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「西部警察」 第38話「遥かなる故郷」 後編



 続きです。

 翌日、秋谷よしえの過去について調べたリュウから報告を受けている大門。

 リュウによれば、よしえは元々普通のOLだったのが、5年前の事件後、急にヘロイン中毒になって会社を辞めたらしい。

 
 大門「ペーを打つようになったきっかけは?」
 リュウ「それが、星野とか星島とか言う男と付き合ってたのが原因らしいんですが……」
 二宮「その男の名前、はっきりせんのかね」
 リュウ「それが5年も前のことですから……」

 二宮はもどかしがるが、それこそ5年前のことについて、たぶん、当時の同僚や友人から聞き出したのだろうが、深夜から翌日にかけての僅かな時間で、そんなことまで調べられるだろうか?

 むしろ、そこまで調べ上げたことのほうが驚異である。

 もっと驚異的なのが、

 
 谷「ありました、ヘロインの売人リストの中に星島武夫、この男です」

 その男の身元があっさり判明してしまうことである!!

 谷の持ってきた前科者カード(?)を見ながら、

 
 大門(現実の捜査もこんなに簡単だったら、苦労はないよなぁ……)

 ドラマとは言え、そのあまりの安直さに、内心忸怩たるものを覚える大門であったが、嘘である。

 嘘であるが、真面目な渡さん、たまに似たようなことを思っていられたのではあるまいか。

 谷「これは前川信次が12時ごろのアリバイが証明出来ないのを知ってて、星島が前川に罪をなすりつけたんじゃないかと思いますが……」

 と、谷は言うのだが、前川に「アリバイが証明出来ない」ことが、なんで星島に前以て分かったのだろう?

 現に、スナックにはよしえがいた訳だし、他にも客がいたら、しっかりアリバイが証明出来ていたかもしれないではないか。

 たとえば、その時間帯に、星野が前川を人気のない場所に呼び寄せておいた……とかなら分かるんだけどね。

 二宮「そうなのかね、大門君」
 大門「その可能性は十分ありますね……問題は、星島が偶然スナックにいたよしえと、どうやって知り合ったかです」

 大門はそう言うと、事件のデータが記された黒板の前に行く。

 
 リュウ「星島が犯行後、スナックに様子を見に行き、そのとき、出て来る秋谷よしえを見たんじゃないですかね」
 谷「うーん、犯行現場からスナックまでが10分、すると、犯人逃走時刻が12時20分、秋谷よしえが店を出た時間が12時30分、時間ピッタリ合いますね」
 二宮「アリバイが立証できないと思っていた前川に偶然の証人がいたことを知って星島は強引にヘロインを使って秋谷よしえに接近した、そう言うことかね」
 大門「まず間違いないと思いますね」

 断言しちゃったよ!!

 せめて、「いえ、あくまで憶測に過ぎません」くらいのことは言って欲しい。

 だいたい、よしえが口封じのために殺されたかどうかも分からないのだから。

 それに5年もの間、星野がよしえを殺さずに生かしておいたというのも不自然である。

 千恵の新聞広告がなくても、よしえが自発的に警察に名乗り出る可能性だってゼロじゃなかったのだから、子供でも殺す星野のこと、とっくの昔によしえを始末しているのが普通だろう。

 それはともかく、現時点では何の証拠もないのだが、

 大門「大至急、星島を、強盗殺人で手配」
 谷「分かりました」

 手配しちゃったよ!!

 せめて「重要参考人として手配」くらいにして欲しかったな、あたい……

 つーかさぁ、よくよく考えたら、よしえにヘロインを売っていたのが星島だったからって、星島が5年前の真犯人で、なおかつよしえ殺しの犯人だと決め付けるのは、あまりに強引且つ単純過ぎる推理だよね。

 せめて、真犯人→星島→よしえ、と言うように、ワンクッション入れて欲しかった。

 つまり、真犯人は別にいて、よしえの口を封じるために、星野と言う売人に命じてよしえをヘロイン中毒にさせた……みたいなね。

 それに、星島のような男が、本名を名乗ってよしえに接近していたというのも信じがたい。

 ともあれ、繁華街にて、星島の行方を求めて懸命の聞き込みが行われるが、

 
 「サロン ヤング ホンコン」がめっちゃ気になる管理人であった。

 一体どんな店なのか、見当もつかんぞ。

 香港出身の若人たちが集まって談笑してるのかしら?

 そんな中、小暮のもとに本庁のお偉いさんが顔を出す。

 
 佐伯「小暮君、西部署管内で手荒な捜査をするのは、まあ、目をつぶるとしてだね

 つぶっちゃらめぇえええーっ!!

 何処の管轄だろうが、許したらあかんやろ。

 佐伯「他の署の管内まで捜査するのはやめたまえ」
 小暮「お言葉ですが、我々は西部署管内の事件を捜査してるつもりなんですがね」
 佐伯「そうじゃあるまい、東部署管内まで入り込んでるじゃないか」
 小暮「佐伯さん、何をおっしゃりたいんです。既に裁判も終わり、明日刑が執行される事件を掘り返しては困るとおっしゃりたいんですか」
 佐伯「そんなことは言っておらん、警察には警察の秩序があるといっとるんだ」
 小暮「人命よりも秩序のほうが大事だと本庁は考えてるんですか、もし前川信次が無実のまま処刑されたら一体誰が責任を取るんです?」

 無論、そんな命令に唯々諾々と従うような小暮っちではなく、あくまで捜査の継続を宣言するのだった。

 佐伯が忌々しそうに帰った後、

 
 小暮「死刑の執行は明朝10時、あと16時間だ」

 本庁の上層部しか知らないようなことを、平然と言ってのける小暮っち。

 いや、だから、どうやってそんなこと知ったのよ?

 まあ、何度も言うように、小暮っちは本庁を含めて色んな組織を渡り歩いてきたエリートなので、情報の仕入先には事欠かないだろうが、秘密保持の観点から言うと、ユルユルのガバガバもいいところである。

 それはともかく、源田は大門の命令で千恵のそばに張り付いていたが、大門と電話中、うっかり口を滑らせて、前川の処刑が明日の朝に予定されていることを千恵に知られてしまう。

 
 千恵「お兄ちゃんの刑が執行されるんですか?」
 源田「……」
 千恵「刑事さん!! はっきり言ってください、そうなんですね?」
 源田「……」

 唇をわななかせながら問い掛ける千恵に、源田はやむなく頷いて見せる。

 千恵は手にしていた器を落とすと、店の奥に向かって走り出す。

 源田「おい、待て、千恵さん!!」

 その直後、店の裏で銃声が響き、源田が急いで飛び出すと、千恵が地面にうつ伏せに倒れていた。

 車の陰にいた男に気付いた源田だったが、逆に腕を撃たれ、その場にもんどりうつ。

 犯人は彼らが血眼になって探している星島であった。

 ……

 星島が危険を犯してまで、なんでこのタイミングで千恵を殺そうとしたのか、謎である。

 既に唯一の生き証人をあの世に送ったのだから、今更千恵を殺す必要はあるまい。

 病院に運ばれた千恵は一命を取り留めるが、かなりの重傷であった。

 
 谷「彼女が狙われたのもやはり口封じでしょうか……彼女は他に何か知ってるんでしょうかね」
 大門「その可能性はありますね。全力を挙げて追ってください、今夜中にパクるように」

 冷静に考えたら、めちゃくちゃな命令を出す大門。

 そんな簡単に犯人を捕まえられたら世話はないっつーの。

 その後、漸く意識を取り戻した千恵に、源田が話しかける。

 
 源田「千恵さん、ようく聞いてくれ、あんたは何か重要な手掛かりを知ってる。それを思い出してくれ」
 千恵「もう全部話した」
 源田「聞くんだよ、星島武夫って言う名前に心当たりあるか、思い出してくれ。そいつが真犯人なんだよ」
 千恵「知らない」
 源田「しっかり考えるんだよ!!」

 麻酔のせいか、それとも既に諦めたのか、源田の必死の問い掛けにも、千恵は蝋人形のような虚ろな表情で素っ気無く答えるだけ。

 大門「あんたを撃ったのは星島だ、なんか思い当たることはないか?」
 千恵「……」
 源田「どうしたんだ?」
 千恵「星島? 確かお兄ちゃんのお友達……」

 それでも、大門に重ねて問われると、漸くそれだけ思い出す。

 大門と源田は即座に前川の収監されている拘置所へ車を飛ばす。

 これまた、深夜1時過ぎ、しかも死刑執行直前の囚人に、一介の刑事の面会が許される筈はないのだが、

 
 それが許されちゃうんである!!

 何故ならそう言う番組だからである!!

 ま、一応こちらでフォローしておくと、多分、映像では省略されているが、小暮っちがあらかじめ然るべきところに電話を放り込んで、二人が面会できるよう便宜を図ってもらったのだろう。

 憔悴した様子で二人の前に座った前川に、源田が単刀直入に尋ねる。

 源田「前川、星島って男を知ってるな」
 前川「……」
 源田「答えろ、まだ諦めるんじゃない」
 大門「前川、妹さんのことを考えろ。この5年間、妹さんはな、お前を助けるためにあらゆることをやったんだ」
 源田「お前はとんだバカヤロウだ、人の罪をしょって死刑になろうってんだからな」
 前川「嘘だ」
 源田「嘘じゃねえ、いいか、助かりたかったら、星島のことを喋るんだ」

 源田が粘り強く説得すると、やっと前川は、自分が銃を買った相手だと打ち明ける。

 前川「サツには喋らないって約束で買ったんだよ」
 源田「このバカヤロウが、星島はな、お前からそのハジキを盗んで強盗殺人をやったんだ。お前にアリバイがないのを知って、その罪をまんまとお前に擦り付けた」

 と、源田は言うのだが、その言い方だと、星島が犯行の後で、前川に罪を着せることを思いついたようにも聞こえる。

 しかし、源田が呆れたように、死刑にされるかも知れないと言うのに、前川が今まで星島のことを一切口にしていなかった(註1)のは、どう考えてもアホのすることである。

 二人の関係がどうだったのか不明だが、ちょっと考えれば、星島にハメられたことぐらい分かりそうなものだろう。

 それはそれとして、前川の証言で、銃にだけ前川の指紋がついていた謎は解けたわけである。

 註1……東部署の調書に星島の名前がなかったことからも明らかである。

 前川から、星島が5年前、針生組の仙道と言う男からヘロインを買っていたことを知ると、大門は帰りの車から無線でリキたちに仙道の行方を探させる。

 
 アケミ「なにっ、あんたたち?」
 リュウ「仙道は?」
 リキ「何処行ったんだ?」

 ここで、谷たちが仙道のヤサに乗り込むのだが、ベッドで寝ていた仙道の女アケミ(仮名)が、ヤクザの情婦らしからぬおっとりした顔つきで、ちょっと可愛いと思いました。

 で、夜が明けてから、遂に雀荘にいた仙道を発見するのだが、

 
 リキ「星島のヤサは何処だ、お前」
 仙道「星島、誰だそりゃ」
 リュウ「徹夜マージャンやって頭ボケてるみたいですよ」
 リキ「おい、ちょっと目ぇ覚まさせてやるか」

 リキ、すっとぼける仙道の胸倉を掴んで立たせると、

 
 いきなりぶん殴る!!

 なんだかんだで、「西部警察」が人気だったのは、ドラマの中で刑事がヤクザやチンピラを視聴者の代わりに思いっきりぶん殴ってくれるからではあるまいか?

 まあ、他の刑事ドラマでも似たようなシーンはあるが、これだけ遠慮会釈なく殴るドラマは、これだけだろうからなぁ。

 
 谷「思い出したかね、お前さんがヤクを卸してた相手? ああっ?」

 それはそれとして、ヤクザをぶん殴る谷たちのほうがよっぽどヤクザ顔だったというのが、今回最大の笑いどころとなっております。

 で、めちゃくちゃ都合のいいことに、明日の朝9時、資材置き場で仙道が星野とヤクの取引をすることになっていたことが判明する。

 これも、あまりにお誂え向き過ぎて、ちょっと萎えるので、仙道を脅して星野をその場所に呼び出させる……と言うようにしたほうが良かったかな。

 9時、約束どおり車であらわれた星島をリュウたちが撃ちまくるが、

 
 大門「撃つな、逮捕するんだ!!」

 大門が部下に対し、当たり前といえば当たり前の訓示を与えるのが、かなりのツボである。

 要するに、今回のように特殊なケースじゃなかったら、撃ち殺してもオケと言ってるようなもんだからね。

 無論、大門軍団を相手に星島ひとりで勝てるはずがなく、激しいカーチェイスの末に取り押さえられる。

 死刑執行まで時間がないので、

 
 源田「5年前の強盗殺人、お前だろーっ?」
 星島「知らねえよ!!」
 源田「お前だろ」
 星島「知らん!!」

 その場で、源田による真心の篭った「取調べ」が行われる。

 
 しかも、源田が星島をボッコンボッコンにするのを、ジンたちはおろか、大門も一切止めようとせず、平然と見守っているという恐ろしさ。

 源田「お前だろう」
 星島「知らねえよ」
 源田(殴る)
 源田「お前だろう」
 ……

 と言う、永久機関のようなやりとりが続き、

 
 星島「俺がやったよ……俺がやった」

 このままでは殺されると思ったのか、とうとう星島が罪を認めるのだった。

 ……

 うん、これ、取調べじゃなくて拷問だねーっ!!by小峠

 本当なら、これだけで大門軍団全員クビだと思うし、自白だけでは死刑が中止になるとも思えなかったが、

 
 小暮「そう、前川信次の死刑執行は停止だ、正式の死刑執行停止命令書がすぐ届く」

 これがなっちゃうのである!!

 なにしろプロデューサーがそう言ってるんだから、誰がなんと言おうとなっちゃうのである!!

 二宮は、いそいそと病床の千恵のところへ行き、

 二宮「千恵さん、兄さん、助かったよ」

 
 千恵「……」

 
 千恵、言葉もなく目を閉じ、一筋の清い涙がその頬を伝う。

 感動的なシーンの筈なのだが、いまひとつ釈然としないのは何故かしら?

 考えたら、星島の犯行を裏付ける物証がゼロなんだよねえ。

 5年前の事件は勿論、よしえ殺しにしても、星島が彼女を殺したと言う確かな証拠は何も出て来ていないのだ。

 それなのに、完全な憶測だけで星島が犯人だと決め付けちゃうその杜撰極まりない捜査方法。

 でも、まあ、「西部警察」的には、最後に犯人さえ捕まえればノープレなので、大門たちはいつものように軽口を叩きながら現場を後にするのだった。

 以上、無実の罪の死刑囚を助けるために主人公たちが奔走するという、刑事ドラマでは定番のプロットだったが、これだけ頭を使わずにゴリラパワーだけで解決したケースは稀だろうと思われる、いい加減なストーリーであった。
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コメント

No title

>リキ、すっとぼける仙道の胸倉を掴んで立たせると、いきなりぶん殴る!!
翌年に「ルビーの指輪」が大ヒットですね!(^^)!

>無実の罪の死刑囚を助けるために主人公たちが奔走するという、刑事ドラマでは定番のプロットだったが
「特捜最前線」85話「死刑執行0秒前!」(脚本・長坂秀佳)1978.11.15放映 がお勧めです!

ご都合主義

あっさりと本物のターゲット(名前)が判明したり深く考えず断言したり強盗殺人で手配したりと凄い早さですね😅

ワクワクしますねぇ…。

久々の西部警察ですね。もう、読む前から蜂の巣になるくらいツッコミが有るのが分かりますから。(笑)本当、西部署に狙われて無事に?刑務所に行けたらラッキーですもんね。

本当に地獄が見えそう

あれ、これもしかして星島の事件当日の動向すら調べていない……?
どうすんだろうか、散々殴った後で「お、俺はあの日、新潟でイタリアンを食べていたんだ~~」とか言われたら

Re: No title

「特捜最前線」、見たいです。

Re: ご都合主義

1時間しかないですからねえ。

Re: ワクワクしますねぇ…。

そう言って頂くと嬉しいです。

気付いたら一年近く空いてしまいました。

Re: 本当に地獄が見えそう

> どうすんだろうか、散々殴った後で「お、俺はあの日、新潟でイタリアンを食べていたんだ~~」とか言われたら

笑えますね。

No title

昔のドラマってこまかくみるとそうか?っていう展開多いけどわりと強引に進めるけど面白かったりしますよね。

今のドラマは変に作り込みすぎてて人物描写が少なめって感じですかね。
いま強引に作っても粗探しする人が多いので難しいんでしょうけど

Re: No title

> 昔のドラマってこまかくみるとそうか?っていう展開多いけどわりと強引に進めるけど面白かったりしますよね。

それはありますね。昔はビデオ所有者も少ないので、繰り返し見られることは想定してないだろうし。

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