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「炎の中の美女」~江戸川乱歩の「三角館の恐怖」 その2



 鳩野の屋敷で桂子の誕生パーティーが開かれ、明智と文代も招待される。

 桂子は盛装して達夫と踊っていたが、夫の信夫は、グラスを乗せたお盆を持ち、ボーイのようにゲストに配って歩くと言う、屈辱的な仕事をさせられる。

 しかし、仮にも桂子の夫なんだから、そこまで卑下しないでも良いと思うんだけどね。

 桂子たちが安っぽいディスコミュージックを大音量で鳴らして踊り始めたのを潮に、玄太郎は屋根裏の小部屋へ明智を連れて行く。

 そこは彼の集めた釣竿のコレクションルームになっていた。

 明智も釣りが好きだと聞くと、玄太郎は嬉しそうに目を輝かせて、

 
 玄太郎「そうですか、それは良かった。実はこの中の一本を先生に貰って頂きたいと思っておりましてな」
 明智「私にですか」
 玄太郎「自分が大切にしてきただけに先生のようなお方に貰って頂きたいのです」

 明智が、この屋敷の名前の由来になった、三角形の避雷針について尋ねると、18年前、玄太郎の妻と娘は、落雷による火災で亡くなったのだと言う。

 つまり、ニ度と同じような悲劇を招かないために特別に設置させたと言うことなのだろう。

 その頃、一階のホールでは、桂子がバースデーケーキの蝋燭を吹き消そうとしていたが、

 
 突然、庭に面した窓から、浮浪者風の怪しい男が入ってくる。

 
 男は、じっと桂子の顔を見詰めていたが、「陽子、陽子」と言いながら近付いてくる。

 当然、信夫たちが止めようとするが、その怪力で押し退けられてしまう。

 男は桂子の豊満な体を抱き寄せ、ものぐるしい目をして彼女を「陽子」と呼び続けるが、

 桂子「私は陽子じゃない!! 陽子じゃない」

 泣きださんばかりに怯えた桂子は、マスクの下からあらわれた焼け爛れた顔を見て、恐怖のあまり失神してしまう。

 信夫が知らせに行き、玄太郎と明智がホールに戻って来たときには、すでに男は風を食らって逃げ出していた。

 
 ぐったりしている桂子の体をお姫様抱っこで持ち上げる信夫。

 絶好のチラスポットかと思われたが、スカートの中は真っ暗で、管理人の心も真っ暗になる。

 せめて、桂子がスケスケの黒いパンティーを履いていたと想像して、自分を慰めよう。

 信夫が桂子を寝室へ運ぶのと入れ違いに、波越たちがあらわれる。

 
 波越「この男か」
 文代「あ、この男です!!」

 波越が取り出した白黒写真を見た文代は、即座に断言する。

 波越「荒熊だよ、荒熊は十日前に出所してるんだ」
 明智「十日前に荒熊が?」
 波越「ああ、そのことを君に知らせようと駆けつけたんだよ」

 現場に残った指紋を照合した結果、さきほどの男が荒熊だと確定する。

 荒熊こと荒井熊次郎を演じるのは、名優・織本順吉さん。

 例によって、深く物事を考えることをしない波越は、その場で、石渡とマヤを殺したのも荒熊だと断定し、手配を命じる。

 一方で波越は、明智に頼まれていた荒熊の情報を教えてくれる。

 波越「強盗、殺人、恐喝、万引き、食い逃げ、なんでもござれの凶悪犯なんだがね、獄中にあってはひたすら行方不明の娘の安否を気遣っていたようだ」
 明智「荒熊には陽子と言う娘が?」
 警部「ああ、その娘だよ」
 明智「警部、荒熊の妻は強盗犯人に殺されているじゃないですか」

 18年前、裕福な材木商だった荒熊の家に二人組の強盗が押し入り、妻を殺された上、放火されたと言う。

 てっきり、その強盗が今度の事件に関係しているのかと思いきや、

 波越「思えば憐れな男だよ、荒熊は強盗二名を探し出して、叩き殺してしまった」

 超人ハルクかっ!!

 この辺、詳しい説明がないが、いかにもありそうにもない話であることは確かである。

 あと、娘が何故行方不明になったのか、何の説明もないのがもどかしい。

 明智は、出所したばかりの荒熊に何者かが桂子=陽子だと吹き込み、荒熊を利用しているのではないかと睨む。

 なお、荒熊=荒井熊次郎が、大正時代の殺人犯で、当時のマスコミに「鬼熊」と呼ばれて騒がれた、岩淵熊次郎がモデルになっているのは言うまでもない。

 一方、玄太郎は、和子たちに迫られ、桂子がもし殺人犯の娘だと分かったら遺産相続から外すと約束し、そのことを横沢弁護士に電話で伝えるよう信夫に命じる。

 
 信夫「お義父さん、それでは桂子があまりにもかわいそうです」
 玄太郎「生活に困らん程度のものは与える」

 自分が養っている妹たちに押し切られる、いささか頼りないゲンちゃんだったが、その後、昔のアルバムを見返しているうちに、桂子への愛情が波のように押し寄せ、桂子の部屋に行くと、

 
 玄太郎「許してくれ、桂子、お前が私のほんとの娘だ、間違いなく私の娘だ、悪かった、桂子、許してくれ」

 涙ながらにその体を抱き締め、その巨乳を心行くまで堪能するのだった。

 そして桂子と一緒に居間に行き、さっきの件は取り消すよう信夫に命じる。

 まさに絵に描いたような朝令暮改で、これには和子たちが黙っていない。

 
 和子「兄さん、何を言うんですか」
 玄太郎「ワシはもうこの乳なしでは一日も生きていけんのだーっ!!」

 じゃなくて、

 玄太郎「ワシはもう少しで人間の道を踏み外すところだった、桂子は私の娘だ、誰の子であろうと関係ない……信夫、すまんが至急」
 信夫「ですけど、横沢先生は急用があると言うことで大阪に発ちました、三日ほど帰らないそうなんです」
 玄太郎「電話連絡は?」
 信夫「宿泊予定のホテルに連絡とってみますけど……」
 玄太郎「それが済んだら、明智先生にすぐここへ来てもらってくれ」
 信夫「はい」
 
 ちなみに、今にも死にそうな玄太郎を演じる鈴木瑞穂さんが、早乙女さんや朝比奈さん、萩原さん、ジョニーさん、そして高見さんより長生きするとは、この場の誰が想像しただろう?

 その後、いささか節操がない話だが、夜の庭で、桂子と達夫が激しく抱き合っている。

 
 達夫「俺は君のこと愛してるんだぜ、伯父さんの財産がどうなろうと関係ないよ、それに君が誰の子供だろうとそんなこと」

 ここでさっき、桂子が相続人から外された直後の達夫の様子を振り返ってみましょう。

 
 ……

 思いっきり勝ち誇っとるやないかい!!

 達夫が財産目当てなのは見え見えだったが、愛情に飢えている桂子は構わず、

 桂子「約束して」
 達夫「約束するよ、君を捨てたりなんかするもんか」
 桂子「私、信夫と別れるわ」

 一方、玄太郎は、明智に自分の日記を預け、桂子が荒熊の実子かどうか確かめて欲しいと頼む。

 日記には、18年前、玄太郎が桂子を自分の養女にしたときの様子が克明に記されていた。

 明智と文代は、桂子がいた「太陽の子学園」と言う施設に行き、当時のことを知るシスターから話を聞く。

 シスター「暴風の次の朝ね、雨戸を開けたら、あの子が校庭にぽつんと立っていたの、十日ほどして……昭和41年10月20日ね、親らしい方から娘を頼むと一度電話があったのですよ」
 文代「先生、昭和41年10月20日と言えば、荒熊が最初の犯罪を犯して自首した日です」

 また、半年ほどまえ、つまり、玄太郎が心臓発作を起こして入院した頃、探偵が桂子のことを調べに来たと言う。

 数日後の夜、降りしきる豪雨の中、不安に駆られた桂子がパジャマ姿のまま外に飛び出すと、三角形の避雷針に例の浮浪者風の男が取り付いて、何かをしているのが見えた。

 
 それを見るなり、桂子は失神してしまう。

 せっかく早乙女さんがパジャマ姿でずぶ濡れになってると言うのにろくに見れないとは、勿体無い話だ。

 
 屋敷内では、どうしても財産が欲しい和子と靖子が、遺言状を元に戻す前にと、釣竿のコレクションルームにいた玄太郎の首を絞めて殺そうとする。

 うーん、さすがに無謀過ぎないか?

 いくら遺言状が自分たちに有利でも、殺人犯として捕まっては元も子もあるまい。

 もっとも、玄太郎はなかなかしぶとく、抵抗して二人の体を突き離す。

 
 ところが、床に落ちていた釣竿を玄太郎が掴むと、その体に激しい電流が流れ、心臓の悪かった玄太郎は、あえなく絶命する。

 翌日、明智が屋敷に駆けつける。

 すでに波越たちによる現場検証が行われていた。

 
 明智「これは?」
 波越「これなんだけどね、桂子さんが昨夜、屋根の上に荒熊の姿を見たって言うんだよ。荒熊がこの避雷針を揺さぶって折っちゃったって言うんだ。そんなバカなことあるわけないんでねえ、彼女は夢でも見てるんじゃないのか」

 波越だけなら、玄太郎の死は落雷による事故死と片付けられていたかもしれないが、玄太郎が握っていた釣竿を見た明智は、たちどころに殺人トリックを見破る。

 
 明智「これは落雷による事故じゃない、電気を利用した計画的な殺人です」
 波越「なんだって」
 明智「カーボンロッドの釣竿と言うのは落雷に弱いという欠陥があるんです」
 波越「そりゃ僕も知ってるよ、送電線に触れて感電死した釣り人の記事読んだことがある」

 つまり、釣竿に電線をつないで床に落としておき、それに触った玄太郎を感電死させ、あたかも落雷で死んだように見せかけるという、およそ非現実的な方法であった。

 第一、雷雨にならなければ使えないのだから、ほとんど運任せの犯罪ではないか。

 波越「そりゃ荒熊だ、荒熊は娘を鳩野氏に取られたと思い、逆恨みして殺したに違いない」
 明智「いや、荒熊はそんな手の込んだことをする筈がない」
 波越「しかし、桂子さんは屋根の上に荒熊を見てるんだよ」

 さて、ここでさっきの波越の台詞を思い出してみましょう。

 波越「そんなバカなことあるわけないんでねえ、彼女は夢でも見てるんじゃないのか」

 ……

 さっきと言うてることが違う!!

 が、波越と長い付き合いの明智は、いまさらそんな細かいことは気にせず、

 明智「何者かが荒熊を利用して……」

 と、不意に明智が何かに気付いたような顔になり、

 明智「私たちは大変な間違いを犯していたのかもしれない」
 波越「それ、どういうことだ」
 明智「警部、荒井熊次郎はもうひとりいる、もうひとり、荒熊に成り済ました男がいる」

 ちなみに犯人がわざわざ屋根に上って避雷針を切断したのは、避雷針が折れるくらい激しい落雷があったと思わせるつもりだったのだろうか?

 あるいは、避雷針を折ることで、落雷の被害が起きたと見せかけるためか?

 玄太郎の葬式の後、これで財産はワシらのものじゃとほくそ笑む和子一家。

 これだけ鬼畜揃いのファミリーも珍しい。

 明智が屋敷を訪ねると、信夫が懸命に桂子を慰め、励ましていたが、信夫を毛嫌いしている桂子はそれを拒絶し、そればかりか、

 
 桂子「バカ、バカ、バカ」

 駄々っ子のように、泣きながらバッグで信夫の顔をパコパコ殴りまくる。

 
 だが、信夫はそれを甘んじて受ける。

 甘んじて受けるというより、むしろ「カ・イ・カ・ン」とでも言いたげな恍惚の表情を浮かべている信夫。

 そんな奇態な夫婦の様子を、明智は眉をひそめて見詰めていた。

 しかし、監督は、サスペンスフルなシーンとして撮ってるつもりのようだが、見てる分にはほとんどコントである。
 
 代わりに桂子は達夫に会いに行くが、将来を誓い合った筈の達夫は、いっそ清々しいほど露骨に手の平を返し、相続権を失った桂子など全く相手にしてくれない。

 
 その後、特に理由もなくヌード撮影のシーンとなる。

 
 このモデル、大して綺麗でもないが、テレビでおおっぴらに女性の裸が見れるというだけで、なんか得した気分になるんだよね。

 スケベな達夫は、その場でモデルと合体しようとするが、そこへ怒りに目の眩んだ桂子が入ってきて、

 
 桂子「私を騙したのね、決して捨てないと言ったのに」
 達夫「……」

 桂子は手近にあったナイフを手にすると、

 桂子「あなたを殺して、私も死ぬわ!!」
 達夫「ま、待ってくれ」

 ナイフを振り回して達夫に追いかけるが、そこに飛び込んできたのが明智だった。

 
 明智(おっ!!)

 桂子の腕を取りつつ、ぬかりなくヌードモデルのおっぱいを網膜に焼き付ける明智さん。

 明智はナイフをもぎ取ると、桂子の顔を思いっきりビンタする。

 
 明智「もっと自分の人生を大切にしたらどうだ? こんな男のために罪を犯したら亡くなったお父さんが悲しむぞ!!」

 ……

 明智さん、カッコイイッ!!

 こんなカッコイイ明智さん、ちょっと他では見たことがない。

 何故、以前のレビューでは、こんな素晴らしい台詞をスルーしていたのだろう?

 自分の不明に恥じ入るばかりである。

 その後、色々あって、明智の優秀過ぎる助手たちの活躍で、明智は荒熊の妹なる女性を発見し、彼女は、明智を荒熊を匿っている倉庫のような建物に案内する。

 荒熊は十日前、すなわち、桂子の誕生パーティーが開かれた日に車に撥ねられて重傷を負い、妹に助けを求めに来たのだと言う。

 また、妹によれば、陽子の右耳の後ろにはあずき大のほくろがあると言う。

 荒熊はすぐ病院に収容され、桂子が、波越たちの立会いの元で、荒熊に会うことになる。

 波越「荒井、桂子さんがお前の娘かどうか、確かめろ」

 
 荒熊「……」

 荒熊は、枕元に座った桂子の顔を両手で掴み、指先で右耳のほくろの感触を確かめる。

 感極まったような目になる荒熊だったが、ぷいと横を向くと、

 荒熊「この女、俺の娘じゃねえ」
 和子「そんなバカな!!」
 明智「死に瀕した男が嘘を言う筈がない、桂子さんは荒熊の娘ではなかったんです」

 思惑外れた和子は、足音荒く病室を出て行く。

 明智「桂子さん、ひとつお願いがあるんですが……この男は18年間、生き別れになった娘の陽子さんをひたすら探していたんです。貧しさの中で罪を犯した。それでも娘の安否を思う父親の心は片時も失ってはいなかったんです……今、本当の娘に会うことも出来ず、この男は息を引き取ろうしています。桂子さん、一度だけでいい、この男の手を握り、お父さんと呼んでやってくれませんか?」

 無論、桂子もバカではないので、荒熊の態度と明智の言葉で、目の前にいるのが正真正銘の父親だと悟り、

 
 包帯を巻かれた荒熊の手を両手で握り締め、涙をぽろぽろを流しながら「お父さん、お父さん」と繰り返すのだった。

 そして桂子の脳裏には、18年前の火災の時、自分を必死に守ろうとした父親の姿がありありと浮かび上がる。

 冒頭の火事で桂子が強いショックを受け、記憶まで飛んだのは、幼時の恐ろしい体験がトラウマとなっていたからなのだろう。

 荒熊は、実の娘の声を聞きながら、満足げに息を引き取る。

 だが、あてが外れた波越は不満たらたらで、

 
 波越「あー、さっぱりわからんよ、明智君、真犯人は一体誰なんだ」
 明智「病んだ心」
 波越「なんだそりゃ、君はもう犯人を突き止めてるのか」
 明智「犯人は分かってます、その動機もね。ただ物証がない」

 ちなみにこのシーン、波越と横沢弁護士が、同じような帽子を被ってるのが何気にツボである。

 その3へ続く。
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コメント

鬼籍に入った人達

文代役の(二代目)高見知佳さんも亡くなってしまいまた鬼籍に入った人が更に1人増えてしまいましたね😅

Re: 鬼籍に入った人達

まあ、古い作品ばかり紹介してるので仕方ないことなんですが、それにしても早過ぎますね。

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zura1980

Author:zura1980
70~80年代の特撮、80年代のドラマを中心に紹介しています。

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