第9話「見たぞ!! ドグマ怪人製造工場の秘密」(1980年12月12日)
メインの作戦以外のシーンがそのほとんどを占める、異色作である。
冒頭、産地直送のカニの大安売りをしているアンちゃん。
そこへ谷が通り掛かって足を止め、

谷「ほお、カニか、なかなかイキが良いじゃないか、兄さん」
紐で縛られてピクリとも動かないカニを見て言う。
2匹で千円と言う安さにつられて買い求める谷だったが、その最中、何者かが……どう見ても戦闘員だが、軽トラの助手席側のドアを開けて滑り込む。

アンちゃん「ほらぁ、卵も入ってんだから、旦那ね、ちゃんと……」

アンちゃん「どわーっ!!」
口上を述べていると、突然軽トラが走り出したので、思わずコケるアンちゃん。
ただ、この角度だと、戦闘員が乗り込もうとしたら、絶対谷に気付かれるよね。
せめて運転席側から入らないと……

それはそれとして、戦闘員がカニを満載した軽トラを走らせている、シュールなシーン。
一瞬、「悪の組織」が年末の資金繰りに困って、遂にこんなセコいことまで始めたのかと目頭が熱くなりかけたが、無論、彼らは金のためにこんなことをしている訳ではないのである。
谷とアンちゃんは割りとしつこくトラックを追いかけ、モーターショップまでやってくる。
二人から話を聞いたハルミとチョロが、代わりにバイクに二人乗りで追跡するが、込み入った路地に入ったところで、トラックが忽然と消えてしまう。
そこへ一也があらわれ、突き当たりの塀を押してみると、いとも簡単に動いた。

チョロ「ああっ、カニ泥棒の野郎、こんな逃げ道用意しやがったのか」
一也「カニ泥棒?」
ハルミ「そうなのよ、大安売りのカニがトラックごと盗まれちゃったのよ」
一也「おかしいな、さっき魚市場からも大量のカニが盗まれたと言うニュースがあったばかりだ」
ハルミ「そんなにたくさんのカニを盗んでどうするつもりなのかしら」
一也「こんな逃げ道を作る奴らだ、何か特別な訳があるんだ」

ガイガン「鮮度良好、甲羅の硬さ良し、はさみの切れ味良し、手足の伸び縮み良し……選別始め」
さて、盗まれた大量のカニは、ドグマの怪人製造工場に持ち込まれ、ドクター・ガイガンと言う、凄い名前のおっさんが、まるで魚市場一筋50年のヌシのような鋭い目付きで、その状態を事細かに吟味していた。
そう、ドグマは、大量のカニを素材にして新たな怪人を作り出そうとしているのである。
いや、だったら普通に買い付けろよ。
お陰で一也たちに早くも怪しまれているではないか。

続いて、戦闘員たちがカニを丁寧に解体していき、胴体は胴体、はさみははさみと言うように、パーツごとに分類していく。
そしてコンディションの悪いものは破棄されるが、ちゃんと「廃棄されたカニはスタッフが美味しく頂きました」と言うテロップが入る(註・入りません)
ま、この日のスタッフの夕食が、カニ鍋だったことはほぼ間違いないだろうが。
ガイガン「細胞液取り出し作業開始」
ついで、ジューサーのような筒に入れたられたカニが、ハンマーでプレスされる。
ガイガン「巨大化開始」
で、これが分かりにくいのだが、

カニのはさみのひとつが四角い透明なケースの中に置かれ、特殊な光線を照射されると、

一瞬で人の腕ぐらいの大きさになる。
いや、ドラえもんのビッグライトじゃないんだから、無理なのでは?
そもそもこのはさみが、たくさんあるはさみのひとつなのか、選び出したはさみを組み合わせて加工したものなのか、はっきりしないのである。
さすがに、いくら質が良いからって、カニの体をそのまま巨大化しても、改造人間のパーツとして使うのは無理があるので、やはり事前に加工されていたと見るべきか。
この一連の改造人間製造工程、過去のどの作品でも見られなかったほど詳細に描かれているのだが、肝心なところで曖昧になっているのが残念だ。
それはともかく、他の部位も巨大化され、ボディーとなる甲羅に鋼鉄製の毛を埋め込み、別に用意されていた怪人の頭、そして手足をボディーに取り付け、額から電流を流す。
そこへメガールが視察に訪れる。

メガール「ドクター・ガイガン、新怪人は完成したか」
ガイガン「は、ただいま最終過程を終了、これより能力テストをした上で、最後に我らの指令を伝える服従カプセルを頭脳に埋め込めば全て完了です」
ドクター・ガイガン、そう言って小型の回路を取り出して見せるのだが、
メガール「服従カプセル?」
それを初めて耳にしたようにメガールが怪訝な顔をするのが、ちょっと違和感がある。
仮にも唯一の大幹部なんだから、それくらいのことは知ってないとおかしいだろう。
ガイガン「はい、これをつけませんと、この怪人はただただ凶暴なケダモノに過ぎません」
メガール「野生のカニそのものと言うわけだな」
いや、「野生のカニ」て……
ちなみにドクター・ガイガンを演じるのは、「仮面ライダー」のゴキブリ男でお馴染み平松慎吾さん。
いやー、ゴキブリの怪人を作るんじゃなくてほんとに良かった……
と、今度は親衛隊の三人まで顔を出す。
みんな、カニが好きなんだなぁ……
親衛隊「帝王テラーマクロ様がM作戦遂行のためにガニガンニーの製造を急げとの命令だ」
メガールとガイガンは、テラーマクロの前に召し出される。
テラーマクロ「その方、怪人ガニガンニーにはスーパー1を上回る能力を与えたであろうのう」
ガイガン「ははっ、我らドグマ超科学怪人製造チームの名誉に懸けて」
テラーマクロ「M作戦遂行のためにはなんとしてもスーパー1の邪魔だけは防がねばならぬ。わかっておろうのう」
メガール「ははーっ!!」
テラーマクロの台詞から、てっきり、ガニガンニーはM作戦とやらを成功させるため、スーパー1を足止めする役目が与えられるのだと思ったのだが……
ちなみにガニガンニーと言うネーミング、間違えやすいので、是非別の名前にして欲しかった。
ついで、メガールおよび親衛隊立会いの元で、ガニガンニーの能力テストが行われる。
まず、戦闘員が園芸用のフォークのようなものを怪人の甲羅に思いっきり突き立て、跳ね返されたあとで、
ガイガン「ご覧の通り、怪人の甲羅は3万トンの重量の刃でも刺し通すことは出来ません」
と、自慢げに言うのだが、
そもそも3万トンの武器なんて誰も持ってねえよ!! ま、3万トン分の圧力にも耐えると言いたかったのだろう。
ついで、腹筋テスト、はさみの切れ味テストが行われた後、
ガイガン「テストナンバー4、泡地獄!! これこそ我らが苦心の作、このガニガンニーの口から吹き出す毒あぶくはスーパー1の機能を麻痺させ、作動を停止させる能力がありますぞ」
どうでもいいが、ガイガンの台詞、「作動」の発音が「茶道」になっている。
能力テストの結果は上々であったが、ここでは思わぬトラブルが起きる。
親衛隊が誤って、怪人に命を吹き込む蘇生○○(聞き取れない)稲妻光線のスイッチを入れてしまい、服従カプセルを埋め込む前に、怪人が活動を始めてしまったのである。
しかし、普通は活動を始めさせてからテストを行うと思うのだが……
つーか、今、普通に動いてましたよ?
ともあれ、まだ心は野生のカニのままのガニガンニー、むちゃくちゃに暴れまわった挙句、アジトから脱走してしまう。
そして翌朝、川のそばをランニングしていたハルミと良の前に、水の中からガニガンニーがあらわれる。
巨大なはさみをカチャカチャいわせてのしかかってくるガニガンニーの怖さに、

ハルミ「キャーーーッ!!」
いつもの寄り目芸を見せつつ、ひっくり返るハルミが可愛いのである!!
もっとも、まだ悪の心を植えつけられていない怪人は、二人を放置して何処かへ行ってしまう。
そこへ一也が駆けつけ、ハルミを揺り起こす。
一也「どうした?」
ハルミ「一也さん、カニの化け物!!」
三人は近くの公園でガニガンニーを発見するが、

怪人は、砂場にべったりと腰を下ろし、幼児のように砂山を崩して遊んでいた。
一也「あれはドグマ怪人だ」
良「子供みたいに遊んでるよー」
一也、向こう側の植え込みの中に、親衛隊と戦闘員たちが隠れているのに気付き、そっと彼らのそばに行き、聞き耳を立てる。
一也(親衛隊が出てきているところを見ると、何か重大なことが起こったんだ)
あれ、一也って、過去に親衛隊と会ったことありましたっけ?

親衛隊「いいか、命を懸けてかかれ、この服従カプセルをガニガンニーに埋め込まなければ我らは抹殺されるぞ」
一也(読めた、服従カプセルを埋め込む前に怪人が暴走したんだ)
CM後、

花屋で仕事をしている、ちょっと可愛いお姉さん。
演じるのは宮下明子さん。
ふと目を上げると、ガラス戸越しにカニの化け物がひょっこりと顔を出したので、
お姉さん「きゃああああーっ!!」 張り裂けんばかりに目を見開き、口を思いっきり開け、鼻の穴が見えるほどに仰け反って絶叫するお姉さん。
その体当たりの演技は、まさに女優の鑑と言えるだろう。
怪人は、お姉さんには手も触れず、商品の花を気まぐれにちょん切ったりしていたが、そこへこの家の娘なのかどうか良く分からないが、幼稚園児くらいの女の子がトコトコやってきて、

女の子「だめよ、お花がかわいそうでしょ、あんたなによー」
日本ドラマ史上に燦然と輝く、究極の棒読み台詞をぶちかます。
演じるのは、石田裕子さん。
女の子「そんなへんてんこりんな格好しちゃって、おいたしちゃいけません、うふっ」
一也(す、すげえぜ……) その凄まじくフラットな台詞回しには、さすがの一也も度肝を抜かれる。
じゃなくて、
一也(どうなってるんだ? そうか、服従カプセルを埋め込まれていないから海や川にいるカニと同じでまだ無邪気なところがあるんだ)
怪人が女の子に叱られて大人しくなったのを見て、その理由を見抜く一也。
ただ、カニの場合は本能の赴くままに動いているのであって、「無邪気」と言うのとはちょっと違うような気がするんだけどね。
それに、ガニガンニーの頭脳コンピューターは明らかにドグマが用意したもので、別にカニの脳(神経系?)を掻き集めて作った訳ではあるまいから、服従カプセルを埋め込んでないからと言って、本物のカニのように振舞うというのは無理がある。

女の子「ばいばーい」
手を振る女の子に送り出されて、ガニガンニーは横歩きで穏便に店を出て行く。
江連さんが書いてるので、このガニガンニーが子供と触れ合っているうちに「人間の心」を身につけ、逆に一也がドグマから怪人を守るような展開になるのかと思ったのだが……
この後、廃工場にて、あっさりガニガンニーは服従カプセルを埋め込まれ、ただの怪人になってしまう。
……今までの話は一体なんだったんでしょう?
一也、スーパー1に変身してガニガンニーと戦うが、ドクター・ガイガンが心血を注いで作った怪人だけあってその能力は桁外れで、スーパー1のどんな攻撃も跳ね返してしまう。
そして、口から泡を吹いて、泡地獄攻撃を仕掛ける。
体じゅう泡だらけにされたスーパー1、
ライダー「う、手が痺れる、しまった、機能を麻痺させる
毒ガスが仕込まれているのかっ」
その場に膝を突いて悶えるのだが、泡を体にくっつけながら「毒ガス」はないだろうと思う。
普通に、
ライダー「う、手が痺れる、しまった、この泡には機能を麻痺させる効果があるのかっ」
で良かったのでは?
あと一歩までスーパー1を追い詰めたガニガンニーだったが、そこに駆けつけた谷に邪魔され、まんまと逃げられる。
それでも最低限の仕事は果たしたので、親衛隊は怪人を連れて一旦本部に引き揚げる。

メガール「ほう、成功したようだな」
親衛隊「失敗を願っていたような口ぶりだな」
メガール「馬鹿な、何を言う!!」
そこで取り交わされる会話が、水面下でメガールと親衛隊の権力闘争が行われていることを窺わせて、ちょっと面白い。
親衛隊「メガール将軍、親衛隊は責任を果たした、ここから先は貴殿の責任だ」
メガール「怪人ガニガンニー、テラーマクロの命令を伝える。我がドグマは1000人をひとりで倒せる特殊銃、SW砲を作るためにメランダイヤモンドよりも硬い鉱石を求めている。そこでメラン鉱石研究所を襲い、メラン鉱石を奪って来い」
と言う訳で、結局、M作戦の遂行もガニガンニー自身が行うことになる。
しかし、施設に侵入してアイテムを奪うのに、そんなに高い戦闘能力は要るまい。
もう一体、潜入工作に特化した怪人を作り出し、強奪はそちらに任せ、その間にガニガンニーがスーパー1を足止めするという分業作戦を採用していれば成功していたかもしれないのに……
ともあれ、ガニガンニーは施設を襲撃し、簡単にメラン鉱石なるものを奪取する。
これも、メランダイヤモンドより硬くなければいけないのに、その原石らしいメラン鉱石を盗んでも仕方ないんじゃない? と言う気がするのである。
ここも普通に、SW砲を作るにはメラン鉱石が必要だから取って来い、で良かったのでは?
この後、スーパー1があらわれ、激闘の末にガニガンニーを倒して事件解決。
ちなみにスーパー1は、エレキハンドで相手の体に電流を流してから、
ライダー「今だ!!」
と、叫んで「スーパーライダー閃光キック」を放っているのだが、何が「今だ!!」なのか、これも良く分からないのであった。
なんで甲羅に電気を流したら倒せたのか、何の説明もないままエピローグへ。
ちなみにドクター・ガイガン、あれっきり登場しないのだが、昔の特撮でこの手のキャラが、ヒーローに倒されもせず、上司に処刑もされずにフェードアウトするというのは珍しい。
モーターショップに戻って来た一也、怪人を倒したことを報告してみんなを安心させる。
チョロ「おやじさん、お祝いに熱燗でぐぐいと」
谷「行くか」
一也「……と思ってこれを持ってきたよ、ほら」

そう言って一也がビニール袋から取り出したのが、大きなカニだったので、
チョロ「うっ」

ハルミ「キャアアアアーッ!!」
チョロと抱き合って、またしても寄り目のアホ面をしながら絶叫するハルミが可愛いのである!!
以上、前半は面白いのだが、後半になると急に失速すると言う、今までのパターンを踏襲したストーリーが展開し、ハルミの寄り目や、お姉さんや女の子以外、特に見るべきところのない凡作であった。
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