第32話「地獄に呼ばれるビジンダー」(1973年12月22日)
前回、空中で激突して爆発し、生死不明となっていたビジンダーとハカイダーであったが、なんのことはなく、二人とも無傷でシャドウに回収され、ビッグシャドウの前に意識を失った状態で横たわっていた。
ビッグシャドウはビジンダーを手術室に運ぶよう命じる。
ザダム「馬鹿めが、良心回路など取り付けられおって……ビジンダーの胸部配線を全部やり直す、まずその心臓部をぶっ壊せ」
ザダムの乱暴な命令に従い、手に手に電動ドリルを持つシャドウマン。
ザダム「01に手直しされた心臓部などめちゃくちゃにしてしまうのだ。やれ」

仮借なく、三本のドリルが、無抵抗のビジンダーの胸に迫る。

さらにそれを、ビジンダー目線で撮った映像なんかも出てくるが、まるで、ナチスの残党の経営している歯医者にうっかり入ってしまった不運な患者のような気持ちを味わえる恐怖映像となっている。
このままなすすべもなくビジンダーの心臓が抉られてしまうのかと思われたが、さすがビジンダー、ハカイダーと違って気絶したふりをしていただけで、ドリルが触れる寸前でシャドウマンたちを蹴散らし、手術台から降り立つ。
ビジンダー「ザダム、今度はお前の番だよ」
ザダム「この俺にまで刃向かおうと言うのか、ビジンダー」
果敢にもザダムに戦いを挑むビジンダーであったが、イチロー自身が言っていたようにビジンダーの体に埋め込まれた良心回路はキカイダー並みに不完全なものだったので、元々シャドウの忠実なロボットとして作られたビジンダーは、ザダムの命令を受けるとたちまち回路の中で葛藤が生じ、悶え苦しみながらも自ら手術台の上に戻ってしまう。

ザダム「それで良い、ビジンダー、それでこそシャドウで生まれた悪の戦士……」
ザダム、すっかり安心して手術を行おうとするが、
ビジンダー「たーっ!!」 その不意をついて、いきなりビジンダーが両足を跳ね上げ、大股開きになりながらザダムの二つの頭に痛撃を加える。
……
これがビジンダーではなく、志穂美さん演じるマリだったら、特撮史上に残る国宝級のカットになっていたであろうに……
せめて女性スーツアクターならまだ使い道があったのだが、どう見ても入ってるのはおっさんだし、二枚目の画像では、スーツの下に着用している短パンっぽいパンツまで透けて見えていて、幻滅も甚だしいものがある。
ビジンダー「ザダム、私はもうシャドウではない、お前たちの仲間になんかなるもんか」
ビジンダー、シャドウマンたちを叩きのめすと、早くもシャドウへの決別宣言をして、

背後の壁に体当たりして突き破り、脱走するのだが、その時の効果音が
ペリッと言うような、実際の素材から直接出たような情けないものだったのが、かなりの減点です。
ザダムには一目置いているビッグシャドウだが、今度ばかりはお冠で、

ビッグシャドウ「ザダム、ビジンダーに逃げられた痛手は大きいぞ」
ザダム「申し訳ありません、しかし、ビッグシャドウ様、私は次の万年筆インクによる大量殺人計画を用意してあります」
ビッグシャドウ「おお、さすがだな、早手回しだな……早速見せてもらおうか」
ザダム「はっ」
叱責するも、ザダムの返答にあっさり機嫌を直すビッグシャドウであったが、
ビッグシャドウ(いや、ビジンダーと関係ないじゃん!!) 肝心なことに気付いて、思わず心の中でツッコミを入れたと言う。
それはともかく、ザダムは意気揚々と作戦のプレゼンを行うが、それは、一見、普通のインクと全く同じに見えるが、

実際に万年筆に入れて紙に書いた途端、爆発して書いた人間を消滅させてしまうという、恐るべき性質を持つ液体爆弾であった。
なんで字を書くと爆発するのかについての説明がないのが残念だが、紙と接触することで化学反応が起きるとか、摩擦によって引火する、みたいなことであろうか。
ビッグシャドウ「なかなか良い出来だ」
ザダム「このインク爆弾はニトログリセリン以上の威力を持っております!!」
ビッグシャドウ「このインク爆弾を日本中の文房具屋にばら撒けば、小学生・中学生が何万人も死ぬというわけか」
ザダム「インク爆弾を体内で作ったインクスミイカを褒めてやってくださいませ」
しかし、小中学生がターゲットらしいが、万年筆って、普通は大人が使うもんじゃないのかなぁ?
かくいう管理人も、中学に入学した時に万年筆を貰った記憶があるが、ほとんど使うことなかったけどなぁ。
ま、少なくとも今より万年筆の使用率が高かったことは間違いないだろうが……
ともあれ、作戦は開始され、シャドウはパイラーインキ株式会社の配送トラックを爆破し、代わりにインク爆弾を積んだトラックを走らせて文房具屋などに卸していく。
それに続いて、

文房具屋からインクを買って出て行く子供たちの姿が映し出されるのだが、うーむ、やっぱり違和感があるなぁ。
だって、子供が筆記用具を使うとすれば、まず宿題だろうが、見たことあります? 宿題を万年筆でやる子供って……
だいたい、万年筆じゃ、書き間違えたらめちゃくちゃ面倒なことになるではないか。
あ、ただ、この季節に限って言えば、年賀状を書くというピッタリの仕事があるけどね。

それはともかく、作戦は着々と進み、

塾で子供たちがそのインク入りの万年筆を使うとたちまち爆発が起き、

先生もろとも全員消滅してしまう。
さっきも言ったけど、塾の勉強を万年筆でやる子供って、さすがにいないと思う。
あと、人間の姿だけが跡形もなくなる爆弾って、物理的に不可能だろう。
それだけの威力なら、机や椅子も壊れてないと変だし……
それはともかく、他にも家で万年筆を使った子供たちが次々と消滅するというゴアな展開となる。
イチローは逸早くシャドウの陰謀を知ると、文房具屋を回ってすべてのインクを回収し、街から離れた空き地に運ぶと、

全部積み上げた上で火をつけ、まとめて処分してしまう。
……にしても、某パイロット的な会社を連想させる「パイラーインキ」、今なら絶対ありえないネーミングだよね。
昔がおおらかだったと言うべきか、今が神経質過ぎると言うべきか……
一方、ひとりの男の子が年上の子供たちから万年筆を取り上げられようとしているのを、たまたま通り掛かったミサオが助けに入り、万年筆を取り返してやる。

このシーンのミサオが、妙に綺麗に見える。
子供が万年筆を胸ポケットにしまうのを見て、腰を屈め、
ミサオ「よっぽど大切なものなのね」
男の子「父ちゃんの」
ミサオ「父ちゃんの? あんたかっぱらったんじゃないの?」
ミサオ、自分のことと引き比べてそんな失礼な疑いをかけるが、
男の子「死んじゃったんだ、父ちゃん、去年、交通事故で」
ミサオ「そう……」
その後、さっきの子供たちが、偶然、インクスミイカが爆弾インクを運び出そうとしているのを見てしまい、インクスミイカに殺されそうになるが、

そのインクスミイカと言うのが、そのまま、ゆるキャラが務まりそうなくらいキュートな造型をしているのだった。
なんか、前に見たような気もするが……
例によってイチローがあらわれ、子供たちを逃がしてインクスミイカと戦うが、途中、またしてもハカイダーが邪魔に入る。
ハカイダー「ふふふふ、今度こそ終わりだな、01、この貴重なインク爆弾を横取りされてはかなわんからな」
2対1の戦いとなるが、そこへビジンダーが駆けつけ、01に加勢する。
ハカイダー「ビジンダー、01をやれ」
だが、ハカイダーに命じられると、不完全な良心回路が機能停止し、

かつてのジローのように、01に向かって襲い掛かると言う事態となる。
ま、元々ビジンダーは01抹殺のために作られたロボットなので、こうするのが本来の役目なのだが。
それでも01はビジンダーを殴り飛ばし、何とか危地を脱するのだった。
CM後、ハカイダーを見失ったイチローは、さっきの場所で再びビジンダーと会う。
イチロー「ビジンダー、だいじょぶか」
ビジンダー「やっぱり私は中途半端なロボットなんです」
イチロー「いや、そんなことはない、ただ君は、心の隙を衝かれただけなんだ。シャドウに負けまいとする心構えさえしっかり持っていれば、もうあんなことは二度とはないんだ。ビジンダー、君はもう立派にシャドウを抜け出したんだ。自信を持ちたまえ」
イチローは優しくビジンダーを慰め、励ますが、あんなことがあったばかりなのでビジンダーは確信を持てないままイチローの前から走り去る。
イチロー、ふと思い出したように爆弾インクが詰まれたままのトラックに乗り込み、もう一度あの空き地へ行き、トラックごと爆破する。

インクスミイカ「01め、だが、これだけでも手元に残ったことは不幸中の幸いだ」
だが、今度は処置が甘く、まだ焼け残っているインクがだいぶあった。

つーか、フツーに可愛いんですけど……
インクスミイカ「これだけあれば、7000人の子供たちを殺すことが出来る」
インクスミイカは、文房具屋のオヤジに化けると、残ったインクを掻き集め、しつこく爆弾インクを配布しようと企む。
一方、ミサオはその街を離れるというので、あの仲良くなった男の子と別れを惜しんでいた。
ミサオ「元気出せよな、私、これから何処にいても僕に手紙出すからさ」
男の子「手紙、ほんとー?」
いささか都合が良過ぎるが、ミサオはしょんぼりしている男の子の頭に手をやり、およそミサオらしくない言葉を口にする。
そして、男の子から借りた万年筆で、相手の住所をメモに書き止めようとする。

ミサオ「えっとー、僕んちは?」
男の子「杉並区」
ミサオ「杉並区……あら、インクないじゃない」
が、インクが切れていたので、ミサオがわざわざ文房具屋まで行ってインクを買ってくることになるのだが、見ていて非常にまどろっこしい。
だいたい、メモを常備しているということは、筆記用具もあわせて持ってないとおかしいわけで、それを、男の子から万年筆を借りてインクを入れて書くなんて、いかにもありえない話である。
無論、ミサオが行った文房具屋と言うのが、不屈のアキンド魂で爆弾インクを売っていたインクスミイカの化けたオヤジだったのだが、ここは、最初から万年筆の中に爆弾インクが入っていたことにしておいたほうが話がスムーズに運んで良かったと思う。
で、急いでさっきの場所に戻ったミサオ、爆弾インクを入れ、今度こそ住所を書こうとするが、それを邪魔するように赤い薔薇の花が飛んできてメモの上に落ちる。

マリ「たーっ!!」
ついで、豪快にパンツ丸出しにしながら一回転して飛び込んできたのが、

それこそ薔薇のようなほっぺたをしたマリであった。
いやぁ、この健康的なエクボがめっちゃ可愛い!!
ミサオ「あ、マリさん、生きてたのね。良かったわー」
男の子「僕が住所書くよ」
いつまで経っても話が進まないので、男の子が横から万年筆を取って自分で書こうとするが、マリはいきなりそれを掴むと目の前に池に投げ捨てる。
彼らを爆発から守るためであったが、別に捨てる必要はなく、一言口で説明すれば誤解されることもなかっただろうが、この辺はやはりまだ人間社会に馴染んでいないマリの生硬さがあらわれている。
ただ、その万年筆が、水中で爆発してしまうのは変ではないか?
紙に書かない限り、爆発はしない筈なのに……
ともあれ、何も知らないミサオは思わずマリの顔を引っ叩き、

ミサオ「あんた、なんてことすんのよー、今の万年筆はね、この子の死んだ父さんの形見だったのよ」
マリ「でも、あの万年筆は……」
ミサオ「言い訳なんかすんじゃないよ、まず謝ったらどう? あんた、済まなそうな顔もしてないじゃないか、あんたの子供の頃を考えてみなよ、この子の年で、死んだ父さんの形見がどんなに大切なものか、分からない訳ないだろう」
ミサオに厳しく叱責されて、漸くマリも自分のしでかしたことに気付いたように、
マリ「ごめんなさい、私には、私には、子供時代も親も初めからないんです、だから、だから……」
しどろもどろに言い訳をしつつ、いたたまれなくなったようにその場から駆け去る。
ミサオ「あっ、マリさん、人造人間だったんだっけ? 悪いこと言っちゃったわ」
ミサオも、ついカッとなってマリの心を傷付けてしまったことを悔やむ。
一方、インクスミイカの商魂逞しさもイチローには通じず、あっさり正体を見破られてトンズラする。
ただ、どうやってイチローがそこで爆弾インクを売っていることを突き止めたのか、何の説明もないのは物足りない。
文房具屋なんて、たくさんあるんだからね。
同じ頃、この寒い中、マリはさっきの池にブーツのまま足を踏み入れ、あの万年筆を捜していた。
その後、ミサオがバスの停留所で男の子と別れの挨拶を交わしていると、そこへ万年筆を手にしたマリがやってくる。
ミサオ「マリさん、どうしたの、一体」
マリ「……」
マリは無言で、あの万年筆を男の子に差し出す。
ミサオ「あ、バラバラになった万年筆を接着剤でくっつけたのね、マリさんあんた……」
マリ「ケンジ君、ごめんね、一生懸命探したんだけど、カケラがひとつ見付からなくて」
ミサオ(えっ、ケンジって名前だったの?) 初めて知る事実に内心びっくりするミサオであったが、嘘である。
嘘であるが、管理人がそう思ったのは事実である。
あと、ミサオも本人もその名を口にしてないのに、なんでマリが知ってんだろう?
ミサオ「あんた、川ん中に入ってまで、私さっき言い過ぎたわ、ごめん」
マリ「いいんです。私、当然のことをしたまでですから」
ミサオ「ごめんなさいっ」
ミサオ、申し訳なさのあまり涙ぐんで謝る。
と、ここでやっとマリの所在を知ったビッグシャドウが、腹いせに激痛回路のスイッチをオンにする。
たちまち、文字通り体を焼かれるような痛みに襲われ、立っていることさえ困難になるマリ。

ミサオ「マリさん」
マリ「ボタンを、ボタンを外して」
ミサオ「待ってて、すぐ楽にしてあげるから」
マリに乞われるまま、ブラウスのボタンを外そうとするミサオであったが、内心では
「ボタンくらい自分で外せ!!」と思っていたのではあるまいか。
だが、第三ボタンが外される直前にあらわれて邪魔をしたのは、敵であるインクスミイカであった。
と言うことは、イカは第三ボタンのことを知らされていなかったのだろう。
組織内での情報共有の大切さがよく分かるシーンである。
もっとも、ビッグシャドウが本気で核爆弾を起爆させようと思っていたのかどうかは分からない。

(なんだ、この画像は?)
胸の苦しみに耐えながらインクスミイカと戦うマリであったが、インクスミイカに殴り倒された際、

強烈にエロいパンチラが炸裂する!!
見せパンとは分かっていても、これだけ景気よく見せてくれると、これはこれで十分価値がある映像となっている。
さて、ここまで来ればもう詳しく書く必要もないだろう。
01がインクスミイカを撃破し、事件は解決するのだった。
以上、面白いといえば面白いのだが、爆弾インク作戦にしても、ミサオとケンジの交流にしても、描き方が中途半端で食い足りず、結果的にどっちつかずの作品になっているのが惜しい一本であった。
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