第36話「飛べ! レオ兄弟 宇宙基地を救え!」(1974年12月13日)
冒頭、MACが監視の目を強化することになったとナレーターが言うのだが、それに続く、
ナレ「その第一弾として、強力なMACウランを利用することが決定された」 と言う台詞が、早くも意味が分かりません!!
そもそもMACウランってナニ?ってことなのだが、それを、何に利用するのか全く説明がないのだ。
まあ、こちらで補えば、より強力なレーダーシステムの動力源にするということか?
でも、レーダーシステムと放射性物質と言うのが、どうにも頭の中で結びつきにくい。
ここは普通にMACウランを使ったえげつない威力の新型ミサイルを開発……くらいで良かったと思うが。
梶田「MACウランを運ぶ役は誰がやるんですか?」
高倉「うん、モロボシ君とも話し合ったんだが……」
珍しくMACステーションを訪れた高倉長官の言葉に、自分が指名されるのではないかと緊張して待つ隊員たちであったが、

ダンはめきょっと言う風にゲンの顔を見ると、
ダン「ゲン、お前にその役目をやってもらう」
ゲン「僕が?」
高倉「おおとり君、君の役目は重大だ。慎重の上にも慎重を期してくれたまえ」
ゲン「はいっ」
重役を任され、きおい立つゲンであったが、そこへ、未確認飛行物体が接近中との知らせが入り、ダンは直ちに出動を命じる。
だが、それは宇宙人の襲来ではなく、どう見ても地球の宇宙船であった。
けれど、機体がひどく損傷していて煙を吹き、こちらから呼びかけても応答がない。
各戦闘機はその宇宙船に密着するようにして一緒に降下するが、ゲンが恐れたように、宇宙船は山肌に激突し、爆発炎上する。

しかし、奇跡的に銀色の宇宙服を着た操縦士は生きていて、体に炎をまとわりつかせながらも斜面の上を駆け上がろうとしていた。
梶田「あっ、人が!!」
佐藤「生きてるよ!! 梶田、救急車頼む!!」
梶田「はい!!」
ゲンと佐藤は操縦士の体に抱きついて炎を消し、ヘルメットを脱がすが、その中から出てきたのは見知らぬ若い男だった。

ゲン「一体あの宇宙船の正体はなんなんでしょう?」
佐藤「ああ、さっき現場からの報告では、3年前にアトランタ星へ向かったまま行方不明になったものだと言ってきた」
男が収容されたMACの病院の屋上で、ゲンたちが事件について話している。
以前のレビューでも書いたが、画面の手前にたくさん生えている奇妙なものは、ジグザグ型の屋根に打たれたビスである。

ゲン(アトランタ星? あそこには卑劣な凶悪宇宙人が住んでいると言われてるんだ。あの星から生きて帰れるなんて……)
梶田(待ってろよ、ゲン、いつかその唇を奪ってやるからな!!) ひとり考え込むゲンの横顔を見ながら、梶田が禁じられた欲望を胸の中に滾らせるが、嘘である。
そこへ松木隊員が息を弾ませやってきて、

松木「驚かないでくださいね、あの人、かすり傷ひとつないんですってよ」
ゲン「なんだって?」
松木「間もなく精密検査が全部終わるんですけどね、今のところ体の何処にも全く異常がないんですって」
梶田「信じられないなぁ」
しかし、いくらMACが抜けていても、精密検査までしてそれが宇宙人だと気付かないというのは、いかにもありそうにない話である。
肉体は内田本人のもので、アトランタ星人に精神を乗っ取られているだけ……と言うのなら分かるんだけどね。
と、眼下に、高倉長官と娘のあや子が連れ立って病院に入っていくのが見えた。

二人は真っ直ぐ診察室へ向かうが、ちょうど、診察室から医者と操縦士が笑いながら出てくるところだった。
医者「いや、驚きました、こんなケースは初めてですよ」
内田「はぁ」
あや子を演じるのは大井小夜子さん。
その操縦士の顔を見た途端、二人は興奮を隠し切れずに駆け寄り、
高倉「おお、内田君じゃないか……やっぱり君は生きていたのか。良かった、良かった。あっはっはっ」
あや子「お父様!!」
感極まって、内田ではなく、父親の肩に抱きついて泣くのが、いかにも良家のお嬢さんと言う感じで奥床しいのである。
高倉「あや子はね、必ず君が生きていると信じて毎日君の帰りを待っていたんだ」

高倉「あや子、良かったな」
あや子「ええ」
涙と鼻水でぐしゃぐしゃにで濡れた顔を上げ、微笑むあや子。
……
これからは鼻水女子の時代が来るのではないかと一瞬思った管理人であったが、来る訳ねえだろっ!!
それでも、「レオ」のゲストの中では上位に食い込む美貌である。
談笑しながらロビーへ来ると、高倉長官はそこにいた隊員たちを内田に紹介する。
高倉「梶田君、松木君、それから君を助けてくれた佐藤君とおおとり君だ」
佐藤「おめでとうございます」
なにしろ長官の婿になる男なので、隊員たちは口々におべんちゃらを並べるが、ひとりゲンだけは険しい顔で内田を睨み付けていたが、

ゲン(貴様はアトランタ星人!!)
一発でその正体を見抜き、テレパシーで語りかける。

内田(ふっふっふっ、ようこそ、レオ)
内田、いやアトランタ星人も、平然とテレパシーで応じる。
しかし、地球に来たばっかりの内田が、レオに「ようこそ」って言うのは変だよね。

内田「よろしく、おおとり君」
ゲン「……」
それでも、この場で戦うわけにも行かず、差し出された手を不承不承握るゲン。
高倉「ほお、君たちは気が合いそうだな、おおとり君、内田君を頼むよ」
ゲン「は……」
ゲンの気持ちも知らず、暢気なことを言う高倉長官であった。
まあ、こう言っちゃあなんだが、神田隆さん、歴代の長官俳優の中でも、一番貫禄がない俳優かもしれない。
それ以上に、憎たらしさが足りない。
長官と言うより、頑固だけど気のいい八百屋のオヤジと言う感じなんだよね。
ゲン(何と言う卑怯な……)
内田(せいぜいほざくが良い、俺の正体を明かせばお前の正体を明かす、いや、MACの隊長の正体もな)
二人がそんな殺伐としたやりとりをしているとは露知らず、高倉長官は娘を促して足取りも軽く帰って行く。
ゲンは即座にダンのいるMAC本部に戻る。

ゲン「隊長!!」
ダン「どうしたんだ、少しは落ち着いたらどうだ」
ゲン「それどころじゃないんです、宇宙船で帰ってきた男、奴はアトランタ星人なんです」
ダン「なに、内田君が? そんなバカな」
ゲン「間違いありません、奴は隊長と俺の正体を知ってます」
ダン「まずいな」
ゲン「どうしたんです?」
ダンによると、高倉長官の推薦と……言うより、たぶんゴリ押しで、 内田がMACに入隊することになったと言う。
翌日、屋外で、例のMACウランの運搬が開始されようとしている。
その準備の合間を縫って、ゲンは内田に近付く。

ゲン「貴様……」
内田「レオ君、あまり腹を立てないほうが良い」
ゲン「貴様、何を考えてるんだ?」
内田「君と喧嘩をしに来た訳じゃないよ、君と同じように宇宙の平和を守りに来たのさ。仲良く頼むよ」
ゲン「貴様!!」
にったににったら笑いながらいけしゃあしゃあと言ってのける内田に、思わずカッとなってその胸倉を掴むゲン。
ダン「ゲン!! 何をしてるんだ」
それを見ていたダンが鋭く叫び、二人のところへ歩み寄る。
ダン、目でゲンに自重を促すと、
ダン「準備は良いか? 内田君はマッキーでゲンを護衛だ。佐藤、梶田はロディーでA地区をパトロール、白土はB地区をパトロールだ。松木君はレーダーで状況をキャッチしろ」
松木「はいっ」
ダン「作戦開始!!」
ダンはきびきびと任務を割り当て、いよいよMACウランの輸送作戦が開始される。
ゲンは内田と一緒にマッキー2号で離陸するが、そもそもMACウランをどこに運ぼうとしているのか、さっぱり分からない。
直接MACステーションに運ぶのなら、ロディーで地上を警戒しても意味ないから、MACの地上基地に運ぶつもりだったのだろうか?
さて、しばらく飛んだところで、マッキー2号がゲンの乗るα機と、内田の乗るβ機に分離する。

だが、分離した直後、内田は目から特殊なビームを放ってα機を操縦不能に陥れる。
そのまま墜落しそうになったα機をお盆のように受け止めて助けたのは、他ならぬ内田のβ機だった。
それはゲンを抹殺するためではなく、ゲンの評判を落とし、同時に自分の声名を上げるための策略だった。
ゲン「本当に操縦桿が動かなくなったんです、本当なんです」
MACステーションに戻ったゲンは、必死に自分に落ち度のなかったことを訴えるが、
高倉「言い訳はやめたまえ、機体調査の結果、機体には欠陥はないと出ているんだ。君は一ヶ月謹慎だ。もしも街の中にでも墜落していたら、取り返しのつかないことになっていたんだ」
高倉長官に叱責され、謹慎処分まで食らってしまう。
そんな高倉長官の言葉を、他の隊員たちはまるで我がことのようにつらそうな顔で聞いていたが、以前は連帯感などカケラもなかったMACメンバーが、ここに来て漸くひとつのチームとして結束するようになったのは、たいへん喜ばしいことであった。
ま、あと4話で全滅しちゃうんだけどね!!
ダン「内田君に礼を言いたまえ」
ダンはゲンの言葉を信じていたが、立場上、そう言わざるを得なかった。

ゲン「ありがとう」
内田「当然のことをしたまでですよ」
ゲン「……」
ゲン、情けなさと悔しさで泣きそうになりながら、内田のしたり顔を見ていたが、
高倉「しかし、モロボシ君がMAC一と折り紙を付けた君がこともあろうに操縦ミスとは……いったい私は何を信じたら良いのだ?」
ゲン「……」
そこに高倉長官が追い討ちのイヤミを並べて、ゲンの顔を怒りでどす黒く染め上げる。
その長官の慨嘆に応じる形で、抜け抜けと自分を売り込んだのが内田であった。
内田「長官、僕を信じてください」
高倉「君を?」
内田「宇宙の真ん中で何度も今日のようなピンチに出会いましたが、そのたびに僕が操縦していたために助かったんです、宇宙船に比べれば飛行機など」
高倉「そうか、モロボシ君、明日の作戦には内田君に操縦してもらおう」
ダン「長官、明日の作戦とは?」
聞き捨てならぬ言葉に思わずダンが叫ぶと、
高倉「君たちには黙っていたが、最高司令部の計画はそうなっていたんだ。これも敵を欺く手だ。宇宙人に気付かれぬうちに運んでしまうんだ」
ダン「長官」
高倉「今日と全く同じ手順で決行する。いいね」
ダン「はい」
つまり、今日運ぶ筈だったMACウランはダミーだったということなのだろう。
そして恐らく、内田も事前にそのことを知っていたと思われる。
娘婿に機密を漏らすなどもってのほかだが、高倉長官の性格ならやりそうだしね。
ダンはゲンと二人きりになると、深刻な顔で、

ダン「どうやら奴の目的はMACウランを使ってステーションを爆破することだ。時間もあまりない。最後の手段だ。奴を殺すんだ!!」
ゲン「……」
ダンから非情のライセンス的命令を受けたゲンは、夜、高倉家の前までやってくるが、窓に映った影から、改めて内田とあや子が婚約し、高倉親子が幸せの絶頂にあることを知るや、たちまち決心が鈍る。

ゲン(あや子さんはアトランタ星人を愛してしまってるんだ、もし、もし俺が奴をやっつけてしまったら、あや子さんは……)
でも、あや子はあくまで相手を内田だと思って愛しているのだから、「アトランタ星人を愛してしまった」と言うのは、なんか違うような気がする。
そう言えば、本物の内田がどうなったのか……まあ、100パーセント死んでいるのだろうが、それについての説明が一切ないのが今回のシナリオの欠点である。
ゲン、近くの公園のブランコに腰掛け、ぼんやり考えていると、

そこへ自転車に乗った百子さんがやってきて、階段を……

……って、
何故カメラから逃げる? 何故真っ直ぐ降りて来ない? 何を怖がってるんだ、丘野さん!! 勇気を出すんだっ!! そろそろ丘野さんの芸能活動も終わりに近付いているのだから、お別れにパンツくらい見せてくれても良いじゃないか減るモンじゃなしと、管理人の知り合いが言ってました。
ちなみに丘野さん、この時点でもう、自分が降板させられることは知っていたのだろうか?

百子「オオトリさんっ!!」
ゲン「あ、百子さん」
百子の顔を見て、たちまち笑顔になるゲン。

百子「どうしたの、こんなところで考え込んだりして?」
ゲン「うん……」
百子「うーん、オオトリさんらしくないわ」
隣のブランコに腰掛けて体を前後に揺らしていた百子さんであったが、

やがて本格的に漕ぎ出して、スカートの中が丸見えになってしまう!!
が、あいにく、夜間の撮影で暗い上、ブランコの柵などが肝心なところを邪魔して、せいぜい白いスリップくらいしか見えないのだが、これは、ほどなく芸能界を引退する丘野さんから、我々後世のボンクラたちへの最後の贈り物だったに違いない。
にしても、ヤケクソになってるのではないかと思えるほど、ここでの丘野さんの動きは豪快である。
まぁ、こういう撮影になることは事前に分かっているのだから、身持ちの固い丘野さんのこと、絶対にパンツが見えないような工夫をしていたことは十分考えられ、だからこそ、思いっきりブランコを漕いでいたのかもしれないが。
ゲン「百子さん」
百子「なあに?」
ゲン「もし、仮にさ、僕が宇宙人だとしたら、君どうする?」
百子「オオトリさんが? あっははっ、あたし、平気よ」
ゲン「でも、それが、人間を滅ぼすような凶悪な宇宙人だとしたら?」
ゲンの質問にブランコを漕ぎながら答えていた百子さんだが、

ゲンの真剣な調子に気付いてブランコを止め、
百子「私のことを愛してくれてるのなら、たとえ悪い宇宙人でも平気だわ」
きっぱり断言すると、なんともいえない複雑な表情をしているゲンの顔を凝視する。
もっとも、百子さんはあくまで仮定の話として答えているだけで、本気でそう考えているのかどうかは不明なのだが。
それに、アトランタ星人は別にあや子のことを愛してる訳じゃないんだけどね。
百子さんがなんとなく笑うと、ゲンもつられて笑みをこぼす。

百子「元気出して、オオトリさん!!」
ゲン「うん」
百子「えふっ」
その後、仲良くブランコに乗り続ける二人であった。
考えたら、劇中で二人だけでじっくり話すシーンって、これが最後になるんだよね。
会話の終わりでは、二人は一緒にスキーに行く約束などをしているのだが、せめてその約束くらいは劇中で果たさせてやりたかったな、と。
結論を出せぬまま、翌早朝、ゲンは朝靄の立ち込める雑木林にダンを呼び出す。

ダン「朝早くから俺を呼び出したりしてなんだ?」
ゲン「隊長、あや子さんは星人を愛してしまってるんです」
ダン「ゲン!! 今はそんなことを考えてる暇はない。MACが生きるが死ぬかの瀬戸際だ」
ゲン「しかし、そのことがどんなにあや子さんを傷付けることか、考えてみてください」
ゲン「お前って奴は……」
安っぽいセンチメンタリズムに毒されているとしか言いようのないゲンの腑抜けた発言に、ダンは呆れ果てたように絶句する。
内田の肉体は本物で、精神だけを乗っ取られているとかなら、ゲンが躊躇する気持ちも分かるのだが、相手はあくまで内田に化けたアトランタ星人だとはっきりしているのだから、ゲンの煮え切らなさにダンが怒るのも無理はない。
ちなみに二人の手前に映っている池みたいなのは、ダンの車のルーフである。
ここで、

険しい顔をしたダンの顔にズームするカットと、

飼い主に叱られた仔犬のような情けない面持ちをしたゲンの顔にズームするカットが細かく切り替わる、なかなか凝った編集が見られる。
以前のレビューでも書いたように、このエピソード、随所に映像的な工夫が見られる。
ただ、悲しいかな、シナリオがそ映像表現ほどには面白くないので、完全に空振りしている。
さて、これが序盤だったら、ダンの拳骨が確実にゲンの顔面にめり込んでいたと思われ、ゲンも密かにそれを期待していたような節も見られるが、
ダン「よし、俺に考えがある。良いか、お前は最後まで星人から目を離すな」
ゲン「はい、でも……」
ダン「早く行くんだ!!」
あいにくと今は序盤ではないので、ダンは手を上げるどころか、ゲンを怒鳴りつけることさえせず、別の策を捻り出してゲンを急かすのだった。
マゾのゲン、いかにも物足りなさそうな顔であったが、仕方なく指示に従う。
さて、ゲンと別れたダンが向かった先は、意外にも高倉家であった。

ダンが門の前に立っていると、ちょうど、家からあや子が出てきて、自転車に乗って何処かへ出掛けようとしているところだった。
ダン「デュワッ!!」
ダン、いきなり両手をクロスさせて、ウルトラ念力を発動させる。
てっきりスカートめくりでもするのかと思ったが(註1)、そうではなく、単にあや子を気絶させただけだった。

ダン、すかさずあや子の体をお姫様抱っこして、このまま人気のないところに連れ込んでド変態的行為にでも及ぶのかと思ったが(註2)、そうではなく、単に家の中に運ぶだけだった。
註1……確かめてないけど、以前のレビューでも絶対同じこと書いてると思う。
註2……確かめてないけど、以前のレビューでも絶対似たようなこと書いてると思う。
一見、意味不明のダンの行動であったが、

松木「隊長、長官のお嬢さんが危篤状態だそうです」
高倉「あや子が? どうしたというんだ」
松木「原因不明だそうです、内田隊員の名前を呼び続けているそうです」
ダン「内田君、すぐ長官と一緒に行くんだ」
そう、ダンはあや子を利用して内田隊員をこの任務から無理やり外そうと考えたのだ。
あや子をそんな目に遭わせた張本人の勧めに、
内田「気持ちは嬉しく頂きますが、行くわけにはいきません」
ダン「婚約者が危篤なんだぞ」
内田「僕には今、大切な仕事があります、それがMACの隊員のつとめでしょう」
いかにも殊勝な理由を並べ立て、それを拒否しようとする内田であったが、
ダン「MACは人の心を無視するような組織ではない、さあ……」
内田「しかし、それではMACウランは誰が運ぶんですか?」
ダン「心配するな、私が運ぶ」
ダンに押し切られ、しぶしぶ高倉と共にあや子のもとへ駆けつけることになる。
正直、MACウランの運搬は、そんな急を要する仕事には見えないので、ここは素直にあや子の元へ向かうのが自然だったろうが、うまく地球人に成り済ましているとは言え、やはりその辺が宇宙人の限界であったのだろうか。
もっとも、高倉長官も娘のことで気が動転しているのか、内田の冷たさを咎める余裕などなく、何の疑いも持たずに内田の運転する車に同乗する。
内田のMACステーション破壊も、別に誰かにやれと言われてやってる訳じゃなさそうだし、うまくMACの中に入り込めたのだから、この先いくらでもチャンスはあったと思うのだが、内田は車で尾行してきたゲンに冷静さをなくし、車から降りたゲンを撥ね飛ばすと、高倉長官も後部座席から引き摺り出し、

高倉「おっ、君は?」
内田「ちくしょう、すべて計画通り運んでいたのに……」
たちまち悪人メイクになって、その本性を自ら暴露してしまう。
折角いいところまで行ったのに、そのせっかちさですべてを台無しにしてしまったアトランタ星人であった。
と言っても、前記したように、彼が目論んでいたのはMACステーションの破壊なので、「そもそも、どうでもよくね?」と、一部の心ない視聴者に思われてしまうのが、今回のストーリーの弱点である。
あと、この手のストーリーではお約束の、
主人公「○○は宇宙人です」
長官「何をバカなことを、気でも違ったのかね?」
みたいな事前のやりとりがないので、
高倉「やはり君はアトランタ星人だったのか!!」
みたいな台詞を高倉が口にすることもなく、内田の豹変にも目を白黒させるだけで、鳩が豆鉄砲食らったような顔をしているのが、いささか間抜けである。
ゲン「貴様、よくもあや子さんを!!」
ゲン、てっきりあや子を危篤状態にしたのが内田だと勘違いし、怒りに燃えて内田を追いかける。

今までの鬱憤を手刀に込めて、内田のニヤケ面に叩き込むゲン。

内田、ここで巨大化してアトランタ星人の姿に変わる。
ゲンもすかさずレオに変身するが、アトランタ星人はレオなど見向きもせず、既に離陸していたダンのマッキー2号を追いかけ、それをむんずと鷲掴みにすると、そのままMACステーションに向かって飛んでいく。
そう、彼の狙いは、MACウランをMACステーションにぶつけることだったのだ。
……
いや、そんな七面倒臭いことしないで、自分がMACステーションにいるときに巨大化したら、簡単に破壊できたのでは?
ともあれ、マッキー2号を持って飛ぶアトランタ星人の足をレオが掴んでなんとか引きとめようとするが、なかなか埒が明かない。
ダンはマッキー2号を自爆させてアトランタ星人もろとも死ぬ覚悟を決めるが、そこへ何処からともなく飛来したのが、レオの弟アストラだった。
アストラはガスを噴射してマッキー2号の火災を消すと、アトランタ星人の手からもぎ取り、直接MACステーションにドッキングさせる。
この後、レオがアトランタ星人をウルトラマントでくるんで地上に落とし、そこをアストラと二人掛かりで、ほとんどイジメとしか思えないほど一方的にボコボコにして倒し、事件は解決する。
事件解決後、ゲンとダンがロディーを走らせている。

ゲン「隊長、あや子さんを危篤にしたのは隊長の仕業でしょ」
ダン「さあ、俺は何も知らんぞ」
と、河原に高倉親子が立っているのに気付いて、ゲンが車を停める。
ゲン「あ、長官だ」
ダン「待て、長官もあや子さんも今は心の傷を癒す時だ。そっとしてあげたほうがいい」
何も考えずに声を掛けようとするゲンを、ダンがいかにも「大人」の台詞で制止する。
もっとも、高倉長官のほうで彼らに気付き、声を掛けてくる。

高倉「おおとり君、ありがとう」
ゲン「長官」
今までの態度が嘘のように、親しげにゲンの手を取り感謝する高倉長官。
うーん、さっきも言ったけど、これじゃただのマイホームパパで、とても防衛軍の長官には見えんなぁ。

水面にその美しい姿を映しながら、ゲンとダンに向かって頭を下げるあや子。
ま、ダンが自分をあんな目に遭わせた犯人だと知ったら、とてもこんな穏やかな顔は出来なかっただろうが。
考えたら、何も本当にあや子を危篤にする必要はなく、松木隊員に頼んで嘘情報を言わせればそれで事足りたのではないかと言う気もするんだよね。
以上、メインストーリーより、ゲンと百子さんの印象的なやりとりが胸に残る作品でした。
いや、ストーリーもなかなか面白いんだけど、いまひとつパンチが弱いんだよね。
内田がもっとゴリゴリの悪人で、ゲンをとことん窮地に追い込む……みたいなシーンが欲しかった。
そうすればマゾのゲンも喜んでいたと思うのだが。
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