第8話「野球少年の秘密」(1984年3月2日)
冒頭、NASAの打ち上げた「アリゾナ」と言うスペースシャトルが無事帰還し、船外活動でゲットした「宇宙の塵」が世界じゅうの科学者によって分析されることになり、日本では、宇宙生物学の第一人者・滝口博士がその任に当たることがテレビニュースで報じられているのを、葉山家のリビングで健たちが見ている。
……
さらっと聞き流してしまったが、
「宇宙生物学」ってナニ?
それはともかく、「宇宙の塵」の一部が日本の宇宙生物研究所と言う、これまた怪しげな研究施設に運び込まれる。
地球外生命体の存在さえ確認されていないのに、その研究をどうやってするんだって感じである。
だが、滝口の研究室には、すでにテンタクルの戦闘アンドロイド・バット男が立っていた。

バット男「宇宙の塵の秘密を教えてもらおうか」
滝口「それは出来ない」
バット男「貧乏なあんたを援助し、世界一の宇宙生物学者にしたのは誰でもない、我々テンタクルだ」
恩着せがましく言うバット男であったが、世界一もクソも、他にそんな酔狂なこと研究してる奴はいないと思うのだが……
それはそれとして、テンタクルが日頃から様々な分野の研究者に金銭的援助を行い、自分たちの協力者に仕立て上げているのは、長期的視野に立った、なかなか優れた戦略だと言わざるを得ない。
と、突然窓ガラスが割れて、野球のボールが飛び込んでくる。
それは博士の息子・英明(漢字は適当)の投げたものだった。
バット男は一瞬で人間の姿に変わり、

男「はい、坊や」
英明「どうもありがとう」
にこやかにボールを渡してやる。
バット男の人間態を演じるのは、説明不要の潮さん。
サブタイトル表示後、勝たちは副都心の近くのグラウンドで野球をしていたが、そこへ英明がやってきて、自分も仲間に入れてくれと頼むが、

三郎「駄目だ、お前、ヘタクソだからなぁ」
英明「……」
と言う、
身も蓋もない理由で断られる。
げにも子供と言うのは残酷である。
まぁ、そこにいる子供だって、全員が全員上手い訳じゃないと思うが、英明の場合、あまりに下手過ぎて試合がぶっ壊れてしまうと言うことで敬遠されているのだろう。
と、グラウンドの脇の路上にKがいて、イーゼルを立てて絵を描いていた。
K「どうも上手く描けん、は、は、はっくしょん!!」
オウム「風が冷たいからだ」
K「そうじゃない、子供たちの声が耳障りで気が散る」
じゃあ、そんなとこで描くなよ……
健「おい、仲間はずれか」
一方、とぼとぼ帰ろうとしていた英明を健が見付け、声を掛ける。
英明「……」
健「よし、俺が頼んでやるよ」
英明「ほんとーっ?」
心優しい健は、英明を連れて勝のところへ行き、口添えしてやる。

健「勝君、仲間に入れてやってくれよ」
勝「お前、ヘタクソだからなー、うーん、だけど、球拾いならいいや」
健「どうする?」
英明「うん、やるよ」
よほど野球がやりたかったのたか、英明は元気に答えて外野に向かって走り出す。
しかし、どう見ても英明の方が年上なのに、勝が「お前」呼ばわりするのはちょっと違和感あり。
と、勝の打ったボールがフェンスを越えてKの頭を直撃する。
それを拾ってKに渡したのが、バット男の人間態であった。
男「滝口博士が研究している宇宙の塵は生きており、驚くべき能力を持っているようです」
K「なに? よし、すぐ手に入れろ」
そこへ英明がやってきて、
英明「おじさん、ボール返してよ」
K「……」
英明「どうもありがとう」
Kは無言でボールを投げ返してやると、英明は礼を言って走り去る。

男「滝口博士の一人息子です、あの子を誘拐して奴から外宇宙の塵を……」
K「待て待て、手荒な直接行動は私の好みではない。今、面白いことを考えた」
死神博士と地獄大使のツーショットと言う、特撮ファン的には鼻血モノのシーンが実現する。
お二人が楽屋でどんな話をされていたかと想像するだけでワクワクしてしまう。
また、暴力的な手段に訴えようとするバット男と、人間の弱い心につけこもうとするKとの違いが、そのまま地獄大使と死神博士のキャラクターに照応しているように見えるのも面白い。
ちなみに、先日、潮さんも出ている「10号誕生!仮面ライダー全員集合!!」のレビューを書いたのだが、とてもこの番組と同時期に作られたとは思えない芸のなさ&野暮ったさであった。
言い換えれば、それだけ「マシンマン」が先進的&ハイセンスな番組だと言うことである。
その夜、スポーツ用品店のショーウィンドウを物欲しげに見ていた英明の肩をバット男が親しげに叩く。

男「滝口英明君だね、お父さんからのプレゼントだよ」
英明「ほんとーっ?」
男「このグローブを使うと、君は日本一のピッチャーになれる」
英明「嘘だー、僕、野球下手だもん」
男「ふっはっはっはっ、ただし、ちょっと使い方がある、それを君に教えよう」
翌日、そのグローブを手にした英明がマウンドに立ち、勝と勝負をしようとしている。
勝「お前の球なんか一発でホームランだ」
自信満々の勝だったが、英明のボールを連続で空振りする。
たまたまその場に健と真紀がいた。

真紀「ちょっとちょっと、あのピッチャー、すっごい球投げるんじゃない?」
健「うん」
真紀「いっちょ頂き!!」
指を鳴らしてカメラを構える真紀だったが、そこへ配達中の亀太が通りがかり、
亀太「ああ、真紀さん、真紀さん、俺撮ってよ」
真紀「あ、亀ちゃん、いいわよ」
と、にこやかに亀太にファインダーを向けるのが、なんか妙に引っ掛かると言うか……
普通は「今それどころじゃないのっ!!」とか返しそうなものだが。
それはそれとして、亀太、続いて健が打席に立つが、二人ともボールにかすりもしない。
健「うん?」
英明「なんだい、そのザマは、俺の球が打てるもんか」
グローブの力で名ピッチャーになったというのに、たちまち態度がでかくなり、恩人と言うべき健に対しても傲慢な台詞を吐く、意外と性格の悪い英明だった。
アイビー星人である自分でさえ打てないことに不審を抱いた健は、その後、人気のないところに行き、

ボールボーイ「おかしいと思わないか」
健「うん、ボールにスピードも切れもない、ところがバットを振った瞬間に急に変化するんだ……これは裏に何かあるな」
考えたら、今回は、天本さんに潮さん、そして曽我さんが共演してる訳で、これほど豪華な「悪」の共演は、ちょっと他では見られないよね。
まあ、三人一緒にアフレコしていたのかどうかは知らないが……
一方、滝口のところに数人の男たちが押しかけ、

滝口「なんですか、あなたたちは」
男「リトル新宿ジャガースの監督です、お宅の息子さんを是非うちのチームに」
滝口「しかし、英明は野球は下手ですよ」
男「いやいや、とんでもない、凄い球を投げるんです」
そう、リトルリーグの監督たちが何処からか英明のミラクルボールの噂を聞きつけ、早くも熾烈な争奪戦を開始していたのだ。
何がなんだか分からず、混乱した滝口は、逃げるようにその場から立ち去る。
その滝口の前に再びバット男があらわれる。
バット男「超天才野球少年を(息子に)持った感想はどうかね?」
滝口「テンタクルの仕業なのか」
バット男「俺がリトルリーグの関係者にあんたの息子のことを吹聴して歩いたのだ。宇宙の塵を渡せば息子から手を引いてやる」
滝口「断る、お断りだ」
断固として拒否する滝口だったが、その後、バット男に脅されて「宇宙の塵」の秘密を明かしたようである。

K「やはりそうだったか、外宇宙の塵には鉄をはじめ、セメント、水分等、ビルを作るあらゆる材質が含まれていた。なんとしても手に入れなければ……外宇宙の塵は空気に触れると成長し、ひとりでにビルを建てる能力を持っているのだ」
オウム「まさかそんなことがある筈ないではないか」
K「黙れ、お喋りなオウムめ、広大無限な宇宙には何が存在するか分からんのだ。宇宙の塵をまくだけでビルが建つ」
Kは、その場にいたモンスに視線を向け、
K「お前はことあるたびに世界の征服を主張しておったな?
お前はショッカーの首領かっ!!」
モンス「力による世界征服だ」
K「外宇宙の塵を手に入れれば、世界征服などいとたやすい」
と言うのだが、
なんで? 宇宙の塵が、ビルや金属を溶かしてしまうとかならまだ分かるのだが、ひとりでにビルが建つ物質を使って、一体どうやって世界を征服できると言うのか?
そもそも、そのような、人工的に作り出されたとしか思えない塵が何故宇宙に浮遊していたのか?
それはともかく、英明は実力もないのにリトル新宿ジャガースへの入団を決意する。
その部屋に両親が入ってきて、

滝口「英明、聞きなさい、お前が急に野球が上手くなったのはお前の力じゃないんだよ」
英明「うるせえなぁ、二人とも出てけよ!!」
滝口は息子の目を覚まさせようとするが、ヘタクソ過ぎて仲間にさえ入れてもらえなかった英明にすれば、スターダムにのし上がる千載一遇のチャンスと言うことで、全く耳を貸そうとせず、金属バットを振り回して追い払う。
当時は、実際に金属バットによる家庭内暴力殺人が起きていたから、割とシャレにならないシーンである。
深夜、健はマシンマンとなって英明の部屋に忍び込み、野球道具一式を盗み出す。
そしてスペースコロニーに持ち帰って調べると、

健「この布には、金属をはじく特殊な液体がしみこませてあるんだ」
ボールボーイ「なんだってえ」
健「その液体をボールに塗って投げると、金属のバットをはじいてスーッと逃げてしまう。だから誰が打ってもボールは当たらない」
グローブの真ん中が布になっており、そこに浸み込ませた液体をボールに塗ることで、ボールがバットをよけ、結果、ミラクルボールと呼ばれるありえない軌道を描くことが判明する。
次のシーンでは、早くも、東都少年野球リーグの決勝戦の試合が行われている。
英明が入団したリトル新宿ジャガースは、ミラクルボールのお陰もあって順調に勝ち進み、前年度の優勝チーム・ファイターズと決勝戦でぶつかることになったのである。
実況「剛球投手・鈴木、また、最近リトルリーグ界に忽然とあらわれたミラクル投手・滝口英明、この二人を擁するリトル新宿ジャガースが勝つか、それとも3割バッターをずらり5人も揃え、チーム打率4割7分5厘を誇るファイターズが勝つか……」
前にも書いたけど、チーム打率よりクリンナップの打率の方が低いって、おかしいだろ。
この場合は、「5割バッターをずらり5人も揃え、チーム打率3割7分5厘を誇る~」が妥当かと。

真紀「ほらっ、編集長、あそこ!!」
観客席には健や真紀、勝たちは勿論、珍しく編集長の姿もあった。
もっとも、英明はあくまでリリーフであり、

新宿ジャガースの先発は、速球が売りの鈴木投手であった。
私ごとで恐縮だが、以前書いた同話のレビューに、この鈴木投手を演じたご本人からコメントを頂いたことがあるのだ。
当時、実際に新宿リトルリーグに在籍しておられた方で、チームとして撮影協力されたそうである。
ちなみに、その時のお礼はボール10ダース分だったそうである。
また、健が英明のバットやボールを調べるシーンがあるが、それはその方の私物だったらしい。
貴重な情報を教えていただいたことに、この場を借りて改めて感謝いたします。
2回裏、リトル新宿が先取点を上げるが、

それを喜ぶ真紀タンの表情が可愛過ぎるのである!!
試合はマッハの速度で進み、3対2で迎えた6回表、鈴木投手が打ち込まれて無死満塁のピンチとなり、いよいよ英明の出番となる。
健は、そっと観客席を離れ、選手の控え室を見に行く。

果たして、英明は、スポーツバッグからシャンプーの容器のようなものに入れた液体を、グローブの布の部分にスプレーしていた。
なお、さきほどの方によると、英明と交替する際に「まかせたぞ」と台詞を言われたらしいが、本編には使われなかったようである。
それはともかく、英明のミラクルボールは絶好調で、二者連続三振を取る。
スタンドには滝口の姿もあったが、その横にあの男が座り、

男「ふっはっはっはっ、お笑いだよ、何がミラクルボールだ、みんな騙されているが、坊やのグローブにちょいとばかり仕掛けがしてあるのさ」
滝口「なんだって」
男「大声でばらしてやろうか、そうすりゃあんたの坊やは得意の絶頂から一気に地獄に落ちる。面白い見物だ」
滝口「やめてくれ」
男「外宇宙からの塵を渡すんだ」
強情な滝口も遂に折れて、二人一緒にスタンドを出て行く。
健は彼らの尾行をボールボーイに頼むと、再び控え室に行き、例の液体を捨てて、代わりに普通の水を入れておく。
英明は三人目も三振に仕留め、試合は3対2のまま7回表となる。
登板の前に、英明はグローブにもう一度液体を補給するが、それはただの水なので、ボールには何の変化もなく、英明の棒球は今までのことが嘘のようにボコスカ打たれる。
たちまちノーアウト満塁となり、切羽詰った英明は、タイムを取ってもう一度液体を補給しに行く。
マシンマンの声「そんなことをしても無駄さっ!! それはただの水だよ、君は悪魔に魂を売り、とんでもない間違いをしていたんだ。君はスポーツ精神を踏み躙った、汚い手で泥まみれにしてしまった。分かるだろう?」
と、何処からか、マシンマンの声が聞こえてきて、厳しい言葉で英明の行為を糾弾する。
英明「うるさい、俺はリトル新宿のエースになるんだっ!!」
英明はそう叫び返して部屋から飛び出そうとするが、ドアを開けるとマシンマンが立っていて、すかさずその胸にMマークを刻んで気絶させる。
今回は教育上、英明に己の非を認めさせて、自分の力で立ち直させるべきだったと思うが、

面倒臭かったのか、いつものようにカタルシスウェーブでその良心を目覚めさせる。

マシンマン「英明君、君も男だ、こうなったら自分の力で投げるんだ、自分の持っている力を全部出し、それで負けたら仕方ない。自分の力で栄光を勝ち取るんだ」
英明は覚悟を決めてマウンドに戻り、実力で投げ抜こうとする。

真紀「頑張れーっ!!」
健「英明くーんっ!!」
観客席の真紀たちは惜しみない声援を送り、健も戻ってきて応援に加わる。
それにしても、同じ口メガホンなのに、女性と男性でどうしてこんなに違うのだろう?
さて、あのグローブに頼ってろくに練習もしてこなかっであろう英明のヘナチョコボールが、真面目に練習して来た選手たちに通用する筈がないのだが、ここで英明がメタクソに打たれてしまっては後味が悪いので、相手チームの早打ちにも助けられ、簡単にツーアウトを取る。
そして、最後のバッターに大飛球を打たれるが、これも外野のファインプレーに助けられ、奇跡的に0点で押さえるのだった。

ここで真紀が見せる笑顔がまた可愛くて……
健(やった、自分の力で投げ抜いたんだ)
ただひとり、グローブの秘密を知っている健は、我がことのように喜ぶ。
一方、球場から離れた歩道橋で、滝口はケースに入った「宇宙の塵」をあの男に引き渡そうとしていたが、それをボールボーイが邪魔する。
ボールボーイ「そんな奴に渡すことはないぜ、あんたの息子は自分の力で投げ抜いて勝ったぜ」
滝口「ほんとかっ」
喜ぶ滝口であったが、6回はインチキで押さえたし、今まで英明が不正を働いてきたのは事実なので、それで罪が帳消しになる訳じゃないのだが、この際、忘れることにしよう。
この後、マシンマンがバット男を倒して事件解決。
戦いのあと、滝口も自己批判し、テンタクルとは手を切るとマシンマンに宣言する。
ま、これも、それくらいで許してくれるほどテンタクルは甘くないと思うのだが、これも忘れることにする。
何故なら、そんなこと、どうでもいいからである!!
ラスト、心を入れ替えてジョギングに励んでいる英明の姿を見掛けて、微笑ましい気持ちになる健であった。
しかし、「宇宙の塵」は滝口だけが分析したものではなく、世界各国の研究機関で調べられているのだから、どっちにしろ世界じゅうの知るところとなっただろう。
それが悪用されたのか、善用されたのかは不明だが、なんとなくすっきりしない結末であった。
なので、無理に世界規模の話にせず、日本が人工衛星とかで単独で手に入れた塵ってことにしといたほうが、分かりやすかったかもしれない。
その場合は、最後に「この塵は悪用されるおそれがあるから廃棄します」みたいなことを滝口に言わせることができるからね。
以上、己の野望のために野球少年を惑わせるKの卑劣さと、闇落ちした少年をあたかも学園ドラマの教師のように立ち直らせるマシンマンの姿を爽やかに描いた佳作であった。
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