第11話「少女と戦士の心の誓い」(1989年4月9日)
謎に包まれていた、ジバン誕生の経緯を描いた前日譚的エピソードである。
冒頭、まゆみの家でまゆみの誕生パーティーが開かれているが、肝心の洋子先輩が不参加なので、全部カット。
その後、ジバンのことを両親に秘密にしているのがつらいと訴えるまゆみを、直人はジバン基地へ連れて行き、

直人「これは(五十嵐)博士が作った、過去の記憶を頭の中に再現する装置だよ、ボーイ、ファイルナンバー1をセットしてくれ」
ボーイ「ファイルナンバー1は、直人さんがジバンになった経緯を直人さんと五十嵐博士の記憶を合成し、推理を加えて再現したものです」
まゆみ「お兄ちゃん」
直人「つらいのは分かるよ、でももう一度僕がジバンになったときのことを思い出して欲しいんだよ」
と言う訳で、二人は天井から下がるヘッドギア……今で言うVRゴーグルのようなものを装着し、過去の事件を疑似体験することになる。
話は半年前、一介の刑事に過ぎなかった直人が、港でとある事件の聞き込み中に、猛スピードで走る車を目撃したことから始まる。

直人「なんだ、あの運転は? ひょっとして何か事件に関係があるんじゃ」
相変わらず、管理人の従兄弟のトオル君そっくりの直人。
え、そんなひと知らない?
でしょうねえ……

五十嵐「まゆみ、無事でいてくれよ」
そして、その車を運転していた男こそ、まゆみの祖父であり、ジバンの生みの親である五十嵐博士なのだった。
演じるのは、キカイダーの生みの親でもある、伊豆肇さん。
五十嵐は、巨大な丸い穴の開いた、「RX」でマリバロンが光太郎を呼び出したこともある建物に行き、孫の名を叫ぶ。

ウニノイド「ふふふふ、待っていたぞ、五十嵐博士」
五十嵐「孫を、まゆみを返してくれ」
そこで五十嵐を待ち受けていたのが、バイオロン最初(?)のバイオノイドになる、ウニノイドであった。
ウニノイド「返して欲しければ、貴様が我がバイオロンを倒す為にどんな研究をしているか、話すんだ……さもなければ」
まゆみ「おじいちゃーん、助けて」
そこへ、数人の戦闘員に捕まったまゆみが引っ立てられてくる。
口を割ろうとしない五十嵐博士を痛めつけるウニノイド。
つーか、そんなまだるっこしいことしないでさっさと殺せば良いのでは?
老人ひとり、わざわざバイオノイドが出張らずとも、戦闘員のマシンガンで簡単に片付いただろう。
そこへた直人が駆けつけ、勇敢にもバイオロンに戦いを挑む。
まだバイオノイドの性能が低いのか、直人に拳銃で撃たれるとあっさり倒れるウニやん。

まゆみ「おじいちゃん!!」
直人に救出されたまゆみ、急いで祖父に駆け寄る。
なお、このシーンで、嬉しくもなんともない、まゆみのチラが発生しております。
興味のある方はチェックして見て下さい。
無論、バイオノイドがそれぐらいで死ぬ筈がなく、すぐ立ち上がって反撃してくる。

直人、ありったけの弾を撃ち込んで相手を怯ませ、二人を連れてその場から逃げ出す。
夜、雷雨の中を傘も差さずに走っている三人。
ウニノイドは執拗に彼らを追いかけ、ウニのトゲのような巨大な針を飛ばして直人に致命傷を与える。
直人(僕はここで死ぬのか……)
薄れゆく意識の中、直人は己の死を自覚する。
ウニノイド「貴様もこの男と同じ運命を辿るのだ」
まゆみ「おじいちゃん!!」
だが、まゆみの叫び声が一瞬、直人を死の淵から引き戻し、直人はウニノイドの倒した電柱の電線が剥き出しになっているのを見て、

直人「ううう、うわーっ!!」
文字通り、死力を尽くして立ち上がり、その先端をウニノイドの体に押し付け、高圧電流を流して爆死させる。
怪人が、普通の人間に、それも武器も使わずに倒されるというのは、極めて稀有な出来事であった。
だが、その代償に、直人も尊い命を失ってしまう。
五十嵐「うう……」
まゆみ「おじいちゃん!!」
五十嵐博士、直人に駆け寄ろうとするが、自らもその場に倒れ込み、直人と枕を並べて討ち死にしたような恰好になる。
実際、そこへ柳田が通りかからなかったら、二人とも死んでいただろう。

柳田「五十嵐博士、しっかりして下さい」
五十嵐「ああ、この若者を……」
警視庁のお偉いさんであり、五十嵐博士の助手でもある柳田は、直人の脈を診るが、
柳田「死んでます……」
柳田、ともかく五十嵐を病院へ連れて行こうとするが、
五十嵐「待ってくれ、私はもう助からない、なあ、頼む、柳田君、この若者を早く私の研究室に運んでくれ」
柳田「ええっ?」
五十嵐の気迫に押されたように、柳田は直人の死体をストレッチャーに乗せ、五十嵐の研究室……後のジバン基地へ運び入れる。

五十嵐「ボーイ、改造手術の準備をしてくれ」
ボーイ「わかりました」
既に開発されていた人工知能ボーイに命じ、忙しくメカを操る五十嵐に、
柳田「博士、ジバン計画はやめると仰ったんでは?」
五十嵐「……」
柳田「確かにバイオロンを倒すにはジバン計画しかない、しかし人間の体を改造するなんてたとえ志願する人間がいたとしても出来ないと……」
五十嵐「わかってる」
五十嵐、柳田の言葉を遮ると、
五十嵐「しかし、この若者は私たちを助けようとして死んだんだ、だから、どーしても助けてやりたいんだ」
柳田「博士……」
五十嵐「あの若者の体なら、手術に耐えられる筈だ」
いや、耐えるも何も、もう死んでるんですけどね……
ほどなく、手術の準備が整う。
五十嵐「柳田君、マイクロハンドを」
柳田「はい」
異論がありそうな柳田も、結局、五十嵐博士に協力して、ロボットアームのようなものを操作して、直人の死体の加工を始める。
直人の声(僕はあの時、完全に死んでいた……ここは何処だ? 僕をどうしようと言うんだ?)
ここで、死んでる筈の直人の意識が、自分のいる場所や自分に向かってくるアームを認識する様子が描かれるが、これだと「死後の世界はある!!」byタンバになっちゃうので、これはやらないほうが良かったと思う。
もっとも、術中、
ボーイ「ニューロンの生体反応、僅かながら上昇中」
と言う台詞があり、心臓は止まったが、脳はまだ生きていることが暗示されている。
しかし、自分は門外漢なので良く分からないのだが、直人の心臓が止まってから少なくとも1時間以上は経ってると思うので、さすがにこの状況から生前の人格・記憶を保ったまま生き返らせるのは、無理なんじゃないかなぁ?
おまけに、脳の蘇生だけじゃなく、全身をサイボーグ化するなどという大掛かりな手術が、この二人だけで可能だろうかと言う疑問がつきまとう。
10年前の「スーパー1」の一也の改造シーンの方が、もう少し説得力があったような気がする。
なので、以前も書いた気がするが、ジバンは、直人の死体を直接改造したものではなく、あらかじめ用意されていたボディーに、直人の脳のデータを移植したアンドロイド、と言う風にした方が合理的でスマートだったかもしれない。

ともあれ、そのサイボーグ化されていく過程ははっきり映さず、直人の体は一足飛びにジバンのメタリックボディーに変貌する。
しかし、これだと、直人の肉体は何処行っちゃったの? ってなるんだよなぁ。
もっとも、その辺を細かに描写するのはお金も掛かるし、本家「ロボコップ」みたいにグロになっちゃうからねえ。
五十嵐博士は、柳田に、ジバンに命の火を灯すための活動スイッチを入れさせる。

五十嵐「蘇れ、蘇るんだ、ジバン」
エネルギーが注ぎ込まれると、ジバンの全身から眩い光が放たれ、ボディーのインジケーターが点滅するが、何故か、ジバンはピクリとも動かない。
五十嵐「どうした、ジバン、どうして動かないんだ?」
五十嵐博士の叫びも空しく、インジケーターも消えてしまう。
五十嵐「そんなバカな……ううっ……」
と、俄かに胸を押さえて苦しみ出し、その場に倒れる。

まゆみ「おじいちゃん!!」
五十嵐「ボーイ、手術を頭から再チェックしてくれ」
ボーイ「わかりました」
五十嵐「ジバンは必ず蘇る……きっとだ。まゆみぃ、まゆみがいてくれたお陰で、おじいちゃんはどんなに励まされたか……ありがとうよ、まゆみ……ああ」
まゆみ「おじいちゃん!!」
だが、五十嵐は、ボーイの報告を聞く前に、あっけなく息を引き取る。
その直後、
ボーイ「原因が分かりました、博士、コンセントが外れてました!!」
柳田「……」
まゆみ「……」
みたいなオチにならなくて、ほんとーに良かったと思う。
ま、それこそ、五十嵐博士もジバンにしちゃえば良くね? と思うのだが、めんどくさかったのか、柳田、五十嵐博士の遺体を、自動車事故によるものと偽って警察病院へ担ぎ込む。

柳田「まゆみちゃん、こんな時になんだけど、おじさん、ひとつだけ頼みたいことがあるんだ……今日見たこと、博士の秘密研究所やジバンのこと、パパやママに内緒にして欲しいんだ」
まゆみ「……」
柳田「もしバイオロンに知られたら、きっとまた襲ってくる、パパやママを怖い目に遭わせたくないだろう?」
柳田が諄々と言い聞かせていると、まゆみの両親が到着する。
まゆみ「パパ、ママーッ!!」
弾かれように二人に駆け寄るまゆみ。
父親「交通事故だって聞いて、飛んできたんだ。何があったんだ」
まゆみ「パパ、あのね……ううん、なんでもないの」
まゆみ、反射的に何もかも打ち明けそうになるが、柳田の言葉を思い出し、口を噤む。
その五十嵐博士の死を伝えるテレビニュースを、アジトで見ているギバたち。
そのニュースで、五十嵐博士が大学教授でありながら、警視庁科学研究所の所長を務めていたことが分かる。

マーシャ「ギバ様、結局博士は私たちを倒す研究なんかしてなかったんですわ」
カーシャ「博士の家を家捜ししても何も出てこなかったし」
ギバ「これ以上五十嵐の周辺を探る必要はあるまい」
ギバたちは、すっかり安心してしまい、博士のデータ自体を消してしまう。

まゆみ「ジバン、生き返るのよ、ジバン、おじいちゃんの願いを叶えて!!」
まゆみ、研究室へ戻ると、ジバンに縋り付いて必死に呼びかける。
このままでは祖父の死が無駄になるし、それより何よりそんなとこで寝てられると邪魔だからである(註・ちがいます!!)
と、まゆみの熱い涙が、ジバンの胸の星マークに落ち、それによって遂にジバンが目覚めると言う、ベタ過ぎて笑っちゃう演出となる。
これならまだ、コンセント抜けてましたの方がマシだったような……

まゆみ「生き返って、ジバン!!」
ともかく、システムが起動したジバンのモニターカメラに、まゆみの笑顔がどアップで映し出される。
ジバン(出来れば、このまま寝ていたい……) それを見て、急にやる気が萎えてしまうジバンだったが、嘘である。
嘘だけど、かえすがえすも残念なキャスティングだと管理人が痛感したのは事実である。
ジバン、立ち上がると、物珍しそうに周囲を見たり、コントロールパネルを触ってみたりする。
そこへ柳田があらわれるのだが、

柳田「おお、ジバン」
その反応は、まるでぐーたら息子が目を覚ましたような軽ーいものであった。
ジバン「ここは何処ですか。僕は一体どうなったのだ」
柳田「君は一度死んで、五十嵐博士の手で機動刑事ジバンとして生まれ変わったんだ」
ジバン「なに勝手なことしてんだよっ!!」 柳田「ヒイイッ!!」
と、普通なら大暴れしてるところだと思うが、昔のヒーローは基本的にそんなことでうじうじ悩まないので、ジバン、いや、直人は大して気にした様子もなく、
ジバン「機動刑事ジバン?」
柳田「それはバトルスタイルだ、君は自分の意思で元の姿に戻ることもできる」

ジバン、早速、直人の姿に戻ってみせる。
ただ、それが文字通り元の姿なのか、要するに、男として恥ずかしくない体なのかどうか、その辺は良く分からない。
……
冷静に考えたら、直人の脳を甦らせ、人間の姿にすることも出来るのなら、直人を普通に生き返らせるだけで良かったのでは?
それを、相手の同意も得ずに、「この際だ」とばかりに、ジバンに改造しちゃうというのは、なんか人の道に外れてるような気がしなくもない。
そう言う突っ込みどころをなくす意味でも、管理人推奨の、ボディーに記憶だけ移植した方が良かったように思う。
最初見たとき、ここから、ウニノイドと決着をつけるのかと思ったのだが、そうはならず、やはりウニノイドはあの時死んだことが分かる。
じゃあ、ギバたちはバイオノイドが誰に殺されたのか、ろくに調べもしないでファイルを閉じちゃってたの?
悪にしてはあまりに軽率のようだが、ま、ここでジバンが戦っちゃうと、第1話との整合性が取れなくなるから、仕方ないか。
エピローグ、意味もなく海辺に立って話している柳田と直人。

直人「バイオロン?」
柳田「うん、バイオテクノロジーによって作り出された怪物で、世界征服を企んでいる恐ろしい連中だ。五十嵐博士はバイオロンから地球の平和を守る為に日夜研究を続け、そして生まれたのが君だ」
直人「……」
うーん、柳田の言い方では、まるでジバンがキカイダーのように無からクリエイトされたように聞こえるが、実際は、手頃な死体が手に入ったのでジバンに改造してみましたが何か? 的なノリで作られた訳で、直人も、なんとなく釈然としなかったのではあるまいか?
柳田、簡単に設定を話してから、

柳田「もうひとつだけ君に伝えておかなければならんことがある。実は……はっきり言おう……
君の命はいつまで持つか分からん!!」
直人「……」
衝撃の事実を告げられ、ハッとする直人であったが、
柳田「五十嵐博士は自分の命と引き換えに君を作り上げた、バイオロンと戦えるのは君しかいないんだ!!」
直人「いや、君しかいないんだ、じゃなくて、さっきの話、もうちょっと詳しく聞かせて貰えませんか? 僕、いつ死ぬんですか?」
柳田「やってくれるね、田村直人、いや、機動刑事ジバン、本日付を持って君を警視正に任命する」
直人「あの、ですから、さっきの話……」
柳田「細かいことを気にするなっ!!」 直人「いや、細かいことって……」
と言うのは嘘だが、柳田が自分がした衝撃の発言を、まるっきり「なかったこと」のように話しているのは事実であり、割りとツボである。
なお、この点については、実は管理人、これを執筆してる時点では、まだ全話見てないので、さしあたりノーコメントとさせていただく。
なお、正解は、
柳田「五十嵐博士は自分の命と引き換えに君を作り上げた、バイオロンと戦えるのは君しかいないんだ」
直人「……」
柳田「やってくれるね、田村直人、いや、機動刑事ジバン、本日付を持って君を警視正に任命する」
直人「やります、命の続く限り」
でした。
ともあれ、ここで長い長いバーチャル映像が終わり、直人とまゆみの意識は、現実の世界に戻ってくる。
直人「僕は博士に命を貰って生まれ変わった、だから……分かるだろ、まゆみちゃん」
まゆみ「……」
直人「パパやママに秘密を持つってつらいけど、でも、悲しい時やつらいときはお互いに励ましあってやっていこうよ。二人で頑張れば、いつかきっと平和になって本当のことが言えるようになるよ」
まゆみ「お兄ちゃん」
その上で、直人が改めてまゆみに言い聞かし、まゆみも納得したように頷くのだった。
でも、両親にジバンのことを秘密にしなければならないことを納得することと、ジバンの誕生秘話を思い出すこととは、あんまり関係がないような気がする……
無論、それにかこつけて、ジバン誕生の物語を自然に描く為なんだけどね。
以上、初回ではなく通常回でヒーローの誕生を丸々1話分費やして描いた上に、ラス殺陣の存在しない、極めて珍しい構成のエピソードであった。
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