第29話「赤鬼 青鬼 恐怖の100億Vボルト!!」(1973年12月1日)
冒頭、

ザダム「稲妻よ、光れ、雷鳴よ、轟け、雷こそわがザダムの偉大な力となるのだ。天と地の間に100億ボルトの火柱を立てよ、もっと光れ!!」
ザダムが地獄のような荒涼とした岩場で、雷のエネルギーを蓄え、何かを生み出そうとしていた。
ちなみに実際の雷の電圧は1~10億ボルトなので、100億は無理っすね~。
まあ、ザダムの言うのは、雷を集めて100億ボルトの電圧にしようと言うことなんだろうが。

彼らの横には大きな機材が置かれ、オペレーターの戦闘員が機器を操作しているのだが、電圧の表示メーターに、「V=俺」って書いてあるので、一体何のことかと思ったら、「俺」じゃなくで「億」でした。
ザダム、愛用の三つ又の槍を空中に投げ、

その槍に蓄積された(?)雷のエネルギーを赤と青、二つの球に分け与えようとするが、途中でエネルギーが尽きてしまう。
ザダム「誰かが雷のエネルギーを横取りしているぞ。わが偉大な発明には100億ボルトのエネルギーが必要なのだ。邪魔をしている奴を殺せ」
その犯人は、だだっ広い野原に避雷針を立て、故意に雷を落として何かの実験を行っている若い女性と小学生の男の子という、妙な取り合わせの二人組みであった。

ヒカル「準備オッケイよ」
ミサオ「あなたたち、危ないじゃないの、雷が落ちたら死んじゃうのよ」
そこへミサオたちがあらわれ、注意するが、

ヒカル「邪魔しないでください、学問のない人はこれだから困るのよ」
いかにも軽蔑したような目で冷ややかに見下ろす。
稲妻ヒカルと言う愉快な名前のこの女性、演じるのは、「タロウ」の42話でアンドロイド聖子を演じていた川口真有美さんである。
雷太「僕たちは雷の研究をしているんだ」
アキラ「ふーん」
二人とも眼鏡を掛けた、分かりやすい秀才スタイルで、学がないどころか、義務教育さえ満足に受けていないアキラたちはひたすら感心するだけであった。

と、ひときわ強力な雷が落ちてきたかと思うと、

その電圧に耐えかねたのか、激しい爆発が起き、避雷針が根元の方からポッキリ折れてしまう。
無論、シャドウの仕業であった。
ヒロシ「変な雷だなぁ」
ヒカル「雷じゃないわ、もう許せない。誰です~? 神聖な科学実験の邪魔をするのは?」
頭が良いだけじゃなく、度胸も良いヒカル、臆せず大声を張り上げて正体不明の相手に向かって呼びかける。
それに応じて、彼らの周りで爆発が起き、ついで、ハカイダーがあらわれる。
ハカイダー、ミサオたちもまとめて皆殺しにしようとするが、例によって例のごとく、イチローが駆けつけて阻止する。
だが、ハカイダーはイチローが01に変身する前に、とっととマシンに乗って逃げ出してしまう。
臆病風に吹かれたのではなく、そうやってイチローをひきつけておくのが彼に与えられた任務だったのである。
ザダムたちはその間に再び雷を100億ボルト分集め、遂に悪魔の計画を成就させる。

プラス「ライジーン・プラス」
マイナス「ライジーン・マイナス」
ザダム「お前たちはシャドウの科学が生み出した雷の申し子、プラスとマイナスで協力して人間を滅ぼすのだ」
それは、雷神(鬼?)をモチーフにした、顔の部分だけスーツで、下は肉襦袢のようなものに色を塗っただけと言う、ビンボーの嵐が吹きまくっている造形の怪人たちであった。
二人が誕生した際の巨大な爆発を目印に、早くも01がこの場所を見付け、生まれたばかりのライジーンたちと戦うが、両者の間に挟まれた01は、彼らの発する雷のエネルギーをまともに浴び、体がショートして燃え出してしまう。
ザダムがその気になれば、この場で01を破壊することも可能だったろうが、ライジーンの電気ショック攻撃によりアジトから弾き飛ばされたため、なんとか九死に一生を得る01であった。
その後、イチローたちは雷太の自宅を兼ねている鳴神カミナリ研究所に招かれ、もてなしを受ける。

イチロー「そうか、雷太君は、あの雷の研究で有名な鳴神博士の一人息子だったのか」
雷太「はい、だから僕も、パパの跡を継いでカミナリの研究家になろうと思ってるんです」
ヒロシ「まだ子供なのに、難し過ぎるんじゃないのー?」
横で聞いていたヒロシが、自分のお粗末な頭と引き比べて疑念を呈するが、
ヒカル「いいえ、雷太君は知能指数250と言う天才児なの、君たちとは頭の出来が違うわ」
ヒロシ「カーッ」
ぬけぬけと自慢され、ヒロシが酔っ払いのおっさんが痰を吐いているような声を上げる。
ヒカル「その上、この私が英才教育をしてるからきっと立派な科学者になります」
ミサオ「わー、えらいわねえ、あなたちにも雷太君の爪の垢でも煎じて飲ませたいわ」
アキラ「ちぇっ、劣等感感じちゃうね」
ミサオ、それにかこつけてアキラたちに小言を言うのだが、仮にも保護者の癖に、一年中旅を続けている彼らにまともな教育を施していない自分の怠慢こそ恥じるべきだろう。
当然、雷太を教えるヒカルもずば抜けた才媛で、元々鳴神博士の最優秀の助手だったのだが、
雷太「今は僕の家庭教師なんです、東大、ハーバード大学、ケンブリッジ大学、ソルボンヌ大学、モスクワ大学を見学したことがあるんです」
一同「見学かいっ!!」 じゃなくて、
雷太「今は僕の家庭教師なんです、東大を卒業して、ハーバード大学、ケンブリッジ大学、ソルボンヌ大学、モスクワ大学で数学や物理を勉強して今は博士号を4つも持ってるんです」
アキラ「すげーや」
ヒロシ「これからの女の人はこうでなくっちゃ、ねーっ、それに比べて……」
さっきの仕返しとばかり、軽蔑の眼差しを自分たちの保護者に向ける二人であったが、ミサオは彼らの話など耳に入らず、ひたすらケーキを貪り食っている最中であった。
なお、この場所は昔から雷が多発する地として知られていたが、最近その数が異常に増えてきたので、博士はその原因を突き止めようとしていたが、雷が落ちて死んだらしい。

雷太「これは模型ですけど、避雷針と同じ仕組みで雷のエネルギーを集めていたのです」
ヒカル「ご存知の通り、雷はプラスとマイナスで引き合う電気です」
イチロー「磁石もプラスとマイナスで出来てますね」
ヒカル「あなたはこの子たちの仲間にしては出来がいい人ね」
ヒロシ&アキラ「くけっ」
ヒカルのイヤミったらしい言い方に、吐きそうな顔を見合わせる二人。
ミサオと長いこと一緒にいるせいか、最近、ヒロシの顔や言動がおっさんっぽくなってきた。
ヒカル「そのとおり、磁石も電気を吸い寄せます、その性質を利用したのがこの避雷針です」
このやりとりが、きっちり終盤の伏線になっているのが嬉しいのです。

雷太「パパは、雷は、誰かが人工的に起こしていると言っていました」
イチロー「なるほど、それがシャドウの仕業だったわけか」
ちなみにこの子役、演技はつたないが、顔立ちは、今でも子役として通用するほどの美少年である。
一方、ビッグシャドウは、誕生したライジーン兄弟(?)を前に、彼らの使命が「電気ショック作戦」と「100億ボルト作戦」の二つあることを説明していた。
「電気ショック作戦」は、電気ショックによって人間を無気力にしてしまうもの。
ビッグシャドウ「無気力になった人間は、やがて怠け者になるだろう、見ろ」
そう言って、モニター画面を示すビッグシャドウであったが、

そこに映し出されたのが、
「本物のナマケモノ」だったので、一瞬どう反応して良いのか戸惑うザダムであった。
いわゆる、
ザダム(それはひょっとしてギャグでやっているのか?) の世界である。
ま、実際は、ザダムもビッグシャドウと一緒にケラケラ笑ってるんだけどね。
残る「100億ボルト作戦」は、彼らの体内に蓄積された100億ボルトの電気で01を殺すというものだが、100億ボルトの電気は一度しか使えないということで、慎重なビッグシャドウは、ひとまず「電気ショック作戦」の遂行を命じるのだった。

野原でアーチェリーの練習をしているヒカル。
こういうシーンは、もうちょっと胸を強調した服装でやってもらわないと……
そこへライジーンたちがあらわれたので、ヒカルはアーチェリーで反撃する余裕もなく脱兎のごとく逃げ出すが、

エレキテルと言う技でその体を動けなくした上で、ヒカルの頭の上に、デンデン太鼓のようなアイテムを浮遊させると、大脳神経麻痺電気ショックなるものを浴びせる。

ここでヒカルのヒクヒク脈打つリアルな大脳の映像を映し出し、
ナレ「なんと巨大な皺の多い脳味噌であろうか、これこそ、天才的女性科学者・稲妻ヒカルの脳味噌である。しかし、この優れた脳味噌も電気ショックで麻痺してしまった」
これまた、ギャグで言っているのかマジで言ってるのか分からないトボけた台詞をナレーターに言わせるあたり、曽田博久脚本の真骨頂である。
もっとも、途中で01にスコーンと言う抜けの良い音でデンデン太鼓は蹴飛ばされ、
01「今のうちに逃げるんだ」
ヒカル「はい」
01に言われて、ヒカルがその場から逃げ出していることから、効き目は不十分だったことが分かる。
ライジーンたちは、01と軽く戦ってから、すぐ退却する。
だが、CM後、

ヒカル「はぁ~」
雷太「先生、勉強の時間です」
ヒカル「勉強なんかよしましょう、ゆっくりしましょう」
やはり効き目はあったのか、ヒカルはすっかり怠け者になってしまっていた。
もっとも、後に出てくる廃人同様の被害者たちに比べればまだマシであり、01に邪魔されたのでこの程度で済んだのだろう。
あるいは、元々偉大な脳味噌だった分、麻痺しても機能がさほど衰えないのかもしれない。

ヒカル「お腹空いた……何か頂戴」
アキラ「はい」
ヒカル「食べさせて」
ヒロシ「横着だなぁ」
ヒカルに言われて、アキラは自分の持っていたキャンディーを差し出すが、ヒカルは面倒臭がって自分で持たず、アキラに差し出させたものをペロペロと舐めるのだった。
どうせなら……いえ、なんでもないです。
雷太「一体先生に何があったんですか?」
イチロー「うん、考えられることはヒカルさんは電気ショックを受けて、無気力な人間になってしまったんだよ」
雷太「先生はどうなるんですか? 僕のママの代わりもやってくれているのに」
ヒカル「どうだっていいでしょ……」
右手にキャンディー、左手にガラガラを持ち、赤ん坊のように他愛のなくなったヒカルの姿に、揃って溜息をつくイチローたちであった。
その後、ヒカルの代わりに買い物に出掛けていたミサオとヒロシも電気ショックを受けて無気力人間になり、野原に転がって眠ってしまう。
まあ、彼らの場合、普段とあんまり変わってないような気もするが……
「タロウ」のヤメタランスのように、ミサオたちが逆に勤勉な人間になると言う展開もあったかもしれない。
ライジーンたちはその後も次々と市民に電気ショックを与えていくが、

そのイメージの中に、カップルが両側から駆け寄って抱き合い、女性の体がふわりと宙に舞うというのがあって、そこでしっかりパンツが顔をお出しになられているんですねえ。
まさに教科書どおりのチラである。
一方、イチローとアキラは、いつまで経っても帰ってこないミサオたちが野原で眠りこけているのを発見する。
アキラ「大変だ、兄ちゃんたちも無気力人間になっちゃったんだ」
イチロー「だいじょぶだ、必ず僕が救ってやる」

その後も、ひたすらキャンディーを舐めているヒカル。
……
ヒカルのそばのソファーでは、イチローたちが連れ帰ったミサオとヒロシが熟睡している。

雷太「参っちゃうなぁ」
アキラ「こう無気力人間が揃っちゃうと、こっちまで無気力になりそうだ」
雷太「くじけちゃダメだよ、元に戻す方法を考えなくちゃ」
子供たちが腕組みして考え込んでいると、イチローが何か異様な気配を察知し、急いで二人をその場から避難させる。

果たして、高台から街を見下ろしていたライジーンたちが、空中に無数のデンデン太鼓を浮遊させ、すべての家庭に雷を落とし、住民を根こそぎ無気力人間にしようとする。
イチローの機転でアキラと雷太だけは助かるが、住民たちは誰も彼も自分のすべきことを放り出して、所構わずその場で眠り出してしまう。
さらに、

住民の中には、雑木林の木に登り、両手と両足で枝にぶら下がるという、それこそナマケモノそっくりの行動に出るものもいた。
そう、ビッグシャドウがモニターでナマケモノの写真を映して笑っていたのは、このシーンの伏線(?)だったのである!!

そんな人間たちの滑稽な姿をゲラゲラ笑って見物している戦闘員たち。
……
しかし、こんな状態をキープするのは普通にしているより大変なので、これのどこが無気力人間やねん、という気がしなくもない。

その様子を、離れたところから双眼鏡で見ているイチローたち。
彼らの台詞によると、ミサオたちもそうやっているらしいのだが、ソファーで気持ちよく寝ていたミサオたちが、わざわざ起きて雑木林にまで足を運んで、こんな姿勢で寝るだろうか?
それはともかく、イチロー、ライジーンたちと決着をつけねばならないと考えるが、相手の強力な電気エネルギーを思うと、迂闊に飛び込めない。
それでもイチローは堂々と敵のアジトに乗り込み、01に変身してライジーンおよびハカイダーと戦うが、やはりその強大な電気エネルギーには対抗できず、電気の力で無理やり電気椅子に座らされて拘束されてしまう。
ハカイダー「どうだ、01、動けまい、これがお前の死刑台、雷電気椅子だぁ」
01「くっ」
ハカイダー「泣け、喚け、貴様の最期だ」
01「はぁーっはっはっはっ、それはどうかな」
ハカイダー「なんだと、死刑だ、死刑だ、100億ボルトの最後のエネルギーで死刑にしろ」
何か成算があるのか、こんな状況に追い込まれても笑ってみせる01に、ハカイダーがヒステリックな声でライジーンに命令するが、

プラス「雷エネルギー100億ボルト」
マイナス「サンダー殺人ビーム」
満を持して左右から発射された100億ボルトの電気は、01の体をそれて、その後ろに引き寄せられてしまう。

そう、いつの間にか彼らの背後には、トラックの荷台に載せられた巨大な磁石が用意してあり、それによって電気エネルギーが吸い取られてしまったのである。
前半で出て来た、「磁石も電気を吸い寄せる」と言う台詞が見事に生かされたオチであった。
ただ、問題がひとつあって、どうやってイチローはあらかじめその場所で処刑が行われることを知っていたか、である。
超能力者でない限り、事前にそんなことが分かる筈かない。
磁石はトラックに載せてあるから、状況にあわせて移動させれば済むじゃないかと言う意見もあろうが、現在、この街の住民はひとり残らず無気力人間にされているので、トラックを運転できる人間がいないことを忘れてはいけない。
この後、100億ボルトの電気エネルギーを失い、ただのザコに成り下がったライジーンたちをサクッと倒し、事件は解決する。
ただし、「仮面ライダー」のように、「怪人の死」=「被害者の回復」と言う安易な手法を取らず、

ちゃんと専用のメカを作り、それでヒカルたちの大脳の中の電気を吸い取って正気に戻しているのがエラい。
もっとも、全住民にこんなことをしていた日には、全員治すのに何ヶ月もかかるんじゃないかと……
ラスト、いつものように荒野をダブルマシーンで走っているイチローを見下ろすハカイダーであったが、

ハカイダー「ビッグシャドウに怒鳴られ、雷を落とされるし、ろくなことはないわ。01、今度こそお前を死刑にしてやるぞ」
真顔で、座布団一枚もらえそうな「うまいこと」を言ってぼやくのが、ちょっとツボであった。
以上、ドラマ性はあまりないが、色々とお楽しみの多いエピソードであった。
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