第39話「人形は知っている イガ戦士の心の傷を」(1983年12月2日)
冒頭、山の中の荒地で、シャリバンとヘレンが、実戦形式の厳しいトレーニングを行っている。
ヘレンが、前回披露した露出度の高い衣装から、以前の全身タイツみたいな衣装に戻っているのは残念だが、砂利の多いロケ地を考慮した上での措置であろう。
その後、清流のそばで休息する二人。
電「今日はこれくらいにしよう」
ヘレン「どうして、もっと稽古したい!!」
電「無理をするなよ、ヘレン」
ヘレン「大丈夫よ、私は」
濡れたタオルで首筋を拭いていたヘレンであったが、

胸元に、大きな傷跡があることに電が気付く。
ま、それは良いんだけど、
電「どうしたんだ、その傷は?」
と、電がいきなりヘレンに聞いちゃうのは、いささかデリカシーに欠けるように思う。
相手は仮にも若い女性なんだから、見なかったふりをしてあげるのが年長者としてのマナーであろう。
今出来た傷ならともかく、古傷なんだから慌てる必要はないし……
ヘレン、胸を掻き合わせて傷を隠すと、
ヘレン「私は戦士よ、これくらいの傷の一つや二つ……もう一度稽古をお願いします」
電「何をそんなに焦ってるんだ、そんなにマドーが憎いのか」
ヘレン「両親と弟を殺されたのよ、当然でしょ」

電「だけど、気追い込み過ぎている。焦ってるよ」
ヘレン「そうかしら」
電「君にニードルガンは似合わない」
ヘレン「当たり前の女の子になれって言うの、綺麗なドレスを着て、お化粧をして……」
電「たまには必要だよ。心の安らぎがね」
ヘレンの一途に前ばかり見据える姿に、危ういものを感じる電であった。
一方、幻夢城では、
ポルター「ベル・へレンがシャリバンと猛特訓を続けているようです。日一日とパワーをつけております」
サイコ「抹殺!!」
ポルターの報告に、簡にして要を得た命令を下すサイコであったが、若干、投げやり気味。
部下がそろそろ40連敗しようかとなれば、そりゃ嫌気も差すわな。
ポルター「ベル・ヘレンは過去に取り調べたことがあり、彼女の弱点を知っております。魔王様、最強のビーストを」

なんか、毎週言ってるような気がするが、ポルターがサイコに「おねだり」すると、サイコはたちまちドールビーストと言う、今回の作戦にうってつけの魔怪獣を作ってくれる。
ガイラーが言っていたように、サイコって「女に甘い」のかもしれない。
ちなみに珍しく人間に近いタイプの魔怪獣なのは、36話で二体のビーストを出してしまったので、その分、経費を節約する必要があった為かもしれない。
電は、これから地球に暮らすことになるヘレンを、小次郎さんたちに紹介する。

電「ヘレンって言うんだ、まあ、俺のイトコみたいなもんだ」
小次郎「ヘレン、いい名前だなぁ、しかもとびっきりの美女と来たもんだ」
小次郎さん、初対面の女性を手放しでほめちぎるが、

明「調子が良いんだから、小次郎さんは」
千恵「まったくぅ」
その臆面のなさを、子供たちにまで呆れられる。
しかし、電のイトコと言う触れ込みなのに「ヘレン」と言う、おもいっきり外国人風の名前を名乗らせたのは、手抜きのような気もする。
電「ヘレンは日本に来て間がないんだ、何処か案内したいんだけどね」
小次郎「決まった、ミーと一緒に映画行きましょう」
電の頼みに、即座にヘレンの腕を取って暗がりに連れて行こうとする小次郎さんだったが、
千秋「あらあ、女の子ですもの、ショッピングよねえ」
電「よし、そのショッピングに行こう」
千秋に邪魔され、あえなく撃チンされる。
次のシーンでは、早くもショッピング街でアイス食べている千恵たちの図となるが、ピエロがぴょんぴょん回りながら千恵のそばにやってきて、
ピエロ「はーい、お姉さん、あなたにあげましょう」
千恵に人形をプレゼントしてくれる。

千恵「うわー、可愛い、ありがとう」
……
千恵ちゃんのほうがずっと可愛いよっ!! ……はっ、すいません、取り乱してしまいました。
どうも最近、レビューの書き過ぎか、たまに電の生霊に乗り移られることがあるんです。
何しろ2周目だからなぁ。
一方、千秋たちはショップでヘレンのための服を品定めしていた。

千秋「これなんか似合うと思うわ~」
小次郎「よし、ミーがプレゼントします」
意外と金持ってる小次郎さん、値札も見ずにあっさりゴーサインを出す。
千秋「ヘレンさん、小次郎さんがプレゼントして下さるって」
ヘレン「わぁー、ありがとう」
小次郎「なんの、なんの」
お大尽を気取ってみせるが、

千秋「すいません、これ二枚下さい」
小次郎「ちょっとちょっと、一枚にして下さい」
千秋の言葉にたちまち馬脚をあらわす。
千秋「小次郎さん、私のこと無視する気?」
小次郎「すいませんでした」
電「小次郎さんってね、とってもスケールの大きな人なんだ。男の中の男だよ」
ヘレン「はははは、ネバーマインド、ブレゼンテッド・フォーユー」
電に横からおだてられては二人分出さずにはいられなくなり、顔で笑って心で泣きながら財布を取り出そうとする。
でも、次の「シャイダー」ではペットショップを開店してるくらいだから、小次郎さんが結構裕福なのは事実のようである。

千恵「姉ちゃん!! 貰った!! タダよ!!」
と、そこへ千恵があの人形を誇らしげに見せに来る。
「お姉ちゃん」じゃなくて、「姉ちゃん」と言うのがめっちゃ可愛いんですけど……
千秋、「知らない人からモノ貰っちゃいけません」などと固いことは言わず、「可愛い」と駆け寄るが、何を思ったか、ヘレン派その人形を取り上げて店先に叩き付けてしまう。
千恵「ひどい」
千秋「ヘレンさん、あんまりよ、人形投げ捨てるなんて」
ヘレン、電が拾い上げた人形を見ていたが、お化けでも見たように顔を引き攣らせ、その場から走り去ってしまう。
電「ヘレン!!」

電(この人形は地球上のものではない、異星の人形だ)
人形を見た電は心の中でつぶやくのだが、見ただけで分かるかしら?
一応、グランドバースに戻ってリリィが分析するシーンが欲しかった。
ヘレン(どうしてあの人形が……私の人形が……何処から? 誰が?)
夜、へレンが疑問を抱きながらバイクを走らせていると、目の前に突然あの人形があらわれ、ライトに当たって路上に落ちる。

人形「捨てないで、ヘレン、私はあなたの人形よ。あなたに可愛がられていた人形、いつも一緒に遊び、一緒に寝たわ、忘れたの、ヘレン?」
ヘレン「……」
拾い上げて放り投げようとするが、その人形が可愛らしい声でヘレンに話し掛け、ヘレンは咄嗟に幼い頃の記憶を蘇らせる。
それは、まだヘレンが家族と平和に暮らしていた頃の記憶で、その人形は、幼馴染のジムと言う少年がプレゼントしてくれた、ジムの母親の手製の人形だったのだ。

ジム「名前はローラ」
ヘレン「大事にするわ、ジム」
これが子供時代のヘレンだが、演じる子役がいかにも「利かん気」の顔つきで、このキャスティングはなかなか良い。
人形「私とっても寂しいのよ、ヘレン」
ヘレン「ごめんなさい、意地悪してごめんね、ローラ」
既にドールビーストの術中に嵌まっているのか、ありえない現象を前にしてもヘレンは怪しむことなく人形を抱き締める。
人形「私の目を見て、ヘレン」
ヘレン「……」
人形「私のお願いを聞いて」
ヘレン「お願い?」
人形「私をいじめる人がいる、私をいじめる怖~い人が」
ヘレン「……」
ヘレン、人形の目を見ているうちにあえなく催眠状態に落ち、マドーの操り人形と化す。
ここ、あまりにヘレンがあっけなく正気を失っているのが物足りない気もするが、異郷の地で最愛の弟を亡くし、ひたすら復讐を誓って戦闘訓練に明け暮れる一方、まだ地球の生活にも慣れず、かなりのストレスが溜まって精神が不安定になっていたとすれば、人間としても戦士としても未熟なヘレンをポルター&ドールビーストがたぶらかすのはたやすいことだったのだろう。
電が、ヘレンの仮のねぐらである倉庫のような建物で待っていると、

ヘレンが剣を持って斬りかかって来る。
うーん、せっかくヘレンを掌中におさめたのに、このやり方はあまりに手ぬるい。
上原先生お得意の(?)人間爆弾にすると言う手もあったのに。

人形「この男が私をいじめるのよ」
ヘレンの攻撃を防ぎながら、彼女を正気に戻そうとするが、その場にはあの人形もいて絶えずヘレンをけしかける。
電がシャリバンに変身してクライムバスターで人形を撃ち砕くと、人形はドールビーストに変身する。
シャリバンがドールビーストを撃退して戻ってくると、やっと我に返ったヘレンが激しく自分を責めていた。
ヘレン「とんでもないことをしてしまって……」
電「君はブティックでもあの人形を床に叩きつけた、話してくれ、あの人形と君はどんな関係があるんだ?」
電に問われて、ヘレンはつらい過去の出来事を語り始める。

宇宙戦士として戦っていたヘレン、マドーの罠に落ちて収容所に送られ、「毎日のように拷問責めにされた」と言うが、「拷問責め」って、なかなか破壊力のある言葉だよね。
電「君の体の傷は、そのときのものか」
ヘレン「……」
相変わらず、デリカシーのない電ちゃん。
なかなか仲間の居場所を吐かないヘレンに対し、ポルターが直々に尋問することになるが、

さすがポルター、単純な拷問はせず、あの人形を壁に貼り付け、ヘレンの目の前で銃殺刑にしようとする。

ヘレン「やめて、ローラに何てことするの」
ポルター、構わずレーザーガンの引き金を引き、人形の右腕を吹き飛ばす。
ヘレン「やめて、やめて頂戴」
ポルター「アジトを言え。さもないと今度は頭が吹っ飛ぶ」
ヘレン「やめて、撃たないで!!」
矢島さんの熱演は素晴らしいが、ヘレン、その人形が大事のあまり、あっさり仲間のアジトをゲロしてしまったのである!!
さすがにそんな奴おらへんやろ。 いくら大事って言っても、人形やで?
ま、それだけ人形に愛着があったということなのだろうが、それも、ジムに貰ったからこその愛着であり、その人形の為に当のジムを敵に売るなど、本末転倒もいいところであり、人間として許されない行為であろう。
ともあれ、ポルターはヘレンを連れてその場所を急襲し、見事、ジムを討ち取る。
ちなみにその場にはヘレンの弟ビリーもいたのだが、特に何の活躍も見せない。

ポルター「ヘレンが全てを喋った」
サドのポルター、わざわざそのことを瀕死のジムに教えてやる。

ジム「馬鹿な、ヘレンは、そんな宇宙戦士じゃない」
残念ながら、そんな宇宙戦士でした。 この辺の救いのない展開は、上原先生の面目躍如と言う感じである。
さらに、

ジムが殺される様をヘレンに見せ付けるという、ここだけ急に70年代の特撮になってしまったような、ゴアな結末となる。
ただ、不思議なのは、そんなことがありながら、ヘレンが今もピンピンしていることである。
ポルターが、用済みになったヘレンを生かしておくとも思えず、どうやってヘレンがマドーから逃れたのか、その説明が抜けているのは片手落ちのような気がする。
台詞だけでも良いから、あとでビリーに助けられた……みたいな説明が欲しかった。
ちなみに、36話で、ヘレンは長い戦いの中で、「密告、裏切り、いつか、人間を信じないようになってしまったのよ、私たち」などとしたり顔で話していたが、
電「お前が密告して裏切っとったんかいっ!!」 と言う、長いスパンを挟んだ見事な伏線回収となるのだった。
なお、ヘレンとビリーは両親を失ったあと、ジムの父親に育てられたと言う。

最後に、ジムを中心に、ヘレンやビリーたちが肩を組んで、「今日の日はさようなら」でも歌っているように、体を左右に揺らしているという、
悪夢のようなイメージが映し出され、突っ込みどころの多い回想シーンは終わる。

電「愛していたんだな、ジムを」
ヘレン「死ぬほどつらかったわ、人形を傷付けられることは……ジムからもらった人形ですもの、でも、結果的にはジムを裏切ってしまったの、裏切り者よ、私は……」
電「まあ、そうなんだけどね……」 ヘレン「……」
ヘレンの述懐に思わず相槌を打ってしまい、変な空気にしてしまう電であったが、嘘である。
嘘であるが、前述したように、へレンが人の命より人形を優先させたことは明らかなので、いまひとつヘレンに同情できなくなってるのも事実である。
せめて、現在のヘレンではなく、千恵くらいの年齢の時にポルターに捕まり、人形を壊すと脅されて口を割ったとかなら、まだ分かるんだけどね。
電「自分を責めるのはやめろ、卑劣なのは、ドクターポルターだ」
無論、子供たちの規範たるヒーローである電は、ヘレンを責めずにポルターに怒りの矛先を向けるが、「悪いのは」ではなく、「卑劣なのは」と、微妙に表現を変えているあたりに、電のヘレンの行為に対する屈折した感情が影響していると見るのは穿ち過ぎだろうか。
客観的に見て、へレンが個人的感傷で仲間を売ったのは事実なので、弁護のしようがないからね。
CM後、電はヘレンとリリィをジープに乗せて、山奥の山荘へ連れて行く。

電「リリィがついていてくれる」
ヘレン「迷惑ばかり掛けてしまって」
リリィ「気にしない、気にしない」
電「ここでのんびりすれば元気になるさ」
電、ヘレンを自然の中で休息させ、その心の傷を癒そうというのだが、相棒のピンチの時には一切駆けつけないのに、こういう話になるといつの間にジープに乗ってるんだよなぁ、リリィって……と思うのであった。
どうせなら、リリィじゃなくて千秋たちを同行させて欲しかった。
なんだったら千恵だけでもいいから同行させて欲しかった。
三人が魚釣りをしてアウトドアを楽しんでいると、再びあの人形があらわれ、ヘレンの心を掻き乱す。
我を忘れて向かってくるヘレンに、人形が口から銃を撃ってくる。

電「ヘレン!!」
ヘレン(いや~ん) 電に引っ張られて超大股開きで岩場から飛び降りるヘレン。
ああ、これが前の衣装だったらなぁ……
人形はいくつにも分離して、空を飛びながら電たちを銃撃する。

電「ヘレン、撃て、人形を撃つんだ」
ちなみにこのシーン、後ろで座り込んでいるリリィのスカートの中に、ほんの微かに白いものが見えると思う。
いかにもリリィらしい、慎ましやかなパンチラであった。

ヘレン「……」
人形「私が撃てるか、撃てるなら撃ってみろ」
電「ヘレン、撃て、忌まわしい過去を撃ち抜くんだ」
電の声に押されるようにして、遂にヘレンは引き金を引き、人形を破壊する。
ヘレンが遂に過去を克服した瞬間であった。
ここで電がシャリバンに変身し、ポルターやドールビーストたちの前で見得を切る。
ポルター「ええい、やれっ!!」 怒り狂ったポルター、物凄い顔で命令するが、シャリバンにドールビーストを倒され、あえなく敗退。
今回も、余計な欲を出さずにヘレン抹殺だけに絞れば簡単に目的を達成できていたであろうに、どうして悪の人と言うのは、凝りもせずに毎回「虻蜂取らず」の愚を繰り返すのだろうか?
事件解決後、三人が、公園の小高い丘の上から清んだ青空を眺めている。

リリィ「ヘレン、これ私が作ったの」
ヘレン「ええ、リリィさんが?」
リリィ「可愛がってあげてね」
ヘレン「ええ、大事にします」
リリィから、手製の可愛らしい人形をプレゼントされて喜ぶヘレン。
電、「そんなモン作ってる暇があったら仕事しろ……」と、言いたいのを堪えて、

電「ヘレンは過去の悪夢を撃った、それで吹っ切れたんだよ」
二人の肩に手を置き、今度の事件を総括する。
ヘレン「名前も考えなきゃ、そう、リリィちゃんが良い」
電「いい名前だ、おい、リリィちゃん」
リリィ「変な気持ち」
三人が仲良く笑っているシーンで幕となるのだが、ここは、へレンが人形を貰うんじゃなくて、へレンが千恵に代わりの人形をプレゼントして終わりにすべきだったんじゃないかと思う。
それに、今回のストーリーは、ヘレンが、人形に執着する女の子から、そんなものに惑わされないひとりの女性として成長したことを描いているのだから、それがまた人形を貰って喜ぶというのは、元の木阿弥と言う感じがするのだ。
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