第9話「美しい人形スパイ」(1982年5月14日)
冒頭、関東第一細菌研究所と言う、若干物騒な名前の研究所にマクーのダブルマンが侵入し、何かの資料を探していたが、警備員に見付かり、これを殺害。
直ちにギャバンが駆けつけて戦うが、逃げられてしまう。
ちょっと不自然だが、翌日、烈はそのことをわざわざコム長官に報告している。
烈「マクーははじめから資料を狙って侵入したようなんです、それも7年前の培養実験に関するデーターです」
コム長官は、マクーの狙いは、バシラスXゼロと言う特殊な細菌ではないかと推測する。
コム「7年前に日本の若い細菌学者が発見したんだ」
烈「どんな特性を持つ細菌なんですか」
コム「その菌は一週間だけ猛然と繁殖し、その後、ピタッと死に絶えてしまうんだそうだ」
ミミー「マクーはその細菌を使って爆弾を作るつもりじゃないかしら」
マリーン「きっとそうよ」
ミミーの憶測に頷くマリーンであったが、これも、細菌を悪事に利用する方法は色々あるのに、なんで爆弾に限定されるのか、よく分からない。
あと、コム長官の「ピタッと……」と言う台詞が、妙におかしい。
それ以前に、その細菌が人体にどういう影響を及ぼすのか、肝心なことを一切説明していないではないか。
コム長官によると、細菌を発見した杉本哲也と言う学者は「学会に発表もせずに姿を消し」たらしいのだが、学会に発表してないのに何でコム長官はバシラスXゼロのことを知ってるんだ?
つーか、人為的に作り出された細菌兵器ではなく、自然界に存在する細菌なら、最初の発見者が行方不明になったとしても、別の学者に発見されてると思うんだけどね(発見されてるからコム長官も知ってるんだろうし……)
なので、この場合は、「仮面ライダー」などでお馴染みの、「癌の特効薬を作ろうとしたら凶悪な毒薬を作っちゃいました、てへっ!!」みたいな設定の方が分かりやすかったと思う。
それなら、マクーが杉本にこだわるのも理解できるからね。
それはそれとして、ハンターキラーとダブルマンが魔空城に戻ってきて報告する。
ハンターキラー「バシラスXゼロの発見者・杉本哲也を発見いたしました」
ドン・ホラー「ううむ、見つけ出したか」
ハンターキラー「奴は今、塚原哲と名前を変え、中学校の理科の教師をしております」
ダブルマン「杉本哲也にもう一度バシラスXゼロと同種の細菌を培養させてご覧に入れます」
ドン・ホラー「よし、行け」
今は塚原哲と名乗っている杉本哲也に電話が掛かってくる。

杉本「もしもし、塚原ですが」
女「放課後、近くの第三倉庫に来てください。とっても大事な用があります」
杉本を演じるのは、毎度お馴染み、長沢大さん。
杉本が指定された場所へ赴くと、ダブルマンとダブルガールの人間態が待ち受けていた。

ダブルマン「バシラスXゼロを買いたい、手付金としてここに1億円ある」
杉本「なんのことだか……私には」
ダブルマン「とぼけるな、お前が杉本哲也であることは調査済みだ」
杉本「知らないことだ」
ダブルマン「娘がいたな、確か名前は奈々恵……ようく考えろ」
ダブルマンはあえてその場で杉本を拉致せず、軽く脅しをかけてから引き揚げる。
しかし、細菌の発見者に過ぎない杉本にそれを売ってくれと頼むって、なんか変なオファーだよな。
言うなれば、コロナウイルスの発見者に「コロナ売ってくれ」って頼むようなもので……
つーか、さっきは「培養させる」って言ってなかったっけ?
一方、娘の奈々恵は陽一たちと遊んでいたが、烈の姿を見ると駆け寄ってきて、

陽一「烈さん、奈々恵ちゃんにキックの仕方教えてあげて」
当山「俺が教えてやるって言ってんのになー」
当山が不満そうに口を挟むが、

わかば「当山さんの教え方じゃ、うまくならないわよー」
当山「あら、傷付くなー、もうーっ!!」
子供と言うのは残酷なもので、にこやかに微笑みながら、言葉のナイフで当山のプライドをずたずたに切り裂く。
小次郎「あ、そりゃそうだ」
烈「はははは、ようし、教えてあげよう」

奈々恵「お願いします」
烈「はい」
礼儀正しくぺこりとお辞儀をする奈々恵。
……
いやぁ、ここに電がいたら大変なことになってただろうな。
ちなみにこの子、「シャリバン」にもゲスト出演してる子だよね。
ところがそこへ杉本が自転車でやってきて、急用があるからと奈々恵を連れて帰ろうとする。
その顔を一目見たときから、小次郎さんは怪訝な顔をしていたが、

小次郎「あのう、ちょっと、ちょっと」
杉本「は?」
小次郎「あんた、もしかして、杉本さんじゃないですか、杉本さんでしょ」
杉本「人違いでしょう、失礼します」
杉本は穏やかに否定すると、さっさと行ってしまう。
だが、小次郎さんは納得行かないようにしきりと首を捻っていた。

小次郎「良く似てるなぁ、杉本さんになぁ」
烈「ね、杉本なんていうの」
小次郎「哲也、哲也って言うんだよ、子供の頃からうちの村じゃ大天才と言われた人なんだ。だからよく覚えてんだよ。しかし突然姿をパッと消しちまったんだよ。細菌学者にまでなりながらもなぁ」
小次郎さんの言葉に、烈はあの男こそバシラスXゼロの発見者に違いないと、ジープでその家に先回りする。
なんで住所知ってるの? などと言う野暮な突っ込みはやめていただきたい。
しかし、その娘が陽一たちの友達だったと言うだけならともかく、杉本が小次郎さんの同郷だったと言うのは、いくらなんでも偶然に頼り過ぎではあるまいか?
杉本は、烈の姿を見ると娘を先に家に入れ、
杉本「君は……どうして?」
烈「杉本哲也さんですね」
杉本「……」
烈「7年前にバシラスXゼロを作った」
杉本「私は塚原哲です。私には何の話だかさっぱり分かりません。変な言い掛かりはやめて下さい」
杉本はきっぱりと否定すると、家の中に引っ込む。
……あれ、なんか話違ってきてません?
さっきまで発見者だったのに、急に「作った人」になっちゃってるよ!!
まあ、「培養した」と言う意味で使ってるのだろう。
烈(過去から一生懸命逃げようとしている、触れられたくないんだ)
今回の話がつまらないのは、この7年間、杉本がどんな暮らしを送ってきたのか、その辺のことがさっぱり描かれていないせいだろう。
奥さんにしても、杉本の前身を知ってるのかどうか、何の説明もないし。
それに、烈からすれば、マクーがバシラスXゼロを狙っていると言うのは仮説のひとつに過ぎない筈なのに、いつの間にかそれが確定しちゃってるのも、なんか釈然としないんだよなぁ。
深夜、物音に目を覚ました杉本が起き上がって家の中を調べると、ダブルマンが書斎に忍び込んで資料を漁っていた。杉本は持っていた木刀で撲殺しようとするが、ダブルマンは奈々恵の寝室へ逃げ込み、自分の体を小さくして、奈々恵が大事にしているフランス人形の中に入り込む。
杉本「娘に手を出すな!!」
人形「じゃあ、話し合おうか」
このシーン、おかしいのは、これだけ亭主が騒いでいるのに、横で寝ていた奥さんがぜんっぜん起きてこないことだ。
それはともかく、杉本と人形は書斎に場所を移し、話し合う。

人形「誰にも知られずにこっそりとバシラスXゼロを培養するのだ、そうすればお前は億万長者になれる」
杉本「拒否したら?」
人形「娘の命はないものと思え」
杉本「このーっ!!」
意外と怒りっぽい杉本は、人形をいきなり床に叩きつける。
ここでやっとねぼすけの奥さんが起きてくる。
夫人「あなた?」
杉本「悪魔が乗り移ったんだ、人形が口を利き、動き回るんだ」
夫人「……」
この場合、むしろ奥さんは夫の精神状態を心配すべきだと思うが、よほど夫のことを信頼しているのか、次のシーンでは、二人で庭に穴を掘って、人形を埋めている図となる。
なお、二人が家の中に戻るや否や、土の中から人形が出てくるのだが、これでは翌朝のショックシーンがショックシーンでなくなるので、やらないほうがベター。
翌朝、ホラー映画と言うか、実録怪談ドラマなどでお馴染みの現象が起きる。

奈々恵「パパー、ママー、おはようございます」
杉本「おはよう……うわっ!!」
行儀よく挨拶する娘に機械的に応じてから良く見れば、娘があの人形をしっかと抱いているではないか。
ま、そんなことより、当時はまだキラキラ光るスパンコールのようなスダレが使われていたんだなぁと言うことがわかる貴重なショットである。
杉本は娘の人形を取り上げて床に叩きつける。
と、人形が起き上がって目からビームを発射して、インテリアを破壊する。
こうして、やむなく杉本はバシラスXゼロの培養に取り掛かることになる。
ミミー(何をしているのかしら?)
で、それを庭木にとまったインコ姿のミミーが見ているのが、なんか唐突に感じられる。
その前に、烈に見張りを頼まれるシーンが欲しかった。
つーか、「誰にも知られずこっそり」と自分で言っておきながら、なんで杉本の自宅で培養させるんだ?
杉本(バシラスXゼロの培養に成功したら……細菌爆弾は水爆と同じだ。人間も動物も植物も命あるものを根こそぎ滅ぼしてしまう)

杉本のモノローグに合わせて、細菌爆弾が使われて地球が滅ぶ様子がイラストで描かれるのだが、この画像、なんか、破滅的な音痴で知られる上司のカラオケを、花見の席で無理やり聞かされた部下たちが悶絶しているようにも見える。
しかし、いくらなんでも動植物を「根こそぎ滅ぼ」すと言うのは大袈裟ではあるまいか?
人為的に作られたものならともかく、自然界にある細菌が、自分まで滅ぼすようなことをするだろうか?
第一、そんなことをしてマクーに一体何の得があるのか?
ここはせいぜい、人間が滅ぶくらいでよかんべ。
杉本(だから私はバシラスXゼロを葬ったんだ、細菌学者の杉本哲也と共に……)
と言うのだが、何度も言うように、発見者が「なかったこと」にしたら、細菌そのものがなくなると言うのは、どう考えても理屈に合わない。
杉本がためらっていると、

女「言うとおりにするのよ」
ダブルガールが妻と娘を連れて入ってくる。
……
電が見たら、嬉しくて跳び上がりそうなシーンだ。
続いて人形からダブルマンが飛び出す。
奈々恵「怖い!!」
ダブルマン「研究を続けろ、さもないと娘の命は……」
奈々恵「パパ、怖い」
ミミー「やめなさい、子供をいじめるなんて卑怯よ」
ダブルマン「誰だ?」
それを見ていたミミーが思わず叫んでしまう。
女「場所を移したほうが」
ダブルマン「うん」
ダブルマンは大事をとって、三人を車に乗せて別の場所へ連れて行く。
ただ、おかしいのは、それを烈がジープで追いかけるのを、
ミミー「そこを右よ」
烈「了解」
まだインコの姿のミミーが、烈の肩に止まって道順を指示することである。
なんでミミーに、彼らの行き先が分かるのだ?
一度彼らの後をつけて行き先を確かめ、それから烈のところに戻ったのなら分かるが、映像では、まだ杉本たちは移動中だからね。
ここは普通に家の周りを見張っていた烈が気付いて尾行する……で良かったような気もする。
ま、叶さんの出番を増やす意味もあったんだろうけどね。
基本、叶さんはロケに参加しないから、ドルギラン以外だとこうするしかないんだよね。
ともあれ、三人は廃工場のような場所へ連れて来られる。

ダブルマン「早くしろ!!」
せっかちなダブルマン、ゆっくり歩いていた奈々恵たちの背中を押す。
その拍子に、奈々恵が小脇に抱えていたバスケットが落ち、いかにも女の子らしい細々としたものが散乱する。
母親と二人でそれを拾い集めるが、
ダブルマン「急げ、急ぐんだ」
ダブルマンがせかした為に、ヘアピンがその場に残ってしまう。
廃工場の地下には、立派な研究施設が作ってあり、すでに白衣を着たクラッシャーや科学者らしき男たちが研究を行っていた。
いや、そんなものがあるなら、なんで最初からここに連れてこなかったのだろう?
やがて烈のジープが到着するが、

烈「女の子のものだ!!」
あの拾い損ねたヘアピンが、今までの苦労を水の泡にしてしまう。
さ、ここまで来ればもう詳しく書く必要はあるまい。
烈、地上でしばらく戦ってから、ギャバンに変身して研究室へ飛び込み、三人を逃がす。
無論、その際、レーザーZビームを叩き込んで、研究室を破壊しておくことも忘れない。

爆発する施設から、奈々恵をお姫様抱っこして出てくるギャバン。

ギャバン「だいじょうぶですか? さ、早く!!」
……
ギャバンはほんとカッコイイなぁ。
長い長いラス殺陣を経て、マクーの野望は打ち砕かれる。
エピローグ、烈たちが犬の散歩をさせていると、杉本一家と出会う。
奈々恵の腕には、あの人形とは別の、新しい人形が抱かれていた。

わかば「新しい人形ね」
奈々恵「ギャバンが買ってくれたのよ」
烈「えっ、ギャバン?」
陽一「宇宙刑事ギャバンかい」
奈々恵「そうよ」
わかば「へーっ、ギャバンが」
陽一「いいなぁ」
わかばになすがままに抱かれている犬が可愛い……

杉本「いや、私が買ったんです、あの人形」
烈「やっぱり」
杉本「ギャバンの名前を忘れたくなかったんです、お許しください」
烈「はっ、どうして俺に?」
杉本「あなたはギャバンでしょう」
烈「俺が、まさか?」
烈が一般人に正体を見破られると言う珍しい展開となるが、これも唐突な感じがする。
今回、烈は杉本に二回ほど会っただけで、あれだけで烈がギャバンだと見抜くと言うのは、説得力がないよね。
……と思ったけど、よくよく考えたら、廃工場の外へ出た時、ギャバンが烈と同じジープに三人を乗せて逃がしてるから、バレバレか。

杉本「私は確信しております。本当にありがとうございました」
烈「困るなぁ、とんだ言い掛かりですよ、はは」
杉本「はははは」
あくまでしらばっくれる烈と、その立場を慮ってそれ以上追及せず、烈と一緒に朗らかに笑う杉本たちの様子が、いかにも「大人」と言う感じがして、好きなシーンである。
しかし、宇宙刑事シリーズを通して、主人公が一般人にその正体を知られ、しかも面と向かって言われるのは、これが唯一のケースではないかしらん?
あと、劇中では何もかも丸く収まってハッピーエンドになっているが、マクーがこれからも杉本を狙うことは十分考えられる訳で、暢気に笑ってる場合ではないような気もする。
もっとも、「悪の組織」には、同じ作戦を二度繰り返さないと言う不文律があるので、実際に狙われることはないだろうけどね。
以上、今回もアクション過多でドラマとしての面白さには乏しいが、7話に比べればまだ中身のあるストーリーであった。
- 関連記事
-
スポンサーサイト