第9回「見知らぬ町に追われて」(1972年1月23日)
今年、「シルバー仮面」を全話鑑賞した。
だいぶ前に、路線変更する前の10話くらいまでは見た記憶があるのだが、今回は「ジャイアント」もふくめて最後まできっちり見た次第である。
「シルバー仮面」と言えば、第1話の
「暗くて何やってんだかわかんねえんだよっ!!」の印象が強過ぎて、自分の中では決して評価の高い作品ではなかったのだが、今回ひととおり見たところ、やっぱりあんまり面白くなかった。
まあ、ぶっちゃけ、ヒロインの夏純子さんが、あまり好みのタイプじゃないと言うのが最大の原因ではないかと思うが、無論、それだけじゃなく、主人公である春日兄妹が、父親が考案した光子ロケットを完成させようと、自分たちの体に隠された設計図(数式)を探し出すため、様々な科学者や研究施設を巡り歩くと言う、ロードムービー風のプロットに、いまひとつ魅力が感じられないのだ。
具体的には、ひとつは、数式が主人公5人の体にプリントされていると言う設定がなんとなくヒワイと言うか、煩わしく感じられること、もうひとつは、毎回似たようなストーリーになってしまうことだ。
この辺の不満は、「仮面ライダーX」のRS装置の設計図を巡る争いを描いた「キングダーク編」とそっくり同じである。
むしろ、テコ入れのために大幅に路線変更され、巨大ヒーローものとして事実上、別番組として始まった「シルバー仮面 ジャイアント」のほうが、毎回異なるプロットが採用されている分、面白いと感じたほどだ。
それでも、ウルトラシリーズなどと比べると、全体的にチープで地味な印象は拭えず、視聴率で苦戦したのは当然であろう。
んで、ブログの管理人的には、レビューすべきエピソードがあればレビューするつもりでチェックしたのだが、結局、今回紹介する第9話くらいしか候補は見当たらなかった。
「結局」と言うのは、以前、10話あたりまで見た時に、この9話だけは是非レビューしたいと思っていたからだ。
……と言う訳でレビューをおっぱじめたいが、「シルバー仮面」の細かい設定などについては各自で調べて頂くことにして、キャラクター及びキャストについても最低限のことしか書かない方針なので、そこんところ夜露死苦!!
さて、この作品の大きな特徴は、固定のOPがないことである。

ただし、主題歌&クレジットがない訳ではなく、タイトルが表示されたあと、普通に「シルバー仮面はさすらい仮面~」と言う、有名な主題歌が始まり、テロップも表記されるのだが、バックにはその回ごとの本編映像が使われている。
たとえばこの9話では、葬式のあと、墓地に納骨に向かうらしい一団が映し出される。

んで、その中に、故人の娘らしいロリロリ美少女が映し出され、管理人の照準はたちまちこの女の子にロックオンされるのであった。
OP後、故人の奥さんらしい人が墓の前で手を合わせていると、

本作の主人公である春日兄弟が手に手に花束を持ってあらわれる。
ちなみに本来は5人兄妹なのだが、末っ子のはるかだけ、早い段階で姿を消してしまい、ジャイアント編では、ほぼ「いなかったこと」にされてしまう。
演じる松尾ジーナさんのスケジュールの都合だろうか。
光一「三田博士でいらっしゃいますね」
三田「君たちは?」
光三「お忘れですか、僕たちは春日勝一郎の息子と娘たちです」
三田「ああ、春日博士の……」
光一たちはその場にいた初老の男性に丁寧に話し掛けるが、光三がいきなり短刀を取り出すと、まるっきりヤクザの鉄砲玉のように相手のどてっぱらを抉る。
それを演じているのが篠田三郎さんだけに、かなり衝撃的なシーンとなっている。
さらに、4人は隠し持っていた機関銃を取り出すと、参列者たちを無差別に撃ちまくる。

後ろの方にいた和尚さんは、名優・山谷初男さんが演じていたが、こちらも容赦なくぶっ殺される。
きわめつけは、

夫(?)の墓の前にしゃがんで背中を向けていた未亡人に、無言でありったけの弾丸を撃ち込む、日本特撮史上の汚点と言っても良いくらいの、目を背けたくなるような虐殺シーン。
さすがにこれはやり過ぎ。
しかもそれをニセモノとは言え、主人公たちがやってしまうのだから……
で、管理人がツバをつけていた美少女はどうしたかと言うと、

彼女だけは殺されず、チラッと悲しそうな目を殺人鬼たちに向けると、卒塔婆の林の中に見えなくなってしまう。
管理人、てっきりこの後も彼女が出てくるのかと思いきや、これっきりだったので、思わず顎が落ちそうになる。
4人は死人のような青い顔に薄笑いを浮かべて、彼女を見逃してやる。
別に仏心を出したわけではなく、春日兄妹がやったという証言をさせるためである。
続いて、地元警察の会議室。

谷「本庁の鬼頭警部だ、目下逃亡中の春日兄妹が県下に潜入したとの情報を得て、東京からお見えになった」
鬼頭「この辺に名の知れた物理学者はいませんか、いたらその家に張り込みをお願いしたい」
鬼頭警部を演じるのは、このブログでは常連の竜崎勝さん。
そう言えば、光三の篠田さんとは後の「タロウ」で共演してるんだよね。
しかし、谷刑事の台詞では、ニセ春日兄弟は東京でも同様の事件を起こしているようにも聞こえるが、もしそうだったら、もっとたくさんの捜査員がマスコミを大勢引き連れて押し寄せてきそうなものだけどね。

鬼頭「ただし、次女はるかは大阪東南大学の阿部教授宅にいて、アリバイもある、この事件には関係ない」
警部が手に取っているのが、松尾ジーナさん演じるはるかである。
写真だが、これが最後の出番になったのかな?
警察署に5人の叔父・大原道男(玉川伊佐男)がやってくるが、鬼頭は彼に協力を求める。
そう言えば、これって、ウルトラの父とゾフィーが会ってるんだよね。

光三「見せてみろ、ちくしょう、バカヤロウ!!」
一方、本物の春日兄妹は寒々しい荒地で焚き火で暖を取っていたが、自分たちの顔写真が集団ライフル魔としてでかでかと掲載された新聞を、光三が光二の手からひったくって炎の中に叩き込む。
一応、シルバー仮面の光二(柴俊夫)が主役なのだが、柴さんの演技がまだ発展途上なので、むしろ前半は、熱血漢の光三のほうがヒーローっぽく見える。
長女のひとみ(夏純子)は自分たちは潔白なのだから、警察に出頭すべきだと言うが、兄の光一(亀石征一郎)は、自分たちとそっくり同じ姿をした人間が実際に犯行を行っているのだと推測する。
光一「今までの俺たちの旅を考えてみろ、行く先々で様々な宇宙人が影のように付きまとってきた。奴らは色々な人間に姿を変えて俺たちを追って来た、奴らが俺たち自身に化けてあらわれたとしても今更何の不思議もない」
光三「そりゃつまり、俺たちを犯罪者にして警察に追わせるために?」
光一「その通りだ」
と言う訳で、今回は「人造人間キカイダー」でもやっていた、ヒーローが濡れ衣を着せられて官憲に追われるというシビアなストーリーなのである。
ただ、それを知りながら、光二が遠山博士のところへ行こうと言い出すのは、いささか不用心のような気がする。
今はまず、自分たちの濡れ衣を晴らすことが重要だと思うのだが……
遠山博士の家にはすでに鬼頭たち警察と、大原の姿があった。
鬼頭は、春日兄妹が来たら、怪しまれないよう素知らぬ顔で応対してくれと遠山博士に頼むが、彼らが殺人鬼として追われていることは、当然遠山だって知ってることは彼らだって承知の筈で、彼らの顔を見ても落ち着いていたら、そっちの方がよほど怪しまれると思うのだが。
それと、直前のシーンで本物の光二が遠山博士に会いに行くと言ってるので、ここに出て来る春日兄妹が本物だと、視聴者にも分かってしまうのが惜しい。
もしそれがなかったら、彼らも偽者ではないのかと視聴者に思わせることが出来るし、実際に、本物っぽく見せて実は偽者だったと言うオチもありえたと思う。
ともあれ、ほどなくひとみを除く三人兄弟が遠山宅を訪れる。
光一「亡くなった父が僕たち兄妹の体に隠しました光子ロケットの設計図について、父の親友でいらした博士のご協力を得たいと存じまして……」
丁寧に用件を述べる光一たちを、遠山は応接室に招じ入れる。

遠山「家内が出払っておりまして……コーヒーでも」
光三「光子ロケットのことなんですけど」
遠山「あいにくインスタントしかなくて」
光二「博士!!」
のらりくらりと答える遠山に、光二が声を荒げるが、
光一「そうですか、博士はもうご存知なんですね、例の墓地殺害事件」
遠山「わ、私は何も知らん」
で、遠山博士を演じているのが、これまた名優の小松さんなのだが、出番はこのシーンだけ。
贅沢な役者の使い方……と言いたいところだが、はっきり言ってギャラの無駄である。
と、そこへ鬼頭たちが踏み込んで銃を突きつける。

光ニ「あれは俺達がやったんじゃないんだ」
光一「叔父さん」
大原「お前たち、なんてバカなことをしてくれたんだ」
光三「俺達がやるわけないじゃないか」
大原「この場は大人しく警察に行くんだ、言い分があれば裁判でも言える」
光一「裁判官が宇宙人の存在を信じてくれると思いますか?」
光三「刑事さん、あなたは宇宙人の存在を信じますか」
鬼頭「宇宙人? バカなことを言ってないで素直に同行したまえ」
大原は、春日博士の弟だが……って、今気付いたけど、なんで苗字が違うんだろう?
ま、それはそれとして、大原は兄の春日博士とは対照的に、欲の深い俗物で、春日兄妹、特に光三からは蛇蝎のごとく嫌われていた……のだが、話が進むに連れて善人っぽくなってきて、ジャイアント編では気の良い親戚のおっちゃんみたいになってしまう。
で、この大原の息子が、「タロウ」で篠田さんと共演することになる斉藤信也さんなのである。
話が脇道にそれたが、上記のように、「シルバー仮面」では他の特撮作品と違い、一般人はおろか警察も宇宙人の存在を知らず、春日兄妹だけが人知れず宇宙人の陰謀と戦っていると言う、財津一郎並みに厳しい設定で、これがまた、話のトーンを一段と暗くしているのである。
三人は刑事たちを殴って外へ飛び出し、待ち構えていた機動隊を振り切ると、車を捨ててバラバラに逃走し、ひとみの待っている場所で落ち合うことにする。
CM後、

バイクを停めて立ちションしていた白バイ警官の後ろを、光三が口笛を吹きながら何食わぬ顔で通り過ぎる。
光三「どうも、ご苦労様です」
警官「ああ、ああ……」
で、その警官を演じているのがマスオさんなのだった。
光三はおもむろにバイクにまたがると、富士山に向かって走り出す。

警官「おい、君、待てーっ!!」
こうして、バイクに乗ったウルトラマンタロウをマスオさんが追いかけると言う、レアなシーンが生まれるのだった。
その後、警官は近くを通り掛かったサイクリストに自転車を借りて「連絡したいから」と言って走り去る。
その中には光二もいたのだが、警官は気付かない。
一方、光三の盗んだ白バイの無線に、146号線方面で逃走車を発見したから急行せいと言う指示が入ったので、光三は慌ててバイクをUターンさせる。
光三(どういうことだ、俺はここにいるってのに……さては、ようし、もう一組の俺たちの顔を見てやる)
ただ、このシーン、ちょっと変なんだよね。
何故ならば、無線から聞こえる声は明らかにマスオさんなのだが、今えっちらおっちらペダルを漕いでいる警官に、そんなことができる筈がないからである。
ま、単にマスオさんが二役を演じただけで、シナリオ上では別の警官だったのかもしれない。

警察は検問所と言うか、バリケードを築いてその車を待ち構えていたが、偽の春日兄妹は機関銃を乱射して、草でも刈るように警官たちを片付ける。
そう言えば、柴俊夫さんと亀石さんって、「西部警察3」の2時間スペシャルとかでは、敵味方に分かれて戦ってるんだよね。
まさか10年ほど前に、仲良く警官にマシンガンぶっ放していた仲だとは知らなかった。
一方、鬼頭警部のところへマスオさんがやってきて、

警官「第7検問所が突破されました、死傷者が多数出ました」
鬼頭「おい、しっかりしろ、春日兄弟に間違いないのか」
警官「間違いありません、間もなくここへやってきます」
と言うのだが、これってなんか変じゃないか?
だって、マスオさんは光三にバイクを盗まれたことを報告しようと本部に向かったのだから、ここで検問所襲撃のことを口にするのは辻褄が合わない気がするのだ。
それに、その口ぶりや様子では、自身も第7検問所にいたように思えるのだが、時間的距離的に言って彼がその場にいるのは不可能だったのではあるまいか。
あるいは、襲撃された後で現場に駆けつけたのかもしれないが、だとしたら、車で移動している春日兄弟より先にここに到達するのはおかしい。
なので、面倒でも、ここは別の俳優に演じさせるべきではなかったかと。
第一、これでは光三が白バイを盗んだことがストーリーに何の影響も与えてないではないか。
たとえば、第7検問所が突破されたと言う知らせを別の警官から受けたあと、マスオさんが来て、
警官「申し訳ありません、春日光三に○○地区で白バイを盗まれました」
鬼頭「なにっ、光三が? それは何時ごろだ?」
警官「○○時○○分です」
鬼頭「そんな筈はない、奴はその頃第7検問所を襲っていた筈だ。確かに光三だったのか?」
警官「はい、間違いありません」
みたいな感じで、鬼頭が偽の春日兄妹が実在しているのではないかと疑うきっかけになると言うのなら、意味があるんだけどね。
話を戻して、待つほどもなく、問題の車が鬼頭たちの前にやってくる。

手前で車を停めると、ひとみが後部座席の窓から身を乗り出し、邪悪な笑みを浮かべてマシンガンを撃ってくる。
悪人メイクのせいか、いつにもまして綺麗になった夏純子さん。
警官隊も応射するが、何しろ火力の差が圧倒的で、勝負にならない。
車が動き出すと、今度は光二たちが火炎瓶を投げてくる。

ひとみも負けじと火炎瓶を投げる。
夏純子さん、火炎瓶投げたなんて、これが生涯唯一の経験だったろうなぁ。
今では考えられない過激さだが、なにしろ、この少し後に「あさま山荘事件」が起きて世間の耳目を集める、そんな時代だからねえ。

ボンボンとあちこちで火柱が吹き上がり、さながら戦場のようになった検問所を、ゆうゆうと走り抜ける偽の春日兄妹。
鬼頭警部はなおも車で追跡するが、後部座席の光三はそれを見て「やれやれ」と言う風に顔を振り、

ひとみも満足げに微笑むのだった。
一方、本物の春日兄妹は森の中の洞窟の前に集まっていた。
光三「やはりもう一組の俺達がいたんだ、奴ら、検問所を2箇所も突破してこの山奥へ逃走中だ」
ひとみ「逃げるなら今のうちよ」
光一「いや、逃げちゃいけない、俺たちのことは俺たち自身で解決するんだ」
光三「奴らをやっつけたって、警察は信用しちゃくれないよ、どっちか生き残った方をまた追いかけてくるだけさ」
ひとみは、今警察に出頭すれば、自分たちのほかにもう一組の春日兄妹がいることを証明できるのではないかと訴えるが、
光一「そんなことじゃないんだよ」
光二「そうとも、光一兄貴が言ってるのはそんなことじゃない。奴らの目的は俺たちを犯罪者に仕立てることだ。そのためならどんな極悪非道なことでもやってのけるに違いないんだ」
いまひとつ分かりにくい台詞だが、要するに、自分たちの潔白を証明することより、彼らの非道を止めることが大事だと言うことなのだろうか?

谷「確かに追い詰めたと思ったんですがね」
鬼頭「こっから逃げられるわけはない、どっかに隠れてるんだ」
一方、鬼頭たちは、春日兄妹の車を見失い、土砂採取のために見るも無残に削り取られた山の上に立ち尽くしていた。
谷「探しましょう、警部」
鬼頭「いつまでも奴らの思うようにはさせん」
と、何処からか、「はっはっはっはっ」と言う高笑いが聞こえてくる。

振り向けば、こぶのように膨らんだ丘の上に猫の額ほどの墓地があり、そこに4人が立っているのが見えた。
土台部分に見えるショベルの爪痕が生々しい。
昔の特撮とか見てると良く思うのだが、宇宙からの侵略者より、現に今地球をゴリゴリに壊している人類の方がよっぽど侵略者と呼ぶにふさわしいのではないか。
と言うより、侵略者でなければ、自分たちの住んでいる星をここまで毀損できる筈がないような気がするのである。
あと、木の枝から首吊り死体がぶら下がっているように見えるのが不気味である。

偽光一「それはどうかな、鬼頭警部、ふっふっふっ、はっはっはっ」
4人は嘲笑を放ってから、手にした自動小銃を二人に向けて撃ってくる。
鬼頭は物陰に隠れて応戦するが、ピストルを弾き飛ばされる。
偽ひとみ「無駄なことはおやめなさい、別に殺すつもりはないんだから」
偽光三「その代わり、しばらくここにいて貰うぜ」
偽光二「俺たちの車が動かなくなっちまったんでね」
などと余裕をぶっこいてると、警部たちの背後に本物の春日兄妹が現れる。

光一「待て、宇宙人ども!!」
ギョッとして、二組の春日兄妹を見比べる鬼頭たち。

光一「刑事さん、これでお分かりでしょう、奴らが我々の姿を借りた宇宙人であるってことが」
鬼頭「信じられん」
光二「信じてください、奴らは宇宙人なんだ」
と、偽のひとみが大きな口を開けて笑い出す。
ぶっちゃけ、笑うところじゃないと思うのだが、さっき見た「笑点」のことでも思い出しているのだろうか?
光三、その場所からナイフを投げて、見事、偽ひとみの胸を刺し貫く。
うーん、距離的に、人間業とは思えないが、偽ひとみは呻きながら丘の後ろに落ちてしまう。
他の三人も春日兄妹にあっさり撃ち倒される。
……
いくら主人公とは言え、民間人に過ぎない春日兄妹があっさり倒した連中に、警察はなんで今までやられ放題だったんだ?
光一たちが急いで丘の上に行くと、丘の向こう側の低地に4人が腹ばいになって倒れており、必死の形相で這いずり、互いの右手を重ね合わせる。
4人の体から4つの火柱が上がるが、

その中から、ドミノ宇宙人があらわれる。
あの4人は、ドミノ宇宙人が分離して変身した姿だったのである。
野暮なツッコミだが、はるか遠い星からやってきて、なんでそんなことせにゃならんのだ?
この作品の欠点のひとつは、前半のテーマである「光子ロケット」が、そもそもなんなのか良く分からないことである。
いや、分からないことはなく、恒星間移動用のエンジンなのだが、なんでそんなものの開発を銀河中の宇宙人たちが血眼になって阻止しようとするのかが良く分からないのである。
そもそも、彼らが地球に来ていると言うことは、彼らも似たようにロケットを保有してる訳で、だったらそんなに大騒ぎすることかいなと思ってしまうのだ。

光二「あとは俺に任せろ、アタック!!」
ここで、光二が前に出て、左手の平に右拳を合わせるだけと言うシンプルなモーションでシルバー仮面に変身する。
うーむ、いくらなんでも地味過ぎるよなぁ。
これを見ると、ウルトラシリーズの変身アイテムや、仮面ライダーの大仰な変身ポーズがいかに子供たちの心を捉えるのに重要だったか、良く分かる。

さて、シルバー仮面のデザインだが、マスクは悪くないんだけど、やっぱり、そのままプロレスに出れそうな、実用感あり過ぎのコスチュームがなぁ……
しかも、これと言って特殊な技があるわけでもなく、

宇宙人とひたすらどつきあうだけの戦闘シーンなので、盛り上がらないこと甚だしい。
なお、特撮系のバラエティー番組でよくネタにされる、シルバー仮面が卒塔婆を抜いてそれで宇宙人をしばきまくるという有名なシーンは、ここで登場するのである。
しかし、まぁ、罰当たりな話ではある。
無論、シルバー仮面の勝利で終わるが、フィニッシュも、崖からただ落とされて爆発すると言う、カタルシスもかけらもない死に方。
鬼頭「私は信じない」
光一「しかしあなたは全てを確かにその目で見た」
鬼頭「そうだ、確かにこの目で見た」
光一「しかし何も見なかったと言ったほうが、世間ではそのほうを信じるでしょうね」
鬼頭「多分私が見たままのことを言えば、私はキチガイ扱いされるだろう、無論、そんな愚かな立場を取るつもりはない……犯人は春日兄妹の名をかたった身元不明の4人組の人間たちだった、彼らは逃走中、地獄谷に車ごと転落して行方を絶った、それが真相だ」
と、そばにいた谷やんがあれは間違いなく宇宙人だったと熱っぽく訴えるが、
鬼頭「そうだ、事実は分かっている、しかしその事実は法の常識も超えてしまう……あなた方はもう自由だ、何処へでも行って下さい」
鬼頭警部、大人の判断をして、すべては宇宙人でも春日兄妹でもない正体不明の犯罪者の仕業だったと言うことで、この事件を穏便に処理するのだった。
しかし、冒頭の少女だけは彼らの顔をはっきり見ているのだから、警察発表で納得するとは思えず、いつか、春日兄妹を仇と狙って襲ってくるのではあるまいか。
そう言えば、父親の葬式の直後に、母親(と親戚)まで殺されたあの少女こそ、今回の事件の最大の被害者だろうに、彼女についてのアフターフォローがないのは、市川森一さんにしては手抜かりのようにも見える。
以上、ヒーローと同じ姿をした宇宙人がマシンガンで人を殺しまくると言う、空前絶後のハードなストーリーが展開する異色作であったが、視聴率はシリーズ最低の3.8パーセントを叩き出してしまう。
報われない話だが、ヒーローの活躍を目当てに見ているちびっ子がこんな陰惨な話を喜ぶ筈がなく、ある意味、当然の帰結ではなかったろうか。
※ほんとはこの後「おまけ」を書くつもりでしたが、長くなったので分けて書きます。
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