第20話「ゴリラ少年大暴れ」(1980年6月14日)
冒頭、ベーダー城にて、ヘドラー将軍が新たな怪人を誕生させようとしていたが、怪物製造レンジのレバーをいくら動かしても、一向に卵が孵化しない。
ヘドリアン「まだかぁ」
ヘドラー「はっ」
へドリアン「何をしとる? まちくたびれた、その卵はまだ孵化しないのか? 腐っておるのではないのか」
ヘドリアンの失礼な言葉に、ヘドラーは色を成して反論する。
ヘドラー「とんでもございません!! これは史上最強のベーダー怪物の卵、だから誕生には時間が掛かります」
ヘドリアン「生まれるまでまた昼寝じゃ」
意外と根気のないヘドリアンは、そう言うと毛皮のソファに横たわって目をつぶる。
「悪の組織」の首領が昼寝してるなんて、あとにも先にもこのシーンだけだろう。
ヘドラー将軍の苦悩が続く中、地上には、苦悩とは無縁のひとりの自堕落な小学生がいた。

茂「……」
土手の斜面の上に寝転がったままバナナを食うと、皮をその辺に放り投げる。

三太「おーい、茂、何やってんだい」
と、そこに、今回から4人になったレギュラー子役たちが自転車に乗って通り掛かり、茂に声を掛ける。
茂「……」
茂は上半身を起こして彼らの方を見るが、返事さえせずにまた横になってしまう。
ゆみ子「アスレチックに行かない?」
茂「……」
三太「運動をやって体を鍛えなきゃ」
茂「運動なんてバカバカしい」
ゆみ子「どうして?」
茂「体を鍛えて何になるんだよ、お前たち、オリンピックの選手にでもなるつもりかよ」
三太たちはそれでも茂をアスレチックに誘うが、茂はおっさんみたいなひねたことを言って、全く興味を示さず、子供たちも呆れてさっさと行ってしまう。
その後、茂が公園の中をぶらぶら歩いていると、森の中に赤と白の花弁を持つ、見たこともないような奇妙な花が咲いていて、その中からなんとも言えないかぐわしい香りが漂っていた。
茂は思わず蜜腺に指を突っ込んで、その液体を口に入れる。
茂「うめえや、凄くうめえや」
食うことと寝ることしか頭にない茂は、たちまちその甘美な蜜の虜になる。
一方、遂に最強のベーダー怪物と言う触れ込みのハチドクラーが誕生し、ヘドリアンも胸をワクワクさせながらその勇姿に注目するが、

ヘドラー「ハチドクラーめにござ……」
怪物製造レンジから出て来たのは、いかにも元気のない怪人で、その病人のような佇まいに、張り切ってそのお披露目をしようとしたヘドラーも途中で言葉に詰まってしまう。

ハチドクラー、名乗りを上げるどころか、疲れ果てた様子で階段の上に座り込んでしまう。
ヘドリアン「どうしたのじゃ?」
ハチドクラー「はぁーっ」
ヘドリアン「ヘドラー将軍、こんな腑抜けものがデンジマンと戦えると思うのか!! この愚か者めが!!」
これには散々待たされたヘドリアンも頭に来て、ヘドラーを激しく罵倒する。

ヘドラー「申し訳ございません、しかし、ハチドクラーは好物を与えれば、見違えるように力がつき……」
ハチドクラー「ふー」
ヘドラー「ええいっ!!」
ヘドラー、言い訳しながらハチドクラーを立たせようとするが、面倒臭くなってその体を突き飛ばす。
ヘドラー「……デンジマンなど物の数ではございません」
ヘドリアン「して、ハチドクラーの好物とは?」
ヘドラー「100年に一度だけ岩の間にひそかに咲く真紅の花、その蜜が何よりの好物」
ヘドラーはその花のありかも突き止めていると言うが、

見張りをつけておかなかったのが痛恨のミスで、すでに蜜は、意地汚い茂によってあらかた盗まれていた。
と、突然、茂の体内に凄まじいエネルギーが湧き上がり、素手で大木をへし折ってしまう。
一方、アスレチックの事務所では、黄山が、お世辞にも旨そうには見えないナポリタンを青梅のために作ってやっていた。

黄山「おい、出来たよ」
青梅「あらまー、またこれ?」
黄山「うん」
青梅「あのねー、もっとスタミナのつくレパートリーはないの?」

黄山「青梅、それ以上スタミナがついたらベーダーが困るよ」
青梅に注意する黄山の後ろを、水着姿のあきらの土手が通過する。
あきら「ほんと」
青梅「あっはは、違いねえ、違いねえな」
青梅、仕方なくそのスパゲティーを食べ始める。
あきら「でも、このところ変に静かじゃない」
青梅「何がさー」
あきら「ベーダーの動きよ」
黄山「そういやそうだな」
青梅「ベーダー一族はだね、俺たちデンジマンに恐れをなして……」
緑川「その考えは甘いな」
黙々とトレーニングに励んでいた緑川は、青梅の言葉を否定すると、

緑川「やつらのことだ、陰で悪いことをたくらんでるんじゃないのか」
憶測を口にして、仲間の油断を戒める。
貴重なあきらの水着姿だと言うのに、カメラはろくにその肢体を映してくれない。
ちくしょう。
さて、空手の稽古を終えた三太たちが自転車を走らせていると、その前に茂が立ちはだかる。

茂「おい、俺と勝負しな」
三太「勝負ぅ?」
茂「そうだ」
茂を怠け者の肥満児だと思っている三太たちは、相手にせずに通り過ぎようとするが、茂は普段とは別人のような怪力と俊敏さを発揮して、たちまち4人を自転車ごと引き倒してしまう。
ここは是非、ゆみ子ちゃんが倒されるシーンをフィルムに焼き付けて欲しかったところだが、女の子と言うことで、最初から背中をこちらに向けて倒れていて、しかもかなりのロングで撮ってあった。
ちくしょう。
それはともかく、そこへ千恵子たちのミニパトが通り掛かり、
千恵子「君たち、喧嘩はやめなさい」
茂「なにぃっ」
千恵子が注意しようとするが、逆に茂に突き飛ばされ、

千恵子「ああーっ!! あいたぁ~っ」
背後のコンクリートの壁に大きなお尻(希望)をしたたかぶつけて、その場に座り込んでしまう。
一方、ケラーたちはあの花のところに行くが、すでに蜜を吸い尽くされてしおしおに枯れていた。
千恵子「いったぁ、とにかく凄いのよ、とても子供の力と思えないの」
千恵子は赤城たちのところに行き、痛さに顔をしかめながら不思議な子供の話をする。
千恵子「太っちょで怠け者、運動が大嫌い、そんな少年が急に強くなるなんて変じゃない?」
赤城「なんかあるな」
千恵子「そう、なんかあんのよ、なんか」
あきら「その少年は今何処に?」
茂は河川敷で、大人のアメフト選手を次々と弾き飛ばし、見事なタッチを決めていた。
その様子を土手の上から人間に化けたケラーがじっと見詰めていた。
ベーダー城では、肝心の花の蜜を奪われたと知ったヘドラーが怒り狂っていた。
ハチドクラーは、ミラーが持ち帰った枯れた花を未練がましく舐めていた。

ヘドリアン「ええい、みっともない、やめろ!!」
そのみっともない怪人の姿を、テーブルマナーの悪い子供をしかりつける母親のようにどやしつけるヘドリアン。
と、そこへケラーが息せき切って飛び込んでくる。
ケラー「ヘドラー将軍、蜜泥棒を見つけました」
ヘドラー「本当か、よし、そいつをひっとらえろ」
直ちに出撃するケラー、ミラー、戦闘員に続いて、
ハチドクラー「あ、待て、俺も……行くわ」
ハチドクラーも枯れた花を投げ捨てて追いかける。
その後も傍若無人に暴れ回る茂。
緑川とあきらがやってきて、

あきら「ね、茂君、どうしてそんなに強くなったの」
緑川「おい、茂君」
茂「たーっ!!」
緑川がその肩に手を置くと、茂はその腕を取って投げ飛ばす。

植え込みの中に頭から突っ込んで足をバタバタさせている緑川にあきらが駆け寄り、
あきら「大丈夫? グリーン、しっかりして!!」
……
はい、しっかり目に焼き付けてますっ!! ま、所詮は見せパンじゃないかと冷ややかな反応を示すムキもあろうが、たとえ生パンツでなくとも、若い女性のミニスカの中からモリッとしたものが覗くだけでも、男と言うものは無性に嬉しくなってしまう、どうしようもない生き物なのである。
茂「今までみんなバカにしやがって、そのお返しをしてやるからな」
友子「危ないわよ、どきなさい」
茂が道の真ん中を闊歩していると、後ろからまた千恵子たちの乗ったミニパトがやってくる。
茂「うるせえなっ」
千恵子「警察です、そこどいて」
茂「うるせえって言ってんだろ」
ほとんど言動が暴力団みたいになった茂は、やにわにミニパトに掴みかかると、乗っている人間ごとミニパトを河川敷に押し出し、何故かブレーキが利かなくなったミニパトはそのまま河川敷を突っ切って、川の中に落ちてしまう。
と、すぐに緑川たちが駆けつけ、

緑川「おい、チーコ、だいじょぶか?」
あきら「だいじょうぶ?」
……
だいじょうぶです!! ちゃんと見えてます!! 千恵子「茂君がやったのよ、あの子は悪い子です、なんとかしてよーっ!!」
困り果てて、悲鳴のような叫び声を上げて緑川たちに泣きつく千恵子であった。
茂「はははーっ」
だが、茂は反省の色も見せず、土手の上から得意げにその様子を眺めていた。
なお、茂は確かに怠け者で偏屈な少年だったが、別に人をいじめて喜ぶほど悪辣でもなかったので、あの蜜の副作用で、性格の方もいささか凶暴になっていると思われる。
その後、茂は森の中で戦闘員に襲われるが、パワーアップした茂には戦闘員ですら歯が立たない。
だが、所詮は子供、戦闘員たちによってたかって掴みかかられると身動きできなくなる。
そこをハチドクラーたちに脅されて、蜜の隠し場所を吐かされる。
ミラー「あった、ハチドクラー、好物の蜜があった」
ケラーたちが蜜をゲットしている間に、茂はグリーンとピンクに救出される。
茂「体が熱い、苦しい~っ」
ところが、茂が急に苦しみ出して、枯れ葉の上をのた打ち回る。

あきら「どうしたの?」
緑川「おい、どうした」
あきら「あっ」
慌てて二人が駆け寄ると、茂の顔にそれこそ蜂の巣のような模様が入り、全身が毒々しい赤色を帯びる。
いささか発症が遅い気もするが、あの蜜の副作用であった。

緑川「君、だいじょぶか?」
茂「花ぁーっ!!」
あきら「花? 花がどうしたの?」
茂「甘い蜜、甘い蜜をーっ!!」
緑川「その蜜を舐めたのか?」
悶え苦しみながら、自分のやったことを打ち明ける茂。
直ちにピーポー車で病院に担ぎ込まれるが、例によって例のごとく、医者はクソの役にも立たない。
医者「おかしいねえ、こんな病気は見たこともないねえ。
笑うしかないねえ」
緑川「……」
二人が病院から出ると、ちょうど赤城たちがやってくる。
赤城「よお、少年の病気はどうだい」
あきら「一応解熱剤を打ったけど、お医者様にも分からないらしいの」
昔のドラマで、女性が医者を呼ぶのに「様」をつけるのが、なんか奥床しくて良いよね。
デンジマンは茂の血液を採取して、デンジランドに持ち帰り、分析する。
どうでもいいが、黄山が眼鏡を掛けたまま顕微鏡を覗くのは、さすがにどうかと思う。

黄山「毒ガスの成分に似ている」
緑川「どうすりゃ助かるんだ」
黄山「酸素を補給するんだ」
赤城「酸素か……やってみよう」
黄山「あきら、病院に連絡してくれ」
ともあれ、黄山が大変具体的な対策を示し、それをあきらが病院に伝えるが、酸素吸入くらい、素人に指示されなくたってやっとけって話だよね。
一方、念願の蜜を手に入れたベーダーは、早速それをミキサーのような形をしたハチドクラーの頭の中に注ぎ入れる。
その効果は覿面で、全く覇気のなかったハチドクラーが見るからに頼もしげな戦士に生まれ変わる。
ヘドラー「ご覧下さい、ハチドクラーは蜜の力により無敵のベーダー怪物に生まれ変わりました」
手始めに、そこにいた罪もない戦闘員たちをボコボコにするハチドクラー。

ヘドリアン「おお、見事、見事、それでこそベーダー怪物じゃ」

まだ暴れたりないとばかり、今度は壁に蹴りを入れて大穴を開けるが、

ヘドリアン「おーおー、お見事」
ヘドリアンはなおもご満悦で、ひたすらハチドクラーの元気を褒め称える。
誰も止めないのでハチドクラーは柱までへし折り、遂には部屋全体がぐらぐら揺れて、天井から大きな建材が落ちてくる。
これには太っ腹のヘドリアンも閉口して、椅子の後ろに避難する。
ヘドリアン「コラーッ、調子に乗るな!!」
その後、街へ出たハチドクラーは道の真ん中に仁王立ちすると、ちょうど走ってきた軽トラに喧嘩を売り、

ついで、後ろから来たミニパトを片手で持ち上げて見せる。

千恵子「きゃあああーっ!! 助けてーっ!!」
で、それに乗っていたのがまたしてもあの二人で、

千恵子「あいたたたたたぁ……」
ミニパトを投げ飛ばされてさかさまになり、友子巡査も一緒にアホ面を晒す羽目となる。
今回、とことんツイてない千恵子たちなのであった。
千恵子たちはいい迷惑だったが、でかいこと言う割りにハチドクラーのやることはみみっちく、あの軽トラを投げ飛ばした以外には、これと言った破壊活動はせず、その前後で渋滞が起きただけだった。
ヘドラーは、「お前の怪力で人間どもを地獄へ送ってやれ」と大層なことを言って送り出しているのだが、まあ、交通渋滞と言う、現代社会における地獄のひとつを作り出したことだけは確かである。
つーか、これくらいの芸当、普通のベーダー怪人でもやれることだよね?
この後、ラス殺陣となるが、ハチドクラーは特に見せ場もなくデンジブーメランで倒され、これの何処が史上最強なんだーっ!! と、海に向かって叫びたくなるが、巨大ロボバトルでは、無敵のダイジンデンを相手に善戦して、多少は面目を施す。
が、エネルギーの源である頭のタンクを破壊されるとたちまちザコに成り果て、あっさり撃破される。
こうして、終わってみれば「大山鳴動して鼠一匹」的な事件は解決し、ハチドクラーの死と共に茂の体も元に戻る。

今回、ろくなことがなかった千恵子の為に、飛び切り綺麗な一枚を貼っておこう。
と、そこへあきらと緑川が入ってくる。

千恵子「熱が下がったわ」

なお、心底どうでも良いのだが、その場にいる看護婦さんのひとりが、眼鏡っ子でなかなか可愛いと思いました。
緑川「あの毒には持続力がなかった、だから助かったんだよ」
あきら「良かったわ」
緑川の言葉で、単にタイミングが重なっただけで、別にハチドクラーが死んだから治った訳ではないことが分かる。
まあ、考えれば当然なんだけどね。
この後、心機一転、アスレチックに入会してヒーヒー言いながら空手の稽古をしている茂の姿と言う、お約束のエピローグとなり、
ナレ「世の中、決してうまい話は転がっていない、そう、一歩一歩の努力が明日への大きな力となり、悪との戦いを恐れぬデンジマンのような強い力を生むのだ」
最後は、日々の努力の大切さをちびっ子たちに訴える大変教育的なメッセージで締め括られるのだった。
以上、ストーリー自体はどうと言うことはないが、随所に見られるたくらまざるユーモアや、千恵子たちの受難、あきらのモリチラなど、個人的には見所の多い作品だった。
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