第41話「冬の怪奇シリーズ 怪談!!獅子太鼓」(1973年1月12日)
この41話から43話までは、「冬の怪奇シリーズ」と銘打たれた、怪奇色の強いエピソードが続くが、はっきり言って、どれもこれも面白くない。
本音を言えば、ぜんぶスルーしたいところだが……
この時期の作品が低調なのは、シナリオが退屈なのが最大の原因だが、ゲストがおっさんばっかりで、可愛いゲストヒロインがまったくと言っていいほど登場しないのも足を引っ張ってると思う。
44話の中田喜子さんも、ほんのチョイ役だしね。
冒頭、同時期の「パパと呼ばないで」で見られたような、ポンポン船が行き交う、運河沿いの下町の風景が映し出される。
その一画にある神社で、ダンを含む数人の子供たちが集まって、かくれんぼをして遊んでいた。
もっとも、鬼になったケンちゃんは、数を数える代わりに「だるまさんが転んだ……」を繰り返しているので、いささか混乱してしまう。
「だるまさんが転んだ」なら、別に隠れる必要はないと思うが、ダンと新太と言う少年が、神社の敷地内の建物に隠れようとすると、そこに新太の父親がいて、何やら一心不乱に奇妙な形の像に祈りを捧げており、うるさそうに二人を追い払う。

父親「カイマ様、カイマ様、めでたい獅子舞に乱暴するような、世間の奴らになにとぞバチが当たりますように!!」
……
管理人、用事があるんで家に帰りたいんですが、ダメですか?
ダメ? あ、そう……
なお、父親が拝んでいる小さな仏像、父親はカイマと呼んでいるが、インド神話の神鳥ガルダ(ジェットガルーダのガルーダ)に由来する迦楼羅(カルラ)、すなわち、仏教を守護する八部衆のひとりをモチーフにしているのは言うまでもない。
で、要するに神様をモチーフにした超獣なのに、そのやることが「獅子舞をバカにした奴らに仕返ししてやる」では、みみっちくて泣けてしまうではないか。
一方、追い出された二人は、神社から出て新太の家の物置小屋に隠れるのだが、そんなところに隠れたら、一生見つけてもらえないだろう。
つーか、かくれんぼなら、隠れるのはそのエリア内に限ると言うのが、暗黙の約束だと思うのだが……
もっとも、二人が物置小屋に入るとすぐ、ダンと新太以外は全員見つけたと言うケンちゃんの声がして、ケンちゃんが、ホークアイなみのずば抜けたサーチ能力を持っていることが窺えるので、二人が掟破りの場所を選んだのも、それを見越してのことだったのかもしれない。
奥に隠れようとしたダンは、暗闇の中に不気味な怪物の顔を見て悲鳴を上げるが、それは獅子舞の頭であった。

ダン「こんなものがなんでこんなところにあるんだい?」
新太「父さんは獅子舞の名人なんだ」
ダン「じゃ、今年もやったんだね」
新太「酔っ払いに獅子舞なんかやめろと言われて投げ飛ばされ、足を怪我しちまったんだ」
ダン「ふーん、ひどいね」
新太「もう獅子舞なんかやってやらないと言ってるよ」
などと言ってると、人間離れした探索能力を持つケンちゃんが小屋の前までやってくる。
ダンと新太は、自分から出て行って獅子舞の頭でケンちゃんを驚かし、かくれんぼは終了。

ちなみにケンちゃんを演じるのは、19話の河童の話に出ていた子役である。
新太「そうだ、かくれんぼしてたんだっけ」
ケン「二人ともずるいや、こんなところに隠れてたら見付かりっこない」
ごもっとも。 新太は、自分でその獅子舞を被ると、自分を超獣に見立てて、他の子供たちと一緒に超獣ごっこに興じる。
と、そこへ、パトロール中の北斗と美川隊員が顔を出す。

北斗「こんなところまで遊びに来てるのか」
ダン「うん、北斗さん、なんかあったの?」
……
美川隊員の横パイ、最高です!! アンヌのロケット型横パイも最高だけど、こういう控え目な横パイも管理人は大好きなのである。
美川「こちら美川、本部どうぞ」
吉村「こちら本部、BX地点の状況はどうだ、何か変わったことはないか」
美川「はい……異常ありません」
吉村「かすかだけど、確かにさっきからBX地点には超獣らしいものの気配があるんだ。もう少し、注意して見回ってみてくれ」
北斗「子供たちが超獣ごっこをしてるほかは超獣らしい気配はありませんが」
吉村「了解」
二人が本部と交信を終えると、
ダン「北斗さん、この辺に超獣の気配があるの」
北斗「ああ、本部の計器がかすかに感じて、それで来たんだが……」
子供たちは、超獣ごっこより本物の超獣を探す方が面白いとその場から散らばり、新太とケンちゃんは一旦獅子舞や太鼓を物置に戻しに行くが、何故か、新太の頭から獅子舞が取れない。
困ったケンちゃんは、新太の父親を連れてくるが、父親が獅子舞を取ろうとしていると、不意に獅子の目が怪しい光を放ち、それを浴びた父親は硬直したように直立姿勢になる。

父親「……」
幽鬼のような顔色になった父親は、無言で息子の……いや、獅子頭の指図に従い、そこにあった太鼓を肩に掛け、獅子舞を演じる時のようなリズミカルな囃子を始める。
言い忘れていたが、父親を演じるのは名パイブレーヤーの堺左千夫さん。

太鼓にあわせて、獅子頭が生あるもののように口をパクパク開閉させていたかと思うと、一瞬で巨大な超獣の姿になり、屋根を突き破って聳え立つ。
泡を食って逃げ出したケンちゃんは、北斗たちと合流する。

ケン「シンちゃんが超獣に!!」
父親の太鼓に導かれ、家屋を踏み潰しながら驀進してくる超獣シシゴランを見上げる北斗たち。
ちなみにちょっと分かりにくいのだが、今度の事件の黒幕はあのカイマ(邪神カイマ)であり、カイマがシシゴランを操っているらしいのだが、そのシシゴランが父親を操って太鼓を叩かせているようにも見えるので、見てるほうはいささか混乱してしまう。
ま、そもそも、獅子舞が巨大化して超獣になると言うアイディア自体、クソつまんないのだが……

それはそれとして、悔しそうに唇を噛んで超獣の跋扈を見る美川隊員が可愛いのである!!
北斗「やっぱり超獣がいたのか」
美川隊員が本部に連絡し、竜たちがあってもなくてもどうでもいいような会話を交わしてから出撃したところでCMです。
CM後、北斗は美川隊員に子供たちを避難させるが、ダンだけ従おうとしない。
どうでもいいが、超獣を目の前にしていながら、CMを挟むまで子供たちを逃がそうとしなかった二人の対応が、めちゃくちゃスローに見えるのである。
美川「ダンも逃げなくちゃ駄目よ」
ダン「やだい」
美川「ダンちゃん!!」
美川隊員がいくら言ってもダンはその場を動こうとしない。

北斗「ダン、どうしたんだ、言うこと聞かなきゃ駄目じゃないか」
ダン「僕はウルトラ6番目の弟だ」 北斗「……」
いい加減、その台詞聞き飽きたので、撃ち殺そうかと思う北斗であったが、嘘である。
嘘であるが、管理人が聞き飽きたのは事実である。
そして恐らく、当時の視聴者も、一様にある疑問を抱いていたのではあるまいか。
すなわち、
そもそも「ウルトラ6番目の弟」ってなんだよ? と言う疑問を。
それはともかく、
ダン「シンちゃんが戻ってこないのに、僕だけ逃げるわけには行かない」
と言うのが、ダンの山のフドウ化現象の動機であったが、別に新太がこちらに逃げてくるとは限らないので、いまひとつ整合性に欠ける。
と、ケンちゃんが進み出て、袖口で涙を拭いながら、
ケン「シンちゃんは超獣になっちゃったんだ」
北斗&美川(それ真っ先に言ってーっ!!) このタイミングでの告白に、思わず心の中で絶叫する二人だったが、嘘である。
ただ、この台詞、普通は、北斗たちが銃を向けた時点で言ってないとおかしいよね。
北斗、改めてケンちゃんたちを美川隊員に避難させるが、何故か、ダンだけはその場に留まらせる。
その理由は……びっくりしたことに、「特になかった」ことが後に判明する。
シシゴランが、逃げ惑う人々を追いかけて街を踏み潰すシーンや、目を発光させて激しい爆発を起こすシーンなど、相変わらず特撮の出来は必要以上に素晴らしい。
その分、シナリオのお粗末さが一層目立ってしまうのは、円谷作品ではありがちなことである。
北斗がシシゴランに銃を撃とうとすると、ダンが止める。
ダン「あいつの中のシンちゃんにもし当たったら?」
北斗「しかし、このままでは町が全滅してしまう……美川隊員、子供たちは?」
美川「安全な場所に避難させたわ」
どうでもいいが、TAC来るのおせえっ!!
これだけ出撃から到着までのタイムラクがあるのは珍しい。
CM前に出撃してるので、余計長く感じられる。
と、何処からか、太鼓の音が聞こえてきて、

それに耳を澄ます、ヴィーナスのように美しい美川隊員のどアップ。
ダン「獅子舞の太鼓の音だ」
北斗「……」

美川「……」
ダンの言葉に、北斗と目を見交わし、

音のする方へ視線を向ける美川隊員。
なんか、似たような画像を貼ってしまったが、後悔はしてないさっ!!
北斗「よし、確かめてくる……頼む」
美川「ええ」
北斗、ダンを美川隊員に任せて超獣に向かっていくが、結局、なんでダンだけを避難させなかったのか、その理由は分からずじまい。
ダンの強情を知ってるから、諦めたのだろうか。
と、ここで待ちに待ったTACがやってくる。
ま、今のは言葉の綾で、ほんとは別に待ってないんだけどね……
しかも、北斗が超獣の近くにいるから攻撃はやめてちょと美川隊員に言われ、意味もなく上空を旋回する羽目となる。

美川「北斗隊員は怪しい太鼓の音を追ってったんです。上空からも捜査して下さい」
苛立つ山中をなだめるように、美川隊員が説明して指図する。
それにしても、これだけ何度も美川隊員のアップが出て来たのは、初めてじゃないかな。
メイン回の4話や22話でもこんなにはなかったと思うが……
色々あって、新太の父親は北斗に追われて最初の神社に逃げ込むが、今度はあのカイマ像の目が輝き、自らも巨大化して超獣カイマンダとなる。
単発回で超獣が二体も登場するとは豪気だが……
北斗「あいつが、あの太鼓男に乗り移っていたのか」
と、北斗は言うのだが、父親がおかしくなったのは、カイマではなく、獅子舞の目の光を受けてからなので、いまひとつピンと来ない台詞である。
父親「バンザイ、バンザイ、カイマ様が俺の願いを聞き届けてくれたぞ、獅子舞をバカにするような奴は、みんな叩き潰せ!!」
クソつまんねえ動機だなぁ。
被害者の皆さんも、そんなしょうもない理由でマイホームを潰されたと知ったら、泣くに泣けないだろう。
ともあれ、カイマンダとシシゴランに挟まれ、火炎攻撃とビーム攻撃を文字通り右往左往しながらかわす北斗。
何の溜めもなくAに変身すると、相手が神様だろうと容赦なく、カイマンダをボッコンボッコンにするが、途中からシシゴランに攻撃され、一転、劣勢に陥る。

それでも、拳から放たれる珍しいビーム技を繰り出し、まずカイマンダを粉砕する。
うーん、でも、カイマンダ(邪神カイマ?)がすべての元凶なのは明らかなので、カイマンダが死ねば、シシゴランも獅子舞に戻りそうなものだが……
ここに来て、新太がシシゴランの体内に閉じ込められていることを知った(思い出した?)A、迂闊に攻撃できずに苦悩する。

シシゴランの、ほとんどスーツアクターに保険金掛けて焼き殺そうとしているとしか思えない、凄まじい火炎放射攻撃から必死で逃げるA。

炎を吐き終わったあとのシシゴランの背後に、町の様子が映し出されるが、その作り込みの細かさに、感動を通り越して呆れてしまった管理人であった。
正直、特撮にそこまで金と労力を掛けなくてもいいから、その分、シナリオやゲスト出演者の充実を図って欲しかった。
今更言ってもしょうがないけど。
やがて、竜隊長たちが神社に来て、夢中になって太鼓を叩いていた新太の父親を撃ち、その太鼓を手放させる。
それでシシゴランが動きを止めれば首尾一貫するのだが、特にそう言うことはない。
なんだかなぁ。
カラータイマーが点滅し始めたAは、不意に気合を入れ直すと、

両手を赤熱させながら、シシゴランに猛ラッシュを掛ける。
てっきり、その腕で、シシゴランの体を引き裂いて、新太を助け出すのかと思いきや、しばらくどつき回した挙句、フツーにビーム技で倒すと言う、膝カックンレベル249くらいのトホホなオチとなるのだった。
シシゴランは仰向けに倒れると姿を消し、地面に気を失った新太が横たわっていた。
要するに、シシゴランが体内に新太を取り込んだことが、ほとんどストーリーに関係なかった訳である。
ラスト、新太と父親がTAC本部で獅子舞を披露すると言う、心底しょうもないシーン。

踊りのあと、北斗たちは惜しみない拍手を送る。

父親「さ、これで、TAC本部の一年間の魔除けは済みました。獅子舞と言うのは魔除けなんですよ」
文字通り憑き物が落ちたようなさっぱりした顔で説明するオヤジ。
ただねえ、邪神カイマが、このオヤジの呪詛をエネルギーにしてシシゴランともども暴れ回ったのは動かない事実なので、こんな、何もかも一件落着みたいな顔させていいのか知らん? と言う気がして、いまひとつすっきりしないのである。
以上、最初に書いたように面白くも何ともなく、特撮と美川隊員のアップ以外に見るべきところのない凡作であった。
要するに、今回の話、「獅子頭とカイマ像が超獣になって暴れたので倒しました」と言う風に、一行で片付けられるほどに内容が薄っぺらなのである。
そこにはドラマも、ホラーも、風刺も、問題提起も、抒情性も、意外性も、何もない。
それでもあえてドラマを探せば、獅子舞をバカにされた堺左千夫の怒りだろうが、そんなモンに興味を示す視聴者が、何処にいると言うのか?
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