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「気まぐれ天使」 第24回「虹をわたったカモさんは……」



 第24話「虹をわたったカモさんは……」(1977年2月23日)

 冒頭、プリンセス下着宣伝部。

 珍しく仕事が立て込んでいるようで、忍、榎本、由利の三人がそれぞれ取引先と電話で慌ただしく打ち合わせをしている。

 特に、普段ろくに仕事をしていない忍は、こういう時になるとことさらに張り切り、相手を怒鳴りまくって榎本たちから「うるさい」と文句を言われる始末。

 と、友江がオフィスに戻ってくる。

 忍「忙しいってのはいいもんですね、なんかこう、充実感が湧いて生きてるって感じがしますね」
 友江「おしゃべりはいいの」
 忍「はい」

 忍、身振り手振りをまじえて、久しぶりに味わう労働の喜び……言い換えれば、日頃いかにだらけているのかと言うことを興奮気味に力説するが、友江は冷ややかにあしらい、
 
 
 友江「この新聞広告お願いね、明日まで」
 忍「えっ、明日まで?」
 友江「それでも日曜日の朝刊まで間に合うかどうかなの」
 忍「はぁ」

 いやぁ、酒井和歌子さんの貧乳を見ながら仕事が出来る職場って、最高ですね!!

 と、そう言った直後、友江は大学時代の友人からの電話を受け、さっさと喫茶ルームへ行ってしまう。

 忍「なんだよ、仕事おしつけといて、自分はコーヒー飲みに行っちゃうんだからもう」

 喫茶ルームでは、友江の友人の勝代が待っていた。

 勝代は、忍が以前書いた童話が載った雑誌をテーブルの上に置く。

 それを読んで感動した友江が、童話雑誌の編集をしている勝代に読ませたのだ。

 
 友江「読んでくれたのね、どう、ものになりそう?」
 勝代「そうね、荒削りだけど、割りと素直に感情移入してるってとこがめっけもんかな」

 勝代は、淡々とした口調ながら、その作品を褒め、忍に将来性があると言ってくれる。

 もっとも、それを単行本にして出すほどの実力はないと言い切り、

 勝代「その代わり仕事ひとつ取ってきてやった」
 友江「え、ほんと?」
 勝代「この雑誌に40枚くらいのをひとつ」

 勝代は、「日本児童文学」と言う雑誌を放り出して素っ気無く頼む。

 友江は我がことのように喜ぶが、締め切りまで四日しかないと知るや顔色を変え、忍にはとても無理だとぼやく。

 
 勝代「プロの道は厳しいの、暢気なこと言ってたらチャンスなんて永久にこないわ」
 友江「そりゃそうでしょうけど……」

 勝代を演じるのは声優としても活躍している田島令子さん。

 最初見たときはなんとも思わなかったが、その後、「パパと呼ばないで」で、石立鉄男に惚れるエレベーターガールを演じていたことを知って、このクールな顔を見るたび、「もう、ツンデレなんだからぁ~」と、ひとりニヤニヤしてしまう管理人なのだった。

 友江はともかくその話を持ち帰るが、肝心の忍に伝えようとしても、次から次へとひっきりなしに電話が掛かってきて、その暇さえない。

 
 忍「あ、部長、なんでしょうか、ちょっとややこしい電話が入ったもんで……後にしていただけませんか」
 友江「いいわ、もう……忙しそうだから」

 結局、友江のほうからその話を引っ込めてしまう。

 仮に頼んでも現状ではとても締め切りに間に合わないと判断したのだ。

 だが、OP後、同居している真紀にその話をすると、忍に言うべきだったと強く反発される。

 真紀「無理かどうかやってみなきゃわかんないじゃない」
 友江「……」
 真紀「童話を書けって発破かけたのお姉さんよ、それで売込みまでしてやっと仕事が来たって言うのに……矛盾してるなぁ」

 真紀の言葉はもっともで、友江は痛いところを突かれたような顔になるが、とにかく会社が忙しいからと言う「大人の理屈」を持ち出して黙らせる。

 翌朝も、忙しく働いている忍。

 
 友江「……」

 
 友江「……」

 そんな姿をそっと見ていた友江は、昨日、勝代や真紀に言われたことを頭の中でリフレインさせる。

 ……

 そうじゃ、貼りたいだけなんじゃ。

 そして、決心したように例の雑誌を手に取り、忍を会議室に連れて行く。

 忍は、また何かヘマをして叱られるのではないかと戦々恐々としていたが、

 忍「え、僕に童話を?」
 友江「ええ」
 忍「ああ、そうですか、僕、てっきり怒られるんじゃないかと思って……ほんとにありがとうございました、部長にそれほどまで心配して頂いて……」

 それが童話の執筆依頼だと知り、驚くと共に嬉しさに飛び跳ねたい気持ちになる。

 しかも、現在「仔馬のポピー」と言う作品を執筆中と言うことで、「渡りに船」であったが、

 
 友江「ただし、16日まで、今日から三日間よ」
 忍「えっ、三日間で?」友江「ご承知のように、会社はいま大変な時なの、プライベートなことであなたに特別な時間を与えることは出来ないの」
 忍「わかってます」
 友江「会社の仕事と原稿と、両方できる?」
 忍「勿論です」

 忍は即答するが、

 友江「本当に? 書けなかったら雑誌に穴を開けて迷惑掛けるばかりじゃなくあなたの作家としての生命もこれで終わりよ」

 友江は念を押して、脅し文句まで並べて忍の覚悟を確かめる。

 しかし、この仕事ひとつ落としたからって、作家生命もジ・エンドと言うのは、さすがにオーバーであろう。

 忍「書けます、いや、書きます。こう見えても加茂忍、作家の道を志して十数年、児童文学にただ一筋に命を懸けて来ました」
 友江「わかったらわ、やれればいいの。じゃ先方に引き受けるって返事しますからね」
 忍「はいっ!!」

 忍、身内からカッカッと炎が燃えているような心持ちでオフィスに戻ってくると、思わず「やるぞーっ!!」と両手を広げて飛び上がるのだった。

 夜、頑張って童話を執筆する忍だったが、やはり眠気には勝てず、ほとんど筆が進まないまま夢の世界へ直行する。

 翌朝、思いっきり遅刻した忍は、寝坊したのではなく、都電で事故があったのだとくどくどと言い訳する。

 もっとも、そう言いながら上司の目の前で大欠伸をしているのだから、あまり説得力はない。

 友江「加茂さん、口開けてる場合じゃないでしょう」
 忍「ふぁい」
 友江「ファッションプロからモデルのオーディションどうするんだって」
 忍「モデルのオーディション?」
 友江「今日やるって言ったんでしょう、あなた」
 忍「あれ、そうだったかなぁ」

 友江にどやしつけられて、欠伸をしながらオフィスを出て行く忍であった。

 童話の執筆が、会社の仕事に影響しているのは明らかで、友江はやはり言うべきではなかったかと、後悔し始めていた。

 榎本「部長、付き合ってくれませんか」
 友江「なあに?」

 と、そんな友江の気持ちを見透かしたように、榎本が深刻な表情で誘う。

 屋上へ行くと、榎本は、忍に二つの仕事を同時にこなすなど到底無理だと言うが、友江は「たるんでるのよ」と、身も蓋もない言い方で一蹴する。

 榎本「部長!!」
 友江「だって自分でやって見せるって言ったんですよ」
 榎本「いくらそう言ってもね、できないものは仕方がないじゃないですか」

 榎本は「現実を見ろ」と言わんばかりの口調で指摘すると、

 榎本「これじゃあ虻蜂取らず、どちらともパーになりますね」
 友江「じゃあ、どうしろとおっしゃるの?」

 友江が開き直って尋ねると、榎本は忍に休みをやれと進言する。

 
 友江「そんなことできるわけないでしょ、三つも四つも仕事抱えてるのよ、彼」
 榎本「部長、僕が代わります」
 友江「榎本さん……」
 榎本「だったらいいでしょう」
 友江「いいえ、駄目よ、あなたは副部長、私と一緒に部の全体に目を通さないといけない人だわ」

 教え諭すように言う友江であったが、「部の全体に目を通さないといけない人」たちが、仕事中に何やってんだってことになるので、いまひとつ説得力がないのだった。

 友江は、忍だけ特別扱いするのは良くないともっともらしいことを言うが、

 榎本「じゃあ、何故あんな仕事を持ってきたんですか、親切どころか彼を苦しめるだけじゃないですか?」
 友江「……」

 この忙しい最中、童話の執筆と言うプライベートな仕事を(半ば)押し付けておきながら、会社の仕事に私情は禁物だと言う友江の論理が破綻しているのは明らかなので、榎本に反論されると言葉に窮してしまうのだった。

 再びプリンセス下着宣伝部。

 時代を感じさせるヒトコマだが、仕事がめちゃくちゃ忙しいという割りに、5時の終業チャイムが鳴ると、社員たちはあっという間に帰ってしまう。

 一方で、榎本は由利に「毎晩、毎晩、残業で忙しい」から早く帰れと言ってるのはなんか矛盾してるような気がする。

 友江と榎本は、出先から忍が帰ってくるのを待っていたが、

 友江「ポスターうまく上がりそう?」
 忍「ええ、ばっちりですよ、今度見つけたモデルがですね、桜田淳子そっくりで……」
 友江「割りと大したことないわねえ」
 忍「はぁ?」

 桜田ファンに喧嘩を売るようなことを言って、忍のやる気に水を差すと、

 
 友江「榎本さんに代わってもらったほうがいいんじゃない、その仕事?」
 忍「な、なんですって、それじゃ僕はできないって言うんですか」
 友江「ええ、何かあなたのセンスじゃないような気がするの、それに顔色も悪いし、熱があるんじゃない、あなた?」

 無理やり忍を病人だと決め付けると、明日と明後日は病欠だと一方的に言い渡し、榎本に引き継ぎを頼むと、忍の抗議にも耳を貸さずにさっさと帰っていく。

 忍「畜生、人をバカにしやがって」
 榎本「先輩、わかんないですか?」

 これにはさすがに忍も憤慨するが、友江の気持ちを察した榎本が落ち着き払った声で問い掛ける。

 忍「えっ」
 榎本「明日と明後日って言ったでしょ、彼女」
 忍「ああ、15日と16日だろ」
 榎本「そ、16日まで!!」

 
 忍「あっ、そうか!!」

 榎本に日付を強調されて、忍もやっと気付いて目を真ん丸に見開く。

 つまり、休暇を上げるから、その間に童話を書けと言っているのだ。

 榎本「先輩、あの人はね、ああいう言い方しか出来ないんですよ」
 忍「そうだったのか、ようし……やるぞーっ!!」

 と言う訳で、心機一転、忍は友江の気遣いと榎本の友情に応えるべく、童話執筆に専念することになるのだった。

 夜、忍が部屋の窓を開けると、

 
 忍「おおっ」
 渚「おっちゃん……」

 
 いつの間にかベランダにいたパジャマ姿の渚が出て来て、妙に色っぽく忍に抱きついてくる。

 ちなみに渚が着ているパジャマは、5話で忍から貰ったもので、金がない割りにたくさん服を持っている渚だが、パジャマだけはずーっとこれひとつなのである。

 忍「な、なにしてたんだよ、こんなところで」
 渚「なんだかさー、もやもやしちゃって」
 忍「もやもや?」
 渚「うん、おばあちゃんが言うにはね、啓蟄って言うんだって」
 忍「けい……ちつ?」

 
 渚「うん、春になるとね、地面の中で虫がもじょもじょもじょって動いて私もおんなじなんだって……青春とか言ってたよ」

 ここで、渚が、両手を合わせて土中の生き物を表現するようにウネウネさせる子供っぽい仕草が、キャプではほとんど伝わらないと思うが、めっちゃ可愛いのである!!

 はっきり言って、管理人、このシーンを書きたいがために今回のエピソードをレビューしたようなものなのである。

 忍「なんだかよくわかんねえなー」
 渚「うん、私もわかんないんだけどさ、おっちゃん、そういうことない?」
 忍「いや、そりゃ、俺だって独身だからね。真夜中にこうモヤモヤってする……」
 渚「……」
 忍「良いんだよ、お前向こう行け」

 忍、つられてうっかりそんなことを告白するが、渚が自分をじっと見詰めているのに気付き、原稿の束で追い払う。

 と、そこへ綾乃が入ってきて、

 綾乃「渚、モヤモヤってのは治ったかい」
 忍「ほうら、またひとりあらわれた。もう~」
 綾乃「私までモヤモヤっとして……」

 
 綾乃「おっちゃん!!」
 忍「おい、よせ」

 キャプではほとんど伝わらないが、渚の真似をして、両手を広げて忍に抱きつく姿勢を見せる綾乃がめっちゃ可愛いのである!!

 これは、樹木さん自身の可愛らしさと言うべきか、日本のおばあちゃんの可愛らしさを30代の若さで見事に体現している樹木さんの演技力が素晴らしいと言うべきか。

 翌朝、居間の電話が鳴り響き、光政が眠い目を擦りながら出ると、荻田の実家に行っている母親からだった。

 光政「もしもし、ああ、お母ちゃん」
 もと子「お母ちゃんじゃないわよ、今何時だと思ってるの、学校行く時間でしょう」
 光政「わかってるよ、それよりいつ帰ってくんの」
 もと子「うん、それがねー、おじいちゃんの山林が売れるような売れないような……もうひとつはっきりしないのよ。貰うもの貰わなきゃ帰るに帰れないでしょう」
 光政「学校から呼び出しが来てんだよ、PTAの個人面談だってさ」

 23話で二人が突然田舎に行ったのは、無論、横山さんと山田さんのスケジュールの都合だろうが、24話の時点で横山さんの体だけ空いたが、もと子が亭主を残してひとりだけ帰って来るのはおかしいので、こういう変則的な出演となったのだろう。

 もっとも、次の25話では、横山さんだけいつの間にか戻っていたが、山林のことについてはそれ以降一切話題に上がらなかったので、結局大した金にはならなかったと思われる。

 電話の途中で、綾乃がエプロンをつけながら2階から降りてくる。

 もと子「わかった、わかった、帰ったらすぐに学校行ってあげるから、ちゃんとお留守番してるのよ、それから、加茂さんもおばあちゃんたちも元気?」
 光政「元気だよ」
 もと子「じゃ、いいわね」

 光政は受話器を置くと、「無責任な親だなぁ」とぼやく。

 綾乃「PTAでございますか」
 光政「うん、もう親が行ってないの俺だけなんだ」
 綾乃「あ、じゃあ、私が行って差し上げましょうか」
 光政「おばあちゃんが? やめてよー」

 光政、綾乃の申し出に思わず悲鳴を上げる。

 綾乃「どうしてでございますの? 昔あれね、父兄会って言いましてね、会費が一口あれいくらでしたっけねえ。なにしろね、伊集院の家ではね、会費をすっごくたくさん寄付いたしましたんで……」

 そこへ渚があらわれ、自分が代わりに行って上げると申し出るが、光政はそれも断る。

 一方、忍の筆は快調に進み、あとは結末部分を残すのみとなっていた。

 と、そこへ渚が来客があると告げるが、顔を出したのは意外にも友江であった。

 
 友江「こんにちは」
 忍「あ、部長!!」
 友江「近くまで来たから寄ってみたの、はい、陣中見舞い」

 ほんとは仕事中にわざわざ抜け出してきたのだが、照れ臭いのでそんな嘘を言う友江。

 忍は感極まったようにお土産を受け取ると、

 忍「感激だなぁ……渚、お茶、お茶、お茶!!」

 友江と一緒に腰を据えた渚をやかましく追い立てる。

 渚は不満そうに唸ると、それこそ仔馬のように四つん這いになって起き上がり、お尻を忍のほうにツンと向けてから部屋を出て行く。

 忍「すいません、しつけが悪くて……」
 友江「どうなの、うまく書けてる?」
 忍「え、ええ、いまんところは」
 友江「間に合うわね、明日までに」
 忍「ええ、あの、なんとなく間に合うつもりでいますが、どうもケツのところが汚くて……あ、あの、起承転結のケツの部分があの、うまく綺麗に行かないもんで」

 などとやってると、また渚が慌てた様子で飛び込んでくる。

 
 忍「なんだよ、お客さんが来てんじゃねえか」
 渚「学校から電話でね、すぐに誰か来てくださいって」
 忍「学校ってどこの」
 渚「光政君の」
 忍「なんで光政の……光政、怪我でもしたのか」
 渚「そうじゃないよ、おばあちゃん行っちゃったの、PTAの個人面談……奥様がお留守の間にご恩返しするんだっておばあちゃん行っちゃったんだよぉ」
 忍「なんだってえ」
 渚「ワケわかんなくてね、先生困ってるらしいよ」
 忍「ったくもう、しょうがねえ……」

 渚に綾乃を連れ戻してきてくれと懇願された忍は、よりによってこんな時に……と、泣きたいような顔で学校に行こうとするが、

 友江「加茂さん!!」
 忍「はぁ?」
 友江「いいわ、私が行く」
 忍「へ?」

 決然と友江が立ち上がり、忍の返事も待たずにテキパキと渚をせかして学校へ出掛ける。

 無論、忍に執筆に専念してもらう為である。

 忍「ね、部長!! だいじょぶかな……」

 
 綾乃「あなた、進学、進学って勉強ばっかりが人生じゃありませんよ。学校なんか出なくたって、あんた、えらくなった人いっくらでもおりますよ」
 教師「はいはい、わかりました」

 光政のクラスでは、渚の言ったとおり、初老の担任教師が綾乃をもてあまして困り果てていた。

 ちなみに入り口に掲げてあるプレートから、光政のクラスが1年8組であることが分かる。

 しかし、肝心の光政の姿がないのは不思議だが、いたたまれなくなって先に帰ってしまったのだろう。

 教師は、生返事をしながら綾乃の前を横切って、向かって右側に移動する。

 
 綾乃「わかっちゃいないじゃありませんの、あのー、うちのぼっちゃま、どちらにしても一番と二番ばっかりでございましょう」
 教師「えっ? いや、一番と二番じゃなくて、一とニばっかり」
 綾乃「一とニ取ったら、文句ないじゃありませんのー」
 教師「……」
 綾乃「どっかの会社ではね、びーっ、そうそ、ビリから二番の人がね、社長におなりになったんですのよ」

 おそらく、当時実際に話題になったことなのだろう、訳知り顔で指摘する綾乃。

 
 教師「ああ、わかった、わかった、おばあさん」
 綾乃「うろうろするんじゃない」

 教師が煩そうに応じながら、再び左側に移動するのだが、そこで、綾乃が小声で叱りつけてその背中を叩くのが、樹木さんの爆笑必至のアドリブとなっている。

 教師「あのー、光政君のことはお母さんたちがお帰りになってからゆっくり相談しますから、今日のところはこれで」

 教師はとにかく綾乃を追い払おうとするが、

 
 綾乃「私に帰れって仰るの? それじゃ私の立場って物が何にもなくなってしまう……」
 教師「え、ええ」
 綾乃「せっかくさ、奥様にご恩返しできるとわざわざこうしてやって来ましたのに」

 それくらいで帰れば、なにも渚が忍に応援を求める必要はないのであって、なんのかんのと繰言を並べて、いっかな動こうとしない。

 ちなみに光政の担任の先生を演じるのは管理人の好きなおじいちゃん俳優・武内文平さんだが、当時、56才くらいで、老婆を演じる樹木さんより20以上年上なのだが、まさか、樹木さんより武内さんのほうが長生きするとは、当時のスタッフも視聴者も、そして本人たちも夢にも思わなかったに違いない。

 そう、ウィキペディアが正しければ、武内さんは現在、101歳を越えてもなお健在なのである!!

 それはともかく、ここで友江と渚が駆けつけ、

 
 渚「おばあちゃん!!」
 綾乃「あ、渚」
 友江「すいません、先生、ご迷惑をおかけして、さ、おばあちゃん、帰りましょう」
 綾乃「まあ、社長、ちょうど良かったわ、私と先生とどっちが正しいか……」

 それでもまだごちゃごちゃ言う綾乃であったが、友江がほとんど力尽くで連れて行き、教師はやっと悪夢から解放されるのだった。

 友江が社に戻ったのはもう5時近くで、ほどなく、榎本がプリプリしながら会議から戻ってくる。

 榎本「ひどいじゃないですか、3時って言ったのに」
 友江「ごめんなさい、出先で手間取った上に道が込んでたもんだから」

 友江は咄嗟に嘘をついて誤魔化すが、榎本はすぐ矛を収めて笑顔になると、

 
 榎本「いいですよ、無理しなくても」
 友江「え、なにが」
 榎本「行ったんでしょ、先輩のとこ」

 小声で尋ねるが、

 友江「そんな……仕事です」
 榎本「ああ、そうですか、じゃあ帰りに見に行った方がいいですね、さっき雑誌社の友達からね、友江は原稿取りに行ったかって問い合わせがありましたよ」
 友江「……」
 榎本「部長、水臭いじゃないですか、行ったんでしょ、先輩のとこ、どうでした?」

 重ねて問われると、友江も漸くそれを認め、

 友江「あと10枚」
 榎本「じゃあ間に合いますね」
 友江「と、思うけど」
 榎本「思うじゃ困りますよ、先輩には傑作を書いてもらわなくちゃ」

 と、そこへ取引先から電話が掛かってきて、忍の原稿の字が汚くて読めないとクレームが来る。

 榎本は嫌な顔ひとつせず、その尻拭いに向かうのだった。

 げにも麗しい友情の発露であった。

 
 忍「ラスト、ラスト、ラスト……この川を渡りさえすればお父さんに会える……ここまでは良いんだよ、すごいフィーリングは良いんだよな、ポピーは体中をバネにして思いっきり飛びました!! ……ポチャン、かっ、これじゃ川に落っこちちゃう」

 さて、忍、夜になってもピリッとした結末が書けず、ひたすら脳味噌をフル回転させ、何とかうまいアイディアを捻り出そうと自問自答を繰り返していた。

 忍が悩んでいるのは、ポピーにどうやって最後の難関である川を渡らせようかと言う問題であった。

 やや作為的だが、ここで、階下にいた渚が自慢のハープを弾き始める。

 忍「仔馬のポピーは……ポロン、ポロン……ったく、人の気持ちも知らないであの極楽トンボめ……ええ、仔馬のポピーは仔馬のポピーは……あれ、良い曲だな」

 その音は、立ったり座ったり、「生みの苦しみ」に呻吟していた忍の耳にも届き、最初は耳を塞いでいた忍だったが、ふとその曲が気になり、廊下に出て、階段の上から「なんだその曲だ?」と尋ねる。

 と、渚が階段の下に立ち、

 
 渚「えーっ、まだついてないよ、名前」
 忍「なんだ名無しの権兵衛か……それじゃまたカラスの権兵衛になっちゃうじゃないかよ、俺が書いてるのはね、仔馬のポピー、ポピーってんだよ」
 渚「ね、おっちゃん、こういうのどう?」
 忍「なんだ、どういうのだ」
 渚「『私は虹を見た』……」
 忍「虹を見た? ふんっ、つまんねえ」

 渚がその場で曲のタイトルを思いついて口にするが、忍は何の感銘も受けずに部屋に引っ込む。

 忍「くだらねえ、虹なんか誰だって見るわ、えーっ、仔馬のポピーは……虹を見ましたと……仔馬のポピーは虹を見た? 待てよ、虹を橋にすれば川を渡れるんだ!!」

 だが、何気なくそのフレーズを口ずさんでいるうちに、パッと名案を思いつく。

 10話同様、渚の何気ない一言が、忍に素晴らしいアイディアを授けたのである。

 こうして忍はデッドラインぎりぎりで難関を突破して一気呵成に書き上げると、深夜、友江のマンションに電話をしてその報告をする。

 
 友江「えっ、できた?」
 忍「ええ、できました、できましたよ、やっとラストが出来ましたよ」
 友江「あ、そぉ、良かったわね……じゃ、お休みなさい」
 忍「お休みなさい……って、おいっっっ!!

 じゃなくて、

 友江「あ、そぉ……ほんとに良かったわねえ」
 忍「凄く良いラストになりました。聞いてくれますか」
 友江「ええ、聞くわ、喜んで」

 と言う訳で、忍は電話越しにラストの部分だけ朗読して聞かせ、友江は感動のあまり涙ぐむのだが、そこに至るまでのストーリーをすっ飛ばして、いきなり結末部分だけ聞かせてもらっても、あまり感動できないのではあるまいか。

 これで自分たちの苦労も報われたと、友江は我がことのように忍を祝福するが、その途中、延々考え続けて精根尽き果てたのか、忍は受話器を握ったまま眠りに落ちてしまう。

 と、パジャマ姿の渚が階段を降りてきて、受話器を置くと、

 
 渚「あーあ、しょうがないなー、もう……おっちゃん、また番号書いてないや。これじゃわかんなくなっちゃうじゃないかー」

 散乱した原稿を集めて、ナンバーをつけていく。

 忍の創作活動が、友江と渚という二人の女性に支えられていることを端的に示したシーンである。

 忍「友江、友江、友江……」

 と、何も知らずに眠りこけている忍が、寝言で友江の名前を口にする。

 
 渚「……」

 が、渚は怒らず、寝ている赤ん坊を見守る慈母のような優しい眼差しで忍の顔を見詰めるのだった。

 以上、かつてないほど創作の苦悩を味わう忍と、それを優しくサポートする友江や渚、そして榎本の友情を描いた、後味爽やかな佳作であった。
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70~80年代の特撮、80年代のドラマを中心に紹介しています。

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