第44話「節分怪談!光る豆」(1973年2月2日)
冒頭、敬愛園という児童養護施設の中庭で、道着姿の若者が、子供たちに拳で瓦を割るパフォーマンスを見せている。

で、そこの先生を演じているのが、当時、「仮面ライダー」に出ていた中田喜子さんなのである。
もっとも、ゲストと言っても、ほんのチョイ役である。
その青年、一郎が続いてレンガを割って見せ、子供たちから「割るしか能がねえのかよwww」と嘲笑されていると(註・されてませんっ!!)、北斗が節分用の豆を手にあらわれる。

北斗「一郎君、凄いな」
一郎「いやぁ」
北斗「今日は節分だなぁ、みんなと豆まきをしようと思ってこんなに買ってきました」
先生「いつもすいません」
70年代のヒーローは、養護施設を訪ねることが三度のメシより好きと言うことに相場が決まっているので、北斗もそこの常連(?)で、一郎とは顔見知りの間柄だった。
その後、部屋の中に移動し、手作りの鬼の面をつけた北斗と一郎に、子供たちが親のカタキにでも会ったような物凄い形相で豆を投げつけるという、お馴染みの光景が繰り広げられる。
続いて、年の数だけ豆を拾って食べるというフェーズに移行するが、一郎は、床に散らばった豆の中に、真っ赤にコーティングされた奇妙な豆を発見する。
普通の神経の持ち主なら、気味悪がって食べないものだが、空手に夢中のあまり頭の方が空になっているのか、

一郎「全国大会に優勝できますように」
一郎は、むしろ、それがラッキーアイテムでもあるかのように、念じながら口に放り込む。
と、突然雷が落ちたので、子供たちは怖がって大人にしがみつく。
一郎「雷なんて怖くないぞ、ほら、お兄ちゃん見てみろ……ふんっ!!」
そう言って、右腕を曲げて、力瘤を作ろうとした一郎だったが、不意に変な顔をして、自分の右腕をまじまじと見詰める。
北斗「どうした?」
一郎「いや、なんでもないんです……」
一方、TACでは、新兵器のお披露目が行われていた。

竜「これが今度出来た新兵器ゴールデンホークだ」
吉村「ほおお」
山中「隊長、これをアローやスペースにも搭載できるようにしていただけませんか」
竜「ああ、それはもう兵器開発部に要請済みだ」
山中たちは、新しい玩具を買ってもらった子供のように目を輝かせていたが、今野はそんなものは眼中になく、空っぽの枡を手に、北斗の帰りを今か今かと待ち侘びていた。

今野「北斗隊員は遅いなぁ」
山中「今野隊員、どうしても豆まきをやるつもりか」
今野「は、TAC隊員の健康のために」
美川「節分の豆で健康になれるんだったら、私、毎日でも食べるわ」
吉村「いや、大豆は植物性蛋白が多いから、良いかもしれませんよ」
山中「くっ、そんな馬鹿な」
美川隊員の冗談に、吉村が真顔で答えたので、みんなはドッと笑う。
しかし、今野がいくら食い意地が張ってるからって、節分の豆が食いたいばかりにそんなイベントを強行しようとするだろうか?
あと、大豆が体に良いことは今では常識だが、当時はそうでもなかったのかなぁ?
やがて、北斗が豆の入ったビニール袋を手に戻ってくる。
竜「それじゃ今野隊員の希望を入れて、みんなの健康のために派手にやってもらおうか」
今野「はっ……邪魔ですからね」
今野、やおらゴールデンホークに近付くと、自慢の怪力を発揮して、ひとりで奥の部屋に移動させる。
吉村「相変わらずすげー馬鹿力だなぁ」
で、早速豆まきが開始されるのだが、

今野「鬼は外、鬼は外!!」
美川「きゃっ」
いきなり美川隊員に豆を投げつける今野が、まるで、好きな子にわざといぢわるをする小学生みたいで微笑ましい。

美川「やめて」

美川「キャッ、やめてよ~」
そして、笑顔で悲鳴を上げながら逃げる美川隊員が激烈に可愛いのである!!
ぶっちゃけ、今回のシーンで評価できるのはこのくだりだけだなぁ。
今野、美川隊員の顔に思う存分、良質のタンパク質をぶっかけたので満足したのか、すぐ投擲を中止し、
今野「以上、豆が勿体無いのでこれでとりやめ、さ、食べましょ」
吉村「なんだ、まるで子供みたいだな」
山中「おいおい、豆はな、年の数だけ食やぁいいんだぞ」
今野「堅いこと言わずに、まぁまぁ」
今野、やはり、豆を食うのが目的だったのか、大量の豆を手に載せて山中にたしなめられる。
と、その中に、赤い豆が混じっているのに気付く。

いやしくもTAC隊員なら、そんな怪しいものを調べもせずに食べたりしないと思いたいところだが、視聴者の期待を裏切らず、今野は「縁起がいいぞ」と、何の迷いもなく口に放り込む。
吉村「ほらぁ、耳のそばでごちゃごちゃ言うから、豆の数がわかんなくなっちまったじゃないかよ」
今野「すまん、すまん」
北斗「あっはっはっはっ」
愉快そうに笑う北斗であったが、北斗もそれと知らずに赤い豆を口にしてしまう。
その直後、超獣出現を知らせる警報ブザーが鳴り、アットホームな空気が一瞬で吹き飛ぶ。
竜は直ちに出動を命じるが、
美川「今野隊員、ヘルメット」
今野「おお……」
美川隊員に注意され、ヘルメットに手を伸ばすが、それを取り落としてしまう。
今野、俄かに深刻な顔つきになって、自分の指先を凝視する。
それはまさに、一郎青年が見せたのと同じ反応だった。

美川「何やってるの、さ、急いで」
今野「あ、ああ……」
優しい美川隊員、ヘルメットを拾って渡し、お母さんのような口調で今野を送り出す。
今野、ヘルメットを両手で抱くようにして、頼りない顔つきで出撃する。
TACは、市街地に出現した、オニデビルと言う、物凄い名前の超獣に攻撃を仕掛けるが、今野と北斗が操作ミスをしたため、あえなく撃墜される。
もっとも、二人が操作ミスをしなくても撃墜されていた可能性が大なので、特に問題はない。
問題はここからで、北斗、早くもAに変身して戦うが、Aになっても両腕がまともに動かず、コテンパンにやっつけられて敗退する。
本部に帰還した二人は、暗い表情を並べて竜隊長に謝罪する。

今野「隊長、申し訳ありません」
竜「二人ともどうしたんだ」
山中「急に腕の力がなくなるなんて、そんな馬鹿なことがあるか、二人ともたるんでる証拠だ」
北斗「本当です、急に腕がなまって力が……」
北斗は必死に訴えるが、いかにも突飛な話なので、竜も山中も容易には信じてくれない。
吉村「今野隊員もどうしたんだ、さっきはいつもの馬鹿力でゴールデンホークを動かしたじゃないか」
美川「出動の時も今野隊員はヘルメットが持ち上げられなかったんです。腕の筋肉がどうかしてしまったんでしょうか」
と、ここで美川隊員が助け舟を出してくれたので、竜隊長は二人に病院で診察してもらうよう命じる。
が、特撮や大映ドラマに出てくる医者はやぶ医者揃いだと相場が決まっているので、二人の腕の筋肉が使い物にならなくなっていることを確かめただけで、何の役にも立ちゃしない。
無論、あの赤い豆のせいなのだが、両腕の筋肉だけダメになるって、北斗神拳じゃあるまいし、そんなピンポイントで働く毒薬なんてありうるのだろうか?
プロットとしても、ちっとも面白くない。
ちなみに、北斗と今野、竜隊長にはなんでもなかったと報告してくれるよう、医者を抱きこもうとして断られているが、デスクワークならともかく、生死に関わるような仕事をしている身としては、あまりに無責任な発想と言えるだろう。
現に、さっきはもう一歩で仲間を道連れにするところだったんだから。
ともあれ、二人が服を着ていると、そこへひょっこりあらわれたのが、悄然と肩を落とした一郎であった。
北斗「一郎君じゃないか」
一郎「北斗さん」
一郎も全く同じ症状で、三人まとめて入院させられる羽目となる。
こういう時こそ、香代子タンがハッスルすべきだと思うのだが、残念ながら、香代子とダンは、もう番組から消えてしまったのである。

北斗「いいか、原因も分からず、治療方法もはっきりしないとなれば、自分でトレーニングして治すしかないんだ。こんなことで負けちゃいけない。勇気を出すんだ」
病院の屋上にて、北斗は一郎を励まして無理やり腕を動かして鍛え直そうとするが、視聴者には、その原因が赤い豆だと分かっているので、物凄く無意味な行為に見えてしまう。
一方、二人の欠員を出したTAC本部は、お通夜のように静まり返っていた。

美川「北斗隊員や今野隊員がいないと、なんだか寂しい気持ちだわ」
手の上に顎を乗せ、率直な感想を口にする美川隊員。
山中は口やかましいが、自分から喋るタイプではなく、竜隊長も吉村も物静かなたちなので、美川隊員がそんな気持ちになったのも無理からぬことであった。
吉村「もう一週間にもなるけど、どうしてるかな」
竜「そうだ、これからみんなで見舞いに行ってやろうじゃないか」
……え、と言うことは、この一週間、誰も見舞いに行ってないの?
二人とも独身で、北斗には親もいないのに、あまりに薄情な態度ではないか。
あと、オニデビルのほうも、あれっきり出現していないようだが、このオニデビルも、一体何がしたいのか良く分からない超獣である。
Aがまともに戦えない今こそ、地球侵略の絶好の機会だと思うのだが……
竜たちが病院に行くと、ちょうど三人が屋上で腕立て伏せをしているところだった。

竜「大人しく寝てなきゃダメじゃないか」
北斗「はぁ、しかし隊長……」
竜「気持ちは良く分かる、だが、無理をしたら治る病気も治らなくなるぞ」
北斗「はい」
どうでもいいが、見舞いくらい、私服で来いよ……
お陰で、美川隊員のお父様謹製の私服を見るという管理人の野望(全国版)は、またしても打ち砕かれてしまった。
その場では素直に竜隊長の忠告に従う北斗だったが、竜たちが引き揚げると、再び無茶な筋トレを始めるのだった。
それでも、これで多少なりとも筋力が戻れば、この特訓にも意味があったことになるのだが……
一郎「無駄ですよ、こんなことしたっても」
一郎もバカバカしくなったのか、弱音を吐くが、
北斗「そんなことはない、筋ジストロフィーに掛かってる子供たちだって治るために懸命にトレーニングしてるじゃないか。負けちゃダメだ」
と、別の病気を持ち出して一郎を奮起させようとする。
もっとも、追い込まれているのは北斗も同じ、いや、空手の全国大会に出場するという、本人にとっては大事でも、周りにとっては鼻毛の処理よりどーでもいい一郎ちゃんの悩みに比べれば、遥かに深刻であった。
なにしろその腕(かいな)には、地球の平和が懸かっているのだから……
しかし、北斗にしても今野にしても一郎にしても、何故そんな奇病に冒されたのか、その原因について考えることを一切せず、節分の赤い豆のせいだと言うことにこれっぽっちも気付かないのは、見ていて実に歯痒い。
知らずに食べた北斗は仕方ないにしても、だ。
夜、北斗が病院のベッドでうなされていると、

セブン「お前が罹っている病気を治すには、ウルトラカプセルが必要である、すぐM78星雲へ戻って来い」
かつてのセブン上司のように、セブンが北斗の枕元に立ち、そんなメッセージを伝える。
ちなみに声は、同時期の「仮面ライダー」でショッカーライダーの声を演じていた池水さんである。
夢とも現実ともつかないまま、北斗はAとなってM78星雲へひとっとび。

セブンは、ビームランプから特殊な光をAの体に浴びせ、その周りにハープの弦のようなもので、円柱形のチューブを形作る。
Aはその中で自ら高速回転し、その体から真っ赤な光が輝く。
……
わかりにくいっ!! 結局、ウルトラカプセルとやらがなんだったのか、分からずじまいだし……
まあ、駄目なシナリオと言うのは、特撮も大体こんな感じである。
北斗、気がつくと、病院のベッドに戻っていたが、セブンの療治が効いたのか、腕の力がすっかり元通りになっていた。
見れば、ベッドの上に、赤い豆のようなものが落ちていた。
つまり、ウルトラカプセルでAの体内からそれが排出されたということなのだろう。

北斗「こちら北斗、本部応答願います」
北斗、それを手にしつつ、小型通信機で本部に連絡する。

美川「北斗隊員、えっ、良くなったの、そお? おめでとう」
北斗の言葉に、我がことのように喜ぶ美川隊員。
美川「でも残念ね、ついさっきクビが決まったわよ」 北斗「ぎゃああああーっ!!」 ……嘘である。
美川「それで、
どうでもいいけど今野隊員は? まだ良くならない?」
それにしても、今更だけど、美川隊員が綺麗だ。
DVD11には、TAC座談会として、うん十年ぶりに再会した西さん、高峰さん、星さん、瑳川哲朗さんが昔話に花を咲かせる特典映像がついているのだが、

西さんが、当時と変わらぬ美しさを保っておられるのがゲキ嬉しい管理人であった。
もっともこれは20年近く前の映像である。
ちなみに西さんはこの中で、劇中の美川隊員の私服がぜんぶ、彼女のお父さんの作られたものだということを、ちょっと誇らしげに披露されている。
閑話休題、ここで久しぶりにオニデビルがあらわれたので、今野を除く全隊員が出撃する。

竜「ようし、北斗、今野、両隊員の敵討ちだっ」
美川(……えっ、あいつら死んだの?) 竜隊長の言葉に、思わず心の中で驚く美川隊員であったが、嘘である。
嘘であるが、竜隊長の台詞が紛らわしいのは確かである。
北斗はもう治ったって知ってる筈だしね。
オニデビルは天候を操る能力を持っているらしく、晴天の空に暗雲を呼び、雷光を走らせる。
言い忘れていたが、赤い豆は、その雷光のせいで赤くなったらしい。
さて、あとはAがオニデビルをボコるだけなので特に書くことはない。

代わりに、雷光に照らされて白く染まり、ますますその美しさに手がつけられなくなった美川隊員のお顔でも貼っておこう。
なお、北斗は「医者が治療法を見つけてくれるさっ」と一郎には言っていたが、やはり、特撮ドラマの医者は当てにならないと考えたのか、オニデビルを倒してAの変身を解く前に、屋上で観戦していた二人に特殊なビームを浴びせ、赤い玉を排出させている。
以上、今回も焦点のぼやけた、ドラマ性皆無の、退屈極まりない内容だったが、美川隊員の見せ場があるだけ、43話よりは楽しめた。
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