第24話「罠をはる怪力男」(1980年7月12日)
冒頭、ミラーを姿見に変化させると、

ヘドリアン「……」
一心不乱に歯ブラシで歯を磨くヘドリアン女王。
「悪の組織」の首領が歯を磨いているシーンなんて、長い特撮の歴史の中でもこれが最初で最後だろうなぁ。
ヘドリアン「いーっ、おおーっ、わらわの歯のなんて美しいこと」
ケラー「誠に、女王様の歯はこの世で一番美しい歯でございます」
口をゆすいでから、自分の歯並びを鏡に映してうっとりすると、すかさずケラーがお世辞を言う。
どうでもいいが、予告編で「汚いものを好むヘドリアン女王」と言いながら、自分の歯の美しさに見惚れるというのは、なんか矛盾してるような……
ヘドリアン「今日は久しぶりに良い気持ちじゃ、ミラー、地上の様子が見たくなった」
ミラー「は、かしこまりました」
ミラーは鏡のままくるっと振り返ってお辞儀をすると、アトランダムに地上の様子を映し出す。

ヘドリアン「うん、なんだ、あの女?」
親子連れで賑わう公園や、子供たちが野球をしている光景に続き、テニスをしている肉感的な熟女が映し出されるが、なんと、それを演じているのは曽我さん自身であった。

女「べーっ!!」
熟女は、まるでヘドリアンが見ているのに気付いたように、鏡に向かって舌を出してみせる。
こういう演出も、ちょっと他では見たことがないが、曽我さんが、たまには普通の恰好がしてみたいとスタッフに要望したのだろうか?
ヘドリアン「うーっ、なんという嫌な遊び、もう良い、見とうない!!」
ヘドリアン、たちまち機嫌を悪くして叫ぶのだが、なんか、怒るところを間違ってるような……
この場合は「なんという嫌な女!!」と言わないと辻褄が合わないと思うのだが、そうすると、ヘドリアンが自分で自分の顔をけなすことになるからね。
ミラー、人間の姿に戻る。
ヘドリアン「不愉快じゃ、この地上はわらわのもっとも嫌いな健康美に満ち満ちているではないか、ヘドラー将軍!!」
ヘドラー「ははっ」
ヘドリアンの腹の虫は収まらず、今度はヘドラーを呼びつける。
しかし、健康そのものの人に、「健康美が嫌いじゃっ」とか言われてもねえ……

ヘドラー「何事でございますか、女王様」
ヘドリアン「将軍、この世を我らが住みやすいようにこの上もなく醜く汚くせよと命じたはずだぞ」
ヘドラー「は、努力はしているのでございますが……」
ヘドリアン「ええい、弁解は無用じゃ、まず子供たちから健康を奪え、一歩も歩けぬ弱々しい子供たちで埋め尽くせ、そして病の都にするのじゃ」
ヘドラー「かしこまりました」
ヘドリアンは落ち着きを取り戻すと、椅子に座り、
ヘドリアン「ミラー、もう一度鏡じゃ」
ミラー「はっ」
ヘドリアン「鏡よ、鏡、この世で一番美しい歯の持ち主はだーれ?」
ヘドリアン、幼稚な質問をするが、鏡の中の映像がテレビが混信しているように乱れ、

「美しい歯日本一コンテスト」と言う、クソみたいなイベントの会場と、優勝した山下ユリと言う女の子の姿が映し出される。
ただ、公平に見て、その女の子より、ヘドリアンの方がよっぽど綺麗な歯をしているのがご愛嬌。
もっとも、そうそう歯並びの綺麗な子役なんて見付けられない時代だからね。
ヘドリアン「許せぬ、歯の女王はわらわじゃ、おのれええ、うんにぃ~っ!!」
子供と大して精神年齢の違わないヘドリアンは本気で悔しがり、バキバキと音が鳴るほど歯を食い縛っていたが、

ヘドリアン「お、あ、あ、あ……あーたー」
急に顔をしかめて、左頬に手を当てて痛がっていたが、やがて折れた歯を二本吐き出す。
ヘドリアン「おお、なんと忌まわしいこと、わらわの歯が虫歯に……」
いや、虫歯と言うか、あまりに強く歯を噛んだので、奥歯が折れただけのようにも見えるのだが……
ヘドリアン「ミラー、ケラー、ハミガキラー、お前たち協力して山下ユリの歯を全部引き抜いてさらしものにするのじゃ、子供たちの健康を奪い、恐怖のどん底に突き落としておしまい!!」
それはともかく、ヘドリアンは完全に個人的な感情に基づく作戦を部下に命じる。
ある意味、実にベーダーらしい作戦と言える。
しかし、考えたら、女児の歯を全部引き抜けって、言ってることはめちゃくちゃ恐ろしいのだけれど、コミカルタッチで描いているので、あまり残酷な感じは受けないのだ。
サブタイトル表示後……って、まだアバンだったのかよっ!!……コンテストの会場から山下ユリとその両親、観覧していた三太たちが出てくると、赤城たちが笑顔で駆けつける。
ゆみ子「赤城さん、ユリちゃんが歯のコンクールに優勝したのよ」
赤城「優勝?」
ゆみ子の言葉に、赤城はユリの肩に手を置くと、

赤城「おめでとう、ユリちゃん、
それの何が凄いのか知らんけど」
ユリ「……」
父親「……」
思わず本音を口にしてしまう赤城だったが、嘘である。
青梅「さすが優勝者だけあって、ユリちゃんの歯は綺麗だなぁ」
黄山「お前も少しは見習って歯ぐらい磨けよな」
青梅「わかってるよ」
青梅が、ユリの歯並びをしげしげと見て感嘆すると、すかさず黄山が茶々を入れる。

んで、大人たちを嬉しそうに見上げるユリの歯並びが、さっきも言ったようにあんまり綺麗じゃないのが笑える。
ユリを演じるのは塩月徳子さん。
あまり電のタイプじゃないだろうなぁ。
……
だからなんでそこに電の名前が出てくるのよっ!!(欽ちゃん風)

ケラー「あの子よ」
ミラー「今はまずい、デンジマンたちが去ってからだ」
その様子を人間に扮したケラーたちがうかがっていた。
ユリは三太たちと一緒に遊びたいとせがむが、母親は「子供の健康を駄目にする悪いお化けがいるそうよ」と、妙な理由で却下する。
しかし、まだハミガキラーたちは何もしてない筈なのに、そんな噂が広まっていると言うのは変じゃないか?
つーか、子供の歯を駄目にするために作り出された怪人なのに、ハミガキラーと言うネーミングはどうかと思う。
ムシバラーのほうが良かったかも。
色々あって、青梅が同行すると言う条件で、ユリも近くの遊園地で遊ぶことを許される。
「おとぎの館」と言うアミューズメント施設で「世界一の怪力男」と言う、クソみたいなイベントが行われていて、子供たちが入ろうと誘うが、

青梅「いやぁ、しかしな、ユリちゃんの両親に早く連れて帰るって約束したしなぁ」
ユリ「ママとパパなら大丈夫よ、私に甘いんだから」
青梅「うーん、こら!! パパとママはね、ユリちゃんのことを心配して言ってるんだよ」
ユリが大人の足元を見るような可愛くない発言をすると、意外とスパルタな青梅は、その頭を軽く叩いてから、優しく言い聞かせる。
ちなみに、青梅が時間を気にしていることから、ここに来るまでに、すでにいくつかの施設で遊んでいたのだろう。
また、何の説明もないのだが、ユリもアスレチッククラブに通っている子供と思われる。
結局、子供たちに押し切られてその「おとぎの館」に入ることになるのだが、
青梅(クッソ遠いやん……) 目指す施設は、何故かそこからめちゃくちゃ離れた場所にあるのだった。
いや、そう言う話はフツー、その施設の前でしません?

それに続いて、なんかストリップ小屋の入り口みたいなセットに切り替わり、鉢巻をした呼び込みのあんちゃんが、子供たちに、入り口の横の屋台で無料の綿飴を勧める。
管理人、生まれてこの方1度か2度くらいしか綿飴を食べたことがないと思うが、あんなもん何が美味いんだ? と、前々から思っている。

青梅と子供たちは、観覧席に陣取るが、中央のステージで繰り広げられるのは、自称・世界一の怪力男が巨大な金の鐘に結ばれた鎖を歯で引っ張りあげると言う、案の定、クソみたいなパフォーマンスであった。
怪力男を演じるのは「スーパー・力」と言う人だが、プロレスラーか何かだろうか?
なお、「力(りきorちから?)」は、漢字であって、カタカナの「カ」ではないのだが、うっかり「すーぱー・か」と読んでしまうと、当時子供たちに大人気だった「スーパーカー」のバッタモンみたいになってしまうので要注意なのである。
やがて、怪力男が歯で鐘を持ち上げたので、子供たちは大喜び。

ミラー「なめてる、なめてる」
ケラー「虫歯○○(聞き取れない)の綿飴とも知らずに」
ミラー「うん? ユリは舐めてないぞ、なんて用心深い子だ」
アシスタントに扮したミラーとケラーが、子供たちの様子をほくそ笑みながら見ていたが、肝心のユリが一切綿飴を口にしようとしないのに気付いて焦る。
おそらく、常日頃から両親に間食するなと言われているのだろう。

ミラー「みなさん、皆さんの中に力持ちはいませんか」
ケラー「見事、この鐘を吊り上げた方には豪華な賞品を差し上げます」
すかさず次の作戦に移るケラーとミラー。
で、青梅が子供たちにせがまれて、よせば良いのにチャレンジすることにする。
青梅(……ところで、これ、何の番組なの?) ……と言うのは嘘だが、「デンジマン」とか「バトルフィーバーJ」とか見てると、たまに浮かぶ疑問である。

ユリ「……」
青梅の奮闘ぶりを食い入るように見詰めているユリ。
当時の真性ロリコン戦士たちも彼女の顔を食い入るように見詰めていただろうが、やっぱり電の好みのタイプじゃないよなぁ。

青梅が鐘を持ち上げたので、思わず立ち上がって拍手する子供たち。
三太がめっちゃ可愛い……

女の子たち「青梅さーん!!」
二人はみんなが青梅に注目している間にユリを攫おうとするが、結局、その機を逸し、慌てて裏手に引っ込む。
怪力男の正体は、ハミガキラーだった。

ミラー「むざむざ指を咥えて見送るなんて」
ハミガキラー「心配めさるな、女王様の命令を遂行するのはこれからだ」
ケラーの影に隠れがちだが、ミラーって、なかなか脱ぎっぷりが良いんだよね。
ユリは青梅に自宅まで送ってもらうが、家に入った途端、両親ともどもベーダーに身柄を拘束される。
ユリ「助けてーっ、助けてーっ!!」
だが、ユリの悲鳴がまだ近くにいた青梅の耳に届き、青梅が駆けつけてジャッキー・チェンばりのアクションを披露してベーダーを撃退する。
CM後、青梅が守り通したはずのユリの歯が虫歯になっている。
この辺、ちょっと納得行かないのだが、あのあと、ユリが綿飴を食べたのかもしれない。

ユリ「痛い、痛い」
母親「お薬付けてあげるからね、これ? あんまり甘いものばっかり食べるからよ」
ここで、毎度お馴染み八百原寿子さん演じるユリの母親が正露丸をユリの虫歯に埋め込もうとする。
よく、歯の痛み止めに正露丸が使われるとは聞いていたが、実際にそんなことをするシーンを見たのは初めてである。
でも、母親ならそんな一時凌ぎではなく、歯医者でちゃんと治療させようとする筈で、若干の違和感がある。
特に、娘の歯を自慢に思っているのならなおさらだろう。
代わりに、その場にいたあきらがユリを歯医者に連れて行くことになる。

あきら「三太君、君もそうなの?」
三太「うん、曲馬団の怪力ショーを見たら急に歯が痛くなっちゃったんだよ」
あきらたちが待合室で待っていると、診察室から三太が出てくる。
さらに、他のレギュラー子役たちも一様に頬に手を当ててぞろぞろやってくる。
しかし、みんな住んでる場所は違うのに、全員同じ歯医者に……それもベーダーが手ぐすね引いて待ち構えている歯医者に集中的に来るというのはさすがに嘘っぽい。
やがてユリが呼ばれたので、あきらはひとりでユリを行かせる。

歯医者「あーんしてねー、そうだよー、おお綺麗な歯をしてる、さすがに、コンクールに優勝しただけのことはある」
ユリの口の中を見た歯医者は、そう言って意味ありげに助手たちの顔を見る。

で、その二人と言うのがなかなか美人なのだった。
無論、歯医者はハミガキラーが化けたもので、助手も、ケラーとミラーの変装である。
さっきの反省から、歯医者は睡眠薬を霧吹きでユリの顔に吹きかけ、一旦ユリを眠らせる。
一方、待合室に、別の部屋に監禁されていた本物の助手が倒れ込んで来る。

あきら「どうしたんですか」
助手「か、怪物が……」
あきらが診察室に飛び込むと、三人とも本来の姿に戻る。
ミラー「この子の美しい歯を引き抜くことを女王様が望んでおられるのだ」
あきら「そんなことはさせないわっ!!」
しかし、改めて書くと、「悪の組織」と言うより、ほとんどサイコパスみたいな願望だよね。
ナチスの拷問じゃないんだから……
だが、あきらひとりではどうすることも出来ず、まんまとユリを攫われてしまう。
青梅たちは必死でユリの行方を探すが何の手掛かりも得られない。
そんな中、黄山があの綿飴に虫歯の病原菌がついていることを突き止める。
赤城「奴らのアジトは怪力ショーのテントだ」
あきら「それじゃ、ユリちゃんはそこに?」
5人はただちにあの場所に行き、地下室に通じる秘密通路を発見する。
ハミガキラーたちは、いよいよユリの歯を引き抜こうとしていたが、侵入者を知らせる警報ブザーが鳴り響く。
ミラー「デンジマンだ」
ハミガキラー「心配ない、この手術室は誰にも分からぬ」
色々あって、レッドはデンジスコープで地下を透視し、ユリの居場所を発見する。

と、今しも、ハミガキラーが閻魔が使うような大きなヤットコでユリの歯を引き抜こうとしているところだった。
レッド「デンジパンチ!!」
レッドは直ちにデンジパンチで目の前の壁をぶち抜くのだが、
隣かいっっっ!!!! いささか拍子抜けさせられたことには、手術室は5人のいた部屋のすぐ隣だったのである。
ハミガキラーの自信たっぷりな物言いから、てっきり、5人のいる部屋と手術室の間に、複雑な迷路でも張り巡らされているのかと思ったのだが……
この後、ラス殺陣&巨大ロボバトルをこなして事件解決。
ラスト、公園で元気に遊んでいるユリたちを、高所から微笑ましく眺めている5人。
赤城「子供たちの元気な姿を見るのは良いなぁ」
緑川「これにすぐる喜びはなしだ」
青梅「これからは俺も負けずに毎日歯を磨くよ」
こうして、ヘドリアン女王の気まぐれで始まった、地球征服とは何の関係もない変態的な作戦はデンジマンの活躍で頓挫するのだった。
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