玄太郎の遺言状公開の日が訪れる。
もっとも、それは玄太郎の遺言と言うより、

横沢「玄太郎氏の正統な遺産相続人・鳩野桂子さんの申し出により、鳩野氏の財産は鳩野記念事業団に寄付されることになりました。その資金は主として福祉事業などに寄付されることになると思います。また桂子氏の申し出により、夫の信夫氏に2000万、イトコの達夫氏に1000万が、それぞれ贈られることになりました」
桂子が相続した財産をどう処分するかと言うことを発表するための集まりのようであった。
しかし、当時のことだから相続税もバカにならないので、そんな簡単に決められることじゃないと思うんだけどね。
と、信夫がたまらなくなったように立ち上がり、
信夫「待ってください、私はそんな金要りません、桂子、どういうことなんだ」
桂子「信夫さん、私と離婚して下さい。私があなたと結婚したのは父の命令があったからです。私は私を養女にして育ててくれた父の命令に逆らうことができなかった。でも、いま私、あなたと別れて、ひとりになりたいんです、そして今までのこと、これからのこと、じっくり考えて見たいんです」
信夫は別れないでくれと哀願するが、桂子の決心は固い。
桂子「私、決めたんです、私、この家を出ます。しばらく旅に出ようと思ってます」
和子「ちょっと待ってよ、桂子さん、私と靖子に一銭もくれないなんてひどいじゃないの!!」
と、今度は和子が立ち上がり、さもしいにもほどがあるクレームを入れる。
ただ、玄太郎は、財産は桂子に譲るが、和子たちにも生活に困らないだけの遺贈はするって言ってたので、ちょっと矛盾するような気もする。
それはともかく、そこへ波越たちがやってきて、

波越「鳥井和子、鳥井靖子、あんたたちには逮捕状が出てるぞ、鳩野氏に対する殺人未遂罪だ」
靖子「なんですって」
波越「鳩野氏の遺体には首を締められたあとが歴然と残っていたんだ、事情はゆっくり聞かせてもらうよ」
と言う、まさに「踏んだり蹴ったり」を地で行くような悲惨な末路が二人を待ち受けていた。
美女シリーズはたくさんの悪人が出てくるが、彼女たちほど情けない悪人もいないだろう。
しかし、ちょっと可哀想な気もする。
第一、首を締められたあとがあったからって、二人がやったとは限るまい。
また、それを言うなら、桂子だって達夫への殺人未遂で逮捕されてないとおかしいんだけどね。
それにしても、せっかく朝比奈さんが出てるのに、扱いがあまりに悪過ぎる。
和子の添え物程度で、これなら、いてもいなくても構わないような役である。
ひょっとして、監督に脱いでと頼まれたのに脱がなかったので、冷や飯を食わされたのではあるまいか。
管理人的にも、是非脱いで欲しかったところである。

その後、桂子は雨の降る中、一人傘を差して屋敷を出るが(タクシー呼べよ)、信夫が傘も差さずに追いかけてきて、未練がましく復縁を迫る。
桂子「いい加減にして頂戴」
信夫「そんなに俺のことがイヤか」
桂子「何回同じこと言わせるの」
しかし、冷静に考えたら、信夫には何の落ち度もないのだから、桂子が別れたいと言ったからって簡単に離婚できるものだろうか?
ま、その辺をリアルに描くと、違うジャンルのドラマになっちゃうからね。

信夫「死んでくれ、桂子」
怒り狂った信夫は、あっさり本性をあらわして桂子の首を絞めて殺そうとする。

荒熊「陽子!!」
ところが、誰かが桂子の本名を叫んだかと思うと、そばのステージ(よみうりランドの野外ステージ)の上に、中村主水みたいなマフラーで顔を隠した荒熊があらわれる。
信夫「貴様、生きていたのか」
信夫はステージに上がって荒熊に掴みかかるが、豪腕・荒熊の敵ではなく、ステージから投げ落とされる。

信夫「あの時、確実に貴様を轢き殺しておくべきだった」
荒熊「あの時は全く驚いたぜ、陽子に会わせると言うから俺は喜んで出かけたんだ。いきなり車で轢くなんてひでえじゃねえか」
信夫「くっそう」
荒熊「刑務所から出た俺に陽子を知ってると近付いて、殺しまでなすりつけやがって……俺が桂子の前に出たのは誕生パーティーのあのときだけだ、殺しをしたのは全部お前だ」
信夫「ちくしょう、お前さえ死んでれば、何もかも上手く行ったんだ、俺の殺しも全部お前がかぶって……」
と、信夫のその言葉を待っていたように、荒熊の声が別人のものに変わる。
荒熊「ふふふ、遂に吐いたな、信夫君」
信夫「誰だ、貴様……貴様、明智!!」
ここから、管理人にとって、最後……であって欲しい……ベリベリベリタイムとなる。

無論、死んだはずの荒熊が生き返る訳がなく、それは明智の変装だった。

そしてこれも最後であって欲しい、渾身の早着替え。

続けて文代や波越たちがバラバラとステージに上がり、明智の謎解きタイムとなる。
明智「石渡三郎殺しから始まった一連の事件を私は当初、鳩野氏の遺産相続にすべてが起因していると思った。何者かが荒熊を利用して桂子さんの遺産相続を奪おうとしているのだと……そう考えると、桂子さんの夫であり、また遺産の管理者である君はまず初めに捜査対象から外されるべき人物だ。実に見事な着想だったよ」
桂子「どうして、どうしてなの?」
波越「さっぱり分からんよ、明智君、信夫は何故そんなバカな考えを?」
その奇妙な動機を説明するため、明智は信夫の生い立ちから語り始める。
明智「鳩野信夫もまた親に捨てられた子供だったんですよ、信夫は施設を転々としたのちに、鳩野氏に運転手として雇われた」
ここで当時のことが回想され、

うれし恥ずかし、早乙女さんのセーラー服姿が拝める。
さらに、

悩殺タンクトップ姿で庭に水を撒く桂子タン。
これ、パッと見、桂子がトップレスに見えるのもポイント高い。
明智「信夫は桂子さんを妹のように可愛がったそうだ。それがいつしか愛になり、桂子さんを独占したいという強い欲望に代わっていったんです」

明智の台詞に合わせて、文字通りのバストショットが映し出されるが、これではまるっきり、桂子の体目当てだったようにも聞こえるなぁ。
しかし、「妹のように可愛がっていた」のなら、桂子も信夫に対し、もう少し親しみのある態度を取っても良さそうなもんだけどね。
明智「信夫は鳩野氏に見込まれて、桂子さんと結婚した、おそらく天にも昇る気持ちだった。だが、桂子さんは信夫を愛してはいなかった」
信夫は、桂子に次々と男が出来るのは、彼女が受け継ぐことになっている、玄太郎の莫大な遺産にあるのだと考え、ある行動に出る。
玄太郎の日記を盗み読みした信夫は、探偵と偽って「太陽の子学園」のシスターから話を聞き、荒熊の存在を突き止めると、荒熊が桂子の父親だと言う脅迫状(紛れもない事実なのだが……)を玄太郎や桂子に出したのだ。
明智「君はそこでやめておくべきだったのだ、だが、君は金を渡して(桂子と)別れる約束をした石渡がまだ桂子さんと会ってるのを知って許せなかった」
冒頭の放火と殺人は、無論、荒熊に化けた信夫の仕業だったのだ。

それにしても、こんな立派なものを持ちながら、脱いでくれないなんて悲し過ぎる。
そして、信夫はこんな目に毒の物件を四六時中見せられながら、セックスどころかペッティングさえさせて貰えなかったのだから、頭がおかしくなっても不思議はあるまい。
つーか、石渡みたいな男に抱かれるくらいなら、れっきとした夫である信夫に抱かれてやれと思ってしまう。
その意味でも、石渡役はもうちょっとハンサムな俳優に演じて欲しかった。
それはともかく、今度の事件の一因が、桂子の信夫に対するあまりにつれない態度にあることは確かである。
明智が桂子の肩を持つばかりで、その不行跡などを一切責めないのも不公平な感じがするんだよね。
あと、信夫、桂子が逃げ遅れて死んだらどうするつもりだったのだろう?
明智に助け出されたから良いようなものの、桂子が死んでしまったら、元も子もなくなるではないか。
マヤを殺したのも信夫だが、明智によると、その動機は「マヤ君が君を見ているかも知れないとおそれたから」らしいのだが、結局マヤが何を見て桂子を脅そうとしたのか、正確なことは分からずじまいなので、いかにも消化不良である。
ちなみにマヤが桂子に電話をしたとき、その場に達夫がいたので、てっきり達夫も脅迫の内容を知っていたのかと思っていたが、その後の達夫の言動を見る限り、シャワーの音で聞こえていなかったようである。
でも、達夫が関係ないとしたら、金の受け取り場所でわざわざヌード撮影をしていたマヤの行動がますます意味不明になる。
それはさておき、

事件の再現シーンでは、マヤちゃんのバストをもう一度見ることが出来る。
いやぁ、こんな端役なのが勿体無いくらいの美乳である。
信夫は、桂子が警察に疑われていると知ると、桂子を守るため、出所以来面倒を見ていた荒熊に桂子が陽子だと吹き込んで、パーティーの席に登場させ、あたかも荒熊が犯人のように警察に思わせる。
ところが、玄太郎がやっぱり桂子タンに遺産を残すんだいっ!! と言い出したので、荒熊に化けて避雷針を折り、釣竿のトリックで玄太郎を殺したのだった。
明智は「天才的な殺人者」と信夫を褒めるが、土砂降りの雨の中、荒熊に変装して屋根に上って避雷針を折るなんて、
バカにしかやれないことだと思う。
ちなみに明智の説明を聞くと、玄太郎の体に流れたのは家庭用の電気ではなく、ほんとの雷の電気らしく聞こえるが、ちょうど雷が落ちたときに玄太郎が釣竿を持っていないと成立しない方法なので、どうにも納得できない。
そもそもなんで避雷針を折ったのか、それが分からないのである。
誰か教えて!!
どっちにしても、トリックとしては下の下だが、明智が信夫を怪しいと睨んだきっかけについての解説はなかなかスマートである。
明智「だが君は致命的な誤りを犯したのだ」
信夫「致命的な誤りだと? なんだそれは」
明智「火炎瓶だよ、信夫くん……桂子さんが極度に炎に怯えることを知っていたのは寝室を同じくする夫の君にしかいない、君は悪夢に怯える桂子さんからそのことを知り、炎が桂子さんをおびやかすためにはもっとも良い武器だと思って火炎瓶を使ったんだろう、だがそれが君の重大な誤りだったんだ」
信夫「何故だ」
明智「荒熊の犯行歴に放火事件はひとつもない、妻を殺され放火された男が炎の海から救い出した娘に向かって火炎瓶を投げつけたりするものか」
信夫「……」
明智「鳩野信夫、父親の愛とはそういうものだ」
そういうものだそうです。
ただ、明智の説明にもいくつか疑問点がある。
まず、桂子は信夫を毛嫌いしていたらしいのに、同じ寝室で寝るだろうかと言う点。
逆に言えば、同じ寝室で寝ると言うことは、肉体関係があったとしか思えず、和子たちが実際の夫婦関係がないと信夫をバカにしていたのと矛盾する。
まぁ、それは和子たちのゲスの勘繰りで、ほんとはやることはきっちりやっていたのかもしれないが、だったら、信夫もあんなにつらそうな表情はしなかっただろう。
それと、桂子は鳥井一家と同居していたのだから、彼女が火を病的に恐れることを、彼らが知っていても不思議はなく、信夫だけが知っていたとは断定できないだろう。
桂子のイビキがめちゃくちゃうるさいとか、そう言うことなら信夫に限定できるかもしれないが。
ついでに、明智は
「妻を殺され放火された男が炎の海から救い出した娘に向かって火炎瓶を投げつけたりするものか」と、大見得切って言ってるけど、そもそも、父親が実の娘に向かって火炎瓶投げたりはしないので、荒熊や桂子の過去がどうだろうと、そんなことはありえないと気付くべきではなかったか。
さきほども指摘したように、この件に関してはドラマとしてもありえないんだけどね。
せめて、信夫が石渡を殺した後、たいまつの炎か何かで桂子を脅かそうとしたら、誤って建物に燃え移り、あんなオオゴトになってしまったと言うのなら分かるのだが。
どっちにしても、信夫が愛する桂子を見捨てて逃げ出したのは不可解である。
もうひとつ、大切なことを忘れていたが、この一件でいちばん迷惑を被ったのはあの料亭のおかみさんだよね。
まさに、
おかみ「なんて火だ!!」 である。
観念した信夫は波越たちに逮捕されるが、

桂子はなんと、そんな彼らを尻目に、どっか行っちゃうのである!!
さすがにそんな奴おらへんやろ。 仮にも殺人未遂事件の被害者であり、警察にも証言しないといけないことが山もほどあるんだから。
ま、実際、この後、刑事に連れ戻されて、気まずい空気になったと思われるが、ドラマではそこまでは描かない。
事件解決後、歩きながら話している明智と文代。

文代「桂子さんは本当は荒熊の娘だったんでしょう?」
明智「さあ、どうかな」
明智、無意識に煙草を取り出して口に持っていこうとするが、文代の存在に気付いて途中でやめ、またポケットにしまおうとするが、文代はにっこり笑って「どうぞ」と言ってくれる。

事件解決のご褒美であったが、明智さんの、いや、天知先生の健康のためにも、ここは心を鬼にして取り上げて欲しかった。

旨そうに煙草を吹かした後、ライターの炎の中に、必死に幼い娘を助けようとしている18年前の荒熊の姿を映しながら、エンドクレジットとなる。
そう言えば、高見知佳さんは今回で降板なので、彼女にとってはこれがラストシーンだったのである。
以上、やっばり美女シリーズの中では最底辺に近い失敗作であった。
とにかくミステリードラマとしてはあまりに作りが雑で、指紋とかアリバイとか、最低限のデータすら満足に視聴者に提示されないので、見ていて非常にストレスがたまるのである。
キャストも総じて地味で、しかも、早乙女さんと朝比奈さんと言う、80年代を代表する二大巨乳が共演しているのに、どっちもおっぱいを見せてくれないというやる気のなさ。
その代わりに萩原流行さんが脱いでたが、当てにしていた女優二人が脱いでくれずに監督が頭を抱えていたところに、「監督、もし僕で良かったら脱ぎます!!」「やってくれるか!!」「はいっ!!」みたいな流れ(シャレ)になって、それがあのシャワーシーンにケツ実したのではあるまいか?
そう言えば、原作では、エレベーター内での密室殺人が売りだったのだが、こちらではエレベーターどころか、密室さえなかったんだよなぁ。
編集後記 当初は過去の記事を継ぎ接ぎして訂正すればよかんべと軽く考えていたが、自分の昔の記事のあまりの下手さ加減に我慢がならず、気付けば、ほぼイチから書き直したも同然の執筆量となり、画像も20枚以上追加(ただし、削除した画像も同じくらいある)したので、普通のレビューとほとんど変わらない内容になってしまった。
ドラマ自体もつまらないし、執筆しながら画像を追加しなければならないのが死ぬほど面倒だし、途中、停電でデータが飛ぶし(実話)、ある意味、今年一番つらいレビューだったかもしれない。
それでも、あまり手抜きをせずにきっちり書き上げたことに、それなりの充実感も感じている管理人であった。
最後までお読み頂いた読者の皆さん、ありがとうございました!!
※追記 最初に原作を読み返す気にもならないと書いたが、読まずに面白くないと言うのはフェアではないので、レビューを書いた後、ざっと目を通してみた。
やはり、管理人の記憶に間違いはなく、およそ乱歩が書いたとは思えない無味乾燥な小説であった。
いちおう「館モノ」なのだが、売りであるエレベーターと言う密室で起きる殺人事件のトリックも、横溝正史が「エンジェル家の殺人」をヒントにしたと言う「本陣殺人事件」の超絶トリックと比べると、いかにも拍子抜けの感じが強い。
また、今回レビューした「炎の中の美女」が、原作とは懸け離れた内容であることも確認できたが、ヒロインの名前と、犯人の正体および動機については、原作に忠実だったのが意外であった。
他にも、巨額の財産を巡る同族間のいさかいがベースにあることや、犯人が別人に成り済ましてそいつに罪を着せようとするところも共通していた。
ヒロインのイトコが、金目当てに彼女に近付くあたりもね。
なお、さきほどはケチョンケチョンにけなしたが、この退屈な小説に比べれば、まだしもドラマの方が楽しめるだろう。
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