アキラ「いいところだね、勝浦って」
ヒロシ「うん!!」
……
いまだかつて、これほど分かりやすいタイアップ台詞があっただろうか、いや、ない!! つーか、それ、人を見送る側が言う台詞じゃないと思うんですが。

ザダム「01め、このザダム様を一度ならずニ度、三度と愚弄するとは、このままにはしておかぬぞーっ!! 良いな、ハカイダー」
ハカイダー「言うまでもないこと、気に入らん奴ではあったが、シャドウナイトの仇はきっとこの俺が討つ!!」
ラスト、しつこく瀧見寺をバックに、01への怒りを燃やすザダムと、シャドウナイトの復仇を誓うハカイダーと言う、最後の最後まで油断できないタイアップ尽くしのエピソードであった。
なお、ハカイダー、「気に入らん奴」とわざわざ断っているが、これは照れ隠しで、以前はしょっちゅういがみ合っていたが、最近はかなり仲良くしてたから、本気でシャドウナイトの死を悼んでいたと思われる。
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