第44話「ブッチー涙の大暴走!!」(1989年1月14日)
ブッチーは、同僚ギルドスの無念の死を受けて自らの体を検査し、やはり自分もロボットだったことを知り、激しいショックを受ける。

ブッチー「ビアス様、ワシには、チブチ星に生まれ、学び育った過去があるのダス!! それなのに、ロボットだなんて、これは一体どういうことダスか?」
たまらずビアスの足元に這い蹲るようにして尋ねるが、
ビアス「その過去の記憶も私が作ったのだ」
ブッチー「げぇええっ!!」
ビアス「お前が宇宙の天才チブチ星人として完璧に振舞えるようにな」
ビアスは、眉ひとつ動かさず、こともなげに真相を告げると、
ブッチー「何故、宇宙人でもないのに、宇宙人などと……」
ビアス「宇宙人の天才が出現したとなれば、地球人の天才も負けてはおれん、お前たちの出現が良い刺激となってケンプたちは成績を上げた」
平然とその理由を解き明かして見せる。
そう、前回、勇介が推理したとおりの目的だったのだ。
物陰から二人の会話を盗み聞きしていたケンプたちであったが、仮にも仲間であるブッチーの気持ちを思い遣ることもなく、
ケンプ「やはり俺たちこそがビアス様の真の弟子だったんだ」
笑顔で優越感に浸ると言う、酷薄さではビアスに負けず劣らずの弟子たちだった。
ブッチー「そんな、ワシらはただケンプたちの成績を上げるために利用されていただけなんて……あああ」
あまりのことにその場に座り込んでサメザメと泣くブッチーであったが、

ビアス「たわけ、お前の正体がなんであろうと、お前がボルトのために働かねばならんことに変わりはない……誰に作られたかを忘れるな、お前ごときの命、私の胸先三寸でどうにでもなるのだっ!!」
ブッチー「やります、やります、全力を尽くしてやりますダス」
鬼より怖いビアス様にひと睨みされ、なおもボルトのために扱き使われることになる。
自分が誰か知らないまま死んだギルドス、自分が何者か知った上にボルトの道具として使われるブッチー、悪役とは言え、いや、悪役だからこそ、どちらも涙が出そうなくらい哀れである。
正直、スタッフには、「チェンジマン」の、気持ち悪いゲーター一家に向けられた優しさの数分の一でも、この二人に分け与えてやって欲しかった。
それはそれとして、ビアスが二人を作ったと言うことは、ブッチーの「ダス」と言う語尾もビアスが考えたわけで、それをコンピューターに打ち込んだり吹き込んだりしているビアス様の姿を想像するとちょっと笑える。

ブッチー「邪魔だ、邪魔だーっ!!」
完全にヤケクソになったブッチーは、ボーソーヅノーと言う頭脳獣を引き連れ、得意のローラースケートを履いて街中を爆走する。
二人が抱えるミサイルのような武器で、車やビル、住宅が次々と破壊され、街は見る見る廃墟と化していく。
ちなみに、そのバックには、「ようこそここへ~クックックックッ私の青い鳥」と、ビートたけしがギャグにしていた、紫式部系のあの曲が掛かっている。
ライブマンが出撃し、彼らを止めようとするが、失うもののないブッチーの異様な迫力に気圧され、手も足も出ない。
だが、めぐみは、戦いながらブッチーが大粒の涙を流していることに気付く。
と、ボーソーヅノーの攻撃で、ブッチーとめぐみが一緒に吹っ飛ばされる。
その衝撃で、ブッチーの体のあちこちから火花が散り、チューブが飛び出す。

ブッチー「ああ、いやダス、いやダス、こんな姿、見たくないダスよ、うう……」
この顔でナルシストのブッチーは、自分がロボットであることにほとほと嫌気が差したように頭を抱えて絶望する。
と、何処からか、聞き覚えのある女性の歌うロックミュージックが聞こえてくる。
それは、噴水の前に座ったカップルのラジカセから流れていたが、ブッチーの姿を見てカップルはすっ飛んで逃げる。
ブッチー「いやぁ、思い出すダスなぁ、ワシが初めて地球にやって来たとき……いや、今にして思えば、地球へ来たと思い込んでいたに過ぎなかったんダスけど、そのときワシの歌を妨害した曲ですわ」
ラジカセに懐かしそうに頬擦りしながら、22話で、ギターラヅノーと一緒に何かやってたときのことを思い出すブッチー。
よく覚えてないが、ブッチーの作戦を邪魔したのが、キーボードを演奏しながら歌うめぐみなのだった。
ブッチーが、その音楽に合わせて楽しそうに踊っているのを見たビアスは、
ビアス「減点300点」
650点だったブッチーが、一気に350点になってしまう。
もっとも、ブッチーが、既にケンプたちの当て馬に過ぎないことが分かった今となっては、その点数がどうなろうとあまり意味がないように思える。

そんなブッチーの姿に誘われて、めぐみも子犬のような笑顔になる。
だが、そこへ飛び込んできたアシュラがブッチーに蹴りを入れ、音楽を止める。
ブッチー「何をするダスか!!」
アシュラ「馬鹿め、お前はもう300点も減点されてしまったのだぞ」
ブッチー「なんだって、300点も? ひええ、大変ダス!!」
ブッチーにとっても、もはや点数などどうでもいい筈だが、そうやってプログラミングされているのか、さも一大事のように騒いでその場から走り出す。
ブッチー、成績の挽回のため、なおも暴走行為を続け、コンビナートや都市を破壊する。
何故か勇介たちはブッチーを止めようとはせず、代わりにめぐみが、以前のように肩に吊るしたキーボードを奏でながらブッチーの前にあらわれる。

めぐみ「踊りましょう、ブッチー」
ブッチー「な、なんだと」
めぐみ「歌は切ない気持ちを慰めてくれるわ。踊りは何もかも忘れさせてくれる」
ブッチー「……」
めぐみの言葉に、疲れたように花壇の隅にべったり腰を下ろすブッチー。
めぐみ「今のあなたになんて言っていいか分かんないけど、私に出来ることと言ったらあなたと一緒に何もかも忘れて音楽を楽しむだけ」
ブッチー「うう、うう……」
めぐみ「暴走したり、破壊したりするより、あなたもほんとは歌って踊ってたいんでしょ?」
ブッチー「ううっ……」
涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、めぐみの問いかけに頷いてみせるブッチー。
ビアス「ブッチー0点!!」
それを見ていたビアス、とうとうブッチーの点数を全て取り上げてしまう。
この辺はほとんどギャグの世界である。
あと、めぐみがブッチーを慰めるくだりを見ていると、「スクール☆ウォーズ」で、自分が後少しで死ぬと知って自暴自棄になったイソップに、大木がトルエンの瓶を渡して「嫌なことはこれで全部忘れろ」みたいなことを言ってるシーンを連想してしまう管理人だった。
めぐみ「さ、踊りましょ」
ブッチー「はぁああっ、めぐみさん……」
めぐみの差し伸べた手を、ブッチーが感激の面持ちで掴もうとするが、その間をボーソーヅノーが駆け抜けて邪魔する。

アシュラ「ブッチー!!」
めぐみ「アシュラ……」
その場に倒れためぐみが立ち上がろうとするが、それだけでパンツが見える衣装がサイコーなのです!!
これが見せパンじゃなく、勝負パンツだったらなぁ……

アシュラ「ブッチー、貴様はもう0点だ」
ブッチー「ひぇええーっ、0点? 0点ダスかーっ?」
アシュラ「クズめ、貴様のような奴はクズにふさわしく、この俺がスクラップしてやるぜ!!」
と、アシュラの背後に勇介たちがあらわれ、めぐみとブッチーを逃がそうとするが、アシュラも負けじとシュラー三人衆をひり出して、二人を包囲させる。

ブッチーを庇うように立ち、前屈みになるめぐみ。
シュラー三人衆が光るブーメランのような武器を投げつけるが、

めぐみ「ああっ」
ブッチー「めぐみさん、危ない!!」
今度は、ブッチーがめぐみに覆い被さり、自分の体を盾にしてめぐみを助ける。
なお、このカットを見て、なんかヒワイだなぁと思った人は、即刻お引き取り願いたい。

めぐみ「ブッチー!!」
驚いて、ヴィダルサスーンのCMのように髪を美しく広げながら振り仰ぐめぐみ。
二人は何とか海の見える公園まで辿り着くが、

ブッチー「めぐみさん、ワシはもう駄目ダス」
ブッチー、精根尽き果てたように膝を地面に落とす。
めぐみ「何言ってるの、まだ一緒に踊ってないでしょ?」

めぐみ「元気出して、ほら、思い出の海で一緒に踊ろう」
ブッチー「そうダスなぁ、海は良いダスなぁ」
キーボードを演奏して見せながら、濡れた目でブッチーを励ますめぐみ。
このシーンのめぐみが、とりわけ綺麗だと思いました。
ちなみに「思い出の海」と言うのは、22話では、海辺が主な舞台となっていたからである。
ビアス「愚か者め!!」
無論、そんな茶番劇を黙って見ているようなビアスではなく、リモコンのボタンを押してブッチーを破壊しようとする。
それを察したブッチーはめぐみの体を突き飛ばし、

ブッチー「ワシは、ビアスに作られたことを呪ったダス、でも、めぐみさん、あなたに会えただけでも良かったダスよ……さよーならーっ!!」
フレームアウトして、一瞬で採石場に移動し、めぐみに最後のメッセージを残すと、仰向けに倒れて豪快に爆死する。
めぐみ「いやぁあああああーっ!!」 それを見て、あたかも最愛の肉親を失ったように、全身で悲鳴を上げるめぐみ。
ただ、仮にも敵だった相手の死に、ここまでショックを受けると言うのは、いささかオーバーな気もする。
それに、ブッチー、今回の作戦でいくつものビルやコンビナートを破壊しており、かなりの死傷者が出たと思われるので、ブッチーを、ボルトに見捨てられた犠牲者としていたわるのは、なんか間違ってるように気がするのである。
考えれば、なんだかんだで人間社会に少なからぬダメージを与えることに成功しているのだから、ビアスも感情に流されずにその辺を評価してやらねばならなかったのではあるまいか。

めぐみ「ブッチー……」
分かり合えたと思った途端のブッチーの死に、茫然と立ち尽くすめぐみ。
アシュラ「さらば、哀れなライバル、劣等生は消え去るのみ、ボルトは我ら真の天才に任せておけ」
ビアスに比べれば人情味のあるアシュラは、ブッチーの死をそれなりに悼み、さっさと立ち去ろうとするが、
めぐみ「アシュラ!! 一体、あなたたちの先には何があるって言うの?」 目に涙を溜めためぐみが、鋭い声を発して呼び止め、根本的な疑問を怒声と共に叩きつける。

アシュラ「真の天才としての名誉と栄光、それに決まってるではないか!!」
それに対し、悪びれずに答えるアシュラ。
加入時点では人間だった頃の欲望に引き摺られることもあったアシュラだが、今やすっかりビアスに洗脳され、ケンプやマゼンダと同じ価値観を持つようになったと見える。

めぐみ「ブッチーの怒りと悲しみ、私が代わって晴らしてやるわ!!」
零れ落ちる涙を拭こうともせず、めぐみが満身の怒りを爆発させる。
この後、ラス殺陣に雪崩れ込み、単に上司に従っただけのボーソーヅノーを血祭りに上げて鬱憤を晴らすライブマンであった。
戦いの後、例の歌をバックに、浜辺で楽しく踊っているめぐみとブッチーの姿があった。

ブッチー「どうダスか、めぐみさん」
めぐみ「あっはっはっ……」
ブッチーの珍妙な踊りに、銀座ジュエリーマキのCMっぽく髪を掻き上げて笑うめぐみ。
だが、それは、めぐみの思い描いた幻に過ぎなかった。
夕暮れの空の下、たくさんのヨットがミズスマシのように行き交っている海を眺めているめぐみたち。
めぐみ「踊ってあげたかった、ブッチーと……心行くまで」
丈「あいつのためにも、ビアスを倒そうぜ」
勇介「早く平和な社会を取り戻すのさ、ブッチーが願った、楽しく歌って踊り続けられるような世界をな」
鉄也「そうだよ、それがブッチーの最大の供養になるさ」
純一「元気出して、めぐみさん」
悲しそうな目のめぐみを、口々に慰め、励ます勇介たちであった。
- 関連記事
-
スポンサーサイト