第162話「人斬りに惚れた女」(1974年10月26日)
読者の皆さん、こんばんは。
今日は「猫の日」なので、猫の出てくる時代劇を紹介したいと思います。
なんと言う安直な発想だろう。
なお、時代劇のレビューは面倒臭いので、ストーリーのほうはごく簡単に済ましたいと思います。
なんと言う正直な管理人だろう。
さて冒頭、夜道を浪花屋の主人と丁稚が歩いていると、向こうから鈴を鳴らしながら飛脚が来て、丁稚の持っていた提灯の明かりで草履の紐を結び直す。
飛脚「室町の浪花屋さんで? ありがとうございました」
浪花屋「おかしいねえ、飛脚が夜走るなんて」
飛脚はそのまま走り去るが、その直後、何処からか飛んできたモリが、二人の体に突き刺さる。

なんか、二人のギタリストがノリノリで演奏しているようにも見えるが、体をモリで貫かれて悶絶しているところなのである。
翌日、事件について話している音次郎たち。

内藤勘解由「人斬り錠は二月前、捕り手に追われて崖から落ちて死亡した。ところが今また錠と同じ手口の殺しが大胆不敵にも起こった。これはどうした訳か……奉行所の調べによれば、錠の死体を引き取りねんごろに葬ったのはお葉と言う女だ」
しかし、過去にも同じ手口で殺しているのなら、あれを「人斬り」と表現するのはおかしくないか?
「串刺し錠」とか、「モリ打ち錠」とかの渾名の方がふさわしいのではあるまいか。
それはともかく、音次郎は人斬り錠こと錠吉の友達だと偽って、お葉のやっている小料理屋を訪ねる。

ここで早速可愛いニャンコが登場!!
サイコロをちょいちょいしている様子がたまらんのです!!
とりあえず線香を上げてから、

音次郎「わからねえもんだなぁ、あんなにピンピンしてた錠吉が崖から落ちて死ぬなんて……へっ、猫が好きなんだな」
お葉「この猫はみんな錠さんが拾ってきたんですよ」
お葉の家には他にも数匹の猫がいた。

お葉が抱いている子猫が可愛いのである!!
音次郎が帰ろうとすると、お葉が猫を抱いたまま追いかけてきて、

お葉「あの……もうここへは来ないで下さい」
音次郎「……」
お葉「錠さんのことは忘れようとしてるんですよ」
音次郎「そりゃ悪かった」
音次郎が行ったあと、お葉は猫を下ろすが、

その猫の尻尾が短いのが、ちょっと意外な気がした。
もっとも、昔の日本では、尾の短いタイプが多かったらしいけどね。
一方、錠吉の弟で英二と言う男がいて、三度屋と言う飛脚問屋で働いていた。

番頭「なにをしてるんだね、英二」
英二「番頭さん、教えて下さい、兄貴はこの店でどんな仕事をしてたんですか」
番頭「まだそんなことを言ってるのかね、お前は、そんな詮索する暇があったら仕事ですよ」
英二は錠吉の死の真相を探っているらしい。
その後、賭場でお葉に近付いた音次郎は、お葉に誘われて彼女の店に立ち寄るが、

そこのおときと言う若い女中が、鈴をつけた子猫を抱いていた。
演じるのは、「01」のリエコこと、隅田和世さん。

お葉「お前、この猫、どうしたんだい? 私が鈴が嫌いだってことぐらい、知ってんだろ」
おときは台の上で猫に餌をやろうとするが、お葉は不機嫌そうにその猫を取り上げる。
いや、さすがに食べ物屋で、そんな不衛生なことをする奴はいないのでは?
おとき「すみません、裏に捨てられてたもんで……飼い主は誰でしょう?」
お葉「いいから捨てておいで、うちはもう猫は要らないんだから」
そう言われてもおときは猫を手放そうとしなかったが、音次郎が仲裁に入り、

音次郎「鈴が嫌いだったら取りゃいいんだ……可愛い顔してるじゃねえか」
首輪から鈴だけ取り外してやるのだった。
その後、音次郎はお葉の店を探っていた英二を捕まえ、屋台で飲みながら色々と話を聞く。
音次郎「兄貴ってのは錠吉のことか」
英二「ああ、あの店だって兄貴が(お葉に)買ってやった店なんだよ、それなのに二月もしない間にもう新しい男作りやがって」
音次郎「寂しいんだろうよ、お葉さんも」
英二「寂しい?」
音次郎「好きな男に死なれたんだからな」
英二「あんたなんかにご馳走してもらうんじゃなかったよ」
英二、気分を害して帰って行く。
帰る途中、数人の浪人風の武士に襲われるが、あとをつけていたお吉に助けられる。
音次郎たちは、人斬り錠が死んだときの瓦版を英二に見せてやる。

英二「この人斬り錠吉が俺の兄貴だってんですかい」
音次郎「そうだ、錠吉は三度屋の番頭なんかじゃなかったのさ」
英二「そんなバカな」
お吉「お葉さんはね、錠吉さんの死体に縋って泣いていたそうよ」
井坂「その瓦版にあるようにな、錠は二月前殺しをしくじり、捕り方に追われて崖から落ちて死んだ。そのおり手にしていた武器がその頃続発していた殺しの傷口と合致したんだ」
お吉「右腕に
『ニャンコ命』って刺青がしてあったそうよ」
英二「恥ずぅううっ!!」
じゃなくて、
お吉「右腕に『およう命』って刺青がしてあったそうよ」
音次郎「
顔は判別できぬほど荒れていたそうだが、そのお葉さんが錠吉だと確認した」
だが、英二はあくまで信じず、店を飛び出す。
ミステリーマニアでなくても分かると思うが、そう言う場合、死体は別人だと100パーセント決まっているのである。
要するに、錠吉はまだ生きているのである。
その後、英二は店をやめてクニに帰りたいと主人に願い出ると、主人は快く許してくれ、餞別までくれる。
そこへ越前屋と言う材木問屋が来て、香典飛脚を頼みたいという。
しかも、200両もの大金と、鈴をひとつ渡しながら……
主人と番頭は奥の部屋で話を聞く。

番頭「確かに200両」
主人「お届けする先は?」
越前屋「木場の甲州屋でございます」
主人「御引き受けいたしました。番頭さん、分かってますね、甲州屋さんですよ」
意味ありげに番頭に念を押す主人。
そう、三度屋は裏で人殺し稼業をしていたのである。
それは良いのだが、三度屋から出て来た越前屋が、井坂にちょっと脅されたくらいで白状しちゃうのは、さすがに物足りない。

お葉「おとき、昨夜の鈴はほんとに偶然ついてたんだね」
おとき「ええ、何か?」
お葉「ならいいんだよ」
お葉はなんとなくウキウキした様子でとある料亭に足を運ぶが、待っていたのは錠吉ではなく、三度屋の番頭と一匹の猫だった。
番頭「お葉さん、一足遅かったようですね……でもいいじゃありませんか、お楽しみは今夜にでもゆっくり」

その猫を抱き上げて頬ずりするお葉。
猫を可愛がっているというより、猫に残った錠吉の匂いをいとおしんでいる様子だった。
夜、甲州屋の提灯を持った二人連れが歩いていると、鈴を鳴らしながら飛脚(三度屋の番頭)が来て、冒頭と同じく、提灯の明かりで草履の紐を結び直す。
飛脚が走り去ったあと、何者かがモリを投げつけるが、

その二人は甲州屋ではなく、商人に化けた内藤勘解由と井坂だった。
二人はモリをキャッチするが、番頭も、モリを投げた男も、それ以上は何もせずに引き下がる。
その後、錠吉と思われる死体の状況をつぶさに書いた絵を見た英二は、
英二「俺の兄貴は、こんな痣なんかありゃしねえよ、兄貴じゃねえ」
お吉「すると、この死体は……?」

続いて、時代劇でたまにある、お楽しみタイム。
背中に彫り物をされている女性のおっぱいが押し潰されている!!

彫師「死人に刺青? やってできねえことはねえが、やったとしても文字ぐれえだろうなぁ」
お吉はほうぼうの彫師を訪ね歩き、彫辰と言う彫師が「およう命」と言う刺青をあの死体に彫ったが、溺死に見せかけて殺されていることを突き止める。
つまり、別人の死体を錠吉であるかのように偽装したのである。
その後、井坂が大胆にも三度屋に殺しの依頼に行く。
しかもその相手がよりによって内藤勘解由と言うのが面白い。
井坂は、内藤勘解由が桔梗屋で句会をしているからそこを狙って欲しいと頼むと、果たして、番頭が確認に来て、例のモリが飛んでくる。
しかし、モリによる殺しはどう考えても屋外のほうが成功しやすいので、わざわざそんなところを狙う必要はないように思われる。
後詰の浪人たちが襲ってくるが、無論、隠密同心の敵ではなく、あっさり撃退される。
その場にいた英二は、特徴的なモリの柄を見て、モリを投げたのが兄だと悟る。

音次郎「英二、何処行くんだ」
英二「お願いだ、こねえでくれ、頼む」
英二はそう言って店を飛び出す。
しかし、三度屋が殺しを請け負っているのは甲州屋の一件で明らかなのに、わざわざもう一度囮作戦を行う必要があるだろうか?
おまけに依頼料としてかなりの金を渡しているが、それは公金から出てるのだろうから、「公務員」としてはいささか問題ではあるまいか。
もっとおかしいのは、番頭は甲州屋に扮した井坂に会ってる筈なのに、依頼に来た井坂に気付かないことである。
音次郎たちは、橋の上で英二が「兄貴、俺は知ってるんだぜ、兄貴のモリをよ」と叫んでいるのを見て、
音次郎「錠吉はやはり」
お吉「生きていた。するってえと、人斬り稼業の元締めは」
音次郎「三度屋だ」
と言うのだが、そんなことはその前に分かっていたことなのでは?
なので、甲州屋の殺しを彼らが防ぐシーンは要らなかったように思う。
越前屋が甲州屋への香典飛脚を頼むのを井坂が見る→甲州屋が殺される→三度屋が黒幕ではないかと疑う→実際に井坂が依頼して確かめる
と言う流れなら、さっきの囮作戦にも意味があったことになるんだけどね。
音次郎とお吉はおときに会い、お葉の居場所を知ろうとする。

おとき「女将さんを悲しませないで下さい、私を拾ってくださったのは女将さんなんです、その女将さんを拾ったのが錠吉さんなんです」
子猫「にゃー、にゃー」
音次郎「おめえ、錠吉が生きていたことを知ってたんだな」
おとき「女将さん、あの人だけが生き甲斐だったんです」

ここでやっと、錠吉がカメラの前に姿を見せる。
演じるのは、毎度お馴染み、竜崎勝さん。
こういうコワモテの人に限って、猫好きと言うのはよくあるパターンだが……

錠吉、よほどの猫好きなのか、女には目もくれず、猫を抱いたまま横になる。

お葉に抱き上げられるニャンコが可愛いのである!!
鼻の周りが、ココアでも飲んだように黒くなってるのがもう!!
色々あって、錠吉は最後の仕事として、こともあろうに弟・英二の暗殺を命じられる。
錠吉は行き倒れ寸前のところを三度屋に助けられた義理があり、そのモリの腕を見込まれて殺し屋をさせられていたのである。
どうでも良いが、今回の話、やたら拾われてるのな。
・三度屋に拾われたのが錠吉
・三度屋に拾われた錠吉が拾ったのがお葉
・三度屋に拾われた錠吉に拾われたお葉が拾ったのがおとき
・三度屋に拾われた錠吉に拾われたお葉に拾われたおときが拾ったのが子猫
と言うように、無限連鎖して行く感じ。
錠吉、やむなく殺しを引き受けて英二を無縁墓地に誘い出すが、やはり弟は殺せず、逆に三度屋たちに牙を剥く。
もっとも、三度屋も、最初から錠吉も一緒に始末するつもりだったのである。
そこへ音次郎たちがあらわれ、ラス殺陣となり、悪人どもを皆殺し。
どうでもいいが、音次郎たちが三度屋たちを「人殺しめ」と糾弾しているのだが、毎週、悪の張本人だけでなく、何も知らない家来や金で雇われた浪人たちまで見境なくぶっ殺している人たちに言われたくないなと思いました。
錠吉は、乱戦の中、英二を庇って死ぬ。
事件解決後、英二は田舎に帰り、お葉は引き続きあの店を経営して行くのだった。
以上、猫が出てくる以外は、はっきり言って面白くもなんともないエピソードであった。
それに、やってみると意外と猫の画像がなかったと言う、企画倒れのレビューになってしまった。
書いた後でボツにしようとかとも思ったのだが、せっかくなので公開しました。
※162と言うのはシリーズ通算話数です。厳密には第3シリーズの58話です。
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