第14話「参上!さすらい転校生」(1989年5月27日)
第2クールの始まりを告げると共に、物語後半の主人公とも言うべきヤミマルが初登場した重要なエピソードである。
冒頭、いつものように、授業中、山口先生が生徒たちと仲良くじゃれ合い、平和と青春を謳歌している。

まるでそんな彼らの堕落ぶりにカツを入れに来たかのように、グラウンドの片隅に、黒い学ラン姿の若者があらわれ、サッカーボールを踏み躙る。
「スクール☆ウォーズ」での、小沢アニキこと水原の初登場シーンを彷彿させるようなカットである。
男はそのボールを蹴る。
ボールは、山口先生の教室の窓ガラスを砕いて飛び込み、壁に掲げてある「真実」と書かれた額に当たってそれを落とす。
度肝を抜かれた山口先生と生徒たちは窓からグラウンドを見下ろすが、誰の姿もない。
続いて、廊下を歩く靴音と、気取った口笛の音がゆっくりと近付いてくる。
次の瞬間、あの若者が教室の戸を足で開け、
「ドジャーン!!」みたいな擬音が聞こえてきそうなアングルで登場する。
みんな、一体何者なのかと息を潜めて見守るが、
割りと地味な顔だった。チーン。
流星光(ながれぼし ひかる)こと、流れ暴魔ヤミマルを演じるのは田中良典さん。
管理人、今だから言えるけど、オンエアを見ていた頃、前作「ライブマン」のレッドファルコンと同じ人だと思ってました。
山口先生「なんですか、あなたは?」
やがて、山口先生が進み出て、教師の威厳を見せて問い質すが、
流星「人呼んで高校流れもの、さすらい転校生・流星!!」
まるっきり少年マガジンのキャラクターのようなふざけた台詞を放つと、

背中を向け、学ランに施された流れ星の刺繍を見せ付ける。
いやぁ、何度見ても素晴らしい学ランのセンスである。
若い人は知らないだろうが、当時、ヤンキーの間で学ランに刺繍入れるのが流行ってたのよ。
今思えば、何もかもが恥ずかしい……
で、どんな凶暴な荒くれ者かと思いきや、

流星「流星光、よろしく」
生徒たち「……」
割りと真面目だった。チーン。
ま、これは清く正しいちびっ子向けのドラマなので、仕方あるまい。
山口先生「転校生? そんなの聞いてません」
流星「だから今入ったのさ、このクラスが気に入ったんでね」
もっとも、正式に手続きを踏んで転入した訳ではないようで、山口先生も対応に苦慮するが、流星は持っていた頭陀袋を山口先生に放り投げると、大地の前に行き、
流星「席はここに決めたぜ」
机の上にあったコンパスを手に取り、そう言いながら机に突き刺そうとするが、大地は素早くそれを払い除け、黒板の「光」と言う字に突き立てる。
流星「ほお、やるな」
流星、座るところがないので泣いて帰ったと言うが、嘘である。
でも、手続きもしてないのに、追い出されもせずにそのまま学校にいると言うのは変だよね。
なので、あくまで形式上は、普通の転校生にしておくべきだったと思う。
放課後、流星はそれぞれ部活に励んでいる洋平、俊介、力のところにあらわれ、まるでその腕を試すかのようなちょっかいを出してくる。
グラウンドで投球練習していた力の、人間離れした身体能力を目の当たりにして、
流星「やるじゃねえか、お前、ターボレンジャーだな」
意外な言葉を口にする流星。
力「なんだって、何のことだかさっぱり分からんな……仮にそのターボ何とかだったらどうだって言うんだ」
流星「お友達になりたくてさ」
そう言うと、バトン部の練習をしていたはるかに気持ち悪い笑みを向ける。
自分の正体を見透かされたような気がしてドキッとするはるな、それを誤魔化すためにバトンを放り投げるが、手元が狂って頭上の枝に引っ掛かってしまう。

はるな「あっ……」
流星、いきなりジャンプするとそのバトンを掴み、

ハンカチで丁寧に拭いてからはるなに渡す。
で、そのハンカチにも学ランと同じ流れ星が刺繍されているのが芸が細かい。
流星が敵なのか味方なのかも、何を企んでいるのかもさっぱり掴めず、戸惑うばかりの力たちであった。
その後、今度は音楽室で華麗にピアノを弾く流星。

しかもただ弾くのではなく、後ろ向きで弾いて見せたりする。
女生徒「ハンガリー狂詩曲第2番、素敵、流星君ーっ!!」
何も知らない女生徒たちはすっかりその演奏に魅了される。
洋平「なにが素敵だよーっ」
俊介「気障な奴」
きわめつけは、
逆立ちしながらピアノを弾く!! 
近藤正臣もびっくりの大爆笑シーンだが、これを見たトム・クルーズが「ミッションインポッシブル」のあの有名なシーンを思いついたとかつかないとか……
その超絶的なパフォーマンスに、とうとう失神する女生徒まで出る始末。

力「どう見ても
バカですタダモノじゃない、暴魔百族に関係がある奴だと思うんですけど」
力は、ターボブレスで流星の映像を太宰博士たちに見せ、お伺いを立てるが、
太宰「君たちをターボレンジャーと疑うなんて暴魔としか考えられない」
シーロン「でも、暴魔のにおいは感じられません、暴魔百族とは関係ありません」
力「なんだって」
はるな「暴魔でもないなんて……じゃあ、一体彼は何者なの」
力たちがもう一度音楽室の中を見ると、忽然と流星の姿が消えている。
と、再び太宰博士から通信が入り、兜山古墳に暴魔獣が出現したと知らせる。

ドグウボーマ「暴魔族、ドグウボーマ!!」

ドグウボーマ、手当たり次第に炎を吐いて地面に擂鉢状の穴を開け、その中に発掘調査をしていた人たちを生き埋めにする。
ジャーミン「ドグウボーマは2万年もの間、土の中に埋められていた。今度は人間どもが埋められる番なのだ」
前回に続き、作戦の指揮を取るジャーミン。
5人は、マッハターボで現地に急行し、ルーティン的に暴魔獣たちと戦おうとするが、ムチを振り上げたジャーミンの手に光の手裏剣を当て、弾き飛ばしたものがいる。

ヤミマル「こいつらは俺の獲物だ」
ジャーミン「何者だ」
ヤミマル「流れ流れて2万年、流れ暴魔ヤミマル、ただいま参上」
それは、長大な湾刀を持ち、青灰色のざんばら髪に鬼の面のようなものをつけた、異様な戦士だった。
レッド「流れ暴魔ヤミマル?」
ジャーミン「流れ暴魔?」
その存在は、レッドたちは勿論、ジャーミンさえ初めて知った様子であった。
ブラック「暴魔百族め、新手を繰り出して来たか」
ヤミマル「俺はそいつらのように徒党は組まん。さすらいの一匹狼よ」
ヤミマル、傲然と言い放つと、問答無用でレッドたちに襲い掛かり、卓越した戦闘力で5人を圧倒する。

レッド「ぐあっ、うっ……」
その剣技と剣の切れ味は凄まじく、ターボレンジャーのスーツさえ易々と切り裂く。
もっとも、多数で少数をぶちのめすのが本芸の戦隊ヒーローは、どうしても個々の戦闘能力では幹部や怪人に劣ることになるので、そんなに驚くことではない。
一対一では、幸田シャーミンに名前が似ているジャーミンにだって勝てないんだから。
ならばと、5人はいつもの必殺技「プラズマシュート」を繰り出すが、

頭上から落ちてくる巨大なプラズマの塊を、

ヤミマル「どぅあーっ!!」
手にした大刀で真っ二つに断ち割ると言う、非常識な方法で防ぐヤミマル。

斬られたプラズマが地面に落ちて大爆発を起こし、ターボレンジャーを吹き飛ばす。
ジャーミン「何と言う奴だ!!」
ピンク「プラズマシュートが負けるなんて……」
ヤミマル「分かったか、流れ暴魔ヤミマルの凄さ……ターボレンジャー覚悟」
ヤミマルは攻撃の手を緩めず、この場で一気に5人を片付けようとする。
レッド「引けっ!!」
やむなくレッドは撤退を指示し、5人は飛び跳ねるようにして逃走する。
屈辱の敵前逃亡であった。
ヤミマル「チッ、ふんっ!!」
ヤミマル、額からビームを放ってドグウボーマを小さな土偶に変えると、光のロープを伸ばして、ジャーミンの指先から土偶を掠め取る。
ヤミマル「貰っとくぜ」
CM後、太宰博士のところで傷の手当をしている力たち。
流れ暴魔のことはシーロンさえ知らなかった。
一方、暴魔城では、

レーダ「流れ暴魔とは、暴魔百族にも加えてもらえぬ半人前の暴魔よ、恐らく2万年前、封印を免れたのであろう」
さすが物知り博士のレーダは、流れ暴魔のことを知っていた。
ジャーミン「しかし、そのような半人前の暴魔が何故プラズマシュートを破るほどの技を持っていたのでしょうか」
ラゴーン「恐らく2万年の間に腕を上げたものと思える、小癪なやつだが、果たして本当にターボレンジャーを倒せるかどうか、見てみるとしよう」
レーダの代わりにジャーミンの疑問に答えると、ラゴーンは剛腹なところを見せ、しばらくヤミマルの好きにさせようということになる。
力「ヤミマルの奴……」
5人が悔しそうに道を歩いていると、その前に悠然と流星があらわれる。

力「流星……」
流星「どうした、暗いなぁ、失恋でもしたのか」

力「うあっ」
ヤミマル「おっと、すまんすまん、怪我してたのか」
擦れ違いざま、力の肩に手を置き、わざとらしく驚いてみせる。
無論、力の正体がレッドターボかどうか、確かめたのである。
ヤミマル「どうしたんだ、一体誰にやられたんだ」
力「ほっといてくれ」
不愉快そうに言い放つと、5人は流星と別れて歩き出すが、
力「もしかして、あいつが……」
力、ワンテンポ遅れてそのことに気付き、慌てて振り返るが、その時にはもう流星は風のように姿を消していた。
その後、5人の前にドグウボーマ、ヤミマルがあらわれ、再び戦いとなる。
ヤミマル、槍、鎖鎌、そして剣と、様々な武器を自在に操り、ターボレンジャーを追い詰める。
それでもレッドがターボレーザーを撃ってその剣を飛ばし、偶然それがドグウボーマの脳天に突き刺さる。
その隙を逃さず、レッドがドグウボーマをGTクラッシュで撃破する。
ただ、ヤミマルの強さが落ちたわけではなく、このまま戦えばヤミマルの勝利だったと思われるが、
ヤミマル「おのれっ」
最強の戦士も、泣く子とスポンサーには勝てないのか、条件反射的に、自分の飼っている蜘蛛から再生巨大化ビームを放ち、ドグウボーマを巨大化させて巨大ロボバトルを行わせる。
今回は何とか勝ちを拾ったターボレンジャーであったが、かつてない強敵の出現に、険しい面持ちのまま次回に続くのだった。
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